鹿児島県臨床研究会
6月26日 体験発表 テーマ:注射薬におけるショックと対処法
・hCG10.000単位静注による死亡例。以前はよく起こっていた。1.000単位卵巣卵胞内
に注射してもショックが起こったことがあった。その場合の発生機序はどういうもの
か?
・ホルモンによるショックは分子量の小さいもの、例えばhCGなど程ショックを起こ
しにくい。それでも年数回はアナフィラキシーが起こり、数年前には死亡例があった。
FSHでは皮下注や筋注ではショックはないが、静注ではまれにショックがみられる。
GnRHでは年に一回程度副作用がみられる。対処法としては、副腎皮質ホルモン、補液、
アドレナリン、強心剤が考えられる。
・PMSGまたはhCGを注射すると目が腫れ、呼吸が上昇する。この例に対し、墨汁を
静注すると副作用が低下した。しかし機序は分かっていない。
・産後の食欲低下(平熱、ケトン(-)、乳房炎(-))に対し、ボロカール500mlを点滴
した。その後すぐ死亡した。
・ボログルクロン酸Caを100ml点適し死亡した。その後の解剖で脂肪肝が見られた。
・Ht20%の牛に対し、増血効果を狙って10%Fe剤を20ml注射し、10日後もう一回注
射すると倒れたがすぐに回復した。
・乾乳牛の乳房炎治療に、マイシリン20mlを注射すると倒れ、その後流産した。
・産後に、D31000を注射すると倒れて呼吸停止したが回復した。
・ボログルクロン酸Caは、500mlを15〜20分で点滴する。1回に点滴する量は、1L
以内が原則となる。
・Caによるショック死は、肝機能、自家中毒のあるものでは100mlでも危険である。
よって、治療時は低Caかその他の要因があるか判断して治療するのがよい。しかし、
実際の現場ではすぐに検査できない。注意点として、食欲の有無、肝機能障害の有無、
補液の速度、体温測定などが挙げられる。
・Caは点滴時に漏らすと、血管にダメージがありショックが起こる。
・子宮蓄膿症の治療に中性洗剤を用いたところ、子宮穿孔により子宮内に液が漏れ死亡
した。
・生後元気がない子牛に対し、5%ブドウ糖100mlを点滴して死亡した。
・点滴を行う際には、呼吸数が上昇したらすぐ中止し、呼吸数が正常に戻るまで現場か
ら離れないようにする。弱っている動物ほど、点滴の速度を遅くする。
・ザルソー、アントリンなどを注射すると、目が腫れ倒れた。これに対し、強力ネオミ
ノファーゲンを1頭につき3本注射すると回復した。
・強肝剤は、会社により重度のショックを起こすものがあるので、自分の体験に基づき
使用する。
・子牛に対する強肝剤は、50mlを30分かけて点滴する。
<ショックの対処法>
・ショックの対処として副腎皮質ホルモンであるプレドニゾロンは有効であるが、それ
自体にも副作用がある。
・副腎皮質ホルモンと抗生物質を混注するとショックを防ぐ効果があり、経過も良い。
下痢治療などにも用いることが出来る。
・薬の使用制限がある場合、農家との話し合いで、例えば股関節治療のバナミンなどは、
農家に負担してもらうという形で薬を用いている。
< 事故による損害賠償について>
・ショックで死亡した例についての、農家との対応で、ある県では保険が効いたが、他
の県では農家と喧嘩をし、自分で払ったということがあった。
・去勢を行った後、ペニシリンを10ml注射したところ、夕方ショックが起り、補液を
行ったが3日後に死亡した。この場合ショック死ということで、保険を出してもらえた。
別の例では、破傷風にかかった牛を予防無しということにし、保険を出してもらった。
・子宮洗浄中の事故で、子宮穿孔により死亡した例では獣医損害賠償がでた。このとき
は、解剖の立会を行い、診断書を出した。このように薬によるショックでも書類作り次
第で損害賠償は出してもらえることが出来る。
・ロープによる頚椎断裂の例でも、損害賠償書を何度も書き直して出してもらうことが
出来た。
・予防ワクチンによる流死産の例では、前に書かれている、損害倍証書を参考に記入す
るとすぐに出してもらうことが出来た。
< 乳牛での低Ca治療について>
・乳牛での低Caでによる起立不能では、初診時に1〜2本のCa剤を用いている。この
とき、血液検査により追加するかを決める。ボロカール末2、3袋でも上昇しないもの
もいる。この場合にはKが原因と思われる。
・ニューグロンを用いて乳熱、グラステタニーではよく死亡例がみられるが、これはMg
欠乏症なども関与していると思われる。このため起立不能時にはニューグロンにMg剤
を併用すると治療後の回復が速い。このとき、合併症などにも気を付ける。
・起立不能時の血液検査として、Ca、Mg、CPKの測定が必要である。太りぎみのもの
では、電気泳動もみてみるとよい。このような血液検査をもとにCa剤の投与量を考が
えるとよい。
・低Caは注射でしか治らないと考がえられていたが、針治療でも治った例がある。
・針治療機の代用品として、人で用いる低周波治療機の先端に針を付けると使うことが
出来る。これにはタイマーが付いておりコンパクトで使いやすい。
