「子牛の内科疾病」 酪農学園大学生産動物内科学 教授 小岩政照
北海道では,黒毛和種の飼養頭数が増えてきており,現在全国で第3位である.飼養戸数は専業2000戸,酪農との兼業が1000戸ほどである.兼業化の理由として,高齢化や馬産の不振があげられる.
酪農大では現場での診療や入院畜の治療を行っている.入院の8割は子牛で,同一農場からのまとまった入院もある.
臨床現場における問題・課題として,次のものが挙げられる:
子牛では,
1. 下痢症(クリプトスポリジウム),肺炎(マンヘミア)
2. 牛ウイルス性下痢粘膜病(BVD-PI 持続感染牛)
3. 新生子死(出生時の死亡)
4. 虚弱子牛症候群,免疫不全症(特に黒毛和種,背景にある要因として)
成牛では,
1. 感染症(ヨーネ病,サルモネラ,白血病)
2. 乳熱,規律不能症(Downer cow syndrome)
3. 趾皮膚炎 PDD
4. Mycotoxin(カビ毒),出血性腸症候群 JHS(突然死)
5. Prototheca乳房炎
6. 病原微生物の検出されない乳房炎
<マイコトキシン>
アフラトキシン,ゼアラレノン(許容濃度<1000ppb,影響濃度>560ppb)など.サイレージ中のカビ毒を検査する場合,採材する場所が重要である.例えば,バンカーサイロの場合,カビ発生早期であれば局所的な汚染であるが,時間が経つほど下部へ汚染が広がり,カビ毒濃度も高くなる.また,カビの生えたサイレージおよびサイレージ原料を畑で処理する場合,表面に撒いただけでは真菌は生き残り,次に作付けした小麦を汚染する(赤カビ病)など汚染の循環が生じる.
マイコトキシン中毒の症状として,外陰部の腫脹,眼瞼の浮腫,流涎,鼻汁,出血性腸症候群 JHS(空腸の出血)などがある.子牛では,耳や尾先端の脱毛,脚末端の壊死が生じることがある.
牛など複胃動物はマイコトキシンに比較的強い.アフラトキシンB1ならば,第一胃で60%が代謝され,肝臓へは40%が移行する.このうち2%は乳汁中へ,20%は尿や糞中に排せつされる.ある調査結果では,バルク乳中のアフラトキシンM1の検出率は80%(48/60)であった.いずれも基準値(500ppt)以下であったが,最高200pptから最低0pptまで様々であり,農場によってその濃度が異なることが示された.マイコトキシン濃度を測定する場合,胆汁では腸肝循環の存在のために高くなる可能性がある.
<子牛の疾病>
北海道NOSAIの統計では,ホルスタイン,黒毛和種それぞれの子牛の総病傷数の約8割が下痢と肺炎である.
黒毛和種子牛の死亡内訳では新生子死が52%と最も多い.子牛/母牛体重比と子牛の死亡率の関係を調べると,体重比7%が最も死亡率が低く,介助ありの場合の死亡率は4%であった.より手厚い介助は出生後起立までの時間を短縮し,子牛のIgG濃度を高めた.
出生直後の子牛の動脈血酸素分圧は50mmHgで低酸素血症の状態であるが,正常な子牛では生後4時間で80mmHgまで上昇する.一方,難産で出生した子牛では生後48時間まで80mmHgを下回っており,IgG濃度も500mg/dlと不足していた.子牛の初期の免疫能は血中IgG濃度が指標となるが,これには出生時の低酸素血症のレベルとその改善速度が大きく関わっていると考えられる.出生後の低酸素血症が改善されると,第四胃内の羊水が小腸へ移動し,子牛は空腹をおぼえて初乳を飲み,IgGは腸管から十分量吸収され,その結果高い免疫能を持った健康な子牛となると考えられる.出生後の低酸素血症の改善法として,IPV療法や人工呼吸器による療法がある.
<子牛の下痢>
北海道における子牛下痢の病原体調査では,総数の約50%にクリプトスポリジウムが関与していた.全国的な調査では,鹿児島29%,沖縄本島100%,道北70%,道央62%,道南67%,平均で50%,特に島嶼部で高率に検出されるという結果を得た.海外では北欧で高率であるようである.クリプトスポリジウムによる河川汚染は人への感染を引き起こす可能性があり,糞尿処理の問題等は畜産における課題である.
コクシジウム症の原因となる種は日本では13種である.頻度としてはE. zuerniiが多く,E. bovisなどは少ないが,これらの複合感染が多く見られる.血便を排出する場合はE. zuerniiが,軟便の場合はE. bovisが原因であることが多い.ただし便が正常でもこれらのオーシストが見られることがある.バイコックスは13種全てのコクシジウムに対して,中森獣医散はE. zuerniiおよびE. bovisに対して有効である.
子牛下痢の病態として2通り考えられる.(1)脱水がメインとなるもの;大腸菌やロタによる下痢に多く,吸収不良性というよりは分泌性の病態である.眼球陥没などを示す.(2)酸塩基平衡異常がメインとなるもの;クリプトスポリジウムによる下痢に多く,吸収不良性の病態である.代謝性アシドーシスを生じ,血中HCO3-およびpHが低下する.
