第79回鹿児島県家畜臨床研究会

SUMMARY

平成7年2月25・26日 (於:ホテルのき)

−CONTENTS−

●セミナーI

 @腸内フローラと免疫システム      カルチノミン(研)  河西 了吾

 A平成6年度大動物剖検例        鹿児島大学      安田 宜紘

●体験発表

@黒毛和種のプロファイルテストの活用法について  NOSAI肝属 竹之下浩和

ANOSAI川薩における授精卵移植の取り組み   NOSAI川薩 柿内 健志

B平成6年度中堅獣医師講習の報告         NOSAI始良 東鶴  努

C胎膜水腫と思つたのに              NOSAI出水 榎元 勝治

D衛生的乳質改善と乳房炎対策           NOSAI伊佐 佐藤 秀幸

●セミナーU

@牛の繁殖における黄体ホルモン測定法の      デンカ製薬   渡辺  有

 臨床応用

A先天異常子牛について              鹿児島大学   浜名 克巳

BPGの子宮内膜炎における治療効果について     鹿児島大学   上村 俊一

 PG類縁体の投与における卵巣の反応の違いについて

 分娩後の卵巣の修復状況について

Cクリプトスポリジウムとコクシジウム病の治療剤について    第一製薬    中村 好一

 

セミナーT

腸内フローラと免疫システム

(子牛の下痢予防を中心として)

                 カルチノミン(研) 河西 了吾

 肉牛・酪農界を通じ多発する子牛下痢症は、病因と病態が複雑多岐にわたるため、

確実な予防〜治療法は現存しない。多くの症例で次の事項が複雑に交錯して発症している。

1:子牛・母牛側の生体メカニズムと深く関連する初乳問題

2:初生子年免疫機能の程度とその発達程度

3:病原微生物および腐敗砥などの消化管侵入増殖の程度

4:子牛の消化管耐容量および消化力と母乳・飼料摂取量の関係

5:初生子牛の消化管機能・栄養代謝などの生理的・日齢的変勤

6:不潔牛床、寒暖、乾湿、群飼・過密などの環境性のストレス

7:腸内フローラの日・月齢変動と発達の様相

 子牛白身は、免疫系で消化管の恒常性が保たれている。この破綻が下痢という生体防御反応の症状に現れたと解釈されよう。生後24時聞には多数・多種の細菌が糞便から検出される実態から腸内フローラと消化管免疫機構の間には密接不離の関係が存在しよう。これらの細菌が抗原刺激となり、子牛免疫磯能が発達していく。

 

0〜30日齢子牛の免疫機構

1:出生直後の初乳未吸乳子牛の免疫機能

IgM、IgGレベルは成牛の200〜300分の1程度。抗体産生能力は2週齢

  まで30日齢時能力に比べかなり弱い。T細胞の能力も低い。

2:初生時から腸管能動免疫機構は発達し続ける。

  子牛の腸管能動免疫は腸内フローラの刺激により発達する。

  したがって腸内フローラの正常化がきわめて重要である。

3:免疫系のスイッチ・オンはマクロファージによるが機能は未熟

  抗体産生までに約2週間程度の期間を必要とする。

 

腸内細菌と乳酸菌

1:腸内細菌の形成

  宿主と細菌の長い進化の課程で腸内環境に順応して、共生または拮抗しながら増殖で きるものが定住菌、その他のものは排除される通過菌である。乳酸菌の生菌であっても条件に適合しないものは、全て通過菌として排除される。宿主固有の腸内フローラが形成され、維持されるための分別条件は岐厳そのものといえる。

2:乳酸菌の効用

1) 腸内環境と腸運動の恒常性維持、有害物質産生の抑制。

2) 免疫増強作用。

3) 外来及び腸内フローラ中の病原菌〜有害菌の増殖抑制。

4) 腸内にふつうにみられる弱い病原菌による日和見感染の抑止。

5) 環境及び腸内に常在する腐敗菌の抑制。

6) ニトロソアミンなどの解毒。

7) ビタミン(B群など)の産生。

3:乳酸菌の利用

 子牛・子豚の幼若期に多発し、著しい発育阻害、脂肪などの甚大な被害をおよぼす下痢と呼吸器病に対し、抗菌・抗生物質とは異なり、宿主側の免疫系(腸管・肺マクロファージ活性化など)腸内環境の是正と恒常性の維持などを重視する新しい治療法と予防法が、新たな分野として関心が寄せられている。

