堆(厩)肥作りの基本と糞尿処理の問題点

                    (株)アース技研 佐藤隆司

堆肥糞尿処理の問題は多岐に渡りますが、今回は身近な部分での問題点に焦点を合せてみようと思います。

まず、堆肥とはどんなものを指すのかお話したいと思います。一般のひとが指す堆肥とはワラや落ち葉を主体とするものです。畜産分野で堆肥とは糞を主構成成分とするもので専門的には堆厩肥と言いますが、堆厩肥とは発酵分解処理を経た、あるいは途中経過のものでなければなりません。つまり、人が手をかけて作ったものが堆厩肥であり、堆肥舎や畑に野積みにしてあるものとは区別しなければなりません。野積みされたものは言ってみれば糞尿混合物であり、これらが現在河川への流入などの問題となっているのです。

次に何故、糞尿処理が行われないかですが、以下の理由が考えられます。     

  ○今までやったことがなく面倒臭い、手間がかかる

   ○やってもお金にならない

   ○高齢化による労力不足

   ○場所、施設、作業機械がない

   ○上手く作れない、時間がない

   ○臭いものには触りたくない

資金や高齢化の問題は確かに深刻ですが、多くの理由はやはり面倒であることにあるようです。また、堆肥は上手く作れば臭いものではありません。2016年からは糞尿の放棄は罪則にもなり、糞尿処理への対応が迫られています。

また、実際堆肥が使われるのは耕種農家においてですが、次のような理由から堆肥を用いないようです。

A)良い堆肥がない

B)住宅地が近くて臭いものは撒けない

C)木質が未分解で作物の成育を阻害する

D)品質が不安定

E)手間がかかる(化学肥料は手軽)

F)高齢化による労力不足(散布用機械、手間がない)

G)堆肥の有効性を理解していない

H)地域性

こような現状の下、問題解決としてまず行うべきことは、自分の農場から堆肥を出さないシステムを確立することだと思います。すぐ堆肥を商品にすることを考えるのではなく、自己農家で糞尿をリサイクルする試みをすべきです。それには堆肥作りの技術習得は不可欠ですし、それは良質堆肥の生産に繋がります。そうやって良質の堆肥を何年も供給することで、農家からの信頼が徐々に得られるのです。

次に堆肥を作るにあたり、その予備知識についてお話したいと思います。前述のように堆肥化されないものは堆肥とは言いません。堆肥化とは微生物の働きにより、イナワラや家畜糞のような新鮮有機物を農業利用に適した状態まであらかじめ分解、安定化することを指します。分解には発酵と腐敗があり、前者には善玉菌が関与し、その分解物の生体に及ぼす影響はありませんが、後者では悪玉菌が関与し、食あたりなどの原因となります。

堆肥化の目的は畑に還元するものとして、@生育阻害の防止。A環境汚染の防止。B悪臭公害の防止。C衛生環境の改善。D土の改善、肥料効果。E作業環境の改善。F作業効率の向上にあると思います。未成熟堆肥は、畑で急激な分解が為されるため、微生物活動の亢進に伴う酸素不足が嫌気分解を誘発し、有害物質発生に繋がります。同様に急激な分解による有機体窒素無機化はアンモニア体窒素高濃度化を引き起こします。これらは共に作物の生育阻害の原因となります。また、腐敗堆肥は土壌微生物叢のバランスを崩し病害、生育阻害を引き起こします。

堆肥作りを左右する要因としては、?水分条件。?原料素材。?堆積ボリューム。?気象条件。?切り返し状況が挙げられます。特に重要なのは水分条件で、この適切な実施が堆肥の善し悪しを左右します。70?71.2%が上限、一般には60?65%が理想で、75%以上は酸素通気性の悪化により嫌気性になります。また、気象条件に絡んで、台風の多い地方では水分含量が多くなります。このように様々な要因を受ける堆肥作りには一律なマニュアルがないという難点があります。

良い堆肥を作るためには、糞は新鮮なうちに水分調整して堆積する必要があります。これは常在腐敗菌が増殖する前に、水分調整して発酵菌群を優勢にする目的があります。また、1度腐敗が生じると発酵が難しくなるという理由もあります。種堆肥を入れることによる水分調整は発酵の立ち上がりを促進させます。また、堆積形状はカマボコ型が良く、表面積が確保され通気性を高めます。定期的な切り返しや十分な熟成も大切な要素となります。

次に堆肥層内での空気の流れについて述べようと思います。まず、カマボコ型にした際の空気の流れですが、発酵による水蒸気の上昇が周囲からの空気の流入を引き起こし(エントツ効果)、多くの部分で対流が生じます。これは好気性層を増やして発酵を促します。一方、側方または両方が壁に接する堆積の方法では対流の行われる部分が限られ、空気の流れが悪くなります。これでは嫌気性層が残り、腐敗が生じるだけではなく、発酵が行われないので一向に堆肥の嵩も減りません。堆積形式はカマボコ型が理想的で、極力壁などの対流を妨げるものから離すことが重要です。堆肥は中心に向かい嫌気性に近づき、嫌気層では嫌気性菌が多く常在しています。則ち層ごとに菌群が異なりますが、菌群により分解物質も異なるのです。好気性菌は木質の分解、嫌気性菌はデンプン、炭水化物の分解に与ります。ですから定期的な切り返しにより、分解産物の均一化を計る必要性が出てきます。

リサイクル堆肥は畑地還元用とは異なります。水分は50%以下と低い方が良く、病原菌は良好な発熱発酵で淘汰されなくてはなりません。但し、木質は未分解でも適用できます。則ち好気的発酵を主体とし、切り返しと乾燥を必要とします。

副資材の適用では、オガクズの吸収率が優れ、モミガラの吸収率は低値を示す実験結果が報告されています。一般に水分調整材(副資材)の添加量は次式で示されます。

 添加量(kg)=生糞量(kg)×生糞の水分%?調整目標水分%

               調整目標水分%?副資材の水分%

この計算式によると、調整目標水分を10%下げようとするだけで、2倍以上の副資材の添加が必要になる計算になります。このために農家では生糞が高水分になりがちです。水分%が65?75%以上になると急激に生糞の水分量が増えるので、65?70%を目安にすると良いと思います。