治療に当たっては,脱水,沈うつ,アシドーシスの程度を評価し,脱水が主なのか,あるいは酸塩基平衡が主なのかを見極める.
治療は(1)下痢に対する治療,(2)断乳,(3)補液・輸液療法にわけられる.下痢に対する治療は腸粘膜の保護,腸内細菌叢の改善,病原微生物に対する直接的治療を目的とし,経口添加剤(複合整腸剤,生菌剤,プロバイオティクス)や抗菌剤を投与する.抗菌剤の選択に当たっては,環境中に定着している細菌の薬剤感受性が,農場によって異なることを認識しておくべきである.
断乳は胃内発酵異常の改善および粘膜へのダメージの改善を目的とする.ウイルスあるいはクリプトによる吸収不良性下痢症に適応するが,吸乳欲があり,腸管拍水音がある場合に限る.吸乳欲があって拍水音がない場合にはミルクを与え続けてよい(少量,頻回).また吸乳欲がない場合には強制的に哺乳してはいけない.このとき,脱水あるいはアシドーシスの改善を目的とした輸液が必要となる.また木酢炭素末(ネッカリッチ(NR),3回/日)を給与してもよい.
補液・輸液療法は脱水,代謝性アシドーシス,低タンパク血症の改善を目的におこなう.8%未満の脱水に対しては経口的に,それ以上では5%ブドウ糖液や等張リンゲル液,7.2%高張食塩液による輸液をおこなう.代謝性アシドーシスに対しては,HCO3-の不足量が20mEqよりも大きい場合は1.4%等張重曹注液,それ以下の場合には7%重曹注液による輸液をおこなう.低タンパク血症(4g/dl未満)に対しては10ml/kgBWの割合で輸血をおこなう.
<Ruminal drinkers (RDs)>
Ruminal drinkers (RDs)は,代用乳が子牛の第一胃内に貯留することによって生じる症状の総称である.原因は,強制的な給乳や第四胃容積を超える量のミルクの逆流,第二胃溝の閉鎖不全である.
症状として,第一胃の鼓張,拍水音,灰白色あるいは酸臭のする第一胃液,発育不良,食欲不振,沈うつ,脱水,灰白色粘土状便などがある.
本症に対する治療は生理食塩水による第一胃洗浄,他の健康な牛からの第一胃液移植(0.5?1.5L/回)である.輸液をする場合は,ブドウ糖加酢酸リンゲル液やアミノ酸製剤,ビタミンB1を用いる.
第一胃内のミルクの発酵異常を第一胃腐敗症とよぶ.これにより第一胃の運動低下,乳酸によるルーメンアシドーシス,パラケラトーシス,免疫機能低下を生じる.
<子牛の下痢に継発する白筋症および腎不全>
下痢を呈す子牛で,白筋症や腎不全を継発することがある.これは下痢によってビタミンEやセレンの吸収が低下するために筋が変性し,ミオグロビンが放出されることによって腎障害を招くものである.
木酢炭素末(ネッカリッチ,NR)を投与することは,腸管内環境の安定やNRの多孔質による毒素吸着効果を期待でき,さらにクリプトの数や便中のアンモニア濃度を減少するとされる.
・Weak calf syndrome (WCS) 虚弱子牛症候群
→特定できない原因で出生した虚弱子牛の総称
→症状は矮小体型(頭が大きく目の幅が小さい)・易感染性・低栄養・ワクチン(特に生)効果が低い
→生まれながらに胸腺形成不全(末梢免疫細胞少ない)
→胸腺とワクチンの抗体価の上昇率は比例しているため、虚弱(Lym/?GL/IgG低い)
→消化管もひだが不ぞろいで面積が低い(何を行っても軟便が続く)
→日本では5-10%(ただし牧場により差がある)
・WCSの大きな原因は妊娠牛(乾乳期)の栄養障害
→胎子期のアミノ酸(アルギニン)・ビタミン(VA)・ミネラル(亜鉛)不足
→羊水の誤嚥や難産とは異なりCPK上昇しないし、筋力がとても弱い
→他の原因として,感染(レプト,アデノ,IBR,BVDなど)および遺伝(黒毛和種の一部)がある
・初乳移行免疫と自己免疫
→下痢に関しては初乳でカバーできる
→肺炎に関しては初乳ではカバーできない(自己免疫で対抗する部分であり、胸腺が重要)
・胸腺重量の推移
→10ヵ月例でピークを迎えその後24ヶ月例以降は脂肪化していく
→WCSでは出生時にすでに健康牛の五分の一しかない
→しかも肺炎になりやすい時期にリンパ球が増殖しきれない為、肺炎のリスクが大きい
→胸腺は胸部・頚部があり、大きさは比例している為頚部胸腺の触知で大きさが分かる
→胸腺スコアと肺炎発症に関して肺炎発症の80%はスコア1だった
・子牛のMannheimia haemolytica肺炎
→頭部下垂はマンヘミアの可能性があり、重篤な場合(死亡率55%)がある
