82回鹿児島県家畜臨床研究会
講演要旨
平成8年2月10日、11日
於:霧島ハイツ
体験発表
      NOSA1日置   相 原 先生
    牛の処量の失敗
   1、受精卵移植時の失敗
   2、尿道切開時の失敗
3、脂肪肝第

      NOSAI伊佐   村 山 先生
       1、子牛の育成事業について
      開  業      山 本 先生
       1、乳牛と子牛のビタミンとカロチン
      NOSAI始良   蔵 前 先生 
       1、牛群データの基準値
       2、育成乳牛でのヘモフイルス
セミナー1
      明 治 製 菓  下 村 先生  白 石 先生
       1、動物用ホルモンS(静注用)について 
セミナー2
      第 一 製 薬   渡 辺 先生
       1、分娩時のコルチゾールとプロスタグランジン
セミナー3
      デ ン カ 製 薬  川 口 先生
       1、PMSの黄体機能賦活効果について
       2、農産物の需要と生産の長期見通し
セミナー4
      鹿 児 島 大 学  上 村 先生
       1、二ュージーランドの畜産事情
       2、シダーについて
セミナー5
      鹿 児 島 大 学  浜 名 先生
       1、JMR法による繁殖成績の検討
       2、小眼球を特徴とする先天異常
       3、小脳形成不全を主徴とする新タイプの先矢異常
体験発表
NOSA1日置 相原 幸三先生
1、受精卵移植時の失敗
  同一酪農家で同時に2頭の育成牛に全く違う系統の受精卵を移植した時に畜主が受卵
  牛の名号を逆に報告した為、和牛登録協会に血液型検査を依頼した時に矛盾が発生
  してしまった。
  受卵牛が育成牛の場合、耳標が無いことが多く、また検定番号も無いので特に注意が
  必要と感じた。

2、尿道破裂をした牛の尿道切開術時の失敗
  尿道破裂をおこしているのに、尿道切開部の下方を結 しなかった為、再び尿が皮
  下に漏れてしまった。

3、第4胃変位を併発していた重度脂肪肝牛の処置についての失敗
  変位の整復が終っても、脂肪肝が疑われるものは、徹底した治療を続けるへきだっ
  た。

コメント
・ 尿道切開に比べて尿道切断の方が、引き出しやすいのではないか。また尿道破裂
 の場合は尿道切断の方が、確実かもしれない。
・ 子牛の尿石症の場合、膀胱切開を行い石を除去してやるのも一つの方法かもしれ
 ない。
・ 膀胱破裂は膀胱の縫合をせずに、カテーテルを留置するだけでカテーテルより
 排尿できるが腹膜炎が問題になる。

NOSAI伊佐 村山 和也先生
1、子牛の育成事業について
  ・離乳後の子牛をセリ市場まで預かり育成、管理じて市場にて子牛を畜主に返す。
  ・この事業のメリット
   1.農家の子牛の育成、管理の労力を省く。
   2,子牛分のスペースが空くので、その分母牛が増やせる。
  ・事故補償、価格補償の基金造成が行政面の問題になった
  ・委託管理費は6ケ月で約7万、初診料は農家負担。

コメント
  ・子牛育成の経費は約3、5万なので委託管理費が高いのではないか。
    高齢者の子牛が申心になるのではないか。
  ・子牛を預かり、管理する者の技術が問題になる。
    伊佐の場合は管理する職員は外部より採用し、建物は既存の施設を使用する。
    死亡事故の場合は、共済の保険以外にも月齢により最高36万の補償をしている。