高齢黒毛和種の繁殖雌牛にみられた外傷性心膜炎
松崎和俊(中部農業共済組合)
外傷性心膜炎は、牛の心疾患の中で最も重要な疾患の一つである。1997年度の家畜
共済統計によると、本症による死事例は、全国で乳用牛709頭、肥育牛83頭、繁殖牛
120頭となっている。原因は主として金属異物の嚥下であり、死亡率は高いものの、予
防の可能なことが本症の特徴である
。今回、鹿児島県姶良郡より黒毛和種の雌牛が外傷性心膜炎の疑いで、鹿児島大学附属
家畜病院に搬入されたので、臨床検査により確定診断をした後病理解剖を行った。
[経過]
症例は、1987年6月10日生れ、11歳、体重335・の黒毛和種で、1999年1月15
日に10産目を分娩した。4月2日に食欲が消失し、現地の獣医師が往診した。その結
果、肺胞音は正常であるのに、39.6℃の発熱があることから、肺炎や気管支炎が疑われ
た。4月5日、心音の聴取が困難となり、血液検査と超音波検査の結果、心膜炎が強く
疑われ、鹿児島大学に搬入された。
[臨床所見]
初診時の症状として、栄養状態が悪く、著しく削痩していた。体温38.4℃で、心拍数
84/分、呼吸数33/分であった。心音の聴取は困難で、下顎から胸垂にかけて強い浮*
棯あり、左頚静脈の怒張と拍動が認められた。超音波検査で、心膜腔内にフィブリン
様の構造物が認められた。
[血液検査所見]
血液化学検査では、GOT 125IU/l、フィブリノーゲン量1100mg/dlと高い値が示され
た。B血清蛋白質の電気泳動では、アルブミン1.13g/dl、α-グロブリン 1.30g/dl、
β-グロブリン 2.89g/dl、γ-グロブリン 1.28g/dl、A/G比 0.20となり、正常値に比
べ、アルブミンとA/G比は著しく低下し、α-グロブリンは上昇、β-グロブリンは著し
い上昇を示した。
[病理解剖所見]
第二胃から釘14本、金属片2個の金属異物と磁石が回収され、第二胃と横隔膜、心
膜、胸膜、肺と、広範囲に及ぶ癒着が認められた。心臓、心膜、心外膜とも1〜1.5・に
肥厚し、心膜腔にはフィブリンが絨毛状に沈着し、腐敗臭を伴った心嚢水が貯溜してい
た。フィブリンと貯留液による心臓の圧迫から生じたため、循環障害による浮腫が、下
顎から胸垂にかけて認められた。
[まとめ]
剖検の結果、本例は第二胃からの金属異物の刺入による外傷性心膜炎と確定された。
牛の外傷性心膜炎は、いったん、発症すると、予後不良となる。そのため、事前に磁石
を第一胃内に投与して、金属異物が横隔膜や心膜へ刺入するのを防止することが重要で
ある。本症はそれにもかかわらず発症していた例では長期飼養牛では、1回の磁石投与
では不十分であることが証明された。
(質疑応答)
質1
頚静脈拍動はあったか
答
初診・2日目はないが5日目にはあった
先天異常子牛の臨床疫学的解析 橋之口 哲 先生(農済北薩)
1996年1月から1998年8月までに鹿児島大学に搬入された先天異常子牛について,
その発生状況を明らかにするとともに,特に1998年に多発した水無脳症を主徴とする
子牛について調査を行った.
材料と方法
収集された先天異常子牛は黒毛和種411例,ホルスタイン種28例,F1種13例,無
形無心体2例,ミイラ変性胎子2例の合計456例であった.それぞれの症例に対して病
歴を聴取し,臨床検査および病理解剖を行った.また,母牛と子牛から採血を行い,一
般血液検査とアカバネウイルス,チュウザンウイルス,アイノウイルスに対する抗体価
を測定した.さらに,1998年に多発した水無脳症を主徴とする子牛については,上述
の検査および頚髄より頭側の中枢神経系の組織学的検査を行った.
結果
先天異常子牛を器官系統別に分類すると,
1群:骨格・筋・関節系異常群,66例
2群:循環器系異常群,11例
3群:中枢神経系異常群,162例
3-1群:水無脳症群,57例
3-2群:小脳形成不全群,66例
3-3群:側脳室拡張群,26例
3-4群:その他の中枢神経系異常群,13例
4群:泌尿生殖器系異常群,4例
5群:消化器系異常群,10例
6群:感覚器・その他の異常群,10例
7群:虚弱・発育不良群,193例
7-1群:虚弱群,74例
7-2群:発育不良群,119例
であった.中枢神経系異常群が35.5%,虚弱・発育不良群が42.3%と多かった.中枢神
経系異常群は1995年から1996年にかけてアイノウイルスの流行による小脳形成不全
が多発し,1998年には水無脳症子牛が多発したために多くなったと考えられる.この
水無脳症子牛は体型異常を伴ったものは少なく,チュウザンウイルスに対する抗体価が
64倍以上を示す例が多かった.また,同時期にアカバネウイルスに対する抗体価の陽性
率も上昇していた.
虚弱・発育不良群は肺炎や下痢などの慢性疾患を伴っているものが多く,飼養管理上
の問題も示唆された.その他の群では,VSDなどの心奇形,鎖肛,無形無心体,ミイラ
変性胎子,アーノルドキアリ奇形と二分脊椎などが認められた.
