『宮崎口蹄疫〜現場からの疫学検証〜』開業  池亀康雄

 2010年発生の口蹄疫では初発が水牛農場であると国が断定したが、現場の状況的には納得できない。

 牛も豚も、ワクチン接種をしたものの7割はすでに口蹄疫ウイルスに感染していたのではないかと考えている。

 あぐら第6農場は約300頭を飼育しており、最終的には口蹄疫は未発生としてワクチン接種後殺処分された。しかし、本当は早期に感染しており、すでに免疫を持っていたために他の農場で症状が出ているときには無症状だったのではないかと思う。口蹄疫発生と発表された2か月前に口蹄疫を疑う症状が出ていたという噂も耳にした。また、第4、第6あぐら農場での飼料の行き来は高鍋から来て同じトラックで共有しているために、さらに感染を拡大させたと考えられる。

 この噂を県に確認したが否定された。しかし、市民オンブズマンが公文書開示請求を行ったことで該当する書類が発見された。それによると、2か月前に流涎と口腔内びらんで家保が立ち入り検査をしていたらしい。そのときには蹄に病変がないということで、その場で家畜防疫員により口蹄疫は否定されていた。その後、口蹄疫発生報告翌日にエンテロウイルス陽性と言う報告書が提出されていた。エンテロウイルスと口蹄疫ウイルスによる症状は非常に類似している。これらの事実はH農場として、週刊誌等にも掲載された。

 再検査の依頼を家保に依頼したが却下された。このように、一度口蹄疫陰性とされたものを後に蒸し返すことは不可能である。225日にH農場の血液検査をしていればこのような疑いを抱かなくて済んだのに、と残念である。

 このとき、獣医師が口蹄疫の疑いありとして届けようとしたが農場の幹部に止められたという噂がある。獣医師が口蹄疫の報告をするのにはとても勇気がいるものであるから残念である。

 殺処分にはあれだけ多くの獣医師が関わったにもかかわらず、殺処分牛の血液サンプルを取っていない。サンプルを取っていれば、ワクチン接種で処分された牛が実際はどうであったのかが判明したはずだ。これらのずさんな対応は、国や県による隠ぺい対策ではないかと思う。

 OIEの報告によると、口蹄疫の感染原因は人がウイルスを持ちこむことによるものが一番多いようである。日本にとって、口蹄疫に感染することはえ国家存亡にかかわる大変重要なことである。日本は幸い島国であるから、水際で防ぐのが有効だと思われる。

 口蹄疫発生後、国により農家に対する消毒マニュアルが配布された。その内容は、農家に対する一方的責任の押し付けのように感じられる。

 水牛農場の感染原因を考えたところ、いくつかの可能性が考えられる。水牛農場のおがくず置き場に感染源となるものが上付けられたのではないかということ、とうもろこし飼料の運搬時に他の農場と共有していたトラックによるのではないかということ、もっと早くに隣接農場が感染したのではないかということなどである。また、水牛農場の近くに死んだ牛の埋却の報告もあった。目線を変えて考えることも必要である。

 口蹄疫ウイルスは次々に変異を起こして、農場間でも塩基配列が変更し違う形になるという。農場から農場に移動する際変化する塩基は平均1塩基であるそうだ。そのため、塩基配列検証で感染ルートが分かると言われており、イギリスではこれで感染源を発見した。しかし、日本ではこの検証を行っておらず、その原因は国による隠ぺい対策であると考えられる。そのため、国際間の公平な査察を受け入れるべきだと思う。この問題は個人では太刀打ちできないことである。

質問

Q.市民オンブズマンを通さないと情報が出てこないということか?

A.県自体は隠蔽の事実はないと回答している。しかし公務員は内部告発の仕方を知らず、責任がないと考えているのではないかと思う。自分たちの選択が国に被害を与えているという自覚がないのではないか。それに対し市民オンブズマンは正義感が強く、熱い信念を持った人たちである。今回の情報はすべて市民オンブズマンによるものである。

膨大な量の情報の中から見つかったのはH牧場に関しての1件だけであり、他の農場での報告が消されているように感じた。

あぐらの専属獣医師を以前から怪しいと思っていたが、畜産農家によって訴えられており受理された。この獣医師に頼まれて地元の民間獣医師があぐらの農場へ入っていた、ということで聞き取り調査があった。

国の発表では水牛牧場から爆心地へ運ばれたということだったが、別のところが先に感染しておりそこから感染した可能性もあるのではないか。前年12月には川南に口蹄疫ウイルスが入っていたのではないかと考えている。根拠として、その秋11月に中国人研究生が「これで日本に牛はいなくなる」と話していたという噂、あぐら農場が生ワクチンを使っているという噂を耳にしたからである。また、テロの可能性があるのだが、と呼び出されたこともある。これらの話をもう一度聞かせてくれと言っても誰も教えてくれない。これは、中国の生ワクチンを使ったと報告すると日本が清浄国を取り戻せないため、官僚もそう判断して助言しているのだと思われる。

Q.国は発表していないが、12年前の口蹄疫発生は生ワクチンが原因なのか?また、今回の経路はどうか?

A.今回は、第4あぐら農場が生ワクチンを使ったと思う。

12年前は、輸入生ワクチンが原因であるとすれば日本各地に発生するはずであるから、確かなことは分からない。しかし、OIE調査の過去120年の口蹄疫原因によると、2001年の発生は中国料理店が使用していた口蹄疫肉の残飯を、十分煮沸消毒せずに豚に与えたことによるとされている。

口蹄疫の初発がどこか見つけるのは大変である。しかし塩基配列の検査をすれば感染した順番まで推定できると考えられている。それにもかかわらず国はわざと調査せず、マーカーワクチンを隠して殺処分を行った。都合の悪いことは隠す、という姿勢は原発事故に対する姿勢と同じである。また、小沢一郎の実の妹があぐら牧場の理事の一人であり、旧中曽根派の官僚はあぐら牧場と密接なつながりを持っていることが知られていることからも、国家とあぐら牧場との強い癒着が考えられる。

Q.殺すワクチンから生かすワクチンにしようという考えは、国は受け入れる姿勢か?

