1.「反転性裂胎の一例」
・農場:えびの市
アンガス牛に和牛の種をつけている農場(生産〜肥育まで)
・アンガス牛(2産目)で、手を入れるとつるつるした胎子に触れた
開腹手術→胎子を引っ張る
胎子:おしりのあたりから腸管などの内臓が出ていた
2.「頸動脈破裂の一症例」
・農場:えびの市(上記@の症例と同じ農場)
・H21.2.20生まれ 去勢 アンガスF1牛
・H22.1.15発症
〈症状〉体温38.1℃、
元気はあるが食欲なし、口腔、鼻腔から泡状の流涎
左?部が隆起していて、ガスが貯留
胸垂から頸部にかけて硬結、腫脹
→当初、フレグモーネを疑った
・剖検:動脈が破裂して裂けていた
(質疑応答)
「反転性裂胎の一例」について
l 子宮を縫合する時、1人でどのように縫合したのか?
→農家の人に補助してもらうか、枠場に引っかけた状態で縫合(汚染してしまうが、今回は翌日に屠場へ送った)
お産に関わることが多いが、子宮脱など起こる時は集中して発生する。
アンガスは子宮脱のときに子宮が全部出てしまうので整復するのが大変だが、予後がよい。
「頸動脈破裂の一症例」について
l アンガスは動脈破裂、動脈硬化症などの遺伝的形質を持っているという報告はあるのか?
→アンガスの動脈硬化症の報告は知らない。
静脈破裂は衝撃などで起こることもあるが、頸動脈は深いところにあるので考えにくい。
1.「第四胃変位簡易整復」
・乳牛:左腹部の鼓音を聴取(11月11日)
・牛を仰臥位の状態にし、とうかん針で2か所に穴をあけて割り箸とナイロン糸で固定
→すぐに採食、水を飲んだ
・11月14日 糸は食い込むように引っ張られてきた
・現在も糸はつけたまま
2.「バイコックス、エクテシン&消毒薬のコクシジウム予防の比較」
・農場
黒毛和種一貫経営
繁殖44頭(3棟)、子牛25頭(1棟)、肥育48頭(3棟)
繁殖牛舎は連動スタンチョン、放牧形式
子牛牛舎12牛房(3m×3m):各2頭飼養
敷料はノコクズ
導入、子牛セリ出荷なし
・飼養形態
初乳(生後4〜5日間)→代用乳(約3ヶ月齢まで)→人工乳(3〜4ヶ月齢)→肥育
飼料(4〜5ヶ月齢から)
・検討前農場の衛生対策
分娩舎から子牛牛舎へ移す際、子牛への予防薬投与なし
敷料のボロ出し→床面をグルタルアルデヒド製剤で消毒→消石灰を混ぜたノコクズ
畜舎の出入口に消毒槽を設置
母牛(分娩予定の1ヶ月前)には牛下痢5種混合不活化ワクチン接種
下痢発症時の治療…サルファ剤‐イベルメクチン、ストレプトマイシンの等の投与
・各種検査
(1) 糞便検査
・虫卵検査…Oリング法
・細菌培養検査
好気培養(5%緬羊血液加トリプトソイ寒天培地、DHL寒天培地)
嫌気培養(5%卵黄加GAM寒天培地)
・その他…ロタウイルス抗原検出検査、大腸菌毒素産生検査
(2) 生化学検査
・血液生化学検査…発症子牛とその母牛6頭
一般生化学検査、ビタミンA-E検査
・飼料検査…マイコトキシン検査
・血液検査測定値:A/G比低い、ビタミン値低い、マイコトキシン陰性
・生化学検査成績:子牛でのビタミンE低下(2頭/6頭)
母牛でのビタミンAおよびEの低下(5頭/6頭)
→子牛…ビタミンAD3E剤を生後と毎月1回投与(VA100万IU/回)
母牛…分娩1か月前から?カロチン(ベタカロン)50gを毎日投与
分娩予定3か月前から3週間おきにビタミンAD3E剤ロビソール(VA60万IU)を投与
・対策
(1) 子牛牛舎の消毒…オルソ剤による消毒の追加
(2) 予防薬の投与…サルファ剤(エクテシン)による予防
トルトラズリル製剤(バイコックス)による予防
・対策パターン
A.オルソ剤をこれまでの消毒に追加しただけの群
B.オルソ剤の消毒追加+サルファ剤を予防薬として投与した群
C.オルソ剤の消毒追加+トルトラズリル製剤を予防薬として投与した群
・日齢別コクシジウム検出頭数:30〜77日齢(40〜50日齢が最多)
一般的な発症時期と一致
→コクシジウム薬の投与日齢を20日齢頃とした
・当該農場におけるコクシジウム発生状況
対策前:7頭/9頭からコクシジウム検出
対策後:4頭/9頭からコクシジウム検出
(まとめ)
3つの対策パターン…下痢の発症回数は減少しなかったが、コクシジウムの検出は減少した
予防対策別…オルソ剤消毒だけではあまり効果は期待できず、治療薬との併用が必
要であると考えられる
・対策後も下痢の発症あり(原因究明は困難か不可能)。
大腸菌、クロストリジウムなど検査したが何も検出されない。
(質疑応答)
l 他の農家でのバイコックスの効果は?