→頭部下垂・呼吸緩慢(非促迫)は胸膜肺炎による胸痛の緩和目的である可能性が高い.またラ音もない
→超音波で肝様に見える.超音波は刈毛して第四?五肋間にプローブを当てるとよい
・胸腺スコアと鼻腔内の病原細菌分離割合は反比例する
・胸腺スコア(TS)と日増体量(DG)の関係
→TS1.5以下だと、DG0.5以上がTS2.0以上の二分の一となってしまう
→TS1.5以下でもDG0.5以上がいるが、環境の影響も大きいと考えられる
→採食によりDG,T-cho,TSが増加しうる
→TS/DG低いものは病原体のキャリアになりうるし、いじめられるため、TSによるグルーピングが必要
・WCSには感染・遺伝・栄養の三つの要因がある
→WCSの出生制御に妊娠牛の栄養状態改善が有効
→WCS多発農場では,TDNが充足していてもCPが不足している場合がある
→蛋白飼料およびバイパスアミノ酸を追加したところ,アミノ酸(特にアルギニン),亜鉛,グルコース,コレステロールが充足量となった.?グロブリン,TSも上昇し,肺炎や腸炎の発生は減少した
→母牛の代謝プロファイルテストを行う場合は,子牛も同時に行うことが勧められる
・健康な子牛(子牛の疾病制御)のためには妊娠期の栄養を充足させ、健康な子牛を生ませることが一番のポイントとなる
○ブドウ糖加酢酸リンゲル液(DAR)の効果
・ヒトの医療分野では肝機能低下時やアルカリ化輸液などに用いられる。
・小動物ではオペ中の維持液として使われている。
@牛の原発性ケトーシスの治療に効果があるか?
@25%ブドウ糖(HD)群
A5%ブドウ糖(LD)群
BDAR群
の3群に分け、Glu、インスリン、NEFA、T-ケトン濃度の変化の比較を行った。
<結果>
・Glu:HD群では輸液後上昇したが、リバウンドで結局元よりも低値となった。
・インスリン:DAR群でシャープに上昇し、リバウンドも見られなかった。
・NEFA:HD群、LD群ではリバウンドが見られた。DAR群では輸液3時間以降に
低下した。
・T-ケトン:HD群、LD群ではリバウンドが見られた。
以上の結果を総合すると、原発性ケトーシスの治療にはDAR、LD、HDの順に効果
があるということが分かった。
A脂肪肝の治療
・DARを単独で用いるとGlu濃度の上下変動が見られる。
→デキサメサゾンの併用によりこれを防ぐことができる。Glu濃度が下がるこ
ろにデキサの反応により血糖値が上がるから。
<結論>DARとデキサをうまく組み合わせて使えば脂肪肝を悪化させずに治すこと
ができる。
Q.使用するデキサは水性か?投与量、打ち方は?
−A.水性。10mlを筋注で。
○出産後の肝機能障害
・牛では正常分娩でも子宮内に病原菌が侵入してしまう。その結果子宮内で細菌が増殖
し、エンドトキシンを産生することによって肝機能の低下が起こり、脂肪肝になって
しまうことがある。
Q.出産後の子宮のケアはどういった方法で行う?
−A.子宮内に抗生物質を注入するのが最も良い。
Q.ボロ停滞になるとなかなかボロが出てこないが、何かいい方法はあるのか?
−A.そういった牛は潜在性低Ca血症である可能性が高いので、まずは子宮のケ
アを行い、それから血糖、Caのコントロールを同時に行う。子宮の収縮を
待ったり、運動させるのも良い。
○慢性マイコトキシン中毒
・慢性肝障害になると血液検査にてGGT値がひっかかる。
・(吸着剤添加試験の様子の写真より)
昼間、添加群は立って餌を食べている個体が多いが、対照(非添加)群は全頭座って
いる。→添加群の方が調子が良い。
○乳房炎の制御・対策
・現在、粘膜ワクチンを共同研究中である。
・従来はワクチンを筋注してIgG濃度を上げていたが、粘膜ワクチンの目的は鼻腔粘膜
に接種することによって乳腺上皮粘膜におけるIgA産生を促し免疫力を上げることで
ある。
・大腸菌性乳房炎の発生頭数が多い複数農場においてプロバイオ資料であるNR・UC(ネ
ッカリッチ・ウルカル)添加飼料を与えたところ、発生頭数が減少した。
→NR・UCによりルーメン環境、腸細菌叢が安定化し、その結果便正常も安定化し
たためだと思われる。
Q1.何日齢までだったら胃カテーテルを使えるのか?
−A.目的によって異なるが、哺乳目的ならば3ヶ月齢まで。
哺乳瓶だと7割は第四胃に行くが、カテーテルだと7割がルーメンに行ってしま
うので、やはり出来る限り哺乳瓶を使うのが望ましい。
Q2.胃汁投与は何日齢から効果出てくる?