1998年に多発した水無脳症を主徴とする子牛の組織学的検査では,石灰沈着やグリ
ア細胞の集簇が多くみられたが,アカバネ病の特徴といわれる非化膿性脳炎像である囲
管性細胞浸潤は,特徴的なものはみられなかった.その他,出血が多くみられ,脱髄や
小脳の空胞変性がみられた.
まとめ
1996年の前半はアイノウイルスによる小脳形成不全を主徴とする子牛が多く,その
後虚弱子牛や発育不良子牛が多く搬入された.1998年は水無脳症を主徴とする子牛が
多発した.その病変と抗体価から水無脳症単独例ではアカバネウイルスが,小脳形成不
全併発例ではチュウザンウイルスが疑われる.
平成9年秋〜平成10年にかけチュウザン病(4〜5月)は実に14年ぶりまたアカバネ病
(7月〜10月)は実に7年ぶりに大発生をした
今年はあまり発生しないのではないかと言われていたが鹿児島県では曽於郡・肝付郡にて
発生しておりまた全国的に見ると北海道にて初めては発生が認められた。またこの発生の
原因の1つにワクチンを接種していないことが上げられる。
2197
産地:宮之城
品種・性:B(ET)・雌
初診時日齢・体重:183・54
ワクチン接種:×
所見:右腎が萎縮し、生殖器において頚管が2つあり(二重子宮)、膣弁遺残
2198
産地:横川
品種・性:B・雌
初診時日齢・体重:248・167
ワクチン接種:◯
所見:脳全体が矮小化し側脳室が拡張、また小脳が正常の半分しかなかった
2207
産地:末吉
品種・性:B・雄
初診時日齢・体重:114・77
ワクチン接種:◯
所見:左前肢関節彎曲・側脳室拡張
2213
産地:栗野
品種・性:B・雄
初診時日齢・体重:7・29
ワクチン接種:不明
所見:両前肢彎曲 肋骨骨折(左1〜8 右1〜3)
2234
産地:松元
品種・性:B・雄
初診時日齢・体重:1・15
ワクチン接種:◯
所見:髄膜脳瘤 左脳の欠損
2235
産地:吉松
品種・性:B・雄
初診時日齢・体重:4・22
ワクチン接種:×
所見:両側前肢彎曲 右脳側頭葉欠損
2238
産地:牧園
品種・性:B・雄
初診時日齢・体重:187・108
ワクチン接種:不明
所見:慢性鼓張 第四胃が拡張し幽門から十二指腸にかけて狭窄
2248
産地:末吉
品種・性:B・雄
初診時日齢・体重:289・237
ワクチン接種:◯
所見:水無脳症
2259
産地:志布志
品種・性:F1・雄
初診時日齢・体重:50・39
ワクチン接種:◯
所見:水無脳症に近い大脳の欠損
2279
産地:吉松
品種・性:B・雄
初診時日齢・体重:35・24
ワクチン接種:◯
所見:右脳に側脳室から軟膜下にかけて穴が空いている(穿孔脳)
2282
産地:大崎
品種・性:B・雌
初診時日齢・体重:14・24
ワクチン接種:×
所見:第四胃偽膜性潰瘍
2298
産地:国分
品種・性:B・雄
初診時日齢・体重:2・26
ワクチン接種:×
所見:斜頚 四肢軽度彎曲
2309
産地:溝口
品種・性:馬・雌
初診時日齢・体重:12・74
ワクチン接種:×
所見:左後肢先端欠損(血餅が詰まっていた)胸骨・股動脈にも血餅が詰まっ
ていた
2310
産地:溝辺
品種・性:B・雄
初診時日齢・体重:1・30
ワクチン接種:×
所見:二分脊椎 右腎欠損 寛骨変形
質疑応答
質1
2197で腎臓の低形成は系統的なものなのか
答
親牛がそれとは違うため系統的なものなのかどうか分からない
質2
生まれつき股関節異常で、よく矯正すると元に戻ることがある。これは小脳との連絡がう
まく行えないからか、また何日で見込みがないと判断すべきか
答
一概に言えないが、アカバネ病にしてもナックリングは矯正することで治るが、彎曲は筋
肉が萎縮し、またこれが後に発達することがない。また昔はこのように生まれてきた子ウ
シを飼っていたが、近年では経済的な問題もあり早くあきらめる方が多い。
質3
筋肉を鍛えるのでなく、クッシングを鍛える方がいいのか、あるいは歩き方の形を鍛える
方がいいのか
答
関節彎曲には2種類1)骨自体がロックして動かない
2)ナックリング、靭帯が弱い
1)副木で1週間経過を見る
2)副木を1〜2週間付けつけることで関節の機能が治る。
答
アカバネ病には季節性があるため季節を見て淘汰するか判断する。
答
骨に異常がなければ、プラスチックの物差しとテーピングだけでも十分治る。
答
軽度であれば1日で治ることもある。また片側に障害がある場合、もう片方を鍛えれば(可
動領域を増やす)、もう片方(異常のない方)で障害を補う。またこの時曲げるだけでな
く、疼痛がない程度に横ずれも作ってやるように矯正するといい
質4
安福の件は情報公開されているが鹿児島・宮崎でのこの件についての情報公開は
答
鹿児島ではまだ生産として安福が使われていないのでは
答
アメリカでは遺伝病をもった系統を排除するのではなく、交配することで抗病性をもった
系統を作り出している
出生直後から止血異常がみられた新生子牛の1例 上村 俊一 先生(鹿児島大)