→エクテシンと使えば効果あり。効果の持続期間は長い。
l 下痢は白痢と普通の下痢どちらが多い?
→普通の下痢が多い
※代用乳、人工乳のバランスがとれず、スターターの食べすぎによる下痢かもしれない。1日に食べる量が同じでも、バランスが違うと下痢することがある。
代用乳の量も問題となってくるかもしれない。
l クリプトスポリジウムは検査したか?
→していない。10年ほど前にした。
3.「難産で生まれた四肢伸展子牛」
・尾位、11日早産。朝に足が出ているという連絡で見に行った。
・子牛
起立した後、繋が伸展していた。→数日後、快方へ向かった
ヘルニア(2指ほど)→防風ネットで固定(2〜3週間ほどで外して、再固定)
繋伸展は良くなったが、咽頭が腫れてきた。
2月25日時点では、左腹部が膨満、ガス貯留。
⇒どのように治療すればよいのか?
(質疑応答)
l ヘルニアの固定用ネット…粘着性がないとすぐとれる。
l 臍ヘルニア:ネックウォーマーなどで固定+テーピング。雄の場合は防風ネットがよい。
l 親が子牛をよくなめると臍帯炎、臍ヘルニアになりやすい。
→親になめさせないよう、ヘルニアになる前に親と隔離するなど対策するのが大事。
生後10〜15日たてば親がなめても輪が閉まっているから大丈夫。
4.「重症肺炎」
・体温41.7℃、開口呼吸。診療が始まった時点ですでに慢性肺炎。
治療すれば生きているが、経済性はない。このような場合どこまで治療するのか?
・剖検:肺だけ悪い。胃、腸、その他の臓器はすごくきれい。
(質疑応答)
l 慢性肺炎のとき、どうしている?
→他に治療していたとしたら、薬の誤嚥などで肺炎を起こし、慢性化することが多い。一時的に良くなっても再発する。
l 肺炎治療
・補液+抗生物質+輸血
・高張食塩液…20分くらいで。(60〜70kgの牛で500ml)
・等張重曹
・肺炎がひどいときは1?を8〜10時間くらいかけて輸液。肺水腫に注意。
・デキサ+ネオアス+輸液
・補液+ヘパリン+輸血 →DIC予防のため
・ラシックス(利尿剤)…3ml×数日
・ネブライザー…気管支拡張剤+抗生剤+ステロイド
低酸素状態の症例には×。
滲出液が多い場合、胸部を痛がっているような場合には効果的。
ラッセル音が聴こえる症例は治ることが多い。
(質疑応答)
l 抗生剤は何日くらいで変える?
→OTC、マイシリン系…2〜3日(熱が下がっても食欲ないと変える)
→初診からバイトリル
→3診目で熱が下がっていなかったら変える(カナマイシン、ペニシリン)
→ミコチルも効かなかったら試していないものを使う
l デキサは使う?
→プレ、デキサは使った方が効果はあると思う。
→2回くらい使用(連用)。抗生剤と一緒に。
→デキサは使わない。メタカムを使う。
→プレ(1週間〜10日程度)使うこともある
抗生剤と混注。抗生剤投与のときショックを和らげる?
