鼻輪装着後に生じた乳頭腫様の腫瘤について            赤星 隆雄

症例

鼻環にポリープが生じた。

肉芽っぽいけど、はさみで切除してみた。

再び反対側にポリープができた。

はさみで切除したら今度は再生しなかった。

しかし、同じ農場の別の牛の鼻環にもポリープが生じた。

それにはメラニンの増成があって、黒くなっていた。

ただの肉腫のような外貌だった。

切除したら予後良好で、再生が見られなかった。

乳頭腫かなと思うが、同じような症例に出会ったことがある方は?

ちなみに乳頭腫様腫瘤を見たことがこれ以外にもあった。

それは目じり部にできて、これも切除したら再生はなかった。

-パピローマかどうかは病理検査で封入体を見ないと判断不可能

しかもパピローマなら、もっとたくさんできるだろうし-

-パピローマなら病理組織検査しないと判断できないだろう

鼻輪装着後、なんらかの腫瘤が生じたことは自分もあったが-

-自分が遭遇した症例では、鼻腔内に腫瘤が生じていた。呼吸が苦しそうになっていったので、ワクチン接種をしたが、その後下部呼吸器にまで転移して、廃用になった。

この症例の病理解剖を行ったら肺にまで腫瘤が転移していた。

悪性だった。こういう失敗例もあるんだということも頭に入れておいていただけると-

実際無料で病理組織学的に検査してもらうのは、毎回はなかなか難しいと思う。

-自分も、鼻腔の奥のほうになんだか分からないけどできものができて呼吸困難になるが、

抗生物質を投与するとよくなる。という症例を何例か経験した-

今回の症例は、切除一ヵ月後に別の場所から再生したから、そういうのとは違うと思う。今回の症例は変だと思う。

-パピローマにビムロンが効いたという話も聞く-

-パピローマにはウイルスタイプが6タイプあり、それぞれ好発部位が違う。粘膜にできるパピローマももちろんある。それに対して抗生物質が効くこともあるし、先ほどの例にもあったように、自家ワクチンの危険性もある。鼻粘膜にできたパピローマにビムロンが効果的だったこともあるが、乳頭にできたやつはちょっとビムロンの効きが悪い気がする-

-全身性に生じたやつにビムロン1ヶ月投与をして全快したことがある。ちなみにインターキャットを併用した。インターキャットは二回投与した-

-ビムロンで67割が効くかな-

-効果などには年齢的な問題もあると思う。ウイルスのタイプによってもわりと違うし。体表上にできたやつはビムロンわりと有効かと思う。ただし、1ヶ月のスパンで考えないとだめ。ビムロンの効果に関して、ウイルスのタイプ別のデーターもほしい-

-市場性のもんだいとして、せり前にあまり見苦しいところに出来さえしなければよいのでは。特に問題があるわけでもないし。パピローマに関しては特に治療の必要性を感じない-



去勢術                                 (有)シェパード 蓮沼浩

去勢の動画をみながら皆さんに去勢についてアンケート

次回にまとめて報告予定(臨検での指針になれば)

<蓮沼先生式虚勢法>

無麻酔、ロープで倒す(四肢がでるように)、すぐほどけるように足を縛る、体に巻いたロープはゆるめる、観血

以下の方法ではほとんど失敗はない(化膿1頭、腫脹2頭)

5〜6ヶ月

精巣をひっぱりだす(精索がしっかりとのびるように)、長い毛があれば鋏で切る

この段階までが大変。切り始めてからは3分間くらい

基本的に農家とタッグで行う(麻酔を使えばひとりでできる)

イソジンで消毒

陰嚢は2箇所切開(鋏だけで切る人もいる、傷が小さくてすむ)

靭帯は鋏で切る

左は汚染してもいい、右手は汚染させないように

ごみがつかないように気をつける

(ペアンでとめる)

吸収糸で結紮、長めに残す

マイシリンを切開部にかける

精索を体側にしごく

残りのマイシリンは筋注

鎮静をかけるとコストがかかりすぎてしまう(セラクタール、アンチセダンor自家製覚せい剤、注射代)ため、行わない

北薩では去勢は基本3000円

<アンケート内容>

.去勢をする時期

.麻酔もしくは鎮静剤を使うか?

.どのような薬剤を使うか?

.去勢をするときに牛はどうしているか?(立たせている、寝かせている)

.去勢の方法は?(メスによる観血法、バルザック、ゴムリング)

以降はメスを用いた観血法についての質問

.陰嚢の切開部位と切開方法

.精索は結紮するか?

.Q7で「いいえ」の場合どのようにするか?

.結紮する場合何で結紮するか?

10.去勢後に抗生剤は使うか?

11.鹿児島県家畜臨床研究会編集の「家畜疾病診療指針」作成について興味があるか?


経営のいい農場って・・・             株式会社ラボジェネター 岩本尚吾

・熊本県デーリィファーム菊地

奥さんが9割がた仕事をしている

子牛の管理がよい。わらたくさん。スペースも広い

哺乳ロボット牛舎もあり

・大分の農場

蜜外

乾乳牛舎 80m2以上×4  6頭用(実際は3頭)

5頭で1頭あたり16m2

・鹿児島県丸目農場

扇風機の増設

細霧装置取り付け

450頭牛舎」350万

厳しい時代なのでコスト削減はは大切

しかし大切な部分までコスト削減していないか?ビタミン、サクテイ、添加剤・・・

一番のコスト削減は病気を減らすこと

牛のために何をしてあげるのがベストなのか(費用効果も大切だが)を考えてみては?

