@   宮崎県口蹄疫発生第6例目に遭遇した臨床獣医師からの報告 池亀康雄

・9月におこなわれた議論にて

「南九州の鹿児島では発生しないのになぜまた宮崎で発生したのか?」

→桜島の火山灰による酸性土壌が感染防止に一役かっているのでは。という説や宮崎県に対する賛否両論の声、鹿児島県ならばもっと被害を最小にできたなどの意見があった

・今回の件に対する協力への感謝や隣県への謝罪を述べられました。

第6例目農場概要

・標高450mの山間に位置し、車1台幅の道の先にある

・農業主は、イタリアで修行後、宮崎で水牛飼育を始める

・口蹄疫清浄国であるオーストラリアから水牛を導入

・搾乳牛20頭など計42頭の水牛を飼育(2010/3/31時点)

・日本で唯一、水牛モッツァレラチーズを生産

・ヨーロッパ種(イタリア水牛)、年間乳量2000Kg

・6haの放牧地で放牧

・川南町の酪農家(口蹄疫発生なし)よりトウモロコシサイレージを毎日輸送

水牛の診療

・水牛の疾病についての教科書的な物はなく、牛と同様に対応

・性格はおとなしいが保定困難→診療しにくい

・被毛硬い→聴診しづらい

・皮膚厚い→頸静脈怒張せず静注困難

・汗腺なし→水につかり体温調節

l        経過

3/26の初診から4/25殺処分までの経過を説明(参照;日獣会誌63 7377392010)

なお、

・発熱を示す牛が増えた3/29よりチーズの製造を中止

3/31家保の立ち入り検査にて、全頭採血予定も保定困難により採血が難しく、3頭分を採材

l        抗体検査結果について

→通常依頼主に公開することはない。検査結果に疑問を抱き公開を要望したもの

(検査結果についての意見)

水牛と牛の互換性あるのか?

偽陰性の可能性はないのか?

3/314/14で抗体価上昇が大きすぎる。それに伴い、検査測定範囲に疑問が生じる。

陽性は間違いなく陽性であろう

3月下旬に感染があったことは確かだろうが、ここが初発になるかどうかはこの検査結果からは判断できない。

l        水牛農場における症状について

・下痢、軟便→前日からみられた。発熱の為に水に長く浸かっていたためではないか。

・跛行はつま先でラインをひくような歩き方

・デキサメサゾン⇒次の日、跛行無くなる 

・抗生物質投与は効果を示さなかった(ウイルスのみが存在していたのではないか。)

     その後と総括

・殺処分現場での体験

・防疫作業、開業獣医師の参加の難しさ→日当、怪我等補償の問題からが難色を示す

520日から殺処分へボランティアとして参加。      

無我夢中で牛の命を絶つ仕事に専念。指揮系統の混乱や疲弊した人々、怪我人がでるなど問題は多数あったが、臨床獣医師の現場を把握する能力を自覚し、発揮出来たと思う。

・知事のブログ、口蹄疫の疫学調査中間整理の記述について抗議した内容についての説明

・当初は牛農家を続けるか迷っていた人たちも、徐々に牛との生活に与えられていた幸せを思い出し、復興しつつある。

・臨床獣医師はもっと気楽に、家保へ連絡・病性検査を依頼するようにして欲しい。

・このような状況におかれた場合は、マスコミを恐れず、事実のみを伝えること。

(風評被害防止も重要だが、情報を提供することで拡散防止の一助になる)

・突発性難聴や腱鞘炎と健康被害もうけたが、仕事への意欲、目標、生きがいを取り戻した

ワクチン接種後、全頭殺処分以外に方法はないのか、おおいに検討の余地あり

・口蹄疫ウイルスの侵入経路・原因究明は徹底的に行うべき!!!!

       これからのために       

・口蹄疫感染初期の牛の写真(425日)の提示  

教科書的なひどい症状の牛の写真しか無いなか貴重であった

・初期症状;元気消失、耳垂れ、発熱、少量の流涎〜飼槽下まで糸を引くような涎(この時点で口腔内には水泡あるかも)など

 舌根部、裏側に小型の水泡・潰瘍

 反芻の涎との鑑別難しい

 熱発後、23日で解熱

水牛農場主いわく「乳量低下がなければ獣医に往診依頼しなかった

ほど軽度の症状」とのこと

      質疑応答

@      少量のよだれは、普段よくみる程度。口蹄疫を疑うべきか?