→重症例にはデキサを選ぶことが多い。
心奇形の一例
<背景>
母牛 H18.3.1 生
H21.2.26受精 2産目
H.21.12.10朝8時頃より陣痛あり。破水なく12:30求診 13:00往診。尾位上胎向両後肢屈曲
右後肢整復できず、プラニバート7ml iv。整復助産す。整復時胎動あるも娩出後呼吸なし。呼吸回復せず、口より羊水多量排出、死亡。死後、臍部より羊水多量排出、鼻より出血あり。胃に径2cmの裂孔あり胃内及び腹腔内に多量の羊水あり。
<剖検時所見>
腹腔内に心臓あり、横隔膜に肺動脈が通る穴あり。
肺に気泡なし
分娩時間は30分
胎膜水腫なし
胃内には5~6lの羊水
<田崎先生の予想>
心奇形のため苦しくて羊水を飲み、胃が大きくなったのでは
カウグルコンL
<製品紹介>
グルコン酸Caは人体用医薬品、動物用医薬品および食品添加物として認可されていたが飼料添加物として指定された。
水に溶けづらいがクエン酸、リン酸でCaをつつみこむ構造をとることでキレート化して水に溶ける。
分娩後1日前?1日後低Caの状態で、骨・筋からCaが導入される。初産はいいが、多産になると低Caを起こしやすい。
Caの吸収はCaがどれだけイオン化して溶けているかにより決まり、イオン化しているもの方が早く吸収される。グルコン酸カルシウムは最初からイオン化されているので、投与後すぐにCa濃度が上がる。
リンCaはリンの比率が高いため先にリンが吸収され、Caが吸収されづらい状況をつくってしまう。
グルコン酸Caや塩化Caは小腸上部における能動輸送ですばやく吸収される。クエン酸Ca、乳酸Ca、プロピオンCa、炭酸Caは小腸下部における拡散輸送でゆっくり吸収されるがtotalでは能動輸送よりも多く吸収され、日常のエサに入れるのに適している。
カウグルコンLは分娩前日に1回、分娩後直後に1回与えるのが望ましい。もしくは分娩直後に多めに1回、分娩翌日に1回で与える。産後1ヶ月はカウグルコンペレットをエサと一緒に与えるのが望ましい。
<質疑応答>
Q:低Ca、低MgでCa剤を入れないで、針治療だけで治るものも
いる。どういう効果で治るのか?
A:分かりません
Q:食欲低下の時はCaを入れてもCaは上がらない。食欲ありとな
しでの状況下における実験は?
A:4胃の活性、phがCaのイオン化に影響することがある
Q:Caを上げすぎると低Pになる。産後1ヶ月に与えるペレットが
CaとPのバランスに与える影響は?
A:日常のエサの中に入れるので、足りない部分をちょっと補う程度
100g中 Ca 5g P 3g Mg 6g
ネッカリッチ
<製品紹介>
原料はシイ、ブナ、カシイなどの常緑広葉樹。ネッカとは「熱化学」、リッチとは「Rich」のことである。樹皮炭の粉と木酢液をまぜたものがネッカリッチである。配合飼料に対して1%給与する。
木酢液はプロバイオティクスを増殖させる効果がある。樹皮炭は病原菌を吸着する効果がある。ネッカリッチは病原菌の増殖抑制効果があり、抗生剤が治療に用いるのに対して、ネッカリッチは予防的に用いるのが良い。
クリプトスポリジウムへの予防効果も証明されており、樹皮炭のクリプト吸着、木酢液のクリプトへの殺原虫効果がある。ネッカリッチにより生後10日でのクリプトスポリジウム、ロタウイルスの発症のピークを抑え込むことで、その後の発症を軽減することができる。
炭なので糞に色がつく。
ネッカミルク(ネッカリッチ入りミルク)やネッカリッチペースト(ネッカリッチをペースト状にし、シリンジに詰めたもの)も販売中。
生後2日目に予防的に与えたり、肥育牛におけるルーメンアシドーシスにも使える。
<質疑応答>
Q:クリプトスポリジウムは微絨毛膜中にいるので、吸着できないの
では?