堆肥の判定指標は、機器分析よる数値だけをもって良否の判定をすることが困難であることから、官能的指標が中心になりがちです。則ち、嗅覚、触覚、視覚を総動員して実施されなければなりません。特に臭いが一番分かりやすく、良質の堆肥は悪臭がなく、微かに土カビ臭がします。

アースジェネレーターとは有機土壌微生物の入った混合飼料でその構成微生物はバチルス属?3種(納豆菌など)、ラクトバチルス属?4種(乳酸菌群)、ストレプトコッカス属?3種(乳酸菌群)、サッカロミセス属?1種(酵母菌)、

カンジダ属?1種であり、以上計12種の菌群で構成されいます。アースジェネレーターの役割は以下に示します。

A)家畜の腸腸内微生物叢の改善

B)糞の悪臭の軽減

C)牛舎内環境の改善

D)蝿の発生抑制

E)堆肥化の促進

今回堆肥化の促進に限って話しますと、薬と違い即効性はないものの緩やかに家畜の腸内菌バランスを整え、腐敗しにくい糞を排泄するようになります。

堆肥に関するアースジェネレーターの効用としては、

?悪臭発生抑制

?分解期間の短縮

?高水分でも発酵が立ち上がる

が挙げられます。

質疑応答

Q)農家が畑に堆肥を還元する際、1番気にするのは窒素分・塩分であり、この塩分低下の目的で堆肥を雨に曝すことなどが為されていますが、堆肥の塩分調整はどうしたら良いのか?

A)私の考えでは、堆肥は雨に曝した方が良いと思います。但し、今堆肥の野積みが問題になっています。しかし、すべてがいけないという話にはならないと思います。ある程度発酵したものは野積みしても野積みの規制に当らないと判断される行政担当者もいらっしゃいます。このあたりで地域により混乱が生じる可能性があります。それがだめな時は堆肥の量で調整するしかないと思います。堆肥は肥厚成分と考えるよりも微生物的・物理的土壌改良剤としての要素が大きいので、量的には減らすことが可能です。

Q)アースジェネレーターを使うことで堆肥の塩分濃度が高くなることはないのか?

A)アースジェネレーター使用時の塩分動態については調べていませんが、体内での塩分利用率が低いのなら、供給量を減らせば良いと思います。

Q)草に含まれる硝酸体窒素量は、スラリーと堆肥で土壌に混ぜた時では違うのか?

A)窒素分は全体量として捉えた方が良いでしょう。発酵が進んだ堆肥ほど含有窒素全体量は減少します。土壌中の窒素分は発酵により、アンモニア体窒素?亜硝酸体窒素?硝酸体窒素と変化します。ここで土壌窒素分は、@硝酸体窒素として植物に取り込まれ、蛋白・アミノ酸合成に使われる、A発酵の際、菌体蛋白として取り込まれる、B土壌中の脱窒菌により硝酸体窒素が窒素ガスに代謝されて大気に離散する、などにより全体量の減少をみます。則ち、良質の堆肥ほど窒素の全体量が低下し、すべてが還元されるのではないのです。また、作物・気象条件によっても窒素の代謝量が異なるので、堆肥の供給量を必要量のみに減少することで土壌中の窒素分の堆積が防げると思います。

Q)堆肥を家畜に食べさせるのはどうでしょうか?

A)エネルギー的にはマイナスになりますが、堆肥は発酵が進むとその中の微生物分布が土壌中のものに近づきます。家畜は腸内微生物叢を土を食べて調節しているので、その目的で堆肥を食べさせるのは良いと思います。

Q)堆肥の完熟とはどのような状態を指すのか?

A)完熟の定義はありません。あくまで感覚的なものです。畑に使用して障害がないものを完熟として良いのではないかと思います。

Q)炭を混ぜるのはどうですか?

A)炭を食べさせる、または土壌に混ぜることは、炭が多孔質で出来ているためこれらが微生物の格好の住処になることを示します。微生物は善玉菌だけが存在するだけではだめで、悪玉菌も存在してその多様な微生物叢のバランスが形成されて初めて生体が上手く利用できるのです。そのような意味で、微生物の多様性を高めることは土壌や生体に良い影響を与えます。但し、悪玉菌のみが炭の多孔質に住み着く恐れもあるので、水で洗ったり、紫外線に当てるなどの工夫が必要になると思います。 

Q:オガクズとモミガラのリサイクル堆肥は新材に比べて吸水量はどのくらいになるか?

A:新しいバーグのとき床材1ヶ月72?73%(水分%)になっていたが、堆肥として入れた とき70%そこそこ。

Q:水分がぬけているのは発酵?土着菌で牛や豚に食べさせる場合、何回も繰り返し使う ということが出来るのか?

A:3回ぐらいまでは回るが、それ以降は吸水能力が落ちくずれやすくなる。オガクズとモ ミガラを加えてやる方がいい。

Q:床が土だと、水分が多くなると乾きにくく、ヘドロのようになってしまう。コンクリ だとそんなことはない。床条件で菌層がいろいろ変わってしまうのでは?

A:1回薄く敷いたとき1週間もった。その倍敷いたら2週間よりむしろ長くもった。

 床が厚いとある程度菌の活性場所ができる。

Q:たくさん敷くともつ時間も長くなるが、コクシとかが増える。敷量がどのくらいだと ちょうどいいのか?糞をほっとくと石のように固くなる。その上に敷くようにしてい  る。土だと水分を含んでいるので腐ってしまう。

A:火山灰を敷いてそこに継ぎ足していき糞は取る、でもそんなにグチョグチョしていな い。フリーパー方式はその土の浸透が懸念されていたが、そのようなことはなかった。 牛にふみ固められて層になったものでも、活動はしている。1頭あたり5ヘーベーぐら いしか取ってない。(理想は、15ヘーベー)過密だけど、状態はそう悪くない。

 アースジェネターを食べさせて、それ以外の土着菌とアースジェネターがくっついて何 か起しているのでは?火山灰土壌は菌と相性がいいのではないか?シラスはけっこうし まるのでは?