セミナー1
明治製菓 下村先生 白石先生
 動物用ホスミシンS(静注用)について
・ ホスホマイシン系抗生物質は20年前にスペインで開発されたものである。
・ MRSAと緑膿菌に効果があるため人体の方では広く長く使用されている。
・二ユーキロノ系やセファロ系との併用効果も高い。
・分子量が小さく(l82.02)、溶解液に溶かすと25℃ぐらいに温度が上がる。
・ 細胞壁合成の初期段階の反応を阻書し、グラム陽性菌・グラム陰性菌に殺菌的に
作用するところが他の抗生物質と違う。
・グリセリン代謝系の能動輸送に乗つて菌体内に侵入する。
・他の抗生物質との併用効果が高い。
・ 投与後24時間で血中にはほとんど存在しないので症状によつては1日2回投与
 が望ましい。
・投与後1時間では腎、血中、肺、肝の順に分布し各組織に移行しやすい。
・ 血中のタンパクと結合しないので活性のままで腎から膀胱に移行するので泌尿器
 系の治療に使用されやすい。
・ 治療の開始が早ければ静注で1〜2回で効果あり。他の抗生物質を筋注するのも
 効果的である。

北海道の牧場の例
    1ケ月齢程度の子牛を導入し、1000頭程度の規模
    最初に下痢をしてその次に肺炎になる牛が多い
    導入後3週間ぐらいでパスツレラに絡んでマイコプラズマも活動している

サルモネラ・ダブリンにとる下痢が増加しているが体内から追い出すことは難しい。
サルモネラ(ネズミチフス)は人為的に感染させると、3〜4日で下痢が発生し、60日ごろまで散発的に排菌がおこるので、3日ぐらいは続けて採便する必要がある
サルモネラ・ダブリンを人為的に感染させ、治療しないと2〜3日で死亡する
サルモネラは感受性が変わりやすい
サルモネラ・ダブリンは流産も起こしやすく、その後排菌を続ける

S・S・T・T試験とは
 亜硫酸ナトリウム0、1m1と血清1、9m1を混ぜて反応をみる
 混濁しないもは初乳を飲んでいない

セミナー2
第一製薬 渡辺 先生
 分娩に関わるコルチゾールとプロスタグランジン
・ 分娩時に胎児側コルチゾールが90ng/m1,母体側コルチゾールが50ng
 /m1に上昇
・ 胎児側コルチゾールは、胎盤性プロゲステロンをエストラジオールに変換させる
 はたらきがある
・エストロジェンは分娩のスタートに非常に重要である。
・ デキサメサゾンの使用は人為的にコルチゾールを上昇させてやることだが、
 100%胎盤停滞が発生する。
・ エストロジェンに感作された子宮はPGF2αにより収縮がおこり、胎児の機械
 的刺激によりオキシトシンが分泌されさらに強い収縮がおこる。
・ 分娩後の子宮内容物の排泄にはPGF2αとエストラジオールの併用が効果的で
 ある。
・エストラジオールの投与量は分娩後は5mg程度、投与後受胎させる時は以下の量
     成乳牛2mg,和牛1.5mg,豚0,8mg
・ デキサメサゾンはPGF2αの産生を阻害するため胎盤停滞をおこし、また多量
 のPGF2αは逆の作用をするPGEを作る。
・牛は人とは逆にPGF2αが血管の透過生をあげる
     乳房内に3mg注入により体細胞数減少の報告あり
・ コルチゾルはアラキドン酸の放出を抑制することで抗炎症作用を持つが、デキサ
 メサゾンはプレドニゾロンの約7倍の効力を持ち分娩誘起にはプレドニゾロンの
 ほうが安全
・分娩誘起はPGF2αの3mg頸管注射が有効
 
・過排卵処理時にプロジェステロン濃度が高いと正常卵がとれやすい。

セミナー3
デンカ製薬 川口 先生
PNSの生物学的作用及び低単位PMSによる牛の黄体機能賦活効果について
・ 妊娠馬の子宮内膜杯の形成される40日頃から合成され60一80日にピークとな
 り120日頃に消失する
・分子量が大きいために腎でろ過されずに、血中濃度の持続時間が長い。
・生物学的作用
  主としてFSH作用を有し、LH作用も有するが、馬ではLH作用が主である。
  卵巣に直接働いて、強い卵胞発育作用と若午の排卵、黄体化作用を現す。
・使用上の注意
  多胎妊娠と過敏性反応と抗ホルモーン抗体の産生
・臨床応用例
  牛の卵胞発育障害にPMS500とHCGの同時注射
  人工受精牛、受胚牛における黄体機能賦活に排卵後7日にPMS500単位注射
  牛の過剰排卵誘起に9一14日の黄体期にPMS2000一4000単位を
  1回注射し、48時間後にPGF2αを注射
  豚の離乳後の発情誘起に 離乳時にPMS1000単位、
              3日後にHCG1000単位
 排卵後7日目にPMS500単位を注射すると、過剰な卵胞発育を誘起することなく
 黄体のLHレセプターに結合してブロジェステロン分泌を増加させる