A:木酢液による殺原虫効果が大きく、炭による吸着効果はわずかで
ある
Q:他の製剤と併用した時の他の製剤を吸着してしまうなどの影響
は?
A:吸着効果は少ないので、混ぜて悪いということはない
「診療種別等通知書の交付について」
<背景>
・昨年、栃木県内の共済獣医師が架空診療による診断書を組合に提出し、組合および連合会が共済金等を支払ったことが確認されたことから、農林水産省から連合会に対し農業災害補償法に基づく監督上必要な命令が発出されたことを受け、家畜共済の事務取扱処理要領の一部改正が行われた。
・改正内容の一つに、共済関係獣医師(共済団体家畜診療所の獣医師、嘱託獣医師および指定獣医師)の必要事務として診療の都度組合員等に診療行為や使用医薬品等を通知するための診療種別等通知書を交付するという項目がある。
・組合員等(農家)は、この診療種別等通知書を3年間保存しなければならない。
<実情>
・鹿児島県共済組合(昨年11月より開始)
→1年程は練習のつもりでやっているが、書き忘れることもあり、100%できている状態ではない。だが、書き忘れがあると不正請求になるのではないか。
農家で真剣に見ている人はあまりいない。
・静岡県開業
→農家・共済・開業獣医師の三つ組となっており、月に一度共済組合に提出する。
<意見>
・毎日のように農家から「通知書をなくしたらどうすればいいのか」「なくした場合罰則があるのか」などといった問い合わせがある。
・県により実情は異なるようである。
「AI後17日からのプロジェステロン製剤CIDRの腟内挿入が黒毛和種およびホルスタイン種乳牛の繁殖成績に及ぼす影響」
・CIDR挿入中の血中性ホルモン動態には不明な点が多い。
試験1:卵巣摘出牛におけるCIDR挿入後の血中性ホルモン動態観察
<方法>CIDR群、再利用CIDR群、PRIDの3群において挿入から抜去後までの血清プロジェステロン濃度を測定した。
<結果>3群全てにおいて挿入後プロジェステロン濃度は上昇し、抜去すると速やかに低下した。
試験2:<方法>黒毛和種とホルスタインそれぞれにおいて、定時AIを行った日をDay0とし、Day17〜24にCIDRを挿入するCIDR群、挿入しない無処置群を作製し、再発情の発生の観察を行った。発情発見には牛歩を用いた。
<結果>
@CIDR群:Day25〜29において再発情がみられ、黒毛和種、ホルスタインともに再発情発見率は80%であった。
A無処置群:Day17〜28において再発情がみられ、発見率は黒毛和種で31.8%、ホルスタインで40%であった。
<まとめ>
・挿入中は高い血中プロジェステロン濃度が維持されていた。
・Day17からのCIDR挿入では定時AIによる受胎率に差はみられなかった。
・黒毛和種:CIDR挿入→再発情発見率上昇、空胎日数縮小。
・ホルスタイン:CIDR挿入→再発情発見率上昇、再発情時のAIによる受胎率は低かった。
Q.CIDR挿入期間をDay17〜24にした理由は?
A.Day12〜19という文献が多いが、プログラム上の都合と、発情周期が21日というのはあくまでも平均値であり幅広いレンジをとってみたかったのでこの期間にした。
Q.受胎しなかったのは着床しなかったのか?流産なのか?