−A.3週齢以降。胃カテーテルで100mlぐらいから与え始める。
Q3.IPVは実用的か?
−A.機械自体は持ち運び出来るが、酸素ボンベが必要である。しかし、大抵の農家には
置いてないので自分で持っておかなければならない。2kgのボンベだと3回ぐらい
で使い終わってしまう。飼養頭数の多い農家には用意してもらっている。
Q4.WCSが多頭飼育農家で多いのはなぜか?
−A.乾乳期の管理が全頭行き届いていない可能性がある。
乳牛では乳量や産次の管理が重要である。
Q5.WCS予防にはZnの添加が必要か?
−A.海藻粉末や化石サンゴなどのZnを含んだ天然のものを与えると良い。
Q6.ルーメン洗浄のやり方は?
−A.胃カテーテルを用い、2人以上で行う。腹部を押してもらう必要があるので。
Q7.NR・UCの使い方は?
−A.NRは100〜150g、UCは50〜100g与える。農場によって投与量は変わってくる。
1か月間はお試し期間として使ってもらっている。時季によりNRだけ、UCだけ
というように使い分けることもある。
Q8.導入したばかりの肥育牛でもたまに眼瞼の腫脹や外陰部の腫れが見られることがある
が、このような症状が起こるのはどのような機序からなのか?
−A.evidenceがなく、はっきりとは分からないが、発情ホルモン様物質の影響なのか?
GGT値のみが異常高値(50〜100U/l)を示す場合はカビ毒の影響を考える。
Q9.rumen drinkerに対して胃汁を与える場合、どの胃汁が一番いいのか?親のもの?
−A.和牛の場合は健康で大人しい牛のものを。ただし、肥育牛の胃汁は避けた方が良い。
乳牛の場合は乾乳期の牛のものが良い。
Q10.脂肪肝の診断を具体的に。
−A.確定診断は生検。北海道NOSAIでは血検によりGlu、NEFA、ケトン体、インス
リンの値を見ていた。私が指標としているのはBilとGGTで、Bil値が1以上、
GGT値が100以上になると脂肪肝を疑う。
Q11.DARのブドウ糖の濃度は?
−A.5%が最適。どうしても濃度を上げたいのであれば、輸液時間を延ばす必要がある。
5%ならば20分程度で入れられる。
Q12.多頭飼育農家ではマイコプラズマが問題となってきているが、乾乳期の母牛管理をし
っかりしておけばそのような感染も起こらなくなるのか?
−A.その通り。発症を抑えればマイコは環境中から減っていくので、感染を防ぐよりも
発症を抑える方が重要である。
Q13.多頭飼育農家では夜中に出産させないために夕方1回給餌を行うことが多いが、それ
が及ぼす栄養面への影響はないのか?
−A.あると思うが、そのような実験を行ったことがないので何とも言えない。
Q14.胸腺重量の推移を見ると、日齢による差が大きく、また、ストレスや病気により胸腺
は委縮するという話であったが、そのような場合の胸腺スコアの付け方は?
−A.出生時の大きさを基準にする。子牛が産まれた時に体重測定と同時に胸腺スコアを
付ける農家もある。
Q15.WCSの話のところでCP充足率が150%を超す農家があったが、どのような餌を与
えているのか?また、先生が薦めるバイパスアミノ酸製剤は?
−A.和牛だが、乳牛用の餌を与えている。
モリナガが出している5種のアミノ酸が入ったものを使っている。
(1)去年白筋症が6例発症した農場にて,一ヵ月齢の牛の死亡発見により、解剖を行った。
2009年3月11日生,同年4月1日死亡,黒毛和種,雄
外貌:眼球陥没(脱水)
剖検所見:第一胃および第二胃に鋸屑が充満していた。
Q.どんな鋸屑だったか?
A.よく分からない
→シロアリ駆除を行った鋸屑の場合、親牛でも下痢をすることがある。
以前そういった症例があり、敷材を用いないようにしたら終息した。
新しい古材でも防腐剤が付けられていて、死亡することがある。
Q.それ以前に診療要請はなかったのか?
A.一切無かった
(2)2009年5月24日生,同年6月9日死亡,黒毛和種,雌
(1)の症例と同じ農家である.前日午前までは元気であったが,下痢をし、往診時触ったら心停止したため、解剖した。これも第一胃の中に鋸屑が充満していた。
駆虫はしていない。今は白筋症の治療が中心。事故率は平均くらい。死廃も5-6%程度。繁殖は問題なし.
他の臓器には異常がみられなかった。こんなにパンパンになるくらい鋸屑を食べるんだなぁと驚いた。
→鋸屑を敷いていて,子牛が導入直後に食べることはよくある。しかし、しばらくしたら食べなくなる。たまに、死亡する牛もいるが、そういう牛は毛色が悪いし血検データも悪いし、第一胃腐敗症になってしまっている。親子とも飼料が少なかったので,親牛の栄養状態を改善したところ,治ったことがある。
Q.親につけているのか、水は飲めるのか、いつ死亡したのか、群管理なのか?