コメント
 排卵後7日目にPMSを投与したものは次回の発情は良好になるはずである
 PMS1000単位では卵胞嚢腫の危険有り
 馬には高単位のPMSが必要でアナフイラキシーの報告はない
 PG3mgを50m1のリンゲルに融解し乳房内に注入すると体細胞数減少の報告あり
 最近の家畜は高栄養のため、卵巣静止より嚢腫の傾向が強い

農産物の需要と生産の長期見通し
 別表あり

体験発表
  開 業  山本先生
乳牛と子牛のビタミンとカロチンの予備調査
 別表あり
・ 多頭農家で出生直後にビタミン剤と銑剤を投与したところ子牛の発育、毛つやが
   よくなった。
  ・1ヶ月齢の子牛でベータカロチンの低下がみられる。
  ・ビタミン剤の投与で白痢が減少したようだ。
コメント
   ビタミンAとコレステロールは相関があるのではないか
   ビタミンAは肝に長期間保存されるので、過剰投与に気をつけるべきだ。
   ビタミンAは上皮細胞を保護することから牛乳の体細胞を減少させる効果があるが、
   セレンの効果は不明
   牛乳の体細胞対策は衛生的な搾乳が基本

NOSAI始良 蔵前先生
1牛群データの基準値とその考え方について
  別表あり
2症例報告
  7ケ月の育成乳牛  起立不能で痙攣をおこしているとのことで求診あり
  右横臥で起立不能、瞳孔反射あり、体温40℃  血液検査異常なし
  家畜保鍵所でヘモフイルスではないかとの診断を受ける
  育成乳牛でのヘモフイルスは意外だった。
コメント
  基準値の作成は品種、飼養管理、季節、乳期などにより非常に難しい。
  血液検査は診断のあくまで一助である。
  代謝プロファイルテストの有効利用についてはさらに検討すべきである。
  測定する機械の種類によっても値が違う。
  代謝プロファイルテストを実施していくには各団体の連係が必要である。

セミナー4
鹿児島大学  上村先生
二ユージーランドの畜産事情の報告
  ・穏和な気候で多頭化と省力化が進んでいる。
・ 10〜1月の間に授精を行い、分娩は7〜9月に済ませるようにしている。
 牧草の関係 
・性周期の同調など繁殖技術は進んでいる。
  ・濃厚飼料をほとんど与えず、乳量は6000kg程度で日本より少ない。
  ・授精時期が限られているので、繁殖検診は一人の獣医で一日に100頭前後行う。
イージーブリード(シダー)について
 別表あり
・プロゲステロン放出膣内挿入製剤である
・ 前回発情日に関係なく挿入し、12〜15日間挿入しておき、引き抜き後は4日以内に約85〜90%の牛が発情徴候を示す
  ・PGと違い、黄体がなくても使用できる
・ 発情の発見が容易になり、受精卵移植時に挿入して21日目に抜くことで受胎率
 が上昇する
コメント
   子宮内膜炎をおこしているものには使用できない。
   抜く前日に黄体がある場合はその時にPGを投与し、無いときは抜くときにエス
   トロジェンを投与するとより鮮明な発情徴候が発現する。

セミナー5
鹿児島大学  浜名先生
  JMR法による繁殖成績の検討
   別表あり
  小眼球を特徴とする先天異常の解析
   別表あり
  小脳形成不全を主徴とする新タイプの先天異常の多発
   別表あり

