(有)シェパード家畜診療所 蓮沼
目的
どうしたらもっと臨床研究会が楽しくなるかアイディアを集め、今後の参考にすること。
方法
ブレインストーム法 KJ法
技術関係
運営について
座長について
次回へのつながり
会場について
10万円払ってもよいセミナーとは?
去勢アンケート結果報告(26人)
実施日:20年11月9日
去勢する時期 4、5ヶ月が半分以上。
去勢に麻酔を使うか 62%が使用している。
どんな麻酔 多くはキシラジンである
牛はどんな体位 寝かせるのが61%、立たせるのが31%
去勢の方法は メスが72%、バルザック22%、
陰嚢の切開部位は 下部縦2箇所が66%
精索は結紮するか するが92%
何で結紮するか 絹糸が59%
抗生剤は使うか 使うが88%
宮崎大学 獣医臨床繁殖学講座 中間 由規
発育不全黄体とは・・・
黄体形成不全の一つ。最大黄体直径が18mm未満であり、血中プロジェステロン濃度は低値、短い発情周期を示す。原因としてはFSH,LH分泌の不足、LHレセプターの不足などが言われている。
症例・・・宮崎大学で飼養されている黒毛和腫
BCS 2.75 4産
1日1回超音波診断装置によって卵巣を観察した。
DAY−7 初診(のう腫)
DAY0 GnRH
DAY2 排卵
DAY7 PG
DAY10排卵
DAY18排卵
卵胞直径と血中E値の濃度はだいたい相関していた。
まとめ
本症例は卵巣嚢腫治療後黄体形成不全となった。
本症例は治療後8日の発情周期であったが、次の発情周期は正常となった。
卵胞のう腫治療後は排卵の確認だけでなく、黄体の形成を確認する必要性が示唆された。
質問
Q.AIではつくが、ETではダメな牛がいる。
A.黄体を発達させるためにLHレセプターの動因が必要。
Q.形成不全7日8日で黄体に内腔がある、これが悪いのではないか。
A.今回の症例では腔がなかったから今回からはわからない。
Q.GnRHはのう腫の治療?
A.はい。
Q.GnRHうったら7日8日で発情兆候がみえるが、これはAIしないほうがよいか。
A.PGを打ってからAIしたほうが良い
意見
・P濃度が低いから次の発情が悪いと思う。
・腔や突起なども見てほしい。
宮崎大学 獣医内科学講座 片本
尿の浸透圧が低く、水を制限しても浸透圧は変わらない→尿崩症
バソプレッシンを投与すると改善がみられる→中枢性尿崩症
みられない→腎性尿崩症
小動物の治療としては・・・
外因性バソプレシンを点眼
低ナトリウム食
症例
2008年5月29日
生後9ヶ月で導入 導入時238kg
尿量、飲量が非常に多い。
6月 宮崎大学へ
白血球数少し高い
グルコース少し高い→クッシング?
尿比重は非常に低い
尿量測定
12時間の総尿量を測定
尿量→68.46L/day(正常は8〜24L/day)
水制限試験
血清浸透圧>尿浸透圧
バソプレシン投与試験
血清浸透圧>尿浸透圧 尿比重低いまま推移→腎性?
病理解剖の病理所見
左腎実質の赤色病巣と軽度の萎縮
暗赤色巣ならびに白色巣1個
組織所見
好酸球浸潤を伴う間質性腎炎
腎不全、糖尿病、クッシング病、尿崩症の鑑別
牛では全てまれである。人や犬ではNDIは報告がおおい。
本症例では腎性尿崩症と診断したが病理組織学的診断との関連は不明。
質問
Q.腎臓に異常があることから、クローディン16欠損症ではないか。
A.発育は良かったからはずした。
Q.238kgでも例があるようです。
A.クローディンの時に好酸球性の変化があるか調べてみる。
4.宮崎大学医学獣医学総合研究科付属動物病院産業動物センター設置予定
宮崎大学 獣医臨床放射線学講座 浅沼
・Aquilion LB(東芝16列マルチスライスCT)
血管造営をしながら、透視をしながらCTとれる
開口径 90センチ…350キロくらいまでの子牛なら入りそうである
→これをもとに大動物用CTを開発できれば。
CT架台自走ヘリカルスキャン
平成21年9月頃、医学部より移管予定
開口径 72センチ
研究テーマ
水無脳症の診断(脳室の拡張を断層画像でデモ)
肉牛のサシを生存中に評価(内臓脂肪、皮下脂肪、はCT値が違う)
3次元再構成
宮崎大学における大動物CTの状況
子牛の水無脳症の診断など。
産業動物の断層画像のご用命は宮崎大学にお願いします。
質問
Q.子牛の下痢 第4位に毛玉や異物がみられる、CTで診断できるか
A.だれもやっていない。正常な子牛の胃の内容物に関するデータがない。
胃壁の肥厚は診断できる。予想では4割くらいは検索できるだろう。やってみないとわからないので、数をかさねていく。
Q.他の農学部のサシの研究とは関係があるのか。