A.つけている。水はウォーターカップとバケツ。群管理をしている。
→本当に鋸屑が原因だったのか?排便障害などではないのか?あるいはエンドトキシンショックか。
→飼料,特にミネラルが不足しているとき食べてしまうことがよくある。健康牛は食べないので,鋸屑を食べること自体異常である。栄養はかなり欠乏していたのではないか?
長期的にしっかりミネラルを取らせる必要がある。生まれた時点で欠乏している可能性が大きい。これらの可能性は,血液や鋸屑を検査することではっきりするだろうし、原因がはっきりすれば改善できると思う。そういうネットワークはないのか?
→家保は法定伝染病疑いでないとなかなか受け入れてくれない。大学にもって行ってもよいか?
→よい。
→やはり原因をしっかり突き止めなければいけない。
→私も経験がある。しかも立て続けに数件であった。親子とも毛艶が悪かった。CKとGGTが上昇していた。家保に連絡したら白筋症で、飼料を検査し、ビタミンやミネラルを加えたら改善した。
→私はシロアリ駆除した鋸屑が原因だった。飼養管理自体はよかった。消化管の中に鉋屑が入っていて、胃の糜爛も起こしていた。その鉋屑を止めたら改善した。普通の鋸屑を用いたら大丈夫だった。
→では、飼養管理がよい農場なら中毒を疑い、そうでない場合は飼養の見直しを行ったほうがよい、ということか。他にこれが原因の死亡例を診たことのある先生は?
(数人挙手)
では、死亡例が出たときに解剖している先生は?
(数人挙手)
意外と少ない。ぜひ解剖を行ってみてはどうか?
→自分は鋸屑自体が原因で死亡という症例は見たことが無いので,それが原因とは限らないかもしれない。
→親の乳が足りない、つまり、濃厚飼料と水が足りないという可能性も。もう一つ気になるのは駆虫していないということなんだけど。
→自分は鋸屑で死亡した可能性がある症例を見たことがある。鋸屑を食べないように3日齢からスノコの上で飼わせたが、死亡率が減らなかったので鋸屑の異嗜が原因とは限らず、異嗜は一つの指標かもしれないと考えた。
→毛球症ではなかったのか?栄養価の低いところでは毛球症が出やすい。
→大学へ血液を持ってきていただければ検査できる。
→眼房水でも確認でき、酵素が分かるので、忙しければ眼房水だけでも大丈夫。
生産牛50頭程度の農場。
風邪がはやって治療を行い、その後数日して、尿がでなかった牛が死亡しているのが見つかり、解剖。
解剖所見:腹水(後に尿と判明)
尿道の一部が赤く腫れ、膀胱が炎症を起こしていた。
膀胱に穴は見つからなかった。
腎臓にも炎症。
臍帯炎からのものと考えられるが、感染機序が不明だったので。
→臍帯炎が治ったあと、菌が残っていて膀胱・腎臓がやられることがある。
→尿膜間遺残で上行性に感染したのでは
尿膜間遺残は確かにあった
→膀胱炎・尿道炎でおしっこ詰まって、その部位をとってもすぐまた炎症起こることがある。そういう場合、カテーテルを治るまで留置して待ってから抜去すれば上手くいくことがある。
→腹水と思われたのは尿だったのでは?
→よく見ると、解剖前の外貌で腹部の毛がない。これは尿が長い間漏れて皮下に入っていたと考えられる。結局尿毒症を起こし、膀胱破裂を起こし、死亡したのだと思う。
時々見るのだが、膀胱に穴があって、もれて、皮下に入って毛が抜ける。
→石だったのか、炎症で出てこなかったのか
→腎は上行性、尿道は下行性で、膀胱が原発だったのでは?
→やはり膀胱からの炎症の産物が皮下へ、一部そのまま膀胱へ残り、耐えられなくなって破裂したのでは。
→一回、臍帯炎から膀胱に入っていくエコーを見たことがある。臍帯炎の膿が膀胱へ入っていく瞬間のエコー。やっぱしそれが原因だったのでは?
→尿膜間の炎症がやっぱり原因では。臍動脈は出産時切れてぎゅっと縮んで膀胱へいく。だからやっぱり尿膜間が原因では。広い意味での臍帯炎の予防が大事かと。
→では、ちょっとでもおかしければ抗生物質使いまくったほうがいいのかな。
→お産の難易度しだいでは?重いと尿膜間・臍動脈・臍静脈が残ったり、変なところで切れたりするのでそういう場合は抗生物質使ったほうがいい。腹膜炎になったらあっという間にだめになるから。
→獣医が立ち会うお産は難産。
→そういう時は抗生物質かな。臍の病気は発症したら手遅れになることが多いので。
→なかなか首上げない場合はマイシリン用いたほうが良いということか。
→プラスアルファステロイドを与えると肺へのケアとしてよいかも。ドプラムと併用で静注。
→一回デキサ2cc i.vで打ったら死んだことがあった。
→2ccは多い。打つ前に体温は測ったか?熱あるときは臍帯炎疑ってみるのも良いかも。
(1)食道周囲炎および縦隔洞炎
<症例>
黒毛和種,9カ月齢,雌,導入時体重223kg.2004年4月13日,セリにて購入した.