はじめに
平成11年4月11日、鹿児島大学農学部附属入来牧場から出生直後の黒下和腫の新生子
牛(雄)が臍帯からの出血が止まらず、また、臍ヘルニアの治療のため、本学附属家畜病
院に搬入された。本症例は、臍ヘルニアの手術中に止血異常が認められ、先天性の止血不
全を疑い、あわせて一般血液検査と血液凝固系検査を行なった。
病歴と経過
症例は、 平成11年4月11日夕方、 放牧地で分娩、 軽度の介助を行なった。 翌4月
12日朝、臍帯からの出血に気付き、この際臍部の腫脹が確認された。同日午前中、治療の
ため本学附属家畜病院に搬入され、臍ヘルニアと診断された。初診時、体温38.2℃、呼吸
数48、心拍数114、体重34.5kgで起立しており、人工乳もよく飲んだ。同日午後、臍部
の腫脹部位を前方に10cmおよび後方傍包皮側に5cm程度、包皮前方を中心としてY字
舟形切開を行なった。手術中および手術後も出血が止まらず、止血剤として、カルバゾク
ロムスルホン酸ナトリウム30mg、フィトナジオン10mg、トラネキサム酸150mgを筋肉
内注射にて投与した。翌4月13日午後、自力で起立歩行し、術後の経過も良好なことか
ら退院した。4月17日午後、術野も正常なため抜糸を行なった。同日夕方、哺乳子牛の集
団管理のために耳標を裝着した。翌4月18日朝、哺育舎内で死亡しているのが発見され、
その際、耳標を裝着した部位からの出血が確認された。
検査所見
血液検査では、赤血球561×104/μ・、白血球5500/μ・、PCV29%、Hb8.5g/・、
総蛋白質6.0g/・、グルコース125mg/・、総コレステロール<50・/・、血中尿素窒素13・
/・、総ビリルビン0.7・/・、GOT 46 IU/・、GPT <10 IU/・、フィブリノーゲンは400・
/・と、総ビリルビン濃度が高い他は異常は特に認められなかった。血液凝固系検査では、
血小板のコラーゲン凝集能は31%と低い値(正常牛:70%)を示した。プロトロンビン時
間(PT)は28.4秒と正常(正常牛:24.9秒)で、活生化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
は153.5秒と延長した(正常牛:74.9秒)。トロンボエラストグラフィ(TEG)では、全
凝固時間が23分5秒と延長したが(正常牛:17分23秒)、最大振幅は88・と正常で
あった(正常牛:85・)。血液塗沫検査では、大顆粒好酸球が認められた。眼底検査では
網膜下の脈絡膜の血管が透過して見える、いわゆる「赤目」であることが確認された。
まとめ
血液凝固系検査、血液塗沫検査および眼底検査の結果から、本症例の新生子牛は先天性
の止血不全であることが示唆された。今回の直接の死因は不明であるが、前日まで元気で
あったこと、および死亡時、耳標を付けた部位からの出血が見られたことから、止血不全
の関与が示唆された。今回のように、出生直後から止血不全が認められる個体では、微小
な血管からの出血も止まりにくいことがあり、その管理には一層の注意を払うことが必要
と思われた。
質疑応答
質
出血素因子牛の兄弟牛2頭と父・母は正常であったか
答
兄弟牛は赤目でなかった(赤目でない牛は普通血液による素因はない)
質
免疫不全もあるのでは
答
易感染性はあるかもしれない
質
どこから出血していたのか
答
手術中のも出血は多く、摘出したヘルニア部にも多くの血餅が存在した
質
臍動脈が腹腔内の入っていたか
答
臍輪で細静脈・臍動脈は周りの組織と融合するので腹腔内にはいることはない。また肝臓
から出ていた臍動脈も周りを囲まれ、融合するので腹腔内に入らない。
質
止血剤は何を使ったのか
答
バソラミン・アドナ
答
去勢時に出血が止まらなかった。出た血液は止まるがどうしてもにじみ出てきた。縫合後
の針後からも出てきた。どうしても止まらないときは、正常牛の凝固能を補う意味で輸血
を行う。
質
母牛が初産時に体腔内で出血し、貧血となり輸血をすることで助かったが、繁殖を続けて
いいものかまた農家への指導はどうすればいいのか
答
妊娠時におけるダ大出血は子宮動脈が腫大することで起こるものなので、塗沫検査や凝固
能試験をすることでその牛に出血素因がないかどうか調べ、出血素因がある場合その牛は
繁殖に適していないので胚移植など別な方法を考える。
ヤギの病気と予防
ヤギは、元来、病気にかかりにくい家畜であるが、多頭数で飼育管理されるため、伝染
病による被害や、内部・外部寄生虫による損害が大きい。また、ヤギの特徴として、がま
ん強い性格があり、重態となるまで症状を示さず、いったん発症すると、手遅れのことが
多い。そのため、日頃からヤギの行動特性(個体間の競合が強い、湿気を嫌う、清潔癖な
ど)を知り、健康状態に注意して、観察することが必要である。
1 病気の前兆
1.食欲が減退し、反芻行動が見みられなくなる。
2.元気がなく、挙動が不活発となり、また、ぼう然と佇立し、頭を垂れる。