質疑*応答
・ FSHを陰唇に注射すると少量で効果あり。また針のツボに注射するのも効果があ
 るとの報告もある。
・ 鍼灸療法のメカニズムは不明な点が多いが、温熱刺激が中枢に伝わることや、炎
 症により何らかの物質が産生されるのかもしれない。
・ ホルモンのレセプターについては臨床的診断は難しいが、PNSを使用した時に
 できる卵胞嚢腫ではLHレセプターをPMSが塞いでしまうのではないか。
・ 採卵時に正常卵をより多く採取するため、排卵後5日目にPMS500単位投与
 した後に過排卵処理をしたとの報告もあり、またシダーを使うのも一つの方法か
 もしれない。
・ 胎児が死亡している場合は胎児由来のコルチゾールが低いので、母牛のエストロ
   ジェン、PGともに低くなる。ホーリン(エストリオール)は頸管拡張目的時に
   は直接頸管に注射すると効果的である。
・ 鍼灸療法は発情徴候を強く出すはたらきがあり副作用も無いが、手間がかかる。
   また発情がない場合は獣医が診断治療すべきである。
  ・針治療は牛の場合、10〜30ヘルツで2〜4ボルト
  ・JMR法では淘汰予定牛は母集団から除外する。
・ プロダクションメデイスンのポイントは農家の一番困つているところから解決す
 ること。
・ 胎児死あるいは奇形児の場合は切胎術も一つの方法である。帝王切開は母牛への
 ダメージが大きい。
 
        酪農家2戸におけるJMR法による繁殖成績の比較

○石川 初,永野理樹,石橋瑞穂,上村俊一,浜名克己(家畜臨床繁殖学研究室)
 今まで、各農家の繁殖成績は1年間の成績を比較し、検討されてきた。しかし、この
形式では毎月の検診時にその農家の繁殖状況を的確に把握し、その後の予測をするのに
は十分でなかった。そのため毎月の繁殖成績をモ二夕―し、現時点での繁殖状況を明暗
にし、農家とともに検討、対処していくことができるプログラムが必要であった。
今回、その目的で新しく開発されたJMR法(jours moyen retard,平均遅延日数)を
用い、2戸の農家の14ヵ月間の繁殖成績を比較し、その実用性を検討した。
 調査は鹿児島県東市来町の2戸の農家に飼養されている繁殖牛(A農家平均38.4頭
B農家平均35.6頭)の毎月一回の検診における繁殖成績(1994年4月〜1995
年5月)をもとに行った。但し、未経産牛は対象から除外した。
各検診Bの妊娠鑑定に基づき、牛群を0群(受胎未確認牛)、1群(空胎牛)、2群(受
胎群)に区分し、分娩後の生理的空胎期間(voluntary waiting period:VP)を任意に
設定し、その期間を超過じた雌牛に対しペナルティーを加算した。JMRはその月ごとのペナルティーの合計を牛群内で繁殖に供する雌牛の総頭数で除して算出した。
今回は生理的空胎期間は経産牛を60日、初産牛を80日と設定した。
 JMRの数値は10以下が理想とされているが、今回算出したJMRの推移をみると
A・B両農家共にほぼ同じ推移を示し、慢性的な上昇傾向がみられ、特に夏期では顕著
にみられた。A・B両農家問のJMR値の差もかなり認められた。
(A農家:最小値6.9,最大値34.1 ; B農家:最小値45.2,最大値81.5)また、A・
B農家の発情発見率、受胎までの平均授精回数を算出した結渠、A農家では発情発見率
の低下により、受胎までの平均授精回数の増加が顕著にみられた。B農家では発情発見率
および受胎までの平均授精回数には顕著な変化はみれなかった。
 今回得られた結果より、A・B農家問におけるJMR値の差は、根本的な経営方針の
違いが影響していると考えられる。さらに、JMR値の上昇は受胎率の低下、発情発見
率などの繁殖管理の問題の他、栄養管理上の問題、淘汰予定牛の数と淘汰時期の問題、
さらに季節的な変動要因などが考えられる。
 したがって、繁殖検診を実施するにあたり毎月の繁殖管理を正確にモニターするプロ
グラムが必要であり、JMRは繁殖効率を高めるために有効な方法であると考えられる。今後の繁殖検診を行うにあたり、このJMRを用い、繁殖管理の―つとして実施してい
きたいと思っている。