A:コクシ、線虫を最初に住まわせないようにする。台風の外水が入ると菌が死んでしま うし、水が入ると発酵がストップしてしまう。水が入ってしまった翌日乳房炎が発生し た例もある。床がべちょべちょになったらヘドロを取り替えて、新しい堆肥をいれる。

Q:野積みはどこまでだめか?

A:畑農家に置いとくのはいいが、畜産農家に置いておくのは駄目。ドロドロしたものと 発酵したものとで、また野積みの汚染が違う。養豚農家での事件も警察も取り締まりよ うがない。大変な問題である。行政機関がどう解釈するか?堆肥と糞の違いをわかって いない。

Q:スラリーについての規制は?

A:おそらくかっかてくる。スラリーを入れたらにおいとかもなくなる。70?80万円。

 今のところ草や木、硝酸の問題はない。平成16年に規制改正がある。

 宮大の畜産がスラリーを使った場合、窒素が外部に漏れているかという研究をしたが、 表層の何cmかはほとんど無いことがわかった。こわいのは水に溶け込むことであり、 飮水の検査をすると、湧水には硝酸体窒素がまじっている。何10mという地下まで浸 み込んでいる。宮大がいうには、1年に1mぐらい浸透する。表層を今きれいにしも、

 良くなるのは何10年も先。都城は地下水脈がたまりやすい地形であるらしい。

Q:戻し堆肥が水分をとばす1番安くできる方法はないのか?

A:パイプの上にモミガラを敷いて風を通して乾燥させていた。時間、電気代とか考えた とき、コストはどうなるか?広げて乾かすのはいいけれど敷地がいる。一次発酵して温 度が上がったものをビニールハウスにいれるのはいいかもしれない。

A:2mぐらいの高さに山のようにする。発酵は水と空気と栄養が必要。牛糞は90%以上 水分である。ロータリーをかけてやるというのが、一番乾燥させるのにいい。切り返し 回数で考えても2、3回ロータリーでまた2、3かい行えばカラカラになる。

Q:肥育ではそうだが乳牛の場合どうなのか?乳牛はフリーバン。糞に水分が多いしやわ らかい。

A:糞に堆肥をまぜると水分調節は楽にできる。

Q:混ぜていれても、種堆肥自体60%あるのであまり効果無い。

A:おそらくそんなことはない。天気のいい日であれば、急激に発酵するはず。副資材と してのオガクズ、モミガラの問題ではないか?発酵の方式に間違いがあるのではない  か?

Q:逆に発酵によって水分がでるというのは?

A:それは60度以上に発酵が上がればそんなことはない。バーグを使ったら40?50日で 乾く。めが荒いバーグ、モミガラを入れればいい。水分調節材の代わりに、発泡スチロ ールやビー玉をまぜれば発酵促進するが、それを分別しないといけない。空気道が出来 るとそこからしか水分が抜けないので、広げて抜かすほうがいい。


hCGの生物学的作用と臨床応用

                                 デンカ製薬株式会社    川口 擁

1.一般名

  胎盤性性腺刺激ホルモン(日局)

  ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン〔Human Chorionic Gonadotrop(h)in,hCG〕

2.本質及び化学

  妊婦尿又は胎盤から得られた性腺刺激ホルモン。

  分子量約36,700の糖蛋白ホルモンで、α及びβの二つのサブユニットからなる、αサブユニットはアミノ酸配列がLH-αとほぼ同じであり、βサブユニットはLH-βと2/3が同じであるβサブユニットが生物活性発現に必要である。

  このため生物学的作用はLHとよく類似している。

3.生合成と分泌

  人胎盤の絨毛組織から産生される。妊婦の排卵後10日前後から血中や尿中に出現し、妊娠約8−10週に 最高値を示した後、妊娠18週頃に低下し、その後は一定レベルを維持して分娩後に消失する。

  hCGは妊婦において、胎盤が十分な量のプロジェステロンを分泌し始めるまでの間、妊娠の維持に重 要な役割を果たす。

4.生物学的作用

  主としてLH〔黄体形成ホルモン、間質細胞刺激ホルモン(ICSH)〕と同様な生物活性を有する。

  排卵誘起・黄体形成作用並びに卵巣と精巣の間質細胞刺激作用(問題刺激作用はLHよりも強い)を現す。

  hCGを投与すると、hCGの直接作用と動物自身の内因性FSH(卵胞刺激ホルモン)との協力作用 により、下記のように生殖機能の失調を改善する。

  雌性動物:卵胞成熟、排卵誘起次いで黄体形成を促進する。

       黄体を刺激してその内分泌機能を亢進させる。

  雄性動物:精巣の間質細胞に働いて、男性ホルモンの分泌と副性器の発育を促進する。またFSHとの協力作用により精細管の発達、精子形成を促進する。

  ☆hCGの単位

    日局注射用hCG1単位=1国際単位(IU)

    〔参考:1マウス単位(MU) 2.5〜3IU〕

 

5.効能・効果及び用法・用量

5−1)hCG剤水性(ゲストロン)

    添付の溶解剤に溶解し、通常1日1回1頭当たり胎盤性性腺刺激ホルモンとして下記量(日局単位、IU)を注射する。


雌基準用量 1500〜10000
(IM,SC)
1500〜6000
(IM,SC)

150〜3000
(IM)
卵胞嚢腫 5000〜10000(IM,SC) 5000〜6000(IM,SC)

排卵障害 3000〜5000(IM,SC) 5000〜5000(IM,SC)

卵胞発育障害 1500〜5000(IM,SC)
1500〜3000(卵巣実質内)
1500〜6000(IM,SC) 500(IM) イ)
(PMS1000IUとの併用
1500〜3000
(IM)ロ)
分娩後の発情誘起


無発情期の発情誘起


1500〜3000
(IM) ロ)
雄:精巣機能減退
  (交尾欲減退)
1000〜2000を3日毎

   IM:筋肉内注射       SC:皮下注射

  イ)最近の報告によると、豚におけるhCG投与量は500IU以下がよいとされている。

  ロ)PMS剤200-500IUとの併用

5−2)hCG油性配合剤(油性ゲストロン・E)