3.目に輝きがなく、皮毛に光沢がなくなり、刺激に対し反応が弱くなる。
4.横臥する時間が長く、その際、腹部に頭を傾けている。
5.鼻梁(鼻端)が乾き、呼吸速拍、脈拍減弱し、体温が上昇する。
2 健康なヤギの生理特性
1.体温 38.5 〜 40.5 ℃ (子ヤギで〜 41.0 ℃)
2.脈拍数 70 〜 80 回/分(子ヤギで〜 130 回/分) 後肢の股動脈ではかる
3.呼吸数 12 〜 20 回/分 熱射病、日射病、肺炎、鼓脹症等で増加す
る
3 衛生管理
年間を通じての、衛生プログラムを作成する。交配、分娩、離乳などの管理に合わ せ
て、内部・外部寄生虫の駆虫(薬注、薬浴)、剪蹄などを定期的に行う。さらに、母 ヤ
ギでは分娩前後の代謝障害や泌乳生殖器の障害、子ヤギでは分娩から離乳までの間に 事
故損耗が多発するので、この時期は特に注意が必要である。
哺乳期の損耗の多くが、虚弱、哺乳困難などによる栄養失調が原因で、これには妊娠 後
半期の母ヤギの栄養状態が関連し、特に双子分娩の雌ヤギで栄養不足が起こる。
新規のヤギ導入では、まず他のヤギ群から隔離し、防疫や駆虫を行う。また、新たな 放
牧地の開発では、寄生虫や毒草を除去する。
4 主な疾病
(1)感染症
1.破傷風 破傷風強直(痛みのある,緊張性筋収縮を特徴とする疾患)で、中
枢神経系に作用する破傷風菌の毒素を原因とする。発生はまれであるが、除角やゴム バ
ンドによる去勢後に多発する。
2.ヤギの関節炎・脳髄膜炎 ヤギの脳髄膜炎ウイルスに起因し、世界的に認めら
れるヤギの疾病である。子ヤギの脳髄膜炎と成ヤギの関節炎の2症候群が認められて
いる.感染した母ヤギの乳汁から、子ヤギに感染する。
(2)寄生虫病
1.内部寄生虫病 肺、腎、腸内に寄生する各種線虫類、条虫類、肝蛭、コクシジ ウ
ムなどの寄生による疾病である。通常、消化管に寄生する線虫類は、多細胞卵とし て
排出され、外界で発育した幼虫が主として経口的に感染して、ヤギの体内でふ化 し、
3〜4週間で成虫となる。貧血、下痢、栄養失調が主徴である。予防として、春 先に
駆虫し、子ヤギは2ヵ月齢で初回駆虫する。肝蛭症は、肝蛭の幼虫の寄生による 壊死
性肝炎と成虫寄生による胆管炎、肝線維症を特徴とする疾病である。特殊な例と して、
本来はウシの寄生虫である指状糸状虫(体腔内に寄生する)の幼虫が、カの媒 介によ
ってヤギの体内に入り、脳や脊髄に侵入して神経症状を呈する脳脊髄糸状虫症 (腰麻
痺)が夏〜秋にかけて発現する。
2.外部寄生虫病 耳ダニ、シラミ、ハジラミの寄生が多く、疥癬も多い。脱毛、 潰
瘍、栄養失調がみられ、予後は良くない。予防として、ヤギ舎内の消毒、患畜の隔 離、
薬浴を行う。
(3)代謝・栄養障害
1.下痢症 食欲なく、反芻が停止し、水様便などの下痢便を呈する。原因とし
て、飼料の急変や、変敗飼料、過食、有毒植物、腸内寄生虫などが原因となる。
2.鼓脹症 第一胃の収縮や反芻が停止し、第一胃が膨隆するとともに、呼吸困難
となる。原因として、第一胃の異常発酵があり、腐敗発酵した飼料や、マメ科植物の 過
食、春先の若草の多給により起こる。
3.妊娠中毒症 妊娠後期に飼料給与の不均衡によって起こる疾病で、食欲元気が
なくなり、1〜2日後に起立不能となる。予後は不良である。良質の乾草、水を十分 に
与え、栄養状態を改善する。
4.低マグネシウム症 春先の放牧や劣性の乾草給与、サイレージ給与による低栄
養状態において、血中マグネシウム濃度が減少することにより起こる。呼吸促進、歯 ぎ
しり、歩行困難で、痙攣が起こり、予後は不良である。予防として、マグネシウム を
含む鉱塩の給与や、放牧地へのマグネシウム含有石灰の散布がある
5.尿路結石症 生後3ヵ月以内の雄子ヤギに発生する疾病で、飼料中のカルシウ
ムとリンの不均衡、濃厚飼料多給、ビタミンA欠乏などが原因である。排尿困難、背 湾
姿勢、食欲不振のほか、包皮や下腹部に浮腫を生じる。予防として、濃厚飼料の給 与
量を減らし、カルシウムとリンの比率を1:1とする。
(4)その他の疾病
1.腟・子宮脱 腟脱は妊娠後期、子宮脱は分娩後に発生する。腟脱は、腹圧に
よって腟壁が圧迫され、陰門外に脱出することで、運動不足が誘因となり、習慣性の 傾
向がある。子宮脱では、適切な処置がなければ子宮内感染を起し、その後に不妊と な
ることが多い。
2.乳房炎 乳房組織に炎症をおこし、発熱腫脹して、乳量が減少する。搾乳時の
不衛生、乳房、乳頭の損傷により、細菌が侵入して起こる。濃厚飼料の給与をやめ、 瀕
回搾乳を行うとともに、抗生物質を投与する。
3.植物性中毒 元気なく反芻を停止し、口から泡を吹き、緑色の食塊を吐き出
す。アセビ、ネジキ、ドクゼリなどの有毒植物の摂取による。放牧地から、毒草を除 去
する。
6月27日 質疑応答
<ショックについて>
・ペニシリンによるショックで眼瞼などに腫脹がみられることがある。このときは、デキ