A.今のところその姿勢はないと思われる。その主張をしている先生が宮崎大学のフォーラムに来る予定だったが急に来られなくなってしまった。体調不良と言われていたが、骨化に操作されているのではと思う。

今の世の中では獣医師がこういった主張をすると無理に押しつぶされてしまうと思う。非常に勇気のいることである。

Q.清浄国でなくなってしまうからワクチンは使わないのか?

A.ワクチンを使ってしまうと最低6カ月全頭抗体検査をしなくてはならず、大変だから使わなかったのではないか。

国や官僚は早く清浄国に戻すことこそが国益と思い込んでおり、とんでもない間違いだ。

Q.家保を通じての農家への防疫マニュアルは、国が無理やり押し付けたという印象を受けたのだが?感染経路の把握もしていないのに、ものすごく面倒くさいマニュアルではないか?

A.行政は責任を取らず、全て農家に押し付けるというマニュアルだった。農家は、口蹄疫が発生しているかに関わらず20日ごとに定期消毒を行わなければならないという決まりである。実際は口蹄疫により消毒薬を作りすぎて在庫が余っており、これに費用がかかる状態である。

ヨーロッパでは、口蹄疫が治っている牛は農家の判断で殺処分するか判断できるそうである。豚の場合は殺処分した方があとで楽だが、牛は1頭ずつ治療できるし放っておいても治癒する。豚も密飼いしなければ被害は少ないと思われる。

Q.法を犯してまで生き延びた種牛は今どうしているか?

A.現存している。いろいろな考え方があるが、あのような場合例外を作ると混乱するだけだと思う。肉牛事業組合は訴える準備をしている。

Q.受精卵を購入し、セリの前に検査したら宮崎の生き残り組の精液を使っていることが判明した。しかもその精液は口蹄疫のあとに採取したものだと考えられている。どさくさに紛れて分からなければ流す、という感じだったのか?

A.イギリスで試験をした結果、感染して3日経過すると精液には感染力がなくなるとされているから、そこまで大騒ぎすることではないのかもしれない。そのように本でも記述がある。その本の著者の獣医師はとても芯の強い方である。獣医師は芯が強くなければ大変なことになる。

あぐら牧場の獣医師も、黙れと言われれば黙ってしまった。証言によると、獣医師が口蹄疫に似ているから届けないと、とあぐらの責任者に言ったが黙っていろと言われたらしい。

獣医師は自分をしっかりもっていないと犯罪に巻き込まれてしまう。宮崎大学卒の者は口蹄疫発生に関係しているのが多すぎる。大学で何を教えているのか。これは大学の責任であると思う。芯のしっかりした根性のある獣医師を養成してもらいたい。

Q.今回の口蹄疫発生の原因は中国人が持ち込んだという考え?動機が分からないが。

A.中国ではワクチンが簡単に手に入る状況である。素人からしたらワクチンは特効薬であると思っているから、素人が密輸入のものを買ったのではないかと思う。

Q.それならばワクチンでこのような症状が出た理由は何か?

A.はっきりとは分からない。

まずあぐら牧場で発生して、隠ぺいしようとしたのではないか。あぐら牧場では獣医師が治療せず、従業員が治療していたらしい。

何人かの獣医師に、口蹄疫発生前にあぐら牧場の専属獣医師になってくれという打診があったが、皆あぐら牧場に良いイメージがなかったために断ったらしい。3月で獣医師が退職することになったからという話で、治療しなくてもよいから帳簿を見るだけでよいと言われた。普通の獣医では考えられないことである。

口蹄疫の疑いありで家保に連絡する場合はまず農家に正直に伝えるのが本当であり、それが農家との信頼関係を保つために必要である。

中西先生 村山動物クリニック

36日口蹄疫の病性鑑定(否定)依頼について』

1ヶ月齢の子牛において、舌の後ろが剥がれて潰瘍があり、鼻にもびらんがあるのを発見した。蹄の異常はなく、ミルクも良く飲んで元気であった。体温は384分であった。過去3日間の治療はなかった。また、他の子牛に異常はなかった。

マイナスのことをいろいろ考えてその日は眠れず、口蹄疫の症状を確認した。

翌朝、口腔内の状態は前日と変化がなかったため、家保と県の畜産課に病性鑑定依頼の連絡をした。その後口蹄疫を否定する旨の連絡が県から来た。その際牛の採材は何もしてもらっておらず、見た目だけでの否定であった。

連絡をする時に口蹄疫と言う言葉を出すだけでもひかれるため、とても勇気がいる。結果的には農家と仲良くなった。否定してもらうために依頼するのもありかもしれない。

質問

Q.家保には何が否定の判定材料になったか聞かれたか?

A.涎がなかったことと、熱がなかったこと、水泡だと思ったものは水泡でないと言われた。

Q.水泡やびらんの範囲が明瞭かどうかが一つの判断材料であるとセミナーで言われたが?

A.今回の宮崎の症状がそのまま出るとは限らない。

今回の症状は、めくれた場所が1個ずつ重なっているのはなかった。また、熱が半日や1日だけ出るというのはよくあり、発熱していると牛がぼーっとしている。

水泡が破けていないうちは痛くて餌が食べられないが、水泡が破けると餌を食べるようになる。

涎は大量に出る。納豆の糸のような地面まで切れない涎で、ビールのように細かくきれいな泡である。くちゃくちゃすると出るような泡である。

一番は獣医が自分で判断できることであると思う。

Q.子牛も写真のような症状が出るのか?

A.講習会では親しか写真を見ていない。

『去勢について』   開業  君付

・去勢の方法にはどんなものがあるか?