 

カルバック製品の有効性

1:カルバックはマクロファージを活性化する

2:カルバック製品の消化器(胃腸)への影響と効果

  カルバック製品は乳酸菌の培養代謝物質と死菌・菌体を成分とするため、細菌発育因子のビタミンB群、多糖類、アミノ酸の他に未知成分、(UGF様物質)を含有する。

1)ルーメン内総菌数2倍・繊維分解菌数4倍噌加

2)ルーメン内原虫増加

3)給与後1〜2時間でルーメン内発酵状況に顕著な有意差あり

4)小腸における著明な乳酸菌数増加と病原性大腸菌の空腸内定着阻止と、病原性E.coli

を含む大腸菌の顕著な減少

5)哺乳期、育成期のいずれにおいても、添加投与によって下痢の発生頭数、発生頻度

 は減少し、下痢の持続時間も短縮

6)消化率、飼料効率、増体率の上昇

3:ルーメンバックは体細胞数を減らす

 乳器粘膜固有層に分布する粘膜リンパ組織(MALT)にも影響し、マクロファージの活性化が計られ、乳房局所免疫機能が作動した結果によるものと考えられる。

 

体験発表

黒毛和牛のプロファイルテストの活用法について

                      NOSAI肝属 竹之下 浩和

 管内3農家の生産牛(30頭、24頭、16頭)を1ヵ月から1.5ヶ月の範囲で2回採血して各血液検査を行ってみました。2農家では生年月日と分娩日により分娩後日齢、年齢ごとにグループ別に各項目を比較してみました。

1、平均でみると一見してCa値が低く、P値とのバランスがとれていない。(年齢による差も少なく若いうちからのCa不足は老齢になってからの腰萎、他運動器病と関連はないのか)

2、RBC、Ht、TPおよびBUNなど栄養状態を示す数字が農家の飼養管理に合わ

 せて変化がみられる。

3、乳牛同様分娩後早いものはRBCおよびHtなど低い傾向がみられ、新生子牛が

 出生後貧血防止に鉄剤の投与が試みられているが親牛でも応用できるのではないか。

 

NOSAI川薩における授精卵移植の取り組み

NOSAI川薩  柿内 健志

 本組合も県下の先進組合に数年の遅れを取りましたが、酪農家の経営安定と和牛農家の優良子牛の生産を目的に、平成3年度より先進地研修等を行い、準備に入り、平成5年8月に第1回の採卵を行いました。

1、 採卵状況

採卵頭数 採卵個数 正常卵数
45(11.1) 34(8.5)
16 265(16.6) 203(12.7)
40(10.0) 29(7.3)
24 350(14.6) 266(11.1)

2、移植状況


新鮮卵1個 新鮮卵2個 凍結卵1個 凍結卵2個 合 計
2/6
33.3%
3/11
27.2%
2/1
50.0%
0/0
0%
6/19
31.6%
17/49
34.7%
9/25
36%
9/21
42.9%
4/4
100%
39/99
39.4%
0/10 0/2 0/5 0/0 0/17
19/58
32.8%
12/37
32.4%
10/28
43.5%
4/4
100%
45/122
36.9%

凍結はほとんどがステップワイズ法ですが、凍結1個の5頭はダイレクト法です。

3、品種別移植状況

品  種 移植頭数 受胎頭数 不明頭数 受胎率
ホルスタイン 83 33 41.8%
F  1 40%
黒 毛 和 牛 46 10 26.3%

4、種雄牛別移植状況


移植頭数 受胎頭数 不明頭数 受胎率
神 高 福 70 28 44.4%
忠  福 45 10 24.4%
第五隼福 57.1%
紋 次 郎 42.9%
第20平茂 0%

 

5、分娩状況

 平成6年5月に第1子(雌)が誕生し、現在まで20組26頭がうまれましたが、このうち4組8頭は双胎のためか、妊娠7ヶ月以降の死流産でした。雌雄の内訳は雌9頭、雄17頭でした。

 