サ等で処置している。
・血圧低下や下痢などがみられるときに、ベリノール静注20mlで3頭の死亡例がある。2
例は5分から10分で死亡した。1例は呼吸をしていたため、ドパミンとドプラムを注射し
たが間に合わずに死亡した。
・ベリノールのことについて製薬会社に問い合わせたところ、注射するスピードが問題か
もしれないとの返答があった。使用時には5%ブドウ糖に溶かして用いてくれと言われた。
・ベリノールは子牛で10ml、肥育牛で50mlの注射であればショックは起らない。
・小児科の先生に水様便や脱水時の処置について聞いたところ、補液は行うが、止瀉剤は
用いないと言われた。
・クロストリジウムで血便等をしているものでは、止瀉剤を使うと死亡することがある。
この場合静菌剤の投与は有効である。
・産後の乳牛に対し、食欲減退したためボロカール500mlを点適したところ途中で倒れ、
死亡した。
・Ht20の乳牛に造血効果をねらって10%鉄剤を20ml注射し、10日後同量入れると、倒
れたがすぐ回復した。
・ニューグロンを脂肪肝の牛に100ml入れたところで突然倒れ、死亡した。
・補液の速度は遅い方がダメージが少ない(500mlを30分で入れるのが理想)。点滴時は獣医師はそばから離れない。ヘルパーにまかせるという手もある。
・ある農家で塩水を飲ませ、その後飲水を忘れて放置したところ、子牛が5頭倒れ、死亡した。食塩中毒と思われる。
・過去の経験によりベリノールは注射液は使わず、粉末を用いている。
・人のショック時の初期治療として、高張食塩水が用いられその後は補液により処置されている。これは、高張食塩水で急速に循環量を確保するために用いている。
< 下痢対策について>
・水様便をしてふらついているような子牛では、血液検査をしてみると、いろいろな原因
に分かれるため、原因別に対処するべきである。
・元気があるが腹がふくれ下痢をし、乳を飲まない子牛などでは、胃洗浄などにより胃の
内容を出したほうがよい。それ以外の下痢の場合には補液は必要である。
・牛群の中で1頭血便や偽膜性腸炎のものが出ると、それは全頭へ広がる。このような場
合には他の牛にも静菌剤を投与し予防する必要がある。
・製薬会社での大腸菌の静菌剤に対する変化についての調査では、現場でのサンプリング
等が困難であり、また1種の菌のみでは薬効の証明が出来ないため、現象を追跡していく
ことしか出来ない。現在では、菌群を経口摂取させたときの糞中の変化について試験中で
ある。
・寄生虫駆除後にも、下痢がみられた子牛では静菌剤を使用することにより、下痢が止ま
ることが多い。
< 皮下補液について>
・脱水中は震えがくるため、皮下補液でゆっくりおこなう。補液はリンゲルを2L頚部に
行う。
・心臓が弱っている子牛に皮下注を用いる。
・皮下リンゲル500mlすると、静中より効果があるような気がする。あわせて経鼻カテー
テルで1L飲水させる。
・子牛の下痢に500ml皮下注したが、下痢の程度により効果は良し悪しがある。原因治療
を行うことが重要である。
・偽膜性腸炎の牛に、点滴を4L行っておりこれまでに4頭を死亡させてしまったが、点
滴を1L、皮下補液を2Lに変更したところ、死亡させることは無くなった。
・寝たきり(生後から起立不能)で、GOT>100 、CPK2〜300、潜血3+の子牛がいるが、
原因が分からないとの質問に対する答えで、都城に白筋症の子牛がおり、GOTとCPKの
値が同時に上がるとの返答があった。
・皮下補液で重曹を用いると脱水の改善に効果がある。
・
< 乳糖不耐症>
・乳糖不耐症で低血糖の牛には5%リンゲル(尿が出ずよい)、25%グルコース、5%キシリトールが良い。これに蛋白や大豆油を加える。
< 尿が出ないときの対処法>
・寝たきりだと出ないが、刺激すると出やすい。
・利尿剤は効くが、病状が重篤だと考慮しなければいけない。
・経口でカテを入れると尿をする。
<高張食塩水の補液について>
・高張食塩水を急性乳房炎治療には、5ml/kgで一分間に200mlで用いている。肺炎などの治療には、血液循環の改善の目的で2〜3ml/kgで用いている。
< こくはん中毒と腐敗甘薯中毒>
・こくはん中毒(呼吸器症状、39.7℃、流涎、軽度の下痢)時に強肝剤など(ビタミンC、過マンガン酸カリウム)を使うと治った。
・本来こくはん中毒は予後不良であり、腐敗甘薯中毒は補液とビタミン剤の大量投与により回復する。腐敗甘薯中毒の症状としては、肺炎に似た呼吸器症状を示し、食欲低下、心拍上昇、体温の軽度上昇がみられる。
・こくはん中毒にかかると、呼吸器や肝臓が悪くなり、乳の腐敗臭がみられる。
牛の過剰排卵誘起:FSH剤減量投与法
デンカ製薬株式会社 川口 擁
1.性周期8〜14日目からのFSH剤減量投与
1−1)FSH−R剤とFSH−S剤の採卵成績
表1.FSH−R剤とFSH−S剤による過剰排卵誘起成績
処 置 |
牛頭 |
回収卵 |