@ロープを枠場から胸と鼻にかけて固定し、左手で陰嚢を固定し、足を持ち上げる。

牛は触っている方を蹴るから左手で固定し、そのまま無麻酔で手術する。

20頭に1頭くらいは腰が抜けてしまう。

A鼻補ていと尻尾上げのみで無麻酔で手術を行う。

尻尾を横に上げるのではなく真上にギュッと上げて固定し、後ろ足が浮くぐらい持ち上げて上にくくりつける。

感染防止のために毛を焼いて消毒し、切る。

たまに結紮ミスでどこが出血か分からないことがあるが、これは止血が難しい。

12~3分で終了する。

抗生物質を根元に打つこともある。

B包丁で陰嚢の下部を袋ごと切り、出てきた2つの陰嚢をくるくると切り落とす。

この方法は出血が止まらないことがある。

輪ゴムを巻いておいておく。

C上から切り落とす。

D皮だけむいて切り落とす。

結紮した先が壊死する。

E麻酔をして、寝かせて行う。

F巻き尺の推定で体重をはかり、セラクタールを使用する。

陰嚢の上に注射すると、陰嚢を触っても動かなくなる。

危険ではない方法だが、7~8分はかかってしまう。

5~8か月齢くらいでもできる方法である。

・去勢の適当な時期はいつか?

@生まれた日に行うこともある。

A下痢がなくなったころに、生時体重、去勢時体重をはかって行う。4~5か月齢がよいと思われる。

B早く去勢してしまうと、体重が落ちてしまう。また尿管が未成熟なうちにやってしまうと尿石症になりやすい。

5か月以上でするとほとんど尿石症にならない。

C3か月ほどで行っても尿石症はなく、セリ市でもほとんど価格に変化がない。

D第1胃内の原虫数は6ヶ月くらいで大人と同じになるため、そのころに行うとストレスが少ないと思われる。

E都城では6カ月以上で去勢するとセリに出すとき雄の顔になるからよくないと言われている。

テストステロンは56カ月ほどから安定的に分泌されると言われており、これ以上の月例で去勢した場合、風貌や肉質が変わってしまう。

F肥育農家に3カ月で去勢するのは早すぎると言われたことがある。

少しは雄の部分を残してくれと言われた。肉質的にもその方が良いということである。

Gアメリカなどでは早くに去勢を行っている。

除角と一緒に行うことで、ストレスは一度にしようという考えのようである。

ストレスをかけると肉質が良くならない。

H去勢の時期が肉質に関係するのではなく、全てを決定しているのは管理であると農家に言われたことがある。

遅いよりは早い方がいいとも言われた。

・去勢は観血で行うか?

@非観血よりも観血の方がいいと言われた。

非観血では完全に座滅されているかよく分からない。

A最近は観血が増えてきていて、9割〜95分くらいは観血である。

ただ、時間がかかるのが問題である。

B観血にするとそれ相応にお金がかかるため、以前まで観血法で行っていた人に1回バルザックしたらこれからはそれでと言われた。

・精巣上体の靭帯のようなところはどうするか?

@たまに固いものがあるが切るか、引きちぎっている。

先端は痛がるため、基本的には精巣を2つ握って下の方を切っている。

右を切ると右足、左を切ると左足が動くため、両方まとめて切ると足はほとんど動かない。

・潜在精巣はどうしているか?

@精巣下降不全の理由は不明だが、世界的に左側の方が多いと言われている。

精巣が鼡径管のあたりまでは来ているが、袋の中には降りてこないことが多い。

精巣がお腹の中にあるため、体温で精子の産生は不可能だが、ライディッヒ細胞はほぼ正常に機能している。

しかし、潜在精巣は正常な精巣に比べると発育不全で、分泌レベルはゆっくりである。

潜在精巣を取らなければいずれはテストステロンが分泌されることが知られている。

A潜在精巣の確認は難しく、お腹をあけてみないとしっかりとは分からない。

直検ができる年齢になると確認するが、触れるところにあることが多い。

精巣を見つけられなかったものは発見不可能ということで出したが、扱いは雄であった。

B潜在精巣の個体にテストステロン濃度の測定を行ったところ、反応のいい牛と悪い牛がいる。

精巣を摘出しないと、将来的にテストステロンを分泌しないとは言えない。

C潜在精巣の牛を肥育したとき、テストステロンを分泌せずお腹の中にもなかったことがある。

この場合、精巣欠損症の可能性や精巣委縮の可能性がある。

D小さくてリンパだと思って取ったら精巣だったということもある。

E潜在精巣には腹腔内にあるものと、皮下にあるものがある。

探せる精巣は探すが、なければ仕方がない。

F精巣の一方はあり、一方がないものもある。

精巣らしきものはあるが、切って見ても何も出てこない場合があり、この場合は萎縮の可能性がある。

どこを探しても精巣が見つからないこともある。

・薬物の効き方について

@は時間が経つと効果がなくなるのか?

最初は効いていた量でも、最後の方になると効かなくなってしまう。

A色が変わるのは力価が落ちている証拠である。

エアが入る以上は化学変化の可能性があるのではないか。

薬瓶にも「開封後早めにお使いください」と表記してある。

B奇形児などの薬殺時にセラクタールを使用することがあるが、生まれたての子牛に3cc投与しても死亡しない。

C手荒く扱っているところの農場の牛はセラクタールの効きが悪く、おとなしく扱っているものはよく効くように感じる。

牛白血病について

・牛白血病は乳汁感染、垂直感染するか?

@乳汁感染、垂直感染はせず、媒体で血液に入らない限りは感染しないと思っていた。

受精卵も検査せずに移植しているが、感染するという記述のある文献を発見した。

初乳を介して移ったりもするのなら、凍結初乳も駄目なのではないか?