軍手をして舌を引っ張り、潰瘍の有無を確認すべき

A      蹄病変は?→牛は口腔内、豚は蹄に病変出やすい

B      種差は?→乳牛は和牛より症状出にくい、水牛の正常や症状定義がなかなかはっきりしていない

C      水牛もトレーサビリティ適用すべきか→家畜の定義に入っておらず、食肉処理も不可。遺伝子的にウシでないので難しい。

D      口蹄疫判明以前は、消毒はどうしていたか?

水道で洗って流しただけ(3月29日から4月14日までは水牛農場専用の白衣、長靴を準備)→同時期に往診に回っていた農場での発生がみられなかったことから、手足の洗浄がいかに大切かわかる、習慣づけるべき。

A   今回の口蹄疫に関連する宮崎大学の動き  北原豪


・宮崎大学の行動:学内において偶蹄類家畜を飼養していた&大学ということで多くの人が出入りする特性を持つ為に、感染拡大を懸念して人材派遣などを行動に移すのが難しかった。

当初、特定の教員、清浄性が確認される防疫のみの派遣、飼養家畜の防疫→飼養家畜の処分→多くの教員の防疫業務への派遣

・家畜伝染病予防法::家畜防疫員代行として作業に携わる

・移動制限区域内での移動、区域内への持ち込みまたは、区域外への搬出は禁止

搬出制限区域外への搬出は禁止だが、区域内への持ち込みは可能

処理施設が搬出制限区域内にあるため、家畜の死体などが動かせない⇒搬出制限区域外のストックポイントにためておいてその後区域内の処理施設へ

◎斃獣、糞尿をやむを得ず動かしたいときは??⇒特例による対応、家畜防疫員(代行)による清浄性確認検査

・死亡家畜、排泄物等の処分:

農家→市役所から連絡、防疫員始動(敷地外で防護服に着替えて現地に入る)

ルート(消毒ポイントを通りかつ最短経路)決定

 家畜保健衛生所(長)による各書類の作成、農家への説明

 作業者以外(運転者など)は農場内に立ち入らない

・清浄性確認検査:採血にて えびの、宮崎

611日 宮崎大学で飼養していた偶蹄類動物(牛、羊、山羊)処分

現在

105日 宮崎大学に牛3頭移動

・診療・研究における防疫マニュアル作成、施行

・医学獣医研究科を新設→医学領域と共同研究が可能になった

・大動物用CT導入、JST

      質疑応答

@      殺処分方法は?→キシラジンで鎮静後、パコマの静注

A      現場の指揮系統はどうだったか?→はじめは苦労されたようだが、後半は前から入っている先生がリーダーとなり、指示していた。

口蹄疫JASVチーム派遣報告 インターベット 大藪

・殺処分派遣内容:529日〜64

         派遣先:JASV口蹄疫防疫作業支援チーム

・口蹄疫発生に伴う人材派遣についてJASVより要請を受けた

l        一日の流れ

@      高鍋町内ホテルから現地対策本部(川南町役場)へ、

持ち込めるものは最小限に制限(携帯電話など不可)、持ち込み車両や現地獣医師の車両で移動

A      現地本部降車時から本部建物入り口までの移動専用サンダルを着用、入口の専用サンダルに履き替え、本部内へ

B      本部内で更衣スペースへ

C      二重にタイベックを着用。二枚目のタイベックの右胸、背中にマジックで名前を記入して着用、飲み物や食べ物支給

朝礼、発生状況などの報告後、その日の対象農場と班分け、班ごとにバスへ

 対策本部から対象農場へ移動、入口に設置されたテント内へ、農場から遠い位置から入場。

着衣:ゴム手袋2重、マスク、ゴーグル(必要に応じて)着用、白長靴着用、2枚目のタイベックの裾を長靴の外に出しガムテープで密封

 汚染地域に侵入したしるしとして白長靴・背中に赤スプレーをつける。

 

 作業終了後出口で消毒液(炭酸ソーダ液)を全身、足裏まで受け、シャツパンツ長靴以外をすべて脱衣、廃棄。汚染側からテント内に入場、シャツパンツを新品に更衣後新品タイベックを1枚着用