JMRの考え方、計算法、応用例については
  臨床獣医 13、5、15―39、1995 参照して下さい。

1994―95年に集中発生した黒毛和種の無または
小眼球症を特徴とする先天異常8例の解析
○浜名克己、上村俊一(鹿児島大)

 牛の先天異常の中で無(または小)眼球症はきわめてまれで、演者らは1972-81年に
宮崎大学で収集した先天異常482例中3例(0.6%)に、1981-93年に鹿児島大学で収
集した同1,412例中4例(0.3%)に本症を認めたにすぎない。しかし、1994年1月
から1995年4月には158例中8例(5.1%)に達した。
品種は7例が黒毛和種で、1例はホルスタイン種との雑種であった。
性別は雄4例、雌4例である。出生地は曾於郡、始良郡、肝付郡で、5例は生後7日以
内に淘汰され、最大62日で淘汰された。母牛は2産目から12産目で、妊娠中は正常で
あった。分娩は6例が正常(うち1例は長期在胎)で、1例が尾位下胎向による難産、
1例が長期在胎により帝王切開術をうけた。
 完全な両側性の無眼球症は4例で、片側性が3例、片側性の小眼球症が1例であった。
そのうち右眼球欠損1例と右小眼球は単発奇形であったが、他の6例は複合奇形であっ
た。その中では無尾4例、偏尾1例と、尾の異常が最も多く、ついで側脳室拡張3例、
小脳形成不全1例と、中枢神経系の異常が多く、さらに心室中隔欠損などの心奇形が2例
あった。
 症例の多くの眼裂は著しく小さく、眼かも痕跡的で脂肪組織塊が充満し、眼球の痕跡
が認められた例もあった。また多くは視神経の欠如または矯小を伴っていた。
 血統調査では、種雄牛Tが8例中5例の父牛または祖父牛であり、種雄牛Hが5例の
祖先に含まれ、種雄牛Kの祖先となっていた。このうちTとHを共通祖先とするものが
4例、HとKを共通祖先とするものが1例であった。
 無(または小)眼球症の原因としてはビタミンA欠乏が知られているが、今回の全8
例の共通原因とは考えにくい。血統調査から遺伝による可能性が疑われるが、種雄牛
T、H、Kは鹿児島県で最も多く供用され、優秀な産子が得られて評価が高い。
しかし、比較的短期間に集中発生したことから、不良遺伝子の蓄積による発現の可能性
も否定できない。

小脳形成不全を主徴とする新タイプの先天異常子牛の多発
○浜名克己、上村俊一(鹿児島大)

 鹿児島県においては、1990年冬からl991年春にかけてのアカバネウイルス変異株によると思われる水無脳症を主とする先天異常子牛の多発を最後として、中枢神経系の異常による先天異常の発生は小康状態にあり、側脳室拡張などの散発にとどまっていた。その後1995年5月になって、1〜3産牛に水無脳症の小規模な集中発生があり、夏から秋にかけて例年より多い流早産の発生が観察されていた。
 1995年11月に入り、鹿児島大学に小脳形成不全を主とする先天異常子牛が次々と搬入され、その数は11月5日生から1月23日生までの3ヵ月間に43例に達し、なお増加する傾向にある。我々はこれら子牛の発生状況を調査し、臨床および病理学的に検索した。