むしろ、乳を介して感染するのなら人は大丈夫か?殺菌して飲むから影響ないのだろうか。

A20数年前、殺菌せずに牛乳を飲んだことがあるが未だに大丈夫だから、関係ないだろう。

B胎盤感染は少ないと感じているが、文献によると垂直感染するらしい。

C垂直感染と言っても出血しないお産はないから、そこで感染の可能性があるのではないか。

臍帯が切れるために出血が起こる。

D臍帯は子牛についているから切れることはあまりないが、産道が切れている場合、母牛の血液に子牛が接触することはあり得る。

E昔は人も白血病の検査を行っていなかった。

白血病を発症した人で、医者に母乳から感染したのだと言われた人がいる。

F精液採取をどんどん行っているが、そこから発病することもあるのではないか。

白血病は淘汰がいいだろう。

宮崎は導入する牛を調査することで、白血病の牛を淘汰することができるのではないか。

G現在では、母牛に白血病陽性が出た場合、出来るだけ親と放して初乳を飲ませないという指導を行っている。

・初乳ゼロで子牛への影響はないか?

@初乳を飲ませなければIgGの獲得が不十分で、免疫不全で下痢や肺炎になって死亡するのではないかと思う。

Aヘッドスタートを2袋ほど与えると、死なせたものはほとんどいない。

B母乳を全くやれないのであれば、ヘッドスタートで2袋以上やるべきだ。

母乳の質が悪い時は補助的に1袋を与える。

ホエー製剤の方がグロブリンをしっかり含んでいると思う。

・黒毛和牛の白血病について

@10年くらい前には、和牛は50%くらい白血病をもっていた。

消費者の気持ちの問題で、発症しない限り問題ないのではないか。

A消費者側からすると、白血病の和牛の肉が出回っているというのが明らかになった場合問題が起こるだろう。

B白血病に関して取り上げられるようになったのはここ数年であるから、白血病について学会などでもちゃんと取り上げるべきだ。

『AMHによる顆粒膜細胞腫の診断』    宮大  北原


私どもの研究室についてですが上村先生が亡くなって一年経ちました。4月からは現在岩手大学にいらっしゃる大澤先生が着任されます。また皆さんに情報を発信していきたいと思います。

・顆粒膜細胞腫

卵巣腫瘍の中で発生頻度高い。全年齢、片側性。

腫瘍から出るホルモンが様々な症状を引き起こし、また罹患卵巣と逆の卵巣は委縮し、排卵しない。様々な疾患、たとえば併発卵巣炎、卵巣膿瘍や、卵巣傍の嚢胞との鑑別は、エコーだけでは判断しがたく、病理診断でないと難しい。

・抗ミューラー管ホルモン(AMH)による診断

AMHとは―――雄セルトリ細胞から分泌され、胎児期の性の分化において重要で、雌では顆粒層細胞から分泌卵胞成長の調節、卵胞動員の誘導に関わる

5症例について報告

うち一例は摘出後、AIして受胎。

各症例のエコー画像は典型的な画像(蜂の巣状構造)が得られず、判断が難しかったためAMHを測定。

正常な雌牛では0.2ng/mlだが、顆粒膜細胞腫の牛では20~150ng/mlと高い値を示した。そのほかのホルモンでは特に異常なし。

初診時の超音波画像、腫瘤は蜂の巣状で40mm、逆の卵巣は卵巣静止

1ヶ月後 腫瘤が大きく、液体の貯留110mm、はそのまま、子宮正常

2週間後、マス140mm、反対はそのまま、子宮正常

その後も右卵巣は大きくなり多くの液体が貯留、子宮に異常はなく、聖書の診断基準も満たす大きさとなった。

2週間後、腹腔鏡による異常卵巣摘出術、モニターで見ながら処置できる。主流はでかすぎるので結局いつもくらいには切る。

85病日、腹腔鏡による摘出手術を行った。このようにモニターを見ながら止血や切開を行い、主要組織をはがしていった。卵巣は大きすぎて結果的には手を入れて摘出した。、摘出した卵巣は15506g17.5mmで、液体が3mlほど貯留していた。

その後AIされ、受胎した。

病理検査では顆粒膜細胞腫ではなく巨大卵巣嚢腫と診断された。

AMHの測定結果では第40病日までは0.2ng/mlよりも高い値だったが、その後は減少した。途中で腫瘍化をやめて卵胞内膜がコラーゲンに置換されていったのだと思われる。

・今回手術に用いた腹腔鏡について

これは直腸検査の様子を腹腔鏡のカメラで撮影した映像で、このようにして触っているんだよ、ということを学生にも見せて実習などを行っている。

Q:ホルモンを検査する費用は?普段の診断ではむかない?

A:一検体2000~3000円で、1検体だけでは測定できないのである程度集まったところで測定する。宮崎大学でも測定可能だが、同じくらいの値段で外部に注文して測定できると思う。

Q:最初の大きさ(4cm程度)なら取り出せたのか?

A:取り出せたと思う。さらに、液体を吸引してしまえば、あの大きさでも摘出可能だった。

Q:あそこまで大きくなるまで引っ張った理由は?

A:われわれ術者や、NOSAIの先生、農家さんとの日程がなかなか合わなかった。

Q:最初に実質注射器で液を抜いたらどうなるのか?

A:腫瘍なので、腹腔内にもれて転移するリスクがある。過去にそういったケースの報告がある。

『症例発表 下顎の腫瘍を主徴とした黒毛和種肥育牛の症例2例』   橋之口

症例1:切歯が折れて、歯肉腫脹。

百分比でリンパ球数少なく、Otherの割合高い。つまり異形リンパ球の増加がみられた。

下顎に腫瘍、歯がなくなった。生検パンチでバイオプシー。

レントゲンでは骨融解の像はみられたが骨折はなさそうだった。

鹿児島大学の病理診断でリンパ腫。(核分裂像、核破裂像)

症例2:同様の症例(黒崎先生より)

下顎に腫瘍ができて餌を食べなくなった。出荷したが全廃棄。

Q:キャリアは問題ない?

A:肥育を見ていると、症状を出さないものを出荷して見つかり全廃棄ということもあった

Q:白血病はどこかで発症するもの?