対策本部へ戻り、消毒、シャワーをあびて、足、サンダル、足裏に消毒液噴霧(クレンテ)、手にイソジン 朝着てきたものに着替えホテルへ

l        作業内容

母豚は主に薬殺、哺乳豚と離乳豚は炭酸ガス、肉豚は電殺する場合が多い

 JASVチームはほとんど母豚の薬殺が中心で、終了すれば哺乳豚他の薬殺も実施

 マフロパンまたはドミトールで鎮静

@      母豚薬殺

豚舎レイアウトをみて、スペースを確保。

追い出し(2050頭ずつ)終了後、マフロパンを10ml/ 筋注、県外派遣職員(非獣医)などによる追い出し

  農場主の感情を考慮し、鎮静の深い個体から18Gの針によるパコマの耳静脈注射…ワイヤー保定必要ない

 死亡は眼瞼反射、瞳孔反射で確認

 確実な死亡が確認出来ない個体には心臓注射

 シリンジは1農場で繰り返し使用、針は切れなくなったら交換

 250300頭が1日の限度処分量

A      哺乳豚薬殺

・保定者が抱え(鎮静なし)、もう一人の術者が心臓注射を実施

・離乳豚は体重に応じてマフロパンによる処置をしたり、採血用コンテナ添付70mm針を利用する

・豚舎内で殺処分後、人力で外へ搬出

B      肉豚

基本的には電殺。電気の場合、出荷口まで追い出し、電殺器により実施。時間がかかるので、作業効率をあげるため薬殺も併用。

       作業内容の詳細を説明

       気付いたこと

良い点

対策本部としての防疫意識の強さ

 ・衣服の着替えの徹底

 ・クリアゾーンとグレーゾーン区分の管理徹底

 ・消毒の徹底

・必要な器具資材の準備徹底

 ・農場間の連携がうまくいっていた

 ・町民の意識の高さ

 ・作業員に対する心遣い

 ・処分終了後農場主からの丁寧なお礼

気になった点

・対策本部入口の消毒が時間設定されている(作業員の集合時間より始動が遅い)

・農場への送迎バスの運行時間が徹底されていないこと

・県職員、県外獣医師などの宮崎市内からの往復(拡散防止の点で疑問)

・新富町対策本部でのシャワー施設未設置

・処分農場の優先順位があいまい(ウイルス排出が疑われる農場を優先すべき)

・獣医師の怪我、作業中の事故

      総括

@    口蹄疫という病気の恐ろしさ:農場によってはひどい症状を呈しており、感染力のすさまじさと畜産基地破壊が容易に成立してしまう恐ろしさ、早い防疫体制の必要性

A    畜産ピラミッドの頂点(事業団や試験場などの県営施設)のリスク分散の必要性

B    今後の営業活動を行う上で、思うところがたくさんあった。

      質疑応答

・埋却地について→基本的な埋却地は農場内に用意されている場合が多かった。それ以外、つまり公道を走って埋却地へ移動する必要性がある場合は、豚にビニールをかけて消毒液散布(ダンプの外へはウイルスを飛び散らせないような配慮が徹底)をしたうえでさらにビニールをかけて移動

・タイベックスは朝着たらそのままか?→破れて、必要ならば着替え、場合によってはガムテープでふさぐ

・なぜ広がったと思うか?→風や郵便などの人の流れ、またネズミなどの動物によるのかもしれない。宮崎の県民性も一因では。

・防疫意識はどの程度?→豚農家では殺処分の流れがしっかり統制されていたが、牛の方では少々ゆるい印象だった。

(質疑応答のなかで)

ヨーロッパでの口蹄疫  宮崎大学 牛島先生

・オランダで3年間、疫学について学んだ。

JASVに過去のヨーロッパの情報提供

・日本と海外の対応の違い

獣医師の働き方…殺処分に関わっていない。と殺員が殺処分するのを監督するのみ。獣医師は、サーベイランス(疫学調査)に重点をおいて行動。

埋却の問題:イギリス:300万頭近くを殺処分し、埋却地周辺住民から苦情がでた。

・と殺方法

当初は、と殺銃を用い、途中から間に合わなくなって猟銃免許を持った一般の人もと殺作業へ。

・オランダはと殺用コンテナ(数百頭/1時間)で電気殺していた。今でも国内に4つある。

・初動:オランダの場合…発生発覚後、3日間国内全域の動物の移動を禁止。そこから移動  制限区域を決定、少しずつクリーンなエリアの中で決めた制限を守っていく流れ。

・オランダで、日本の悲惨な状況を見て、今後発生時も殺処分を行わないと発表したという記事があるが?→EU全体で厳しい規則があるし、オランダは国内ルールでもっと厳しいはずだと思う。

・明らかに正常だと思われる個体は、国ではなく農家に殺処分の判断をゆだねる(肉に出すのではなく)という記事も(月刊WiLL10月号)あるが?→調べてみる

       全体討議

・種雄牛問題での県の対応について

 県は率先して残そうとしていた。その判断を下していたのは獣医師か?…県職員か?