A.CIDRを抜去したら集中的に再発情がきたことから、着床しなかったのだと思う。詳細は不明。
研究内容・症例発表
1.「黒毛和種雌牛におけるエコーを利用した新しい早期妊娠診断法」
<方法>AI後、エコーを用いて黄体面積を測り、また、血清P4濃度の測定も行った。
<結果>30日妊鑑で非妊娠と診断された個体では、Day16から黄体面積、P4濃度ともに低下していった。
黄体面積退行割合をみてみると、妊娠群では3%程であったのに対し、非妊娠群では25%以上退行していた。
AI後14日目ぐらいまでには妊娠あるいは非妊娠の方向が決まるようだ。
2.気管虚脱疑い子牛
・ホルスタイン(♀)、2か月齢、体重58kg
・20日齢で除角後、呼吸音に異常が認められるようになり、37日齢では喘鳴がみられた。
・ステロイド、抗生物質にて治療を行ったが、改善せず。
・附属動物病院に搬入後内科的治療を行うも、改善せず。
・X線検査では気管虚脱は認められず、内視鏡検査でも炎症などはみられなかった。
・剖検→披裂軟骨の小角突起の肺側にワラ片が突き刺さり、アブセスを作っていた。
3.呼気時にいびきをかく子牛の内視鏡動画の紹介
・呼気時に軟口蓋が震えていた。
・気管支拡張剤やステロイドを投与したが、改善しなかった。
4.気管狭窄子牛に気管外ステントを設置した子牛の一例
・介助分娩時に肋骨を折り、それが気管を圧迫し狭窄となることがある。
<症例>黒毛和種(♂)、1か月齢、体重42kg
逆子であり、介助分娩。10日齢より喘鳴。抗生物質、ステロイド投与するも改善みられず。
<初診>激しい喘鳴、努力性の腹式呼吸(鼻翼呼吸)を行っていた。
X線検査→胸郭入口〜第二肋骨部にて気管の圧迫、狭窄像が認められた。
CT検査→左右第一〜第三肋骨骨折、骨折片が腹側から気管を圧迫していた。狭窄部は内径4mm(通常は15mm)、長さ5cm。
<治療>外科的治療:気管外ステント(50mlシリンジ外筒に穴を開けたもの)設置術実施。圧迫病変(骨折片)を解除し、ステントを設置した。
<術後>CT検査→内径4mmから11mmに広がった。呼吸の改善が認められた。
<剖検>手術20日後に行った。狭窄部は拡張していたが、気管とステントの間に結合織が充満していた。
<まとめ>気管外ステントの設置術は効果が認められたが、成長とともにステントにより再狭窄する可能性があり、長期的な予後は不明である。
Q.気管虚脱や狭窄となったときの食欲や体温は?
A.体温は40℃ぐらいに上がる。人工哺乳の場合哺乳はするが、一気に大量には飲めない。
Q.CT検査で狭窄部位の長さがこれぐらいだったら切除しても大丈夫という基準があるのか?
A.選択肢の一つとして切除はあるが、気管の手術は難しい。
「新得町 友夢牧場報告」
・新得町…十勝北西部に位置
・友夢牧場…酪農(道内で3位の乳量)、日本最大規模のパラレルパーラー
1日4回搾乳(10時間)
・牧場の3つの方針
@ 搾乳のみに専念
A 地域と連携した取り組み…堆肥と麦わらの交換など
B 酪農教育ファームとしての取り組み…2009年の来場者約3000人
・堆肥生産:12000t/年(75%は経営内利用、25%は耕種農家へ)
・排水処理:オゾン処理
(まとめ)
・地域、環境への配慮→商品の売り上げや企業の社会的価値の向上
・分業先の強化・充実は新たな雇用・活性化につながる
・体験者数:今までと異なる農業教育に対する関心
「klebsiella pneumoniaeによる牛甚急性乳房炎に対する抗生剤の使用法の検討」
・クレブシエラによる乳房炎の第一選択薬:一般的にセファメジン
→治癒率が低いので抗生剤の感受性試験を実施
1診…セファメジン使用
2診…オルビフロキサシン(ニューキノロン)使用
・結果
セファメジンとオルビフロキサシンでは、オルビフロキサシンが有意に有効であった
「プラニパートの使用について」
・プラニパート:子宮弛緩剤、ぜんそく治療薬(出荷規制9日間)
・プラニパートを肉質改善のために使用→残留したものが食中毒を起こした