移植可 |
受精 |
移植 能胚 (%) |
未授 卵率 (%) |
移植可 胚(1コ 採取頭 |
|||
試験先 |
FSH剤 総量 |
投 日 |
PGF2
|
|
|
|
|
|||
(1)農水省家 改良センター |
FSH-R 34AU |
5.5 |
CPS 0.5mg |
乳牛 |
8.9 (±8.9) |
6.5 (±6.9) |
|
72.9 a) |
6.5 b) |
17/19 |
日高牧場 堂地ら
|
FSH-S 34AU |
|
|
乳牛
|
8.6 (±6.8) |
4.6 (±3.3) |
|
53.4 a)
|
20.9 b)
|
16/19
|
(2)農水省家 改良センター |
FSH-R 36AU |
4 |
DPS 15+ |
乳牛 |
10.7 (±6.8) |
8.8 (±6.8) |
94.4 c) |
82.2 d) |
|
10/10 |
磯貝ら
|
FSH-S 36AU |
|
|
乳牛
|
9.1 (±8.2) |
6.5 (±8.4) |
86.0 c)
|
72.0 d)
|
|
6/11
|
(3)山口大学 山本、鈴木ら |
FSH-R 28AU |
4 |
DPS 30mg |
和牛 |
11.2 e)(±2.4) |
4.8 f)(±1.4) |
|
43.2 |
|
19/23 |
|
FSH-S 28AU |
|
|
和牛
|
4.9 e)(±2.3) |
1.5 f)(±0.9) |
|
30.4
|
|
14/19
|
(4)雪印乳業 清家ら |
FSH-R 36- |
4 |
DPS 35+ |
乳牛 |
12.0 (±10. |
5.5 (±5.2) |
62.3 |
45.7 |
|
24/28 |
|
FSH-S 36- |
|
|
乳牛
|
10.4 (±8.2) |
4.3 (±4.9) |
63.1
|
41.7
|
|
20/28
|
(5)山口大学 山本ら
|
FSH-R 30AU |
4
|
DPS 30mg |
和牛
|
12.0 (±5.4) |
6.0 (±4.7) |
|
50.0
|
|
8/11
|
(6)農水省家 改良センター +7県畜試
|
FSH-R 20AU
|
3
|
CPS 0.
|
和牛
|
9.8 (±8.2)
|
6.6 (±7.5)
|
82.9
|
66.9
|
|
42/60
|
(7)山口大学 山本ら
|
FSH-R 28AU |
4
|
DPS 30mg |
和牛 乳牛 |
9.6 (±5.5) |
5.5 (±4.8) |
|
57.5
|
|
12/23
|
計
|
FSH-R 20- |
|
|
174
|
10.4
|
6.2
|
|
59.7
|
|
132/
|
イ)同符号間で有意差あり。a及びb:p<0.01, c、d、e及びf:p<0.05
ロ)FSH−R剤:アントリンR、混有LHは痕跡(約0.5%) FSH−S剤:アントリン
ハ)CPS:クロプロステノール DPS:ジノプロスト
ニ)発情周期の8-14日から処置開始。FSH剤は1日2回宛3〜5.5日減量法で筋肉内注射(IM)し、第1回注射後48時間にPGF
2αを1回又は48と60時間に2回IM後、誘起された発情で2回人工授精(AI)、初回AI後7日前後に採卵。表2.FSH−R剤とFSH−S剤の採卵成績の比較
FSH |
総量 |
投与日 |
試験頭 |
平均回収卵 |
移植可能胚 |
||
|
(AU) |
|
|
|
平均個 |
率(%) |
1個以上採卵頭数 |
FSH-R剤 |
28-48 |
4-5.5 |
80 |
10.9 |
6.0 a) |
55.4 b) |
70/80頭 c)(87.5) |
FSH-S剤 |
28-48 |
4-5.5 |
77 |
8.6 |
4.1 a) |
47.8 b) |
56/77頭 c)(72.7) |
同符号間で有意差あり。a及びc:p<0.05 b:p<0.01
FSH剤中に混有するLH量を低減すると、移植可能胚数・率の向上がみられることがDonaldsonら、
Murphyら、Chupinらによって報告されている。
そこで、我国においても、混有LH量が痕跡のFSH−R剤とFSH−S剤(既存FSH剤)を減量法で投与する牛の過剰排卵誘起比較試験が行われた〔表1の(1)〜(4)の試験〕。
その結果、4試験のうち3試験において、FSH−S剤に比べてFSH−R剤の方が移植可能胚数・率が有意に高く(p<0.01又はp<0.05)、又は未受精卵率が有意に低い等(p<0.01)の成績が得られた(表1.)。
集計した成績では、FSH−R剤がFSH−S剤に比べて移植可能胚数(6.0:4.1個、p<0.05)、移植可能胚率(55.4%:47.8%、p<0.01)及び移植可能胚(1個以上)を採取できた牛の割合(70/80頭:56/77頭、p<0.05)が有意に高く、FSH−R剤を用いると、より優れた採卵成績が得られることが確認された(表2.)