種雄牛を残していて、OIEの清浄国復帰できると思うか?未だに殺処分をするべきと主張している人もいる。

・ワクチンについて

 ワクチンがマーカーワクチンであれば、自然感染なのかワクチンで抗体持ったのか区別出来る。今回はマーカーワクチンで無かったと農水省の人は言った。でも、現存のワクチンはマーカーワクチンしかないのでは?

・殺処分や消毒に対する考えは、豚の方が牛よりも意識が高い気がする。牛と豚とは、別々に議論すべきかもしれない。

・水牛農家から他の農家への接触は無かったのか?→2週に1度ほど、回覧板を届ける仕事があった。距離にして約600

・今現在、口蹄疫の調査はどの程度公表されているのか?

国:水牛が初発としている。県:第7例目の方が早かったのではないかとしている。

・疫学調査について

口蹄疫発生以降の血液サンプルから初発農場を決めるのは問題ありでは。

現在あるサンプルは、摘発のための採材(症状がひどい牛の血液を採る)

その時点で、自然治癒後の牛も存在していた可能性あり。

第6例目の家保への通報が早かったため、他の疑問点が解決されていないなか初発とされるのは心外

8月11日 県知事が水牛牧場訪問において、「自分の耳に入てくる情報と実際、現場で直接聞いた話とでは、だいぶ違う」と発言 

・開業獣医師を守ってくれる組織はない。労災もなにもない。

・報道規制の事実はない。防疫の問題でマスコミの出入りを規制しただけ。

・牛に慣れていない人たちが殺処分に携わっていた。そういう人たちも一生懸命やっていた。しかし、助ける(教える)人達がいなかったことが事故や作業効率の悪さなど問題が出てしまった原因では。

・保定が大事、目で血管を見るのではなく指でる!ダメだったらすぐ代わることも時には必要

・いやなことはすぐに忘れる傾向あるので、今後が心配

・被害農家の決起集会が10/26→みんな再開に向かって歩みはじめている!





明治製菓 製品紹介「マルボシル」

       製品概要

 ニューキノロン系マルボフロキサシン、動物専用合成抗菌剤であり、2%(100ml)のものと、10%(50ml)のものがある。用法容量は、牛では2mg/kgで筋肉内注射、または静脈注射で、豚では筋肉内注射である。牛では細菌性肺炎、豚では胸膜肺炎などに適用される。

1.       切れ味良好:マイコプラズマや、サルモネラの感受性試験において、優れた抗菌力(MICが低い)と優れた体内動態(速やかに高濃度分布)を特徴とし、筋肉内注射でもCMaxの上昇は速く、良好な組織分布であった

2.       使いやすさ:フルオロキノロン系で唯一、静脈注射ができる。使用禁止期間は、牛で4日、牛乳で48時間、豚で4日と、他社より比較的短い。

3.       局所変性:投与部位の変性や壊死(局所変性)を低減化、トレランス(痛みやアザ)も少ない。

       海外事例(牛)

肺炎で治癒率、鼻汁の減少が他社製品より良い結果となった。痛みが少なく、鼻汁の引きが良いことなどから、食欲が回復しDGが高くなったと考えられる。また、海外で承認されている乳房炎への投与試験では、乳房浮腫、体温を指標にした。乳量減少も少なく大腸菌性乳房炎が主なターゲットである。

      質疑応答

Q:国内でマイコプラズマ性肺炎の臨床例はあるのか?

A:豚では症例数が集まらず試験できていないが、牛では臨床試験あり。

Q:筋注で2時間後、静注で4時間後にCMaxが高いが、組織分布は筋注のほうが高いのか?

A:本来、静注のほうが速いデータであるべきだが、試験設定がこれしかない。

Q:筋注、静注で投与量はおなじでいいのか?