  〔効能・効果〕牛(雌):卵胞嚢腫、卵胞発育障害(卵巣発育不全、卵巣静止、卵巣萎縮)

                馬(雌):卵胞嚢腫、卵胞発育障害(卵巣発育不全、卵巣静止、卵巣萎縮)、排卵障害

  〔用法・用量〕通常1回1頭当たり下記量を筋肉内に注射する。


投与量
(ml)
hCG
(iu)
V.E
(IU)
牛(雌) 12.5〜50 2500〜10000 375〜1500
馬(雌) 6.25〜25 1250〜5000 187.5〜750


6.使用上の注意

  副作用 1)本剤の反復投与により、抗ホルモン抗体が産生され効果を減ずることがある。

          2)本剤の投与により、過敏性反応を起こすことがある。

  相互作用3)本剤をPMSと併用して投与すると、過排卵を起こし、多胎妊娠することがある。

  注 意  :医師の処方せん・指示により使用すること。

7.牛における臨床応用

7−1)卵胞嚢腫

                            1954〜1960年代      再評価後(1984〜)

    hCG剤の表示単位       MU            日局単位(IU)

      筋注又は皮下注射の量   10,000MU     →  5,000-10,000IU

                             (30,000IU)

      卵胞嚢腫牛におけるhCG IMの成績:山内亮(1978)

hCG Cyst治癒
(%)
処置〜初回
発情日数
受胎(%) 受胎に要した
AI回数
水性 油性 単位(IU)

5000〜10000 乳牛 9/14(64.3) 31.3±4.2 7/9(77.8) 7/14(50)  2.0
3000〜5000 和牛 10/12(83.3) 24.4±1.7 7/10(70) 7/12(58.3) 2.0


7−2)卵巣静止

      卵巣静止牛におけるhCG注射後7日以内の排卵誘起:中原達夫ら(1970)

hCG
用量(IU)
水性
IM
油性
IM
1000〜1500 66%
(57/86)
64%
(16/25)
66%
(73/111)
2000〜3000 83%
(24/29)
65%
(11/17)
76%
(35/46)

  イ)黒毛和種牛

  ロ)hCG注射後7日以内に排卵した牛の大部分(93%)は、無発情排卵であった。

  ハ)その後の経過を観察した牛のうち、2回目の排卵が84%の牛に起こり、発情徴候は経過観察牛の62%(排卵牛の73%)にみられた。

    hCG注射後第2回排卵までの日数は、平均14.5(7−13)日であり、誘起排卵後に形成された黄    体の寿命は全般に短かった。

7−3)黄体形成不全

      乳牛における人工授精後のhCG投与成績


hCG処置区 無処置区
黄体形成不全 黄体形成不全 黄体機能良好
注射量(IU) 時期 受胎率 受胎率 受胎率
A,斎藤康倫 2000〜3000
(水性、油性)
AI後
3〜10日
45.4%
(199/438頭)
21%
(35/167)
63.7%
(65/102)
B、田中秀和 1500〜3000
(水性)
AI後
5日
44.3%
(102/230頭)
0%
(0/13)
68%
(17/25)

      乳牛におけるhCGの授精後投与の効果               Sianangamaら(1992)


hCG1000IU IM IM IM -
注射時期 day0 day7 day14 -
受胎率 47%(23/49) 62%(32/52) 55%(27/49) 40%(20/50)

7−4)受胚牛

    凍結胚移植における受胚牛へのhCG投与による受胎成績     西貝正彦ら(2000)

受胚牛
黒毛和種経産牛 hCG(IU)IM 1500 1500 生理食塩5ml
発情後7日に移植 投与日 発情後1日 発情後6日 発情後6日

受胎率% 42.5%(17/40) 67.5%(27/40) 45%(18/40)

        a、b:p<0.05       *発情発現日:0日

7−5)発情・排卵の同期化と定時授精

                  日  0                         7    8     9    10

                                              7日           48H   15H

 Schmittら(1996)   ▲----------------------●----------△----○  52.9%(54/102)
                                                 ホ種未経産牛

                                                                       12-24H

 佐藤・中尾ら(1999) ▲----------------------●----------△----○  59,1%(13/22)
                                                 ホ種経産牛

         ▲:GnRH−A   ●:PGF?   △:hCG3,000IU   ○:定時授精

質疑


QPMS黄体形成促進はいつ打てばいいのでしょうか?

A:授精後567日目がいいといわれますが、報告では7日目にやってよかったといわれています。

QOVSYNCH法を使って何頭か行ったけれど発情が悪く、授精するまでの発情にはならなかった。

Q:アメリカでは発情が弱くても授精するというけれども、弱い発情で授精して受胎率の方はどうでしょうか?

AOVSYNCH法では2.3割しか発情は起こらないが、受胎率は50%前後となります。今回の参加者の方で何か感触を持った方いらっしゃいますか?

A:イージーブリードを使ってもうまくいかず、OVSYNCH法で9割うまくいきました。しかし発情が弱いことで、授精師さんが嫌がる。costもかかるということもありますが、イージーブリードを使ってもうまくいかない時の最終手段とするのはいいとおもいます。

Q:乳牛と黒牛を比較すると、エネルギーバランスの事もあると思いますが、乳牛の方は反応がいいですが、黒牛の場合は非常に反応が悪いですね。授精してから5日目に黄体形成ホルモンを打つんですが。

AOVSYNCH法をやって半分が受胎しない。その半分をまたOVSYNCHを行うと、その半分がまた受胎しないというデータはでています。またこれは未発表なのでいずれか紹介したいと思います。


有)はざまグローバル牧場におけるサルモネラ汚染対策と現状
                                  (有)はざま 牛島

当牧場の概要

母牛1800頭・授乳期子牛400頭・育成子牛1000頭・肥育牛1500頭F1(受精卵用)500頭月分娩数約160頭繁殖農場(第1?第3農場)母牛及び授乳期子牛子牛育成農場(第7・第4農場)授乳期子牛(第7農場のみ)