A:途中で症状出ればいいが、屠場で引っかかるとアウト。写真も撮らないといけないから、廃用にはできない。廃用申請をしたものだけなので、怪しいのは全部申請しといたほうが良い、トラブルの元となる。

Q:5産6産している母牛でしか発症しなかったが肥育牛でも発症するようになってきた。発症が前倒しになっているのは凍結症乳による濃厚感染がいわれている。

白血病だと直検などでわかる症状があるのか?今回の症例の症状は?

A:直検してもわからなかった。最終的にリンパは腫れてた。下痢はなかった。最初は前歯が折れて腫れていただけ。2例目のほうは飼槽を汚すという事で出荷したら全廃棄だった。

『子牛の臍帯炎』 赤星

症例@寄生虫性臍帯炎

60日齢ほどの子牛、防腐ネットなどを用いて臍帯炎の治療していたが、まったく治癒せず、化膿していた。

臍の大きさ6〜8cmで、剃毛後、開腹。最初は臍帯ではないような物が出てきた。おそらく大網、壊死していた。糸状虫が多数寄生しており、取り除いたのち、閉腹。アンチセダンを投与し帰宅させた。次の日、傷口に腹帯をまいて、数日後抜糸した。

きれいに治癒した。

このような寄生虫疾の症例は珍しいと思う。

症例A尿石症

鹿児島では尿石の牛が多く出ている

5カ月齢の子牛、尿が出ない。陰毛が真っ白になる。

発育は普通で大きくも小さくもない。

現在も治療中。

症例B先天性消化管異常?

正常分娩された、生後4日ほどの子牛。

稟告:便が出ない。

GGTが高いので、初乳を飲んでいると思われるが、農家が50t飲ませようとしたが飲まなかったので、自分で飲んだものと思わる。

起立してるときをみたら普通の牛、ぐったりしてるときは何してもまったく動かない。浣腸もしたが2日間便が出なかった。

麻酔はケタラールとキシラジンで、尿道は1pほどで正常、正中にあったため傍正中切開となった。開腹後、多量の血餅がみられ、大腸も癒着しており、膀胱がうっ血。膀胱から臍帯まで、繊維素が付着しており、盲腸腫大、腸に巻き付いている繊維索を除去した。

 閉塞をチェックしている際も少し触れるだけで、破れるほど腸が脆弱であった。肛門から管を入れ、直腸を確認後、結腸を切断し、直接つなぎ合わせた。

最終的は死亡した。

3年前にも同様の症例があり、こちらで報告した。そのときは母牛に蹴られたのではという意見をもらった。

Q:親が立ち上がるときに下に子牛がいたのでは?

A:しかしその翌年にも同じ母牛から奇形が生まれた。さらに今回の症例だったので、遺伝的な原因を疑っている。こういった便が出ない牛にはどう対処しているのか?また原因は出産前のウイルスなのか、遺伝的なものなのか、炎症はどのようにして起こったのか?

意見:奇形で穴が開いていないものも最初は初乳を飲む

意見:結腸から直腸にかけてずっと押していけば全然出なかった便が出たこともある。その時は腸粘液の白く固まったものがまるで便のように出た、4週間くらいは生存した。

意見:腸ねん転が考えられる。血流が阻害され壊死したのでは?

意見:以前、生後12時間ほどで腹部を痛がり、開腹した経験がある。腸が収縮していた。

炎症性の急激な反応収縮などがあるんじゃないかと思う。

A:腹腔内の炎症は6~12時間でくるといわれるが僕自身はみたことがない。どこまで治療すべきか判断に迷う。

その他症例発表

『食道からルーメンファイブ』

症例@

咳、鼻汁、風邪様症状、泡を吹くが流涎はなし。

食道梗塞だったら涎が出るはずだと思い、風邪の治療しかしていなかった。

便は正常で、胃の運動あり体温、心拍正常。原因不明で、経験から予後不良と判断し出荷した。

剖検時、食道にびらんがみられ、ルーメンファイブが発見された。

ルーメンファイブ挿入時に粘膜に傷がついたのか、もしくはもともとびらんがあって食欲不振となり、ルーメンファイブを入れたのかわからない。

胃内にあったものが風邪などで食堂のほうに上がってきた可能性も考えられる。

症例A

肥育牛、出荷前に急性呼吸困難、すぐに輸液したが死亡。

急に吐く、食肉検査場に確認すると食道内にルーメンファイブが確認された。

穿孔していなかった。

商品的な欠陥なのか?予防注射と同様に、安全だけどリスクはあるという例なのか。またはルーメンファイブの入れ方で、器具による傷、つまり農家の責任なのか?

僕も何も言えなかった。

『生後数日で死亡した症例』

 生後すぐの子牛が4頭ほど続けざまに死亡した。近年は初乳の代わりの免疫グロブリン製剤のおかげで新生児死は減少してきているが、そのなかでの経験であったため気になった。

症例1

 生まれた時に顔面が腫脹していた。生後1日・2日目にカープサポートを投与した。3日目から起立困難に陥り、4日目に解剖したら第4胃に未消化のミルクが蓄積していた。

症例2

生まれた時に顔が挟まって腫れていた。初乳を飲んでいるのは確認できた。腹部が腫れていたが、外から触ったところ腹部に異常はなかった。腫れを減らすために抗生物質の投与を行った。

症例3

 生後2日目に元気消失し、ミルクを飲んでいるかは不明であった。眼窩陥没が確認できた。そこで第4胃狭窄を疑って抗生剤ビタミンを投与したが、4日目に死亡した。

 食肉検査場で剖検したところ第4胃の拡張が確認され、幽門部が狭窄して粘膜下出血をしていた。腸捻転もなく、第4胃の拡張以外には異常がなかった。保健所の話だと狭窄、通過障害により死亡したのだろうということであった。

症例4

 普通に生まれて元気に初乳を飲んでいるのを確認できた。生後3日目、急に元気消失、眼窩陥没、疝痛が確認できた。そこで第4胃狭窄を疑いテルペラを打ったが効果はなく、4日目に死亡した。

 剖検すると腸捻転はなく、第4胃が拡張していた。第4胃を開いたところ粘膜の黒変が確認できた。血液検査はしなかった。

 腹水が少ないのは、乾燥しているせいか、脱水しているせいであると思われる。

農家さんは3例も続けて出たことでピリピリしている。子牛が生まれた時に何とかしてくれと言われてニューキノロンを投与した。

質問

Q.排便はどうか?