A:薬理的にもFGがどちらもほぼ1なので、同じ用量で、効果はほぼ同じ。

Q:局所変性が2%剤よりも10%剤で大きいようだが。

A:体重当たりで用量をそろえているため、薬剤の量は同じなので、薬剤成分による変性ではなく、溶解剤などによるものではと思われる。ニューキノロン系のものは中性域で溶けにくいため、組織侵襲性のある酸またはアルカリ性の溶解剤を使用せざるを得ない。

Q:ワンショットでショックを起こす可能性はあるか?

A:おそらく大丈夫だが、発売直後なので慎重に使用していただきたい。

Q:関節炎やアクチノバチルスなどで局所注射してよいのか?投与部位は?関節周囲炎の場合は?

A:ニューキノロン系は、成長抑制など組織に影響があるため、言い難い。周囲ならば投与していただいても大丈夫。

Q:一日何回ほど使えるのか?

A:濃度依存性であるため、一日数回よりも一回のほうが良い、三日間くらいは投与してほしいが、臨機応変に対応をしていただきたい。

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共立製薬 製品紹介「オバプロンV」(膣内挿入型プロジェステロン徐放剤)

       現在イージーブリードが人気だが、T字型なので膣や子宮内膜を傷つける可能性がある。また、PRIDは脱落しやすい。そこで当社はV字型にした。太いため和牛の未経産にはきついかもしれない。

      製品の効果・効能については、他社と比べ少ないがP41.0g含有し、12日間の挿入で、発情周期の同調のみである。卵巣静止の時に、14日間入れる方のいらっしゃると思うが、挿入型プロジェステロン徐放剤は卵巣のウェーブコントロールが前提である。そのため、長く挿入せずにE2GnRHでリセットすべきであり、うちでは10日間のプログラムを推奨している。

・・・挿入時EB10日で抜去し、抜去時EB

・・・挿入時EB,7日でん抜去し、抜去時PG48時間後GnRH

E2カプセルをつけようと思ったが、E2は少量投与なので、粘膜吸収は難しいと判断した。

       熊本での試験

 飼養管理のミスによる負のエネルギーバランスとなっている場合は、卵巣静止であることが多い。農家さんはよく脂溶性ビタミンを補給させようとするが、その前に関機能の回復を目指すべきである。

 プログラム@ V.Bとウルソを2日間、その後V.BV.A1日間

 (710日後)

プログラムA P4徐放剤挿入とEB10日後抜去しEB

プログラム@、Aの後、発情回帰

     質疑応答

Q:エネルギーバランスを治さないとうまくいかないのか?つまりプログラムAだけではだめなのか?

A:他(黒毛和種牛)の報告で、Aだけでもいい成績が出ている。抜去時にP4濃度が低いほうがその後の受胎率は良い。ホルモン剤で卵巣を動かした後の次の周期でつきが悪くなる可能性も考慮して、栄養面の改善に注目した。卵巣を動かした後に、飼養管理の見直しをしても良いかもしれない。

意見:ホルスタインと黒毛和種牛では、ホルモン代謝、動態が全然違うので、種別のデータにすべき、また、子宮内膜炎、リピートブリーダーも対象とした試験は別にすべきである。子宮内膜炎牛にP4投与は、助長するので危険である。

Q:血中ビタミン濃度のデータがないが、本当にビタミン剤投与で栄養面の改善につながったか疑問を感じるのだが?

A:直検の所見のみで、エネルギー不足であろうという牛を試験に用いた。酪農家で、肝機能低下牛に脂溶性ビタミン投与という間違った使い方がしばしばみられるため、このような試験を行った。

Q:プログラム@とAを10日間あける意義は?

A:獣医師側で時間をコントロールするために当初は設定した日程なので、同時に行っても良いかもしれない。和牛ならうまくいきそうだ。

Q:ウルソがそんなに劇的に効くのか?

A:V.Bのみ、ウルソのみの試験では、いい成績が出なかった。乳牛において、ビタミンの利用効率を上げるための強肝剤(ウルソ)投与である。

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「牛甚急性乳房炎の聞き取り調査(3月)」   

DSファーマアニマルヘルス(株) 的野英夫

 6月に発表しようとしていた内容で、第36回家畜診療等技術全国研究集会で神野先生が農林水産大臣賞を受賞した。約2年間で33症例、第一選択薬から第二選択薬への、抗菌剤の切り替えが良いという評価だった。

広島県獣医師会HPより、牛甚急性乳房炎について

対応スキーム:大分の臨床獣医師(乳牛を飼っている獣医の症状発見時対応)

・搾乳で乳房内の乳を絞り出し、菌とエンドトキシンを流しだす

・薬剤処置:生食で洗浄後、抗菌剤で乳房内殺菌、抗菌剤投与

      薬剤併用の例・・・主にデキサメサゾン、若い先生はフォーベットなど

               今回のえひめの報告では一例デキサを使用

・オガクズが感染要因になっている可能性があるので、その場合は発酵オガクズが良いとのこと

・今回のえひめNOSAIの報告について、治癒率90%とあるが、その基準は死廃牛にならなかったものは治癒とみなした

       質疑応答

Q:ウルソの抗エンドトキシン作用の機序は?他の薬剤ではなくウルソを使うメリットは?