育成子牛サルモネラ汚染と対策
経過

H.11 12月高熱が続き、抗生物質に反応せず、死に至る牛が散見される。

H.12 1月30日令以降の授乳期仔牛において同様の症状を呈する牛が増える。

1月28日同症状で死亡した70日令の牛を都城家畜保健所に病鑑依頼、

サルモネラO9群;Salmonella dublin(S.d)が検出される。対策として、消毒の徹底、感受性薬物の投与、生菌製剤の投与、ビタミンの投与、感染牛およびその疑いのある牛の移動制限等を行う。

3月同症状を示す牛がさらに増加し、別の繁殖農場で死亡した牛を病鑑依頼したところ、再びS.dが検出される。

3月7日緊急的および試験的にサルモネラ二価ワクチンを25?76日令の仔牛96頭に接種。4月2日に2回目を接種し、3/21,4/19に採血して抗体検査を実施。結果は抗体価の上昇がいずれも認められず、子牛への接種は無効かと思われた。このうち、最終的に死に至ったのは3頭であった。

3月14日母牛149頭にサルモネラワクチンを接種し、母牛の抗体価と子牛の移行抗体の推移を調査した。結果、母牛の抗体価上昇が認められ、子牛にも移行抗体として取り込まれれば、感染予防に効果があり、最終的に生まれた144頭の子牛でサルモネラを疑う所見で死亡したのは1頭のみであったため、有効と判断した。

6月 再び子牛の死亡が増え始める。

7月30日令以降の牛の発症は減少したが、今度は4日令?30日令の子牛で下痢高熱等の症状を示す牛が増加。母牛の抗体調査実施。

8月母牛全頭、授乳期子牛全頭にサルモネラワクチン接種。

9月子牛の体力強化をはかるため、生後すぐからの生菌製剤・ビタミン投与、

代用乳および給餌の改善、分娩前後の母牛への生菌製剤・ビタミン投与等の対策を行う。サルモネラによる死亡牛は散見するが、確実に減少傾向にある。

10月母牛にワクチンを接種した子牛が増え、さらに体力強化を図っているた

め、下痢の発症自体が減少し、子牛に活力が見られ、子牛の状態は非常に良くなった。

考察

今回の一連のサルモネラ汚染の原因、S.dがどこから侵入したのかという問題

に関しては全く究明していない。子牛への感染はおそらく母牛からであると推測し、母牛は導入牛(F1等)からの不顕性感染ではないかと思われるが、これも推測の域を出ない。今回のサルモネラの発症で気づかされた最も重要、かつ最も見逃していた最大の要点は「子牛自身の体力」ではないかと考えた。確かにサルモネラワクチンは有効で、実際試験をしていた4月5月の死亡頭数も少なかった。しかし、サルモネラによる発症はしており、死を免れた牛の中にはその後の成長が大きく遅れたものも少なくない。

このことから、「サルモネラワクチンによる感染および発症の予防」に加え、

「順調な子牛の生育」をも視野に入れて飼養管理全体を見なおしている。

ワクチネーションを効果的に行うために子牛および母牛のコンディションを良好に保つこと、さらにそれが効率よい子牛の生育、増体につながると再認識し、現在子牛の体力強化とサルモネラ定着防止に努めている。

子牛の体力強化対策

・分娩舎の母牛の餌にビタミンと生菌剤添加

・生後すぐの子牛にビタミン剤と生菌剤投与

・初産牛からの子牛、出生体重の小さいまた大きい子牛、母牛のBCの悪  い子牛には凍結初乳を強制投与

・下痢発症時の代用乳調整と治療の改善

・スターター給与の改善

・移動時のビタミン剤投与と駆虫プログラム
・授乳期子牛への生菌剤投与

質問

Q:Salmonellaは常在菌によって発症していたのですか?

A:月に1度30頭 F1を搬入していましたので、そこからストレスも加わってSalmonellaが排菌され、子牛に経口感染したのではないかと考えています。また初乳を飲ませる事によって少しは抑えられる事ができるのではないかという事で、4日間は親と子を一緒にさせています。

Q:感染源は特定できましたか?

A:できていません。Salmonellaは寒い時期に多いというけれどもあまり関係はないようです。消毒もどこまでやればいいのか・・。

Q:川辺の多頭飼いをしているところで、Salmonellaのワクチネーションをやっていますが、母牛のBCと子牛の健康が最も大事になってきます。はざま畜産は中を見せてくれないところでしたが、今はどうなんですか?

A:以前は病気の牛しかいないといわれる程でありました。母牛のBCも落ちていて、それが関係していたのではとおもわれます。今は分娩前後に乾燥を与えています。以前は反芻も停まっていました。また4日してから離乳をする方が子牛の発育も良いです。ためしに1週間?10日母牛につけておいたのですが下痢がよけいに始まってしまうし、またあまり長くつけておく事によって人工乳を飲まなくなってしまいました。





  牛床の虫卵検査            肝属郡開業:君付

 牛床はシラスとノコクズを入れているが、子牛で下痢が起こるのが非常に多い。コクシジウム対策としてもアイボメックトピカルは年間60万もかかるので、農家の方としてもなかなか予防してはくれない。どういったらやってくれるだろうかということで、牛床のノコクズを調べてみた。

 

子牛牛房(2ヶ月)

     
    

cm

コクシ大

コクシ小

線虫

ダニ

表面

0cm

28.5

540

210

325

10

表層

5cm

25.5

310

350

80

50

中層

10cm

24.8

142

145

130

0

深層

17cm

24.5

27

25

7

0

                           1g中の値

 農家は表層だけを持っていって変えるだけで、見た目はきれいだがアンモニア臭がする。シラス層の中にしみこんでいるのであろう。下痢が発生して床を変える、20日してまた下痢が発生する、という繰り返しであった。結果のようにノコクズ層では非常に虫卵数が多かった。これは牛がノコクズを食べて、腹で増殖して、これをまた排出する、という20日の悪循環がおこっているのではないかと考えた。よってせめて10日で変える事をすすめた。

 

 土壌菌を使ってシラスとまぜてみたところ、コクシジウムは徐々減少したが線虫は外でもlife cycleがあるのか変化はなかった。しかし20日もたつとコクシジウムは明らかに減少したが、殼が見当たらない。土壌菌はコクシジウムの殼までもを分解しているのかもしれない。

 以後農家はサルファ剤の取り入れと、牛床を10日で取り変え、今までは表層のみだったところ10cmまでの取り替えを行う事にしたところ、往診回数も減少し、年間400件あったところが現在80件にまで減少している。

●質問

Q:周辺の農家への波及性はどうでしょうか?