A.4例はあったが他は少なかった。肛門刺激によって硬い便やチョコレート様物が出ることがあるが、今回はなかった。

1ヶ月齢なら急性胃捻転は確認できるが、すでに手遅れのことが多いと思われる。

Q.今回の4症例の腸捻転はないということで、胃粘膜に黒い点々があればカビの可能性があると言われたことがあるがどうか?

A.ミルクを飲ませるために使うバケツは毎日使用しているものであるから、カビの可能性は考えにくい。

Q.お産のときに顔面が腫脹していたものは?

A.お産で顔や舌が挟まっていても普通に哺乳できるし、勝手に腫れは治るものである。現在家保による細菌検査中である。

Q.同じ農場で起きたのか?

A.最初の3例は同じ農場、4例目は別の農場である。

今までも生まれてすぐに死んだ子牛はいたが、剖検しなかったためどのような状態だったか分からない。

Q.すべて剖検したのか?

A.1例目は剖検していない。急死したときにはすぐに平常処理するのではなく、解剖しないといけないと反省した。3例目は幽門の癒着があり、腸管の色と似たような部分があるので、逆流しているのは確かである。

Q.他にやるべき検査や治療はあるか。

A.血液検査をやるべき。1頭血液検査したものはグルコース値が30くらいで、少し低かった。

Q.母牛は普通か?

A.体形も普通で前年度に導入した牛で、今回は2産目のものである。

Q.腸の漿膜面側が局所的に溶けているように感じるが、自己免疫疾患で自己融解したのではないか?

A.剖検時にはそのように感じなかった。

『牛における胎盤停滞の病態生理および治療法.臨床獣医2011.12.62~63』についての紹介 宮大 北原                               

通常、胎盤は分娩後12時間?24時間に排出される。しかし、排出されず体内に残留したものを胎盤停滞といい、分娩牛の33%は胎盤停滞を起こす。胎盤停滞を起こすと、子宮の修復の遅延、発情回帰の遅延、AI回数の増加など繁殖農家にとって損失をもたらすものであるが、確立された治療法は存在しない。本記事内には、治療法の比較と考察が掲載されている。

胎盤が排出されるには、母体の免疫応答、白血球の透過性の亢進、出産時のホルモン動態などの複数の生理学的要因があり、慣例的な治療はその一要因を満たしてはいるが全ての要因を満たしているわけではなく確実な治療法に至っていない。

質疑応答

Q.分娩誘起のためのPG投与により胎盤停滞が増加するのはなぜ?

A.母牛の免疫応答が起きず胎盤の排出が起きないていない、分娩誘起を行う際、胎児はまだ分娩を誘起するほどの準備が出来ていないことなどが考えられる。

Q.死んだ胎児も分娩されることもあるが、死んでも胎児コルチゾールを放出するのですか?

A.いつ死んだかを確定することは困難なので断定は難しいが、ある程度成長してから死んだ大尉からは胎児コルチゾールが出ていると考えられる、その境界は不明である。ミイラ胎児では胎児コルチゾールは出ていないため排出されないと考えられる。

Q.飼養管理によって改善できる?

A.例えば、セレンやビタミンEなどが不足すると分娩や胎盤停滞のリスクは増える。適切な飼養管理は重要であると考えられる。

池亀先生

『水牛農場』『口蹄疫の爆心地、川南町の産業動物獣医師の活動』についてのビデオ観賞                              

『都城地区の診療獣医師の防疫基準』  開業   宮田       

口蹄疫から二年が経とうとしており、養豚や養鶏や大規模農場の防疫意識は未だ高いが、小から中規模の和牛農家などでは意識が低く、それは小規模農家を回るJA職員などにも共通する。今回、都城地区で小規模繁殖農家を回る獣医師にもアンケートを行い、防疫意識について調査を行った。

1.農場訪問時は診療車から距離をおいて駐車します。

Y=15N=12

意見:できるだけそうする、近隣住民の迷惑になる、雨天時は牛舎近くに止めてしまう、住宅密集地なのでスペースがない

2.農場設置の踏み込み消毒槽を必ず使います。

Y21N=9(設置されていないも含む)

意見;設置指導中である、汚染された消毒槽が多い、診療車内で長靴も消毒槽に入れている、簡易消毒機を活用しています、消毒はもちろんだが長靴底の洗浄を徹底的にするべきである。

3.牛舎に入る際は備え付けの長靴に履き替えます。(設置されていない場合はブーツカバーを装着します)

Y13、自前の長靴=11N=9(設置されていない)