セリ当日に軽度の震えがあった.2日後に削蹄,補液したところ,翌日,食欲不振となった.
<経過>
4/16 食欲不振,T40.3℃.気管支炎,創傷性第二胃炎を疑った.
4/17 腹囲膨満し,圧迫すると呻いた.T40.1℃.
4/18 T39.3℃.胃内ガスを抜いた.
4/19 頚部に腫脹をみとめ,抗生剤を投与した.
4/23 鼓張反復(ガスを抜いてもすぐに溜まる).套管針を留置.
4/24 X線撮影するも診断不能.第一胃切開したところ,胃内に癒着等異常なし.横隔膜の方へ押すと呻いた.
4/26 鼓張が改善した.再度X線撮影したところ,頚部食道周囲に炎症像をみとめた.予後不良と診断した.
4/2? 鹿大にて剖検.食道周囲から横隔膜直前にかけて結合織に囲まれた膿瘍がみとめられた.扁桃洞右側に創口があった.
<考察>
経鼻カテーテルを挿入した際に扁桃洞を傷つけた可能性が考えられる.導入時,すでに症状が進行していたかもしれない.しかしながら,生産農家に問い合わせたところ治療歴はなかった.
(2)創傷性食道狭窄
<症例>
黒毛和種,1カ月齢,雌.
生後10日で下痢を発症し,ストマックチューブにて生菌剤等を投与した.翌日,母乳を吐出した.X線撮影したところ,胸腔入口に明らかな狭窄がみとめられた.胃内容物はなかった.食道切除および吻合を勧めたが,畜主の了解を得られず,症例はその後死亡した.
<考察>
ストマックチューブの長さと,口から狭窄部までの長さが一致していたので,チューブが原因があったことが考えられる.しかしチューブに損傷はなかった.輸液剤が原因である可能性がある.
(3)
<症例>
成牛,雌.
X線にて,食道に炎症像あるいは腫瘍と考えられる像をみとめた.聴診では肺に雑音なく,異常はなかった.
食肉検査所にて検査したところ,化膿性肺炎であった.
質疑応答
1. X線撮影の方法は?
自前のポータブルで撮ったが判然としなかった.曽於共済の撮影器具を使用したところ,きれいに撮れた.
1カ月齢くらいの子牛までならば,自前のものでも十分に撮れている.子牛は基本的に臥位で撮る.胃腸内容物を撮るときに起立位にすると,横線が出て腹腔内の評価の邪魔になる.毛球症などの診断にも利用可能である.
2. ポータブル超音波診断装置でも診断可能である.X線ではその場で判断できないこともある.超音波は股関節脱臼/亜脱臼の診断にも利用できる.
3. ストマックチューブは,胸腔に入ったところを傷つけやすい.月齢の若い牛ほど気をつけなければならない.便利な道具だが,農家が使う時には十分に注意させる必要がある.また,チューブが折れることがある.
4. (第二例目について)補液の温度が高かった可能性はないか?
その場合,食道下部に炎症が起きるかもしれない.
5. ストマックチューブの先端はメーカーによって異なる.輸入品の場合はホルスタイン向けのものが多い.黒毛和種に応用する場合は先端の大きさや形状を変え,できるだけ柔らかいものを適用した方がよい.
1. 小指頭大肉片が多数混入する粘液下痢 (有)シェパード中央家畜診療所 蓮沼浩
・300〜400kgの肥育牛において、便の中に小指頭大の肉片が5〜6個混ざる。
・抗生剤やサルファ剤、生菌剤などで治療を試みるが、治らない。コクシは陰性。
・年に1〜2頭見られるが、現在もこのような症例を3頭診ている。
・便に血や偽膜が混ざった症例もいる。
<意見>
・胃でできたポリープではないか。胃炎の可能性。
・ポリープは腸よりも胃でできやすく、一胃、二胃、三胃の順にできやすい。
・血や偽膜が混ざっている症例はおそらく腸炎にもなっている。
2. 下顎切歯に見られる腫瘍(エナメル上皮腫?)
・肥育牛で数年に1頭の割合で見られる。現在も1頭診ている。
・下顎にできたmassが巨大化してくる。
・いつも積極的な治療は行わず、出荷までそのままの状態であるが、何かいい治療方
法はないのか?