6、今後の課題

1)受胎率の目標(新鮮卵40%、凍結卵60%)を達成すること。

2)2卵移植した(双胎)の死流産の問題。

 

平成6年度中堅獣医師講習の報告

                      NOSAI始良 東鶴 努

 平成6年10月11〜12日、NOSAI山形研修センターにおいて行われた。プロダクションメディスンとプロファイルテストに関しての講演が多かった。酪農学園大の永幡教授の牛の感染症と白血球機能についてでは、乳牛のBLADのことを主に講演され種雄牛も特定されているので2〜3年のうちになくなるだろうということだった。日本獣医畜産大学の左向先生の牛のプロファイルテストの活用法では、BCS、NEFA、コレステロール、BUNおよびアルブミンの5項目にしぼれば良いということだった。日本獣医畜産大学の鈴木先生の遺伝の講義では、遺伝病として、皮膚脆弱症、拡張型心筋症およびBLADはあきらかであり、さらに卵胞嚢腫、脂肪壊死症も遺伝が関与しているということだった。

 

胎膜水腫と思ったのに

                      NOSAI出水 榎本 勝治

症例:6産目、妊娠8ヶ月目、血統良(20平茂)

稟告:3日前から食欲が無くなってきた。水は飲む。

 

第1診:直腸温(39.0度)、脱水(―)、第−胃運動(―)、胃内金属反応(+)

    治療「プリンペラン、マグネット」

第2診:食欲改善無し。この時、左右腹部の膨満に気ずく(頭に胎膜水腫が浮かぶ)。

    直腸検査で第一胃らしい物に触れない(フワソワした感じ→ますます胎膜水腫

    が頭をよぎる)。また、糞の状態は若干消化不良であった。その他の症状は昨

    日と同じ。また粗飼料の短切り(約1.5cm)に気づき、改善を指導する。

治療:「イプコン、MgSO、リンゲル1L、50%ブドウ糖500ml、レバギニン100ml」

第4診:改善は認められず、逆に状態は悪くなる(飲水減少、排糞減少)。

    このままではいけないと思い、分娩誘起を行う。(私の診断:胎膜水腫)

    血液検査:RBC(904万}、WHC(8千)、Ht(44%)、TP(9.8)

    γ‐GTP(37IU/l)、GOT(106KU)、Ca(1O.7mg/dl)

CK(110IU/l)

    治療:「リンゲル2L、5%ブドウ糖500ml、25%ブドウ糖500ml

        レバギニン100ml、パンカル10ml、プロナルゴンF、

        エストリオール」

第6診:分娩兆候は見られず、帝王切開を行い胃内容が水様性であることに気付き第一

    胃切開を行い内容物を排除する。右腹部の切開も考えたが、両腹部の膨満が無

    くなったので様子を見ることにした。

    その他の治療は、補液と抗生物質を投与する。

第7診目に水を与えたら飲んだので、第8診めから粗飼料を与えたが、食わない。第10診目まで補液と抗生物質の投与しても症状の改善(第一胃運動廃絶、排糞無し等)が見られず、再び腹部が若干膨満してきたような気がする。翌日、右腹部の切開を予定していたが、予定日に死亡。

剖検結果:第四胃食滞

 

衛生改善と乳房炎対策

NOSAI伊佐 佐藤 秀幸

 13戸の農家を対象として1)細菌数および体細胞数の動向と乳房炎の聞き取り調査、2)バルク乳の生菌数のカウントと菌の培養、搾乳衛生と搾乳管理のモニター、3)バルク乳検査で異常のあった農家は個体乳または分房乳をPLテストで検査し、二等乳については細菌分離を行い乳房炎起縁菌の検出と抗生物質感受性テストより牛郡の乳房炎レベルに合わせた対策、4)2戸農家を選定し、定期的に月1回細菌検査により防除対策の効果を体細胞数生菌数の水位の観察を行った。

 

セミナーT

平成6年度大動物剖検例

鹿児島大学 安田 宣紘


 動物種         臨床診断名        主要所見


黒毛和牛 (去、4m)  起立不能      左中足骨末端皮下小膿瘍多発

黒毛和牛 (雌、11y) 下痢、誤嚥性肺炎 誤嚥性肺炎、カタール性腸炎

黒毛和牛 (雌、6y)  分娩12日後急死 器官出血、カタール性腸炎、

                       膵蛭(200槽)