意見:用意してくれている農家は履き替える、教養の長靴は汚いため使わない、踏み込み消毒槽の徹底を希望する、しない

4.農場ごとに着衣(合羽・タイベックス・白衣等)を交換します。

Y=3、汚れたら着替える=22、着替えない=2

意見:簡易防護服として合羽や前掛けなどの服を使用し消毒する、暑熱・雨天時時は着衣を変えるのは困難である、口蹄疫発生時のみで十分である

5.診察時は使い捨てグローブを装着します。

Y=12N2、手指洗浄=12

意見:洗浄のみ行っています、牛ごとに変えています

6.直腸検査を実施する際は必ず1頭毎使い捨て手袋を交換します。

Y=25、数頭行えば変える=3N=1

意見:受精師にも指導してほしい

7.駐車の際は11針を厳守します。

Y=26N=3

意見:豚では交換はしない

8.使用済み注射器・アルコール綿等の汚染物品は専用容器に収納します。

Y=24、ある程度=5

意見:アル綿は不必要である、直検手袋専用容器も必要である

9.簡易消毒器を携行し、農場退出時はタイヤ周り等を消毒します。

Y=16、農家によっては=6 N7

意見:多数検診時のみ使用します、車をまず農場に入れない、口蹄疫の時のみで十分である

10.家畜衛生のプロとして防疫に関する農家からの相談には積極的に対応します。

Y=6、相談されたら対応します=23N=1

意見:疾病ごとの重篤度が違うので全てから守るのは難しい、現場に即した条例を施工してほしい

まとめ

以前よりは高い防疫意識が根付いていると思われる。若い獣医師は防疫意識が高く、高齢の獣医師は未だ低い人もいる傾向にある。養豚や養鶏や大規模農場の防疫意識は高いが小から中規模の和牛農家などでは意識が低い。また、JAの職員などの防疫意識も低いように感じる。

 質疑応答

Q.現在飼われている家畜の検査を行い正確な疾病の蔓延状況を把握することが、防疫の意識より先に行うべきことではないですか?

A.私もそう感じます。しかし、産業動物獣医師として防疫の指導や自分の意識の向上も必要だと思います。

Q.北海道から導入された牛により鹿児島県には存在しなかった疾病が広まったが、そういった同一国内での水際防疫のほうが重要ではないか?

A.私もそうだと思います。しかし、さらなる拡大を防ぐため防疫は重要だと思います。

Q.24頭飼育の家と牛舎が隣接した農家に他の農家と同じ防疫体制を求めるのは、現実離れしてはいないですか?実際、防疫体制の強化により他人との交流がなくなりやめてしまった農家もあります。

A.実際観光牧場でも動物との接触を禁じているといった状況もあるようです。

 Q.今後、小規模農家の減少は目に見えている、法律も変わり、商社が農場を経営する形になると考えられる。その中で共済が作った産業動物診療の指針も変わり共済自体も変化していくのではないですか?

A.そうなるであろうとは考えています。しかし、口蹄疫を過去のものとしてしまってはいけないと考えます。

『症例発表』         開業 赤星

症例@偽膜性腸炎

削痩は軽度、一ヵ月ほどずっと偽膜、または腸粘膜がはがれた血便で、便を鏡検すると粘膜と菌のみ。コクシジウムを疑い、バイコックス、輸液など治療を続けたが、死亡。

剖検時、癒着がみられた。

コクシジウムが原因なのかBVD-MD2型など別の原因が考えられないか?

Q:バイコックスは発症前に与えているか?

A:発症後に与えている

意見:発症前に与えるべき。

意見:以前、育成牛で膣鏡入れて、デキサメサゾンと7%のヨードを温めて浣腸した。

ヒト用の痔の薬(ボラギノール)とか使うといきみがなくなる。

注入後しばらく押さえておかないといけない。

症例Aコクシジウム症

自然哺乳の子牛

23日間下痢が続き、その後便の硬さが正常に戻った。

さらにその後、下痢、血便が再発した。バイコックスとアイボメックで治療した。

便を鏡検するとコクシジウムがみられた。クリプトコッカスはどう調べたらいいのか分からない、大学で調べてもらったが出てこなかった

意見:再発するのであれば、何も与えずに乳のみで様子を見るべき。

Q:再発時の便の検査は?

再発でコクシジウムが検出されたことはないのでしていない。以前は数回検査したが、3日目にはほとんどコクシジウムがいなかった。一日目、二日目放置しないといけないのだろうか?いないのにバイコックス使うのは治療としてどうかなと思うので、検出されない場合にバイコックスを使用すべきかどうかの検証をいつかしたいと思う。

症例B偽膜性腸炎

出生時仮死状態、鼻孔の奇形…治療後回復

数日後、右後肢のは行、先天的異常と思われる。また、偽膜性の血便。

安楽殺、その場で剖検。

盲腸腫大、一回目の発表の臍帯炎の症例Bに比較すると正常に近い。

偽膜とは腸粘膜自体がはがれるのか、欠損部分で炎症が起こってそこに繊維素が析出してはがれるのか?

意見:腸粘膜が筒状になってはがれている。蛇の抜け殻のようなものを見たこともある。

意見:以前調べた時は炎症が起こってフィブリンで出来た膜がはがれる場合と、腸にコクシジウムが増えすぎてはがれる場合と、どちらもがある。また、粘膜がはがれたら、コクシジウムの寄生部位がなくなるため、はやく治癒する。

意見:慢性経過をたどったものは比較的腸がきれいで、まるごと排出されるものは急性経過である。

赤星先生:生まれて数日の偽膜だからコクシジウムではないと考える。

治療し続ければ生き続けるが、農家からきりがない(診療超過)ということで治療を中止することになった。

症例C臀部の奇形

臍帯炎の症例Bの兄弟牛

1年後…尾椎の奇形は残る、発育正常に近いが経済性はなく、出荷価格40万で赤字であった。

先天異常の子牛が2産連続で生まれたら母牛は淘汰したほうがいいのか?

血統で判断してで高値で売れるが、税金を使ってわざわざ病気の牛を広げているようなもではないのか?衛生基準をまずどうにかしてほしい。

意見:先天異常だけでなく、凶暴な牛も繁殖には向かないという理由で、その農家から出さないようにしている。

症例Dマイシリンショック

マイシリン・ゾルを使用後、子牛が突然倒れて動けなくなった。

肛門周辺が紅潮し、瞼が腫れ、ぼーとしている。

この農場では風邪が流行っており、ほかの牛にも起こった。こういった薬のショックはバックグラウンドがあってなのか?