3. 第四胃粘膜に点状出血見られる腸炎
○第一病日(2月7日)
・稟告:子牛が下痢をする。子牛は2〜3ヶ月齢。
・身体検査所見:体温38.5℃、茶水様性下痢、脱水(++)、食欲(−)、元気(−)、
発育は良い。
・診断:腸炎
・治療:輸液
○第二病日(2月8日)
・身体検査所見:体温36.3℃、起立不能、可視粘膜蒼白、食欲(−)、元気(−)
・再び輸液を行ったが、斃死した。
・剖検所見:第四胃粘膜面全体に点状出血が見られた。
<意見>
・点状出血ではなく、カビではないか?胃チューブや哺乳瓶の消毒を怠ると、そこ
でカビが増えたりする。
・アスペルギルス性の出血性第四胃潰瘍だと思われる。普通アスペルギルスはルー
メンで処理されるが、今回の症例ではそこを通過し第四胃に行ったのではないか。
粘膜の一部を組織検査すればすぐ分かるかも。
・(ルーメン粘膜の写真を見て)絨毛の発達が悪い。ルーメンでは病変見られない。
・治療というよりもカビ毒吸着剤で予防した方が良い。
Q.アスペルギルスは胎盤を通過するのか?
−A.する。よって経胎盤感染する。
黒毛和種肥育牛における体脂肪測定の試み鹿児島大学繁殖学分野 小島敏之
肥育元牛の評価を10ヶ月齢で行いたいというところからこの実験が開始された。
体脂肪測定は重水希釈法・インピーダンス法(アメリカでは信用されず、二重エックス線法を用いている)などがあり、乳牛では進んでいるが、和牛ではまだまだ未開発である。
ゴールデンスタンダードをまず作るために、体内で水分と同じ動態を示す重水を用いて体水分量を測定し、そこから体脂肪率を測定した。
重水を投与して、その排出期間を測定することでデータをとることにした。(ちなみに重水は二ヶ月で完全に排泄される。)これは、簡略化した変法でも大丈夫だったので、それで行うことにした。
重水希釈法のデータが正確か調べるために実際屠畜して実測を行ったら、データが性格であることが分かった。
重水希釈法よりもより簡略に行うためにインピーダンス法を用いて行うことにした。
インピーダンス法は、電気伝導度で水分量を測定する方法である。
まず、どこを測定したらよいのか調べるため、背骨を中心に両側6箇所、電極間の距離を50cmにして、ヒビアルとエコーゼリーを用いて密着させて測定を行った。これを何日間か繰り返し、測定値のばらつきが少ない部位を再現性が高いとした。
その結果、6-7肋間・臀部・腰角が再現性が高かった。
つぎに、重水希釈法との相関を調べるために実際に両方で測定した後、インピーダンス方で測定した。このとき、体重・体高・月齢がほぼ同じの6頭を用いた。
最終的に、体高を推定式に加えると重水希釈法とインピーダンス法に相関が見られた。
今後、例数を増やして推定式をよりよくしていきたい。
Q.肉質に関してはどうか?
A.これからの課題。インピーダンス法の欠点として皮下脂肪・筋間脂肪・サシの区別がつけられない。
Q.近赤外線法などは考えているか?
A.考えていない。が、肉質という側面からは良いかもしれない。
分娩後早期卵巣賦活,発情同期化,定時AIが子宮内環境に及ぼす影響宮崎大学獣医臨床繁殖学講座 北原豪
<方法>
分娩後30日までの黒毛和種雌を用い,次の処置を行った:
分娩後第0日 GnRHまたはPG
第7?16日 PRID
第16?18日 GnRHまたはE2
第18日 定時AI
第28日 黄体確認
同時に超音波によって子宮径を測定した.
さらに,子宮スワブと「サニ太くん」を用いて一般生菌数を測定した.「サニ太くん」はスワブを塗布し35℃,48 h培養すると,菌の存在によって赤く変色する.
通常,外子宮口および膣深部に菌はいない.
<結果および考察>
両子宮の直径の合計は,第0日(4.2cm)から第7日(3.9cm),第28日(3.5cm)と有意に減少した.
子宮内細菌数は第0日から第28日にかけて有意に減少した.
以上のことから,早期卵巣賦活,発情同期化および定時AIは,子宮内環境の回復に悪影響を及ぼさないことが示された.
・家畜疾病対策強化目的を目的とするJICA技術協力プロジェクトの一貫として行われ
た。
・現地での主な活動内容は、疾病調査、技術指導、確定診断、情報収集である。
・カゾセンターにおける牛の診療内容で最も多いのは駆虫である。
・ブルセラの検査方法にはRBテストとELISAを用いた。
・キルフラにて38戸、956頭の牛の調査を行ったが、結果は地域によって異なるよう
だ。
(1)前報にて子宮筋炎疑いの症例宮崎大学獣医臨床繁殖学講座 上村俊一
5月,分娩1カ月後で無発情,子宮は硬く,拡大していた.
超音波検査によると,右子宮角は1指幅,左子宮角は3指幅であり,左子宮角内腔には粘液が貯留し,内膜が消失,筋層が肥厚していた.子宮筋炎を疑い治療した.
6回の治療にも関わらず治癒せず,剖検したところ,腫瘍(リンパ腫)であった.
(2)単胎と双胎での妊娠ロス
妊娠のロス(流産)は,単胎では8.1%であったのに対し,双胎では24.5%にのぼった.また双胎で,黄体が2個のときには,1個のときよりも流産の率が高かった.