ホルスタイン牛 (雌、5y)  成牛型白血病   多発性リンパ肉腫、脾腫大、肝転移

ホルスタイン牛 (雌、4m)  慢性鼓脹症    腹膜炎

黒毛和牛 (雌、7y)  腰部火傷     慢性化膿性炎を尾もなった偏平上皮癌

             偏平上皮癌

黒毛和牛 (雄、70d) 下痢症      第一胃食滞(水分欠乏内容の粘膜固着)

ホルスタイン牛 (雌、7y)  乳房炎      慢性肉芽腫性乳房炎、肺炎、腹膜炎

ホルスタイン牛 (雌、4y)  成牛型白血病   多発性リンパ肉腫

                      (骨盤腔内リンパ腫大顕著)

黒毛和牛 (雌、13y) 前肢関節炎    右中手骨部蜂巣織炎、直腸破裂

ホルスタイン牛 (雌、6y)  第4胃変位    第4胃左方変位

             鼓脹症      排うっ血、出血

黒毛和牛 (雌、4y)  関節炎、下痢   カタール性腸炎、肝蛭(32槽)

ホルスタイン牛 (雌、3m)  肩甲部筋発育不良 膵帯部膿瘍、右室拡張、多発性肺膿瘍

黒毛和牛 (雄、21m) 膿胸       創傷性化膿性胸膜炎、心外膜炎

ホルスタイン牛 (雌、11y) 成牛型白血病   多発性リンパ肉腫、肝蛭、牛鉱虫寄生

黒毛和牛 (雌、11y) 中皮腫      悪性中皮腫、脳内血腫、

                      慢性肝蛭症(20槽)

ホルスタイン牛 (雌、8y)  成牛型白血病   多発性リンパ肉腫(脾腫大)

黒毛和牛 (雄、17d) 無眼症(先天性奇形) 眼球及び視神経形成不全

黒毛和牛 (雌、8m)  ヘモフィルス性脳炎 腸管内線虫多数寄生

トカラウマ   (雌、4y)  急死       慢性腸炎(寄生虫性)

黒毛和牛 (雄、13y) 脂肪壊死症・起立不能 多発性脂肪壊死症、間質性腎炎

ホルスタイン牛 (雌、4y)  白血病      多発性リンパ肉腫、肺炎、胸膜炎

黒毛和牛 (雌、35d) 慢性下痢症・神経症状 カタール性腸炎、肺水腫

黒毛和牛 (雌、3y)  心膜炎      脳水腫、化膿性肺炎

黒毛和牛 (雌、8y)  生殖器癒着    子宮周囲炎

ホルスタイン牛 (雌、1y)  成牛型白血病   第1胃創傷性胃炎、リンパ肉腫

黒毛和牛 (去、8y)  慢性下痢症・角部炎症 脳軟化(左大脳水腫)

黒毛和牛 (雌、4y)  ケトン尿症    腹膜炎、肺膿瘍、創傷性胃炎、

                      横隔膜ヘルニア

黒毛和牛 (雌、?)   破傷風      子宮内膜炎、肺炎

ホルスタインF1 (雌、6m)  起立不能、脊髄湾曲 脊髄断裂(T12、13部)

ホルスタイン牛 (雌、3y)  4胃変位     第4胃潰瘍および左方変位

黒毛和牛 (雄、5m)  起立不能、震振  セタリア寄生性髄膜炎

黒毛和牛 (雄、4m)  右後肢運動異常  著変なし

黒毛和牛 (雄、2m)  慢性下痢     肋骨骨折(R6本、L3本)

             起立不能     左距骨骨頭部破裂骨折

黒毛和牛 (去、1y)  左後肢足関節炎  左足関節部慢性関節炎

黒毛和牛 (雌、1y)  肺炎       間質性肺気腫、頸部器官周囲気腫

ホルスタイン牛 (雌、7y)  心内膜炎     多発性リンパ肉腫

黒毛和牛 (雌、16y) 成牛型白血病   多発性リンパ肉腫

黒毛和牛 (雌、2y)  脂肪腫      脂肪壊死、出血性直腸炎

ホルスタイン牛 (雌、5y)  成牛型白血病   多発性リンパ肉腫

黒毛和牛 (雌、16d) ケトアシドーシス 第4胃穿孔性潰瘍、腹膜炎

黒毛和牛 (雌、10m) 寄生虫症     牛鉱虫、膵蛭、胃虫寄生

ホルスタイン牛 (雌、3y)  成牛型白血病   多発性リンパ肉腫

 