A:穀物多給により内因性エンドトキシンが増える、牛はエンドトキシン致死率が高い。ウルソは胆汁酸で、界面活性作用があるため、もともと分子量100万だったエンドトキシンが分子量約2万のサブユニットに分解され、発熱や致死作用が消える。

  ウルソは人でよく用いられていて、アルコール性肝炎などは症状抑制のため、一番良く使われているのはC型肝炎で、インターフェロンと併用されている。

Q:初診時に水のようなものが出ている乳房炎は?

A:初診の時に効果があるかだいたい判断できると思うが。

Q:エンドトキシンの胃内の濃度が後で上がっているが、その毒素は?

A:濃厚飼料を多給すると胃内環境が変わり、グラム陰性菌が死滅するその時に出た毒素だと思う。

Q:エンドトキシンからくる腸炎で死亡した牛にウルソが使われたという事例があるか?解剖した結果、まず間に合わないようなひどい腸炎だったが、予防的にウルソを使うことは?

A:まだよくわかっていないので、調べたいと思う。和牛のほうが乳牛よりも、追いこみなどで穀物を多給する。それによって血栓ができて肝機能障害がおこるという現象もあるのでエンドトキシンが血中にまわるからという原因で死亡しているかは定かでない。

◎赤星

1.「セラクタールとケタミンの併用について」

・怖がりの牛の場合効きにくい気がする。また、牛では多量に投与しても事故が少ない。

・潜在精巣の時に効きにくい場合がある。

・犬の方が猫よりも良く効く。

・筋注でトラゾリンを使用すると、覚めがすごくいい。静脈注射だとむせる。

・猫はケタミンとヒドラタールを併用することもある。一見、死んだように効く。

⇒皆さんはどのように使っているのか?

○一度使った。効きはよかったが、経済的にもセラクタールのみでいいのでは。

 アンチセダンよりは安い。

2.「多発するアクチノ」

1農場における過去の集団発生:生産牛30頭規模農場

3頭目は薬殺した。大多数の放線菌はマイシリンを1または2回の局所投与で1カ月程度で治癒するが、何カ月経っても治らないものもある。コストを考えて早期出荷にした。

・桜島で3回、鹿児島で2回集団発生を経験。

⇒放線菌は軽度の膨らみの時、マイシリンをうっておけば良いのか?

 治療間隔は、2週間間隔か、毎日か。感染力はどうか。

○注射針だけでは中に届かない場合があり、骨増生がみられ始めた時点で切って削り、中を崩して診療する。

○ヨード剤を内服:イソジンをポンプや注射器で入れ、1分ぐらい牛の口を抑える方法で投与。鼻からは出てこない。

●こういうケースの場合、コリネの方が多いのでは?

→教科書的に書いてあるか?⇒コリネで顎が腫れることがある。対応は同じ。

              コリネだったら顎ではなく、耳の辺りに症状が出るのでは。

●耳が下がっている牛の写真がスライドにあったが、耳に異常があるのか?

→その時は分からなかったが、もしかしたら異常だった可能性はある。しかし、耳炎も流行っていたので定かではない。

●鼻腔内出血や、呼吸音がズーズーとなるような症例はどう判断・治療するか?

⇒鼻環をとったら治った事例もある。金属アレルギーが要因の可能性がある

3.「多発する牛毛包虫(にきび)」

・皮膚が象皮様、競りに出せないという主訴

・イベルメクチンを何回かずっと打ち続けた。塗り薬を出すと、毎日塗ってもらえた農場では経過が良かった。

・他の農場でも発生。競り市前の子牛に発症…牛が売れなくなり、農家に損害

KOH40%をかける治療法では、毎日やると経過良好であった。

⇒なぜ集団発生するのか?