双子を妊娠した場合,これらがともに出生する割合は75%であった.妊娠ロスの内訳は,双子の一方のみが出生(1%),流産(13%),母牛事故(2%)であった.
双胎を生じやすい要因として,乳牛,経産牛,夏期出産,卵巣が動かない個体,分娩後100日を超えてAIした個体,などが考えられる.
双胎であることを診断した場合,後期胚死滅(45日目まで)および早期胎子死(46?60日目まで)の有無を確認するために,診断から1カ月後に再度チェックする.
Q1.死亡牛からの心血、眼房水の採り方は?
−A.心血は心臓の上から針を刺しても採れないので、心臓を開き、分離している血清を
採る。Gluは測れないが、BUNやChoなどは測れる。
眼房水は18G針を眼球に刺し、採る。
Q2.双胎の場合はPGを打って流した方が良いのか?
−A.双胎の場合人工流産させて新しくつけた方が良いと書いてある論文もあるが、動物
倫理の問題などによりしばらくは様子を見てからの方が良いと思う。三つ子の場合
は人工流産させる。
Q3.DARのブドウ糖濃度は5%がいいということであったが、電解質に影響が出てしまう
のではないか?
−A.電解質バランスという点で考えれば、5%は望ましくないが、一時的な糖代謝の改
善を目的とするのであれば効果的である。
意見1.
・難産の時のために50%ブドウ糖液を20ml用意しておく。分娩直後元気のない子牛
に投与すると元気になる。7%重曹の30ml i.v.急速投与も同時に行う。
・難産で産まれた子牛は肺、脳が浮腫状態に陥っているので、それを軽減されるのが
この注射の目的である。
・高張食塩水でも同様の効果が得られるだろうが、ブドウ糖液の方が安全だろう。
意見2.
・以前下顎massにビムロン(インターフェロン製剤)が奏功した経験がある。
・病変が小さいうちは電気メスで取れる。
Q4.難産分娩後、子牛の心臓は動いているが呼吸が停止している場合、どういった処置を
行うのがいいのか?
−A.まずは自発呼吸を促す(呼吸中枢を刺激させる)ために薬を使ったり頭に冷水をか
けたりする。牛の難産では産まれる前に肺がやられて呼吸中枢がおかしくなってい
たり、気道に胎水が入っていることが多い。そのような場合は口で吸ったり吊るし
たりしているが、肺の末端まで入った胎水を吸うのは不可能である。
意見3.(Q4に関して)
・出産介助を行う時、子牛が頭位であれば頭が出てきた時点で引っ張るのをやめる。
・腰角で引っかかる時に腹部が圧迫され、胎子が母体内で飲み込んでしまった羊水が
吐き出される。
Q5.出生後しばらくは呼吸をするのだが鼻腔などから泡沫が出てきて数分後に死んでしま
うことがある。予防法はあるのか?
−A.防ぎようがないが、肺の聴診をして泡沫による雑音が聞こえたらステロイドの使用
を検討する。
Q6.肺水腫に利尿剤はどうか?
−A.緊急度による。緊急を要する時に使うのは遅すぎる。
Q7.子牛の臍帯炎がよく発生するが、臍帯をイソジンで消毒するのは本当に効果があるの
か?抗生物質を注入する方がいいのか?
−A.まずは臍帯の状態を知ることが大事。農家への指導も重要。正常分娩時の臍帯炎と
いうのは尿膜管炎または臍静脈炎であるが、逆子であると膀胱に近い部分で臍帯が
切れてしまい臍動脈から細菌が侵入しやすくなる。
アメリカでは臍帯消毒専用のキットがある。日本ではペニシリン系乳房炎軟膏+抗
生物質+ステロイドという処置を行っている。
イソジン処置と無処置では差がなかったという報告もある。
糸で結紮するのは問題ないが、縫合はしない方が良い(細菌を閉じ込めてしまう)。
Q8.(Q7に関して)乳房炎軟膏で臍帯を消毒してはいけないと聞いたことがあるが。
−A.塗り方が間違っているのでは。周りに塗るのではなく、細菌を外から入れない目的
で臍帯の中に塗る。
Q9.片側の眼瞼が腫れ耳が下がっている9ヶ月齢の子牛がいるのだが、何だろうか?外陰
部は腫れていない。
−A.マイコによる中耳炎が疑われる。
(治療法の提案)
・イソジンを20ml耳の中に入れ、しばらく耳を握っておく。
・マイシリンを耳の中に入れ、マイシリンとプレを筋注する。
・14G留置針の外筒で鼓膜穿刺し、排膿させ、洗浄する。
・中耳炎という診断がついたら鼓膜穿刺をするのが最も効果的である。
Q10.薬をやっても子宮洗浄してもCIDRを入れても発情が来ない未経産牛がいるのだが、
どうすればいいのか?
−A.奇形を疑うことと、そうでなければPMSGを1000単位打って1回卵巣を動かしてみる。その2日後にhCGを3000単位打つ。