A:かわってきている。400件あったところが70件に減少してきている。また、これはノコクズより下の層はセメントに変えた方が効果がある。アイボメックトピカル処置は手軽なので行ってもらえるのだが、駆虫処置は常に同時に行うのが望ましい。片方が減少すると一方が増殖するという事が起こってしまうから。


子牛の下痢       NOSAI中部   永山

白痢の分類

1.新生児白痢(生後2?3日から10日以内の白い便)主に母乳が原因

2.幼若児下痢(生後10?20日)寄生虫や細菌が関与

3.一般下痢(生後20日以降)普通の便が水様性に柔らかくなったもの

                原因はほとんどが寄生虫によるもの

なぜ子牛の白痢では白い便になるのか?

生まれて10日までではおそらく第1胃はまだ発達していない。母乳は2胃3胃を通過して、4胃が主なはたらきを営み、胃酸の中のペプシノーゲンがペプシンとなり、蛋白が分解され、レンニンはカゼインをパラカゼインに変え、また胃酸に働き、消化吸収がされやすくなる。胃酸と混ぜ合わされた母乳は、十二指腸へと入ってゆき、肝臓の胆のうから分泌される胆汁や膵臓から分泌される消化液と良く混ぜ合わされ、消化される。

白痢は母乳の飲み過ぎで消化不良を起こしている事であり、母乳の消化吸収がうまくいかないで、便の色のもとである胆汁中のウロビリノーゲンと良く混ざらずそのまま胃酸が直接出てきたものが白痢である。白痢便がすっぱい酸の臭いがするのは以上の理由であり、白痢が長く続くと、胃酸によって肛門周囲がただれ、毛が抜け落ちていく。また消化吸収がうまくいかないと、腸内の大腸菌の悪玉細菌が増加してしまう。

原因としてはロタウィルスなどの原因もあげられるが、ほとんどは母乳を切るとなくなるので主な原因は母乳であろう。補液を十分にやることと母乳を切る事が重要となってくる。

腸内の便の塩分

母乳の消化不良で浸透圧が高くなってきて、組織中のナトリウムやカリウムが腸管内に移行し、水分も共に移行し下痢が続く。下痢に対して経口補液剤の試験を行っていて、粘膜に炎症があるので効果がないのではないかという事だったが、経口補液剤で PHや浸透圧が保たれてきて、水分の移行も組織へ向かい、組織からの消化液の分泌もよくなり、腸管の消化吸収が良くなって正常になっていくということであった。よって経口補液剤を与える事はたいへん有効な事である。

白痢の原因

1、ほとんどが母乳による

ア、母乳量が多く、飲み過ぎる

イ、乳質異常 脂肪分が多い(乳糖、脂肪、たんぱく質、無脂乳固形分)

       アルコール不安定乳

2、細菌    主に大腸菌、その他サルモネラなど

ウィルス  ロタウィルス、コロナウィルス

3、他の病気の併発 さい帯炎など

白痢の予防処置

1、母乳の乳質管理に注意する。

ア、分娩前後に濃厚飼料を多給しない。高カロリー飼料を与えない。

イ、質の悪い粗飼料やサイレージを多く与えない。

ウ、糞尿や堆肥からのアンモニアガスなどの発生をさせない。

2、早期離乳を行う 多頭飼育農家に適する。

3、分娩牛舎を清潔にする

ア、分娩牛舎内の分娩前消毒

イ、牛舎を清潔にする 床を清潔に保つ

ウ、牛舎の通風をよくする。

白痢の治療

1、断乳・離乳を行い、補液をあわせて行う。(11Lある程度の体液循環をよくしてやる。)

2、整腸剤・抗生剤の投与(抗生剤は使わずになおすのが良い。大腸菌が2次的に壊れるから。)

3、農家の愛情

4、重くならないうちに診療所依頼す

寄生虫性下痢

生後14日から20日目以降の下利便の検便でほとんどに寄生虫卵が見られる。

乳頭糞線虫・コクシジウム(コクシジウムの種類鑑別に取組んでいるがむずかしい。大きさでも卵のたて横でかわってくる。Boviszurenii

寄生虫の感染経路

乳頭糞線虫 皮膚、口より感染(ノコクズ、モミガラ、敷きワラ)

       生後間もなく牛床のノコクズ、モミガラ内より感染し、10?14日で糞便中に虫卵が出てくる。

コクシジウム 口より感染(ノコクズ、モミガラ、敷きワラ)

予防対策

1、消毒殺虫 牛床をきれいにして良く乾燥させた後に、コクシジウム対策用消毒剤(トライキル)を散布する。

2、予防プログラムを確実に実行する。

畜舎消毒による完全殺虫はなかなか困難なので、予防プログロムにより駆虫を徹底的にした方が効果的。

偽膜性腸炎:寄生虫の原因によって偽膜性腸炎という、大変なおりにくい病気になることがある。寄生虫が腸管の粘膜を食いつぶし、そこの場所の組織が死んで腐れてしまい腸管粘膜が脱落していく。

症状:子牛は力みドセキを繰返すが、便は水みたいな血様便が出る程度。

治るまでに12ケ月かかる。気長に考えて獣医師に任せる。


●質問

Q:先ほどの下痢のグラフで福山町が高かったのは頭数が多いからですか?