○小さい時に感染し、競り前に発症しているのでは。調べたところ、4頭に1頭ぐらいの割合で罹っていた。

○親がかかった場合は子もかかる確率が高い。垂直感染の関与の可能性がある。

●アレルギーの方面にも目を向けて治療をしていかないといけない。

●鏡検したらどうか

4.「腎不全について」 

・突然立たなくなった牛:尿毒症起立不能と予想  雌 和牛 生産 6歳 11回診療

・起立不能、1回目の血液検査…異常なし

 食欲不振、2回目の血液検査…BUNとクレアチニンが異常値⇒その後死亡

・剖検によると、腎不全だった。

○腎不全の治療方法は?

→妊娠牛だったのでデキサメタゾンを使いたくはなかったが使った。流産はしなかった。

 911日から診察、TPRは正常であり、当初は眼球陥没がみられたがなくなった。

 治療は補液(等張)、利尿薬(フロセミド)、BUNが上がってからはバイトリルを使用。

 

◎北原

「黒毛和種牛の抗ミューラー管ホルモン(AMH)濃度による潜在精巣の評価」

目的:抗ミューラー管ホルモン(AMH)は、人では潜在精巣の存在や機能の評価に用いられる。今回、黒毛和種牛において血中AMH濃度を測定し、潜在精巣の評価法を検討した。

供試牛:黒毛和種牛 5

    IM群:6か月齢 雄子牛

    UC群:6か月齢 右側精巣を去勢、左側精巣のみ 雄子牛

    BC群:通常去勢牛

    CM群:片側潜在精巣で、正常下降の精巣を去勢 雄子牛

    FM群:雌子牛

試験:hCG3,000IUの筋肉内投与による負荷試験と採血を行い、血中AMH濃度とテストステロン濃度を測定し、比較した。

結果:Day0の血中AMH濃度とテストステロン濃度、およびhCG負荷後の血中テストステロン濃度(Day5,7の値>0.9ng/ml)により潜在精巣の有無を的確に診断できる割合は、それぞれ1005657%だった。

まとめ:黒毛和種牛における血中AMH濃度は、潜在精巣の評価法として有用である

Q:セルトリ細胞からAMHが出てくるのなら、精巣上体を取り残した場合、精巣上体からも出てくるか?

A:組織学的に精巣上体にはセルトリ細胞はみられないため、純粋に精巣上体のみ残存したなら、可能性は低いと考えられる。

Q:人でも同じか?

A:測定には人のキットを用いた。

Q:測定までに何日かかるのか?

A:キットが一度製造中止になり、また改変される。ELISAのサンドイッチ法の原理で測定するので、数時間で結果が出る。価格は96ウェルで18万円ほどである。

◎総合討論

池亀先生へ

Q:豚の獣医と牛の獣医の防疫に関する考え方は異なる。ピークが過ぎ去った今、これからどのようにしていくべきか。

A:牧場内に口蹄疫ウイルスを入れないことと、牧場外へ感染源を出さないことが原則である。空気、水、人間、鼠からゴキブリまで感染源になるが、完璧に消毒をしようと思ったら牛や人間に影響がでる。牛に餌をやる時だけ農場に行くようにした農家は罹らなかった場合が多いことから、人間の農場への出入りから感染が拡大した可能性が高いのかもしれない。消毒の撤退は、牛、しかも口蹄疫に関しては難しい。豚舎はウインドレス構造であったりするので牛舎よりは徹底しやすいと思われる。また、徹底しようとしたら経費面でもコストが高くなってしまうので難しい。さらに、飼養頭数が違うとまた違う。

 豚に関わる人達はバイオセキュリティを追求した説明を行うので、同じ人が牛の農家に説明をすると、農家はついていけない。

 また、自分は車内をなるべく汚したくないので、診療後徹底的に手や長靴を洗うのだが、そのような考えを持っているだけで手洗いや長靴の完全な洗浄が習慣づく。臨床獣医師が媒介したなどと言われないよう、手洗いや長靴洗浄には留意すべき。

Q:普段診る、風邪などはどうすべきか?

A:今までの経験と直感で判断する。自分の身を守る為にも調査をもっと気軽に依頼しても良いと思う。

Q:口蹄疫と野生動物の関連についてはどうか?