 牛の品種はホルスタイン種9例、F1種8例、黒毛和種26例で、前2者が40%を占め、相対的に多かった。雌22例、雄21例で差はない。産地は始良26例(60%)、曾於13例(30%)、日置と伊佐が各2例(各5%)であった。生年月日は11月13例、12月14例、1月16例と増えている。淘汰時の日齢は死産を含めた7日以内が33例(77%)で、最長38日齢
であった。体重は一般にそう小さくないが、早産の程度に応じて小さかった。
 母牛の産次は1〜10産に及び、3産11例(26%)をピークとずる5産までが多く、37例(86%)を占めた。分娩状況は正常が25例(58%)であったが、難産も18例(42%)と多く、うち2例は帝王切開術を要した。予定日との関係では±7日前後の正常は16例(37%)に
すぎず、23例(53%)は-8〜-41日の早産であった。アカバネワクチン接種は11例(26%)、未接種26例(60%)であった。

 ほとんどの子牛(39例、91%)が起立不能で、介助して立たせても運動失調を示し、すぐくずれる。少数の子牛は歩行可能となったが、旋回運動を示した。 23例(53%)に何らかの神経症状がみられ、遊泳運動、四肢つっぱり、後弓反張などが観察された。
多くの子牛の吸乳力は正常であった。
 体型異常としては、斜頚が多く25例(58%)にみられ、脊柱湾曲は少数(3例)であっ
た。四肢の関節湾曲症は18例(42%)にみられ、11月下旬より継続的に発生している。
 病理解剖検査では、小脳形成不全が多く観察され、重度(10g以下)が23例(53%)、
中等度(15g以下)が14例(33%)であり、正常例は6例(14%)にすぎなかった。発生時期がこの順に11月上旬〜12月中旬、〜1月中旬まで、1月下旬からと、ずれている。側脳室拡張は重度が6例、軽度が3例にみられた。 12月から大脳のシストが6例もでている。
 その他、矯小脳8例、穿孔脳2例、一部欠損3例、ほとんど水無脳症3例などがみられ
た。1月17日から23日生まれの4例は脳が正常であった。

 以上の所見から原因としてウイルスの関与が強く推測される。 しかし、従来日本で報告されたウイルス性の中枢神経系先天異常のいずれにも完全には相当しない。現在アイノウイルスの関与が強く疑われているが、今後の解明がまたれる。

1994―95年に観察された中枢神経系先天異常子牛27例の疫学的解折
O浜名克己、上村俊一(鹿児島大・農)

 鹿児島県では、1972年以降1992年春までの20年間に、計7回の中規模以上の中枢神経系先天異常の流行がくりかえされてきたが、その後の流行はない。その中で1994年から95年夏にかけてやや特徴的な発生がみられた。
 期間中に収集された先天異常子牛196例のうち、剖検による中枢神経系の異常は27例(13.8%)であった。その内訳は側脳室拡張16例(うち2例は小脳形成不全と合併)、水無脳症7例、小脳形成不全6例で、のべ29例となった。
牛の品種は黒毛和種25例、ホルスタイン種1例、F1種1例であった。
 側脳室拡張子牛は雄8例、雌8例で、母牛産次は初産から10産に、出生月は1993年12月から1995年6月に広く分布した。剖検で、2例は小脳形成不全、3例は無眼球と無尾、1例は関節湾曲症、1例は潜在精巣を合併していた。
 水無脳症の発生は特徴的で、雄5例、雌2例となり、母牛産次は2産2例、3産5例に集中していた。出生月も1995年5月4例、6月3例に集中していた。全例ともアカバネワクチンが接種されておらず、合併異常はなかった。
 小脳形成不全は雄l例、雌5例で、出生月は冬期に集中していた。母牛産次は95年
1月生まれの3例は初産と2産であったが、他は高産次であった。2例が側脳室拡張を、1例が無眼球と無尾、心奇形を合併していた。
 以上の結果、側脳室拡張には様々な要因が考えられ、水無脳症にはアカバネウイルスの関与が、小脳形成不全の一部にウイルスの関与が推測された。
 Epidemiology of 27 calves with congenital central nervous
 Defects observed in 1994-95.
    K. Hamana and S. Kamimura (Kagoshima University)
〒890 鹿児島市郡元1一21―24
   鹿 児 島 大 学 農 学 部     TEL 0992 - 85‐8736
             浜 名 克 己        FAX 0992 - 85‐8736