牛の繁殖における黄体ホルモン測定法の臨床応用

                   デンカ製薬株式会社  渡辺先生

1.黄体ホルモン(プロゲステロン,P)測定の意義

  l)Pは性周期の各期や妊娠期において最も顕著に変動するホルモンである。

  2)他のホルモンに比べて測定が比較的容易である。

  3)卵巣疾患の診断と治療効果の判定を、従来の直腸法にオブチェックにうよる

    P測定法を併用すると、より正確に診断することができる。

  4)牛において、適切な時期にP測定し、その結果に基づいた対応を行うと、空胎

    期間の短縮が期待できる。(分娩後の卵巣機能回復状態の検査、発情チェック

    不受胎牛早期摘発)。

2.プロゲステロン測定用EITキットの種類

  ・オブチェック牛乳用EITキット

  ・オブチェック血液用EITキット

  ・オブチェックカウサイド・W

卵巣疾患の診断

直腸検査等の臨床検査と共にPテストを7〜10日間隔で行う。

卵巣疾患          初診時P値      再診時P値

卵胞嚢腫            低    →    低

黄体嚢腫            高    →    高

黄体遺残            高    →    高

卵巣静止(無発情)       低    →    低

鈍性発情(発情見逃し)     低    →    高

             又は 高    →    低

卵巣疾患における治療効果の判定

直腸検査等の臨床検査と共にPテストを下記の間隔で行う。

       治療時   再診時       判定

黄体嚢腫    低    高(約10日後)  有効(卵胞嚢腫黄体化)

             低(約10日後)  無効(卵胞嚢腫存続)

黄体嚢腫    高    低(約3〜5日後) 有効(黄体嚢腫退行)

             高(約3〜5日後) 無効(黄体嚢腫存続)

卵巣静止    低    高(約10日)   有効(排卵あり)

             低(10日後)   無効(排卵なし)

酪農現場における黄体ホルモン測定め応用

 プロゲステロン(P)の迅速測定EIAキットのカウサイド・Wは、牛乳中Pを約10分で定性測定できるので、酪農現状において簡単に用いることができた。

 その応用は、発情鑑定において授精の適否の判定と誤った授精の回避に役立ち、ひいては受胎率の向上につながり、さらに授精後19―24日の早期妊娠診断によって不受胎牛の早期摘発を行うことは、授精回数の減少、空胎日数の短縮等、繁殖成績全般の向上に寄与するものとかんがえられた。

 

先天異常子牛について

                  鹿児島大学  浜名 克己

無眼球

発育不良 つま先立ち 股関節形成不全

左大腿骨骨折内固定したがその後発育不良、双子でフリーマーチン

背湾姿勢をとる牛

ヘルニア

股関節の脱臼?大腿骨遠位端の骨折

中枢神経異常、起立不能、後弓反張、遊泳運動

右眼球の陥没、小脳形成不全

後弓反張し起立不能、小脳形成不全

起立不能、股関節に膿瘍、ロープを飲みこみ前胃形成不全

四肢の変形、頸骨が短く捻れる

ドーミング、自力で起立困難

斜頸、事故による後天性疾患

重複奇形 (1頭、2脊柱、1胸、8肢)希でめずらし奇形

 

PGの子宮内膜炎における治療効果について

     鹿児島大学  上村 俊一

材料と方法:子宮内膜炎と診断された症例牛におけるPG投与後の治療効果を見るため

      PG投与時に直腸検査、採血、頸管粘液の採取、投与後3〜5日目に直腸

      検査と採血、投与後2週間目に直腸検査、採血、頸管粘液の採取を行い

      P値の測定と頸管粘液の好中球の有無による効果判定を行った。

結果:・黄体のあるもの(P値の高いもの)へのPG投与により、頸管粘液の白血球数

    の減少が認められる例が多く存在した。

  • 黄体のないもの(P値の低いもの)への投与でも白血球数の減少が認められることから、PG投与による子宮内膜炎の治療効果は、黄体の有無による効果の違いは一概にあるとはいいがたく、今後も検討していく必要があると考えられた。