A.関係を持ちたいといった状況。骨の下の筋肉は深いところにあるため、超音波では限界がある。CTではもっと奥まで見ることができるので利用可能か。
Q.最大でCTに入るのはどのくらいまでか。
A.現段階で、東芝は200キロまで。これから開発予定。耐500キロの寝台で380キロまで入れられるものを構想。肥育の牛ははいらないが、子牛は入るだろう。
Q.CTに入れるのに麻酔は必要か。
A.速い速度で撮れるので鎮静でも入れられそうだ。
意見
・子牛の段階での飼養基準、家畜試験場がおこなっている。家畜試験場と提携して、子牛の筋肉の付き方、内臓脂肪などの研究を進めて欲しい。体重だけの評価ではなくて、CTでこれらのデータを農家さんに示せれば。無駄な濃厚飼料は使わなくて良い。産肉の成績もわかればなおよい。
・潜在精巣の位置の特定やまだ直検できない9ヶ月齢より若い個体の繁殖能の診断に利用できそうだ。
宮崎大学 臨床繁殖学講座 北原
精巣異所症と潜在精巣の相違
精巣が、精巣異所症では腹部皮下や会陰部皮下に存在し、潜在精巣は腹腔内に留まる。
精巣異所症・潜在精巣のどちらにせよ、残存する精巣が、両側性の場合、精液性状は不良。片側性・両側性のいずれの場合もテストステロンを産生し肉質に影響を与える。
症例1
5ヶ月齢の黒毛和腫牛。左側精巣がなく、左側鼠径部皮下に可動性の腫瘤を触知する。エコーにより左側精巣と診断した。→左側精巣異所症
摘出した精巣の組織学的検査 変性した精祖細胞、ライディッヒ細胞が多数みられた。
症例2
6ヶ月齢の黒毛和種牛。左側潜在精巣であり、摘出を試みたが精巣の位置が深く精巣上体が残存した。残存精巣のT産生能力をみるためhCG負荷試験を行い、血中T濃度を測定した。
hCG負荷試験とは・・hCG投与により、ライディッヒ細胞がTやEを産生・放出する。T産生能を有する個体では、hCG投与後の血中T濃度があがる。
結果
正常個体、片側のみ去勢個体ではhCG投与後血中T濃度は上昇し、その後下降した。去勢個体や潜在精巣をもつ個体では血中T濃度は低いままほぼ一定を保った。
まとめ
皮下に逸脱した精巣は、ライディッヒ細胞が通常より多く、精祖細胞の変性が散見された。
精巣異所症では、残存する精巣は超音波検査で確認でき、客観的な診断を行うことができた。一方、潜在精巣を超音波で確認することは困難であった。精巣異所症や潜在精巣の牛に残存する精巣の内分泌学的な検査は有用で、hCG負荷試験による血中T濃度の変動は、T産生能の有無で異なった。
質問
Q.潜在精巣は取らなくても良いか。
A.今回の症例ではテストステロン濃度は低くかったが、全てそうであるとはいえない。
今後浅沼先生と一緒にどこにあるか、ということも含めてデータを増やしていきたい。
Q.バルザックでやるとのこっていると思われるものがいる。調べてもらえないか。
A.hCG打つ前に採血、hCG打って採血し、血液を送ってください
Q.血漿法がいいか。
A.血清もほとんど変わらないと思うが、うちでは血漿でやっているから血漿でお願いします。凍結してください。
Q.月齢は?
A.性成熟を迎えてから。6ヶ月を超えてからが正確だと思われる。性成熟、栄養によって精巣の発達、ライディッヒ細胞の発達がまだなら、day0は低いかも知れない。
Q.片方のみが低すぎないか。
A.術後1週間で採血を行った。代償性変化なども、これから症例数を増やし調べていきたい。
Q.精巣上体だけが一部のこった場合はどうなるか。
A.精巣上体にテストステロン産生機能はない。去勢牛と同等のT値であるだろう。
Q.農家さんの過失などで腹腔の中に残った場合なども例数にいれてほしい。
A.今後調べていきたい。
鹿児島農済 赤星
症例1
右中指骨骨折
5月分娩予定
12月11日 初診 ギブス処置 ギブス巻き難しい、麻酔は?→(妊娠中はかけないほうがよいのでは。キシラジンは子宮収縮する。乳牛で流産の経験もある。)
12・15、ほとんど寝ている
12・16、水を飲まない、ウォーターカップの水が飲めないから?
1・23 乾草食べなくなった、膿んだためギブスはずす
はずしてたら食べるようになった
2・27 蹄部こすれて腫れている →(抗生剤が必要では?)
質問
Q.骨折の場合どのように治療されるか。
A.ギブスのみ、傷がなければ抗生剤はつかわない。
A.生まれてすぐ、子牛が前肢中手骨ふまれて粉砕骨折。
テーピング処置のみ行ったが解放性であり、だめかと思ったがかわいそうだから飼う。
今も元気で大きくなった。しっかりと固定さえすれば大丈夫。
A.27日の時点でまだはれがある、抗生剤などの治療がいるのでは
Q.ギブスはどのくらいの期間はめておくべきか?