A:頭数が多い事が一番です。姶良地区で一番頭数が多いところです。

Q:生まれたばっかり(30kg程度の)にあげるアイボメックトピカルは一番小さいめ目盛りで100kgですよね。いつもあげすぎてしまうのですが。値段が高い薬だから無駄になるなとは思うのですが。

A:アイボメックトピカルはほとんど副作用のない薬で、私は農家にいつも50kgであげる様指導しています。一番いけない事は量が少ない事でありますから。


乳牛に発生したサルモネラ症          都城:開業:山本浩通

99年8月、サルモネラ症が搾乳牛に発生した。

8月11日に、2頭。水様下痢、血便、高熱(4041℃)食欲なし。

1頭は14日まで、1頭は19日まで症状がおさまらず。

19日3頭、20日に5頭、21日に7頭が新しく発症する。

21日に家畜保険所に病性鑑定を依頼する。

サルモネラの疑いがあり、感受性試験はABPC―、OTC−、KM ++

GM ++、CBZ +++、ST(スルファメトキサゾール、トリメトプリム) +++

治療は

補液(ハルゼン5リットル、重曹注500ml、50%ブドー糖500ml)

経口補液20リットル

ベリノール注、レバギニン、パラスチミン、フェニタレン座薬(解熱剤)、ビタミンK1、カナマイシン、トリメトプリム、コリスチン(末)

治療は長い牛で9日間、短い牛で3日間。

一番多い日は8月23日で20頭治療。8月29日で治療終了。

感染経路は不明。

血清型はTyphimurium。抗体値はほとんどの牛で陽性。

死亡牛が1頭(育成牛)、乾乳時に流産した牛が2頭。

牛乳の廃棄、死亡、流産、繁殖の遅れなどを総合すると被害額は約300万円。

(治療費、精神的苦痛は除く)。

今年になってサルモネラワクチンを打ちために、事前にELISA抗体検査を行うと、

0.1520.715の範囲(陽性限界値0.07、最小有効抗体0.126)。

1回目投与後1ケ月では、0.9162.349 と高く、通常2〜3週間の投与間隔を

のばす。12週目では0.1231.034に下がってきたので2回目を注射した。

Q:農家ですが、特に飼料のバイパス率が高いとか、特別な飼い方をしてるとかはないんですね?

A:ないです。どちらかというと非常に成績のいいところで、体細胞も1015万というところで、牛の管理もいい。マットもひいてバルク1頭当たり25kgだったところが、年間を通して30kgなりました。管理としては体細胞も少なく、牛もきれいな、上位の農家でした。

Q:導入は?

A:なしです。全部自家繁殖です。

Q;ヨーネの検査はしましたか?

A:していません。

Q.サルモネラについて。抗生剤は効かないのか?毒性があるのか?感受性試験が間違って いるのか?

A.乳牛の親牛で心配していたが、カナマイを使えば症状が改善された。治療は、補液とカ ナマイで行った。発症していない親牛にもカナマイをエサに混ぜて与えたところ、ピー クから約1週間ほどで回復した。手間と時間がかかる。なかなかサルモネラをなくすの は困難である。半年ほどしてもサルモネラを排菌しているのが1頭いた。保健所の検査 でサルモネラが、雨垂れをする通路とかで検出された。だからまたいつ出てもおかしく ないのでは。

Q.サルモネラに限らず抗生剤を使っても完全になくすことができないのはなぜ?薬がそこ まで届いていないのか?

A.サルモネラがリンパまできて届かない。有効な血中濃度が体液などにうすめられて、保 たれていない。体液1ml中に0.1?g以上入れれば効くと言われているが、実際は効果な い。原発巣など病巣に浸透しにくい。ある程度は死滅できる。

 黄色ブドウ球菌も4日したら結合組織に取り囲まれ、マクロファージ等に貪食されつつ も活性をもち続け、抗生物質の効力がなくなる。抗生物質がうすまって、マクロからで てきてしまうのでは?

 ヒトでは、肺炎になってしまったらどんどん薬を投与するが、金銭的な問題もあり、牛 では実際効果のでる量を投与することができない。

 感受性が悪くても量を増やせば効くこともある。

Q:サルモネラに感染しても親牛ならすぐ死亡することはないのでは。導入し、期間が短 い牛は死亡することもある。月齢のいったものではサルモネラではすぐ死なないので  は?

A:子牛にはサルモネラが出た。サルモネラダブリンは子牛の下痢のものだった。1、2ヶ 月すれば治ったりもした。北海道では親牛にもでるのかと質問したら、子牛で出たと  言っており、ワクチンを使ったら、体温上昇や食欲減退などの副作用がかなり出たの  で、注意するようにとのことでした。

Q:経口で投与していたものには何が入っていたのか?

A:主にカナマイです。出荷するものには経口カナマイをやっていた。筋注の場合、36時 間乳は出荷出来ず、肉はかなり長期で1ヶ月は出荷出来ない。残留+?をつけるから肉 の場合長くなる。

Q:この期間もおかしいのでは?

A:注射部位の残留テストもする。日本と外国では日本の方が長い。短縮する必要がある。

Q:注射部位だけ廃棄するようにしたら、もっと短くなるのでは?

A:動薬研究でもデータが出ている。かえって厳しいデータが出ており、メーカー側も苦 悩している。

Q:筋肉ではなく血管にいれるとだいぶ短くなるのでは?

A:ものにもよります。静注で副作用がでるときもあるし。カナマイはいい。

Q:農水省・厚生省はなかなか認めないが、完全にお産の出血多量で死んだ場合、難産で 死んだ場合、食肉として使ってもいいのではないか?

A:死んでいたらもう駄目となっている。切迫だったら死んでいてもいいが、胎子が出て いたら駄目。以前は屠場も小さかったが、今は組織がガッチリしているため駄目。今は もうゴタゴタするのがいやだから、切迫でも持っていかない。初産の場合、難産や病気 で死ぬケースが多いので、農水省・厚生省が救う道をつくるべきだ。食肉検査法がおか しいのでは?実際に臨床に携わっている人達の声をきいて考えてくれないと。Q:保険より肉のほうがいいのですか?

A:初産なら高い。今なら切迫して持っていっても10万にもならないから、保険をもらっ といた方がいいという考え。どういう牛でも保険から3万マイナスされる。畜産農家い じめではないか?