1−2)FSH−R剤による用量別の採卵成績
表3.FSH−R剤の減量投与法
イ)による用量別の牛過剰排卵成績FSH総量(AU) 投与日(回)数 |
20 3(6) |
28 4(8) |
30 4(8) |
34 5.5(11) |
36-38 4(8) |
40 4(8) |
44-48 4(8) |
計
|
|
和 牛
|
頭数 平均回収卵数 平均移植可能胚数 移植可能胚率(%) 正常胚1個以上採 |
60 9.8 6.6 66.9 42/60 |
28 11.5 5.3 45.8 22/28 |
11 12.0 6.0 50.0 8/11 |
|
|
|
|
99 10.4 6.2 60.2 72/99 |
乳 牛
|
頭数 平均回収卵数 平均移植可能胚数 移植可能胚率(%) 正常胚1個以上採 |
|
18 5.5 4.8 56.4 9/18 |
|
19 8.9 6.5 72.9 17/19 |
14 11.5 7.5 65.2 14/14 |
6 11.8 8.0 67.6 5/6 |
18 11.8 4.9 42.0 15/18 |
75 10.4 6.2 59.2 60/75 |
イ)筋肉内注射
2.CIDR+FSH/PGF2α
|
投与開始の時期 |
採卵間隔 |
FSH/PGF2α |
発情後8〜14日目 性周期任意の日 |
60〜70日以上 28〜35日 |
図 .和牛における投与プログラム
(10) (12) (14)(15) (21) (35)
day (任意)0 6 8 10 11 17 28
AI AI 採卵 反復処置
FSH
PGF2α
イ):FSH総量20(5,5/3,3/2,2)AU
3.CIDR+E2+FSH/PGF2α
day (任意)0 1 6 8 10 11 17 28
AI AI 採卵 反復処置
FSH E2投与の試験区と
▲ ↑ 対照区を交差
(試験区) E
2 5mg IM PGF2α(対照区) プラセボIM
P
4環境下におけるE2注射→主席卵胞1日後に発育停止して退行→約4日後に新卵胞波発現(Boら,1995,1996)
表 .黒毛和種未経産牛における過剰排卵誘起成績
小西一之ら(1997)
|
頭 |
採卵成績 |
||||
|
|
黄体数 |
回収卵数 |
正常胚数 |
GOOD胚 |
正常胚率(%) |
イ.対照区の回収 試験区 卵数10個> 対照区 |
9 9 |
16.0±7.7 13.6±6.5 |
11.3±6.4 a4.7±2.5 a |
6.4±4.9 b1.8±1.5 b |
3.8±3.0 c0.3±0.5 c |
56.3±30.2 d30.0±24.3 d |
ロ.対照区の回収 試験区 卵数10個< 対照区 |
7 7 |
21.0±7.9 18.0±6.3 |
13.0±7.1 13.1±3.6 |
8.0±6.5 9.3±4.7 |
4.1±4.6 4.4±2.9 |
61.7±30.0 68.4±23.2 |
計 試験区 (イ+ロ) 対照区 |
16 16 |
18.2±8.2 15.5±6.8 |
12.1±6.8 8.4±5.2 |
7.1±5.7 5.1±5.0 |
3.9±3.8 2.1±2.8 |
58.7±30.2 46.8±30.6 |
試験区:CIDR+E2-17β+FSH/PG
対照区:CIDR+FSH/PG
同符号間で有意差あり;a、b、d:p<0.05 c:p<0.01
文献
(1)堂地修ら:第84回日畜学会,76,1991
(2)磯貝保ら:J.Reprod.Dev.,38,J21-J25,1992
(3)山本政生、鈴木達行ら:J.Vet.Med.Sci.55(1),133-134,1993
(4)清家昇ら:デンカ製薬資料1990
(5)山本政生、鈴木達行ら:J.Reprod.Dev.,39,353-356,1993
(6)奥地弘明ら:畜産技術1995/1,22-26
(7)山本政生、鈴木達行ら:第80回家畜繁殖学会,1991
(8)小西一之ら:日畜会報,68(11),1075-1084,1997
( 質疑応答)
質1
過剰排卵処置を行うときにCIDRを使用しているが使わずにエストロジェンを処置
するにはどうすればいいか
答
エストロジェンを注射するのはプロジェステロンが高い環境下で主席卵胞を退行さ
せ 約4日後に新卵胞波を発現させるためなのでもしプロジェステロンが低い環境下で
エス トロジェンを注射するとLHサージが起き排卵が起こってしまう。よって活性の
ある黄 体が存在すればエストロジェンを投与することは有効である。尚、外国ではプ
ロジェス テロン製剤としてイヤープラントを使用している
質2
乳牛ではFSH36AUを用いて過剰排卵処置を行っているがCIDRを用いた過剰排卵
処 置では発情の兆候が見られないことがよくあり、また採卵成績も悪い。乳牛では
CIDR を用いて過剰排卵処置を行うのに外陰部兆候や発情兆候を良好にするのにはど
の時期 にCIDRを挿入すればよいか
答
和牛では確立されているが乳牛ではCIDRを用いた過剰排卵処置は確立されていな
い。乳牛でも泌乳牛ではバラツキがあるが未経産牛ではバラツキがない。