 

  PGの類縁体の投与による卵巣の反応の違いについて

 

PG投与後、牛によって発情発現に違いがみられる。これはPG投与時に卵巣に存在する卵胞の状態が影響しているものと思われ、PG投与後の卵巣の動きを観察した。

材料と方法:発情後8〜17日のものに対してPG投与。6時間おきににエコー、採血

      P値測定

まとめ:・PG投与後血中P値は急速に低下し、12時間で黄体の昨日はなくなるが、

     卵巣には黄体は存在する

 ・PG投与時のDF(Dominant Follicle)がそのまま発育すると発情発現は

  早いが、PG投与時のDFが退行し、他の小卵胞が発育しDFが交代すると

  発情発現が遅くなる。このためPG投与後の発情発現に差が認められる。

 

分娩後の卵巣の修復状況について

材料と方法: 1)分娩後6日目から週2回直検とエコーで最大卵胞の動きを観察

       2)分娩後なんらかの疾患で淘汰された牛の卵巣をスライスして観察

まとめ:1)初回DFの形成は6〜10日目から認められる。初回DFの形成は左右の

      卵巣で差は認めれられないが、前回の妊角と初回DFの形成をみると同側

      では少なく、反対側に多く、排卵も同側では悪い。

    2)分娩後起立不能頭の何等かの疾患に罹患し、ストレスをうけた牛の卵巣に

      は4mm以下の小卵胞が多数存在するがDFの形成が認められない。

 

クリプトスポリジウムとコクンジウム病の治療剤について

                     第一製薬(株)  中村 好一

クリプトスポリジウム症の患者に対する治療ならびに予防


   患者・患者の状況            治療ならびに予防法


  • AIDS患者に           スピラマイシン投与により下痢の改善

     クリプトスポリジウムが混合感染例            オーシストの排出が抑制

2、子羊のクリプトシポリジウム症(下痢)    下痢が治癒 スルファジミジン投与

3、子牛のクリプトスポリジウム症 ラサロジダ(ポリエーテル系抗生剤)0.3g/牛/日の

                              投与で予防的効果


十分な予防ならびに治療効果が得られていない。(楢崎)

 

コクシジウム秒なたびにトキソプラズマ秒に関する薬剤(1)


 薬剤名(原末)  効能・効果         使用法


スルファジメトキシン注 牛コクシジウム病   体重1kg当たりSDMXとして、初日は下記の

(SDMX) 豚コクシジウム病   量を、2日目以降はその半量を1日一回注射する

                  牛:20〜40mg 静脈内、筋肉内注射

                  豚:20〜100mg 皮下、筋肉内注射


スルファジメトキシン末 豚トキソプラズマ病  体重1kg当たりSMMXとして下記の量を皮下

                  筋肉内、静脈内又は腹腔内に注射する

                  豚:40〜100mg


スルファジメトキシン 豚トキソプラズマ病 飼料1t当たりSMDXとして下記の量を均一に

ナトリウム末 鶏コクシジウム病   混ぜて経口投与する

(SDMX)             豚 : 700〜2000g

鶏 : 500〜1000g


スルファメトキシゾール    鶏コクシジウム病 飼料1t当たりSMXとして下記の量を均一に

    ナトリウム末           混ぜて経口投与する

(SMX) 鶏 : 1000〜2000g

飲水1L当たりSMX-ナトリウムとして下記の量を

均一に溶かし経口投与する

鶏 : 500〜1000mg


スルファモノメトキシン末    牛コクシジウム病 通常1日体重1kg当たりSMMXとして下記

 (SMMX)    豚トキソプラズマ病 の量を飼料に均一に混ぜて経口投与する

スルファモノメトキシン 鶏コクシジウム病 牛 : 30〜60mg

ナトリウム末 豚 : 20〜60mg

(SMMX−Na)          飼料1t当たりSMMXとして下記の量を均一

                  に混ぜて経口投与する

                  豚 : 300〜2000mg

鶏 : 500〜1000mg