浜名先生

 先天異常牛の発表 (口蹄疫以降)

  2401 起立不能 左後肢曲がらず脊柱短い     胸椎後ろの棘突起が組みあわさった様な感じ、数は正常であるが椎骨が短縮、       骨盤変形が見られ股関節がはずれていた。 
2402 吉松のホルスタイン 2ヶ月齢  虚弱ボーとしている 大脳、脳幹部欠損 小脳正常
     この春流行が無かったのは牛が抗体を持ってきているので初産など若い牛から

     アカバネの影響を受けるためだろう。

  2403 左前肢なし 肩甲骨が残っているがそれ以下が無い。 

     左精巣欠損 心奇形(VSD、両大血管右室起始、右心室肥大)

  2405 双頭奇形 眼球2つあり 左右共に口蓋裂 二枚舌

     大脳は左右2つあるが小脳はひとつ

  2406 重度の肺炎 食欲不振 大脳欠損

     斜頚で右に傾いている 中枢は肉眼的に問題無し

  2412 島根のブルドック子牛

     腹膨隆 軟骨形成不全 頭部がうけ口 

  2419 発育不良(肺膿瘍、偽膜性腸炎、髄膜脳炎) 

     右大脳が脳炎を起していて側脳室が拡張していた。

  2420 右脛骨ロープ巻きつきにより、圧迫され飛節から下が褥創

  2421 心奇形(心室が1つ→単心室)後から見ると左右不対照

  2425 左右不対照 発育不良軽度 

  2426 右後肢着地困難 右膝蓋骨外方脱臼 肋骨骨折(右13、左8と13)

  2427 発育その他問題無し

     単胎フリーマーチン 陰門に見えるが粘膜が露出しただけ

     尿の飛び出しが見られる

     潜在精巣 陰茎痕跡 染色体検査(XX、XYのキメラ)

  2428 4mの崖から落ちて腰の部分がへこんでいる

     墜落による肋骨骨折(右7)と胸腰髄出血

     重度の肺炎

  2430 口をパカパカ開けている

     側脳室拡張、大脳実質薄くなる。 多発性関節炎

     生まれたのは5月でアカバネの時期とははずれている。

  2438 側脳室拡張 硬膜と脳の癒着 髄膜脳炎 脊髄も出血あり

  2439 6ヶ月90kg 旋回運動で目が見えない 

     大脳欠損 3月生まれでアカバネ

  2440 関節弯曲症(両前手根と球節)

  2441 関節弯曲症(両前手根)

  2443 関節弯曲症(両球節屈)

  2444 虚弱(重度角膜炎) 

  2445 鎖肛(直腸が直前まで行ってつながっていない) 

     左肺形成不全 腎臓萎縮 角膜潰瘍 

     手根関節弯曲 股関節形成不全



上村先生・乳汁中ホルモンによる妊娠診断

  普通は血中P濃度で妊娠を追うが、胎盤由来性のホルモン[OestronSulphate(OS)]

  で妊娠をモニターした。

   ・Confirm

      妊娠を確認する

        ・Confirm is

      sensitive,accurate,reliable,reproducible,cost effective

                       the tool of choice for management of reproduction

   ・乳汁中ホルモンによる妊娠診断

                 Confirm test

                   サンプラーの装着、サンプリング、牛号の記入、サンプルを研究所に輸送

       OS測定、妊娠診断

   ・accuracy of confirm

      交配後100日で偽陰性は0.4%

        ・What is confirm?

      定量的に測る。抗生剤などの影響を受けない。

        ・Average OS levels

      種付後、2ヶ月50ピコ、100日250ピコ、125日500ピコ

        ・Confirm field trials(Summary Data 1997 study)

      160pg以上あれば妊娠。90日以降になると妊娠診断できる。

        ・Rapid reduction in OS levels post calving

      分娩後 OS 濃度はどんどん下がる。

        ・Direct Cost of Abortion

      廃用淘汰で300ドル、草地で75ドルなどと流産でかかるコストは全部で       450ドルほどにもなり、経済的損失が大きい。

        ・OS vs manual palpation(1)

      直検によって3?8%間違った診断をしても、 OS ならこのロスはない。

        ・OS vs manual palpation(2)

      波動感とスリップにより妊娠診断をした場合、流産をするリスクが大きくな      る。

   ・EIA法による乳汁中および血液中OS濃度の測定

   ・OSとは?

      胎盤由来性の性ステロイドホルモンのエストロンの抱合型であり、血液、乳      汁、糞、尿中などに分泌される。牛では妊娠期間に比例して増加し、胎盤の      成熟度合いを反映すると考えられている。

 測定は4?5時間でできる。乳中OS濃度は妊娠100日で150pg以上、血中においては  150日で1000pg以上を示したとき、妊娠診断の指標となる。直検をしなくても乳汁で 診断できることから、動物に対する侵襲性が少ない。

 肥育にまわしたデブデブの牛でも判定ができる。プロジェステロンだけだと妊娠してい なくてもある場合があるが、胎盤由来のOSはその点違う。また、途中で流産したかど うかというのが胎盤が機能しているかどうかでわかり、糞でのOS測定は、野生動物の 妊娠診断に使える。

(質問)

Q:直検による流産率がアメリカでは7%あるそうですが、本当にそうなんでしょうか?

 1?2%もないのでは?

A : 40日ぐらいでは胎子の大きさは1.5cm程度。EPF(妊娠すると免疫力が上がる。)

 交配後数時間でEPFは出てくるんじゃないのか?

Q:ちょっと肉がのっている牛で35日でスリップは難しいのではないのか?

A : 子宮をひっくり返して胎嚢を見ると35日前後でもわかる。

 妊娠40日位での妊娠角でのスリップはあまりよくない。

Q:農家によってわかりやすいところと、わかりにくいところがあるのでは?

A : 34?25日で胎子を触っても流産しない牛はしない。流産させるやりかたは何かあ  る。どういうやりかたをすれば流産するのかわからない。

A : カリフォルニア大学では妊角でスリップを行う。子宮を反転してきて胎嚢を触ったり している。胎子の大きさを測ったりしているけど、流産はまったくない。胎嚢診断を勧 めていこうと思っている。

Q:EPFとサイトカインは関係してくるのか?

A : 関係する。発現部位が妊娠段階によって子宮小丘間にでてきたりして変わる。

Q:Dip StickはEIAか?

A : モノクローナル抗体は当然ある。免疫抑制の糖蛋白がいっぱい出てきていたら陽性。

Q:OSの測定は、ニュージーランドで1キットどのくらいか?

A : 96wellで1?2万円くらい。日本では2.5倍位するのでは?