A.3週間くらいでは。
A.右足の同じ部位を骨折したウシに4日前にギブスをまいてきた。
2週間くらいではずそうと思う。
症例2
化膿性関節炎
H20.6.20生まれ
出世以後まもなく、両飛節がはれる、マイシリンを筋注
その後瘻管ができる。臍帯炎などからの血行性だろう。
8月22日まで治療かかるが、飛節が通常牛より大きい。褐色状便も併発。
意見
・キトサン効果あり。
・血液検査も有用ではないか。
・11回診ているということは、この治療法では効果がないのではないか。
・関節周囲炎ではないか。これはなにか巻いたりしないか。
・ドレーンを入れておむつを巻く。
・子牛ではキトサンいれて、マイシリンを打って、患部をオムツで覆う。寝床はふかふかにする。
・マイシリン・ペニシリンなどは関節や関節液に親和性低い。休薬期間は長いが、バイトリルなどの方が良いのではないか。
・マイシリンなどを約1週間使っても直らない場合は菌が変わっているかもしれない。細菌の培養検査をしてみてはどうか。
症例3
致死性慢性の肺炎
仔牛
元気がない、餌は普通に食べていたが、発育不良、肺雑音は軽度。
剖検所見
肺 乾酪壊死。化膿性変化
ほかの臓器にはとくに異常なし。
意見
・発育不良で肺炎があったケースは結構あるが原因はわからない。
・同月齢の牛とはあきらかに小さく、毛がぱさぱさ。
Q.この農場は早期離乳か。
A.頭数規模100頭で自然離乳である。
・同じ農場で白筋症の対策を行っており、水道水へのビタミン添加と鉱塩を子牛にも与えてみた。セレンとビタミンEを組み合わせれば基礎疾病はガクッとへり、繁殖成績もいいようだ。
・セレン、ビタミンEは好酸球の能力を高め、免疫力阿ため基礎疾病予防の面で重要。
・症例2の関節炎にも効果があるのでは。
・バルク乳の体細胞数を減らせるので、乳房炎予防にも効果的。
・下腹部正中線より10センチ横を切開。結紮できないものは、ねじりながら引き抜く。
・左右腱部、骨盤に近いほうを切開。靭帯をはずして、ひっぱってもってくると精巣上体が腹腔内に残っていることがある。→ライディッヒ細胞は精巣の方にあり、T産生能力もないので大丈夫だろう。
14Gの留置針の内套を抜いてプラスチックの外套だけにする。
耳の穴にいれて鼓膜やぶる。吸ってみる。
ポンプで洗浄液をいれてふる。片耳10ccいれる。生食にマイシリンなど抗生剤、デキサメサゾンをまぜる。一日一回。
例…顔面神経麻痺と斜頚の症例に対し、30日間やった。最後の方は抗生剤を入れるのみ。
一般的には3,4日で終了。
・鎮静をかけたほうがよい。
・鼓膜は再生するので、破っても大丈夫。
・早いタイミングでマイコプラズマにきく薬をいれた方がよい(タイロシンなど)
・薬注後、頭を振って洗うということが大事。
・ロボット哺乳の農家などで、生後半年くらいまでが多い。肥育牛で耳から膿汁を出して熱がある場合は外耳炎の場合が多い。
B 関節炎でも肺炎でも治る牛と直らない牛がいる。免疫力が弱いからか。初乳を飲んでいない牛は胸腺の発達が悪い。このような牛はあらかじめ目をつけて、気をつけることはできないだろうか?
胸腺の発達はわかりにくい。触る時期によって違い、触診も難しい。
虚弱子牛の診断基準としているもの
・生まれてすぐに下痢をする子牛
・首が薄い子牛、毛がぱさっとした子牛、
・血統もあるか。 小体格の子牛
・心音がとんでしまう不正脈の子牛
・大きな乳牛農家は初乳のグロブリンを測って、良いものだけを与える。
子牛のTPをはかって移行抗体の量をみる。低いものは別飼いにする。
TPの5や4は低い。
・のう腫治療後、PGを打って、のう腫が再発することが結構ある。
のう腫治療後発情がこない。触診により卵巣は通常の大きさであったので、PGを打つ。
→小さい黄体にPGを打っても効かない。黄体が触らない場合は、
hCG、GnRH、CIDRなど。状況によって処置を選ぶ。
現在宮大でおこなっているのう腫の治療試験
CIDR,
GnRH
CIDR+E2
・ある程度大きいのう腫は機能はないのかもしれないが、受精師さんはつけないから、卵注器で卵胞のう腫をつぶして、hCGを投与する。
・OPUでつぶしても癒着などはほとんどみられない。OPUでつぶした後に卵胞内にhCGを注入する。
・21Gの翼状針でチューブとシリンジをつけて、膣壁から刺して吸入する。