・肝臓に蓄積→レバーを食べて食中毒
(食中毒を起こすにはかなり大量の投与が必要)
・プラニパート使用の際は注意が必要
「黒毛和種繁殖農家で発生した硝酸塩中毒」
・H21年9月、スーダン青刈りを多給
翌日に母牛4頭死亡、その後3頭流産→病性鑑定の結果、硝酸塩中毒
・農家の概要
飼養頭数:母牛150頭、肥育牛40頭の一部一貫経営
労働力:本人、弟、本人の息子夫婦の4人
飼料:ロール乾草、焼酎粕などTMR給与
母牛80頭から150頭へ増頭してから約1年
以前も硝酸塩中毒があった
・発生経過
2009.9.10 夕方、スーダン青刈りを多給
9.11 朝、繁殖母牛4頭死亡
(家畜保健衛生所立入検査)
9.13 朝、流産1頭目(胎齢231日:8ヶ月前)
9.16 朝、流産2頭目(胎齢248日:8ヶ月ちょっと)
(普及所立入検査)
9.18 朝、流産3頭目(胎齢217日:7ヶ月ちょっと)
・材料
血液および眼房水検査…死亡牛から眼房水採取
同居牛、約2週間後の同居牛および他の牛(流産牛)から採血
飼料検査…給与飼料、給与前飼料、刈り取り前飼料
土壌検査…給与飼料を収穫した飼料畑および周辺畑
・方法
血液および眼房水中の硝酸態窒素検査…RQflex、高速液体クロマトグラフィー
給与飼料および給与前飼料中の硝酸態窒素検査…RQflex
土壌検査…pH検査器、電気伝導度測定器(EC測定器)
・検査結果
死亡牛の眼房水中における硝酸態窒素濃度:12.0〜20.8ppm(中毒を起こしている濃度)
同居牛の血清中硝酸態窒素濃度:10.73〜14.27ppm(通常の50倍程度)
→2頭死亡した牛舎で比較的高濃度であった
飼料畑、給与前飼料:出穂前のスーダンで高濃度(15000ppm程度)
→今回与えていたのは出穂前のスーダン。同じスーダンでもラッピングすると硝酸態窒素濃度は下がる(ラッピングから60日後で3分の1)
土壌分析結果:電気伝導度、硝酸態窒素濃度は基準値よりはるかに高い値
(質疑応答)
l 電話を受けてからの流れは?
→4頭一緒に死亡するのはおかしい。
農家さん本人が硝酸塩中毒だと言っていた
l 他の牛に症状はなかった。いつもはワラを混ぜて与えていたが、その時はワラがなかった
l 治療はメチレンブルーを使用するが、今回はメチレンブルーがなかった
Q:メチレンブルー、水酸薬は出回るのか?ウナギに使っていたが
A:小動物の染色、試薬
ウナギは色がでてくるので使用されなくなった
Q:メチレンブルーで治療してもち治した硫酸塩中毒の牛の繁殖成績
が悪いのはどちらの影響か?
A:硝酸塩がまだ残っているのでは
1500ppnの牛は元に戻るのに半年かかった(強肝剤を入れ始め
てから)
アメリカの基準では1000ppn以下であるが日本の和牛
は500~600ppnでも障害を起こす。400ppnに抑えるべき。
GGT、GOTは上がらないのに、繁殖成績は悪くなる。
Q:硝酸塩中毒で、ビタミンA,Eを調べても落ちない。繁殖障害し
か出ない。他は何も落ちない。
A:教科書的には40とか60に落ちる
Q:硝酸塩中毒時のホルモンバランスは?
A:測ったことはないが、バランスを崩すのでは?上位(下垂体)等
のダメージも考えうる。現場の繁殖成績(妊娠だけではなく発情
の間隔などの細かいとこ)も大切。
意見:鶏糞が硝酸塩の原因となることも。鶏糞の廃棄に気をつけるべき。
Q:AI後の14日に黄体の大きさ、妊日が決まる。着床不全もしく
は着床しても黄体の機能が悪い場合、CGの注射、CIDRを入れ
ると妊娠の可能性は上がるのか?
A:子宮の中に正常な受精卵があるかないかが大事
黄体の機能を上げることで子宮の中にあるもの、受精卵をレス
キューできるのであれば。子宮中にあえて沢山の卵(子供にな
る卵1個とならない卵沢山)をいれるテクニックもあるが現場
向きではない。やるのであれば、早い時期少なくとも7日前後
黄体の機能を増強することしかできないので、効くかどうかは
分からない。
Q:妊娠している黄体としていないものでの差は?