意見:同じような経験あった。子牛でマイシリン単独投与をした場合が特に多く、デキサメサゾンなどと混合で注射したほうがいいと思われる。風邪の場合、等量で投与しており、ぶり返すこともない。

Q:以前、20頭くらいの農家さんで、8頭くらいがペニシリン系で、投与だけでなく子宮洗浄でもショックを起こした。同一農場なら血縁などではないだろうか?

A:今回の症例は同じ期間12日だけ起きたもので、基本的にその後は異常なく、このときだけであった。

Q:カビ毒の可能性があるのでは?

A:土着菌がいる可能性はある。そのためコクシジウムが発生しないのかもしれない。

症例E発育不良

初診時は下痢、体温平熱、削痩、治療後回復。

眼球陥没がひどく、また治療。この時は同一農場で十何頭鼻水と熱、食欲不振で、長期間の輸液をおこなった。合計43回治療、体格は小さいが体系は正常化した。

発育不良などの時、 治療のエンドポイントはどこかという疑問をもった。

 テーマ: 『質疑応答』                  進行 中西

『口蹄疫』

口蹄疫を疑ったら当日に家畜保健所に連絡し診断を依頼するべきである。

意見:今回鹿児島は出なかったが、12年前の宮崎での口蹄疫では、宮崎だけでなく中国製生ワクチンを使用した牛では全て発症していたはずだ。口蹄疫を発見した人間は精神的に追い詰められ、今まで仲良くしていた人たちにさえ白い目で見られ孤立する。こういったときに、自分の獣医師として人としての信念を持っていなければ耐えられない。しっかりと自分を持とう。そして人に決して嘘をついてはならない。

『顆粒膜細胞腫』

顆粒膜細胞腫の治療はGnRH・抗生物質・ステロイドの投与や腫瘍の摘出手術などが考えられ、腹腔鏡を用いた手術も成功した。手術後も残留卵巣が正常ならば受胎可能である。

また、顆粒膜細胞腫は類焼鑑別も難しく超音波で診断しようとしても、蜂の巣状のもの、全体的に内溶液が貯留したもの、大きなマスなどの形は様々なのでその手術もそれに対応して行わなければならない。

意見:発見から手間取ればバレーボール大にまで成長したものを手術したことがある。

治療時に、投与する薬も通常の2?3倍量投与する必要があるのかもしれない。

手術後の受胎は確かに可能である。

腫瘍に入る血管は複数あることもあるし、手術中に腫瘍内に貯留していた血液が噴出したこともあった。

『胎盤停滞』

胎盤停滞となった牛は飼料を食べなくなるので、私はまずデキサメサゾンとリンゲル液を投与し体調を治す。その後ぶら下がっているものは放置か鋏で取る。農家、特に酪農家は取ることを希望する。用手除去にはリスクもある。お産時に無理に引っ張ると粘膜の損傷や出血で細菌感染が起こることもある。

 Q.分娩後45日はリスクが高いか?A.リスクは日数の問題ではなく結合織の分解の程度によるので詳しくは分からない。

 Q.乳牛では用手除去を積極的に行うが、胎盤停滞の牛では乳量や乳質に影響はありますか?A.全身症状が出ているならばあると思われるが、直接の関係性は断定できない。感染などの二次的な影響としてみられることもあると思われる。

意見:子宮脱でも用手除去をしてもその後の洗浄をしっかりと行えば感染はしないはず。馬では数十リットルの生理食塩水で洗う処置を行っている。

分娩後24時間以内にPGを投与すれば胎盤停滞にはならない。

共済は24時間以上経たなければ処置をしない、これはおかしい。

現場の意見が通るような組織作りをすべきだ、そのために畜産県の力を合わせなければならないし、大学や家畜保健所も診療経験からくる改革案を採用するように変わっていってほしい。

『寄生虫性臍帯炎』

赤星先生の発表とはまた違う例ですが、自分がプニプニとした感触であったためヘルニアではないと思った牛は実はヘルニアで他の先生が手術をなさっていた。

 Q.その牛にマイシリンは使わなかったのですか?最初は臍帯炎だと思わなかったので使いませんでした。

 Q.寄生虫性の臍帯炎はこれから増えると思われますか?極めて少ないと思う。今回も農家に頼まれて開けての結果であった。個人的には、体網がヘルニアといて体外に出てしまったので臍帯炎が悪化したことのほうが重要であった。

意見:臍帯炎になった牛がヘルニアになる、親が一生懸命舐めると子牛は臍帯炎になってしまう。

ヘルニアは大きくなったら治るがせりで安く買いたたかれてしまう。

化膿していれば硬い部分と柔らかい部分が存在し、ドレーンも有効である。

ヘルニアの牛も臍帯炎の可能性を考慮し1週か2週は様子をみることもある。

 『牛の突然死』

解剖は今回していないが、アナフィラキシーショックを起こして肺気腫になって呼吸困難となり死んだと推察した。その場合、明確な対処法はない。自分は牛房を変えてもらっている。診療中に死亡する牛もおり、今までは肥育中期から末期に多い。

Q.発熱は.2011年の2月から5月までに7頭いたが、様々であった。

Q.夏場で熱中症ではなく眼球陥没かつ呼吸が荒い牛ではエンドトキシンショックによる肺水腫を疑うこともあるが、飼料の変更はありませんでしたか?A.特になし。

Q.エンドトキシンショックで肺水腫になる?エンドトキシンショックはDICを引き起こすが肺水腫との直接的な関連性はないと思う。

意見:朝方突然死んでいる牛が多い。

起き方が下手、自立困難、よく暴れる牛に多い。

誇張症の牛も同様である。肥育農家の出荷する直前は気をつけなければならない。

子牛の時に肺炎を起こしていると実質が壊死している場合があり、成長しても肺にハンデを背負っていたため死亡したのかもしれない。

導入後23週間は特に飼養管理をきちんと行わなければならない。

同様の症状を示した子牛に、酸素ボンベから酸素吸入したところ劇的に回復した。回復した理由もなぜ症状が出たのかも不明だが回復した。