A:野生動物の目撃例は当然あるし、猟友会の人に頼んで相当な数を採血してもらったが陽性は出なかった。出したら困るので出るはずがない。いつ出てもおかしくない。いかに迅速に手を打つかが重要である。

 今回、ワクチンを打つときに口蹄疫に感染したんじゃないかという牛はいたと思う。

世界では清浄国が少ない。輸入肉が入ると農家が潰れるとか、損害が出る。政治家はそれを利用しようとするなど、複雑な事情がある。認めてしまえば楽だが、それが出来ない。

 また、消毒液が川に流れ込み、川の色が変色しているのを見た。川の微生物叢は変化したはずだし、それによって今後なんらかの影響が出るかもしれない。

 

Q:自宅待機で、往診にもまわれず蚊帳の外にされる対応が今回あったが、そのような対応で良かったと考えるか?

A:現場に行き、往診業務を行っても良いような体制にしてもらえていたら良かったと思う。今後判明するのだろうが、もしかしたら2か月以上前に静かに感染が進んでいたからこその今回の口蹄疫だったのかもしれない。

Q:ハエが尾鈴山に多かったという事実が気になったのだが?

A:ハエの異常発生は3月ごろから確かにあった。動物の死骸があると、それを栄養としてハエが発生する。5月の連休明けに、自分も多いと感じたことがある。

Q:今後どのように消毒していくべきか?

A:持続性が必要である。踏み込み消毒槽、出入りする人間の制限などを出来るだけ行う。獣医師が常に農家に提示していくことで、農家の意識を変えていくことも必要。牛舎の構造的に、豚舎より消毒の徹底は難しい。

Q:何か予兆があったか?

A:1月下旬ぐらいに、診療に行った農家の所にいた人が、「あっちの方で口蹄疫が出てるって言う噂があるけど本当?」と川南の方を指差して言った。韓国の方では出ている、と答えた。2月にもそのような事を言われる機会があった。

Q:宮崎は危機感が無かった…、その点に関しては?

A:10年前があまりにも手際よく終息した為、ほとんどの人に気の緩みがあった。データでも連休前後で感染が拡大しているので、連休に色々な人が交流してウイルスが拡がった可能性がある。しかし、連休だけで増えたのではなく、防疫に関する意識が低かったことも要因となったのであろう。宮崎の県民性を指摘する人もいる。

 さらに、口蹄疫の怖さを知らなさ過ぎた。消毒液を取りに来るよう指示し、農家をわざわざ1か所に集めてしまう対応もあったようだ。

Q:10年前の臨床症状との違いは?

A:症状として違いは無かったと思う。ウイルスが少ない状況では感染にまでは至らないという見解もあるので、今回はウイルスが多くなってしまったことが10年前との違いだと思う。豚にまで感染が拡がってしまったから…。

Q:なぜ川南の畜産試験場に感染が起こってしまったのか?

A:従業員の消毒が甘く、移動は豚を歩かせていた。人的なものか空気伝播か断言は出来ないが、爆心地に近い豚舎で感染が起こっており、そこから風邪でウイルスが川南に飛んできた可能性もある。

 

埋却地に移動する際にトラックから豚や牛が落ちてしまったこともあるようで、そのような状況下で感染拡大を完全に抑えられるかと言ったら、そんなことは言い切れない。トラックの運転手が運搬ルートを使わず近道をしたり、そのルート自体が最適だったかなどの問題もある。

Q:ボランティアがすでに本部に到着しているのに、県職員がまだ来ていないなどという事があったようだが?

A:県職員は本部に行く前に農場の人と連絡をとったり、その他にも寝ずに仕事をしていた状況であったので、県職員を責めるのは酷だと思う。

Q:指揮系統が上手くいってなかった?

A:上手くいってなかったと思うが、一生懸命やっていたのは十分に伝わってきた。今回のことを反省すれば、この次もし発生しても大丈夫だろう

北原先生へ

Q:発情し、排卵しているのに受胎しない牛で、右卵巣に卵胞が出来なかったりしていたが、何か原因についての見解はあるか?

A:卵胞形成、排卵が行われる側で人工授精をやって頂くしかない。原因は分からない。

Q:例えば、顆粒膜細胞腫で片側をとれば妊娠するのか?

A:顆粒膜細胞腫で片方をとるのは有用である。一時的に卵巣のう腫など発症するかもしれませんが、いずれ回復すると思われる。

Q:妊娠を最短で起こすには?

A:インターフェロンタウや追い移植による受胎の促進法などが考えられてきているが、まだ確立されていない。今後も研究を続けて行きたい。