A:同じ個体で14日と20日で比較する。退行率が25%であれば100%
妊娠していない。それにGnRHを入れて定時受精する。
Q:受精卵を入れたと同時にCIDRを入れた経験は?
A:受胎率↑と↓の2つの報告あり。飼養管理を変えつつ、ホルモン
動態、農家を見極める必要がある。
用量を1gに落としたCIDRが販売予定。価格安くなるはず。
Q:4胃変異での変異固定術はどのようなものか?
A:仰臥位でローリングして、その場で固定
Q:チョキで糸を切るタイミングは?
A:そのまま1胃は4胃に落とす
Q:臍帯炎でデキサメサゾンをとめると尿が出てこなくなった。力ん
だらちょっとだけ出てくる。ミルクは飲まない。抗生剤はアンピ
シリン、ペニシリン、OTCなど。BUN、Creは上がらない。
A:尿膜管遺残症で中に膿がたまり塞がっているのでは。尿をとって
きて細菌検査。エコーで臍のあたり、尿膜管を映し、アブセスを
確認する。
膀胱炎にまでなっているはず。発育は進んで行く可能性あり。開
けた方がいいのでは。
Q: 開けてとったが、元気にしていても完全にとれておらず、膀胱
の中が膿だらけになっていて廃用になった例がある。開けた時
には中で癒着していて尿閉をおこしていて、バイパス手術をし
てカテを留置した。
A:上行性に腎臓までいって、次は下行性に伸びてきたのでは
子牛の時に親に臍帯を舐めさせない、子牛同士の吸いっこをやめ
させることで臍帯炎、臍ヘルニアの予防につながる
Q:気管のストローは逆向きに刺さったと理解していいのか?
A:動物は痰を出せない。ちょっと吸い込んで、それを出すために咳
をしてささったのではないか
Q:牛のアレルギー、体質の関与は?
A:アレルギーは内科的な治療で改善がみられる
薬に対して反応しないものは器質的なものの関与が考えられる
ステロイド、抗生物質で炎症が抑えられ、熱などの炎症は少し
は緩和される。薬の反応性を重視して考えるべき。
Q:内視鏡は現場では使えない。口の中を見られる何かいいものはない
か?
A:臼歯で噛まないようにすることが重要
舌隆起から下に落ちるから、フレキシブルなカメラ付きのもの
はどうか。ポータブルで60万円、1mの内視鏡がある。光源
は弱いが使えないことはない。3m、馬用で300万円ぐらい
Q:動物に傷はつかないのか?
A:喉頭蓋にあったた時に大暴れするから鎮静はかけないといけない
Q:共済点数に繁殖障害のエコーはきくのか?
意見:知らない
宮崎でははじかれて帰ってきた。繁殖障害で卵巣、子宮を見る
のは適応外
エコーでより適切な改良ができるので、お金に代え難いものと
思うしかない
エコーは本気で使う気があるのか、何を見るのかの2つの点を
考慮して選ぶべき。上手く使えば5?6年もつ
Q.咳止めに牛用のマスクができないものか?
意見:断乳用マスクはあるが、それでは網目が大きすぎる。
舌が邪魔になりそうだ。
Q.肺炎の治療について
意見:高張食塩水やその他点滴、ラシックス、消炎剤などの治療の効果には個体差があり、効く個体は始めの方で効くが、効かない個体に繰り返し行ってもあまり効果はみられない。
他に、ディマゾン、抗生物質を使ったりもする。
ディマゾンは休薬期間がなく、体重100kgだったら2.5ml静注でも十分に効く。
Q.今回コクシジウム対策として消毒剤、エクテシン、バイコックスの比較を行った農場の母牛は尿腟や子宮内膜炎であったり、A/G比、ビタミンが低く、受胎率も低い。蔓延するような感染性の繁殖障害があるのか?
A.尿腟は繁殖障害の原因となる。黒毛和種では栄養障害が原因となることも。子宮外口を覆うぐらい尿が溜まる場合は受胎率が低下する。
AIのときにサヤカバーを使うと受胎率が上がるという報告がある。
Q.なぜバイコックスは効かなかったのか?
A.農場により下痢の原因が違うからだろう。
Q.バイコックスはいつ投与すればよいのか?
A.1週齢で投与しても効果がある。