Qいい農場とは?

A病気が少ない

Q農家の意識を変えるには?

A減らしたらマイナスになることもある(ビタミン剤など)農家の気持ち次第

Qいい農場は農場主次第だけなのか?

A牛の相場が下がってきた今、全員がもうけるのは難しい。後継者不足などの問題もある。借金もなかなかできない。農家への説得。経営のいい農家は努力しているが資金がない農家は難しい。機会をみて指導を続けるのが大切

A今は運転資金がまわらない

Q暗い将来しかない?

Aいろんな試みをしている農場もある。厳しい今だからこそチャンスとして朗廃牛の更新をしているところもある。

A細かく子牛、肥育素牛の観察。毎日検温することは効果ある

Q哺乳ロボットの牛も?

A全頭捕まえて検温。3日続いて高温なら処置など。今が経営拡大のチャンスだが資金がなかなか確保できない。5年間かけて5000頭規模にしようとしてる農場もある。口蹄疫のときのように相場が変動するかもしれない

A生産農家では今の価格で普通だと思う。



牛の肝臓治療剤について

大日本住友製薬株式会社 アニマルサイエンス部 松本修治

・ウルソを飲むとお酒に酔わない、二日酔いにならない

(お酒を飲んで楽しんだあとに飲んでね☆)

・    ウルソを投与すると肝血流量↑(2倍)

・    和牛と乳牛の肝障害の比

(和牛)58頭(42%)急激な濃厚飼料の多給でエンドトキシン↑→肝臓出血斑、充出血、肝変性など

乳牛は和牛ほど多くない。顕微鏡下でも出方が違う!

治療目標

1肝臓に栄養を送り、老廃物を早く排出。TCAサイクルをはやくまわす。

2鬱滞した肝汁を排出

3エンドトキシンを減らす

濃厚飼料多給→胆汁が不足

急に増やすと肝細胞壊死

脂溶性ビタミン不足

ストレス 肝障害

1:栄養補給、TCAサイクルをまわす

・    ウルソ→肝血流増加  肝血流量↑(2倍)

・パンカル→クエン酸回路周辺の補酵素となる→TCAサイクルをまわす

2:胆汁排泄、胆汁増加

・ウルソ→胆汁増加、胆嚢収縮

・エンドコール→胆汁収縮(しかし1回のみで作用消失)

3:有害物質の除去

・ウルソ→エンドトキシン分解、弱ったクッパー細胞を助ける

・    メチオニン→リポ蛋白のメチル基供給など

・    コリン→リポ蛋白のメチル基供給

・    チオラ→過酸化脂肪産生抑制

まとめ:上記1〜3をすべて網羅するのはウルソだけ!!

<ウルソについて>

ウルソは熊(冬眠中)の胆嚢を取って、水分を蒸発(干す)させたものと同じ成分(ウルソデオキシコール酸)

1960年代人間薬で初めて販売

人や牛では胆汁酸中のウルソデオキシコール酸微量

<薬理作用>

1.利胆作用

2.肝細胞保護作用

3.肝血流量の増加作用(肝血流2倍)

4.胃酸分泌促進作用

5.膵液分泌促進作用(脂肪の消化・吸収を助ける)

6.解毒作用→牛はエンドトキシンに対する感受性が高い!!(致死量0.025mg/kg)

       ウルソはエンドトキシンを減少させる

7.肝グリコーゲン蓄積作用

8.コレステロールの腸管吸収抑制作用

(消化作用は弱い→肝臓を傷つけないように働く)

<肥育牛への応用>

・配合飼料1トンにつきウルソ500g導入から出荷まで毎日給与

→生体重で約100kg、枝で約50kg

 枝の格付けが上がる

 食い止まりがない

 ビタミンA欠乏期が群でそろうので管理がしやすい

 10g/day トップドレスによる経口投与→出荷成績up

・北海道での投与量:出荷前に体調を崩した黒毛和種肥育牛4頭に対し、出荷日まで2ヶ月間、ウルソ5g/1頭を毎日投与→その後は体調を崩さず順調に推移し、出荷時はA5(2)A4(2)で販売できた。→他の肥育牛にウルソ5g/1頭を隔日投与→出荷成績up

質問

・濃厚飼料多給、濃厚飼料の急激な変化とは具体的にどのくらい?→データはあるが持ち合わせていない

・脂肪肝の診断方法は?→病理診断的に行ったのみ

・注射の副作用は? 静脈内に急激に入れると振るえ(ゆっくりなら大丈夫)

・白痢で胆汁が出ないのは? 胆汁は作れるけれども、搾り出せないから。ウルソを投与すれば、胆汁をたくさん作るようになるので搾り出す機能が弱くても出てくる。(ただ、子牛によっては胆嚢事態が膨らんでないのもいるけど・・・)      

・ウルソとパンカルとチオラに効き目の違いはある? 和牛の肥育後期で効く。

・他の製剤との違いを教えてほしい+出荷時の値段

・プロピオン酸だけをやった時と、2剤併用の試験をしてほしい

・健康牛と病気の牛の比較も

・ウルソは高いけど、併剤して効果をあげられる

・相乗効果や拮抗効果はあるのか??→相乗効果ならありそう!!(拮抗作用はないように思う)そしたらウルソを減らして他の薬を増やせばいいのじゃないか?





牛コクシジウム病とその対策について

バイエル製品株式会社 加藤慎治

牛のコクシジウム病

混合感染:上皮障害・欠損だけではなくさらにひどい障害が起こる。偽膜性腸炎に進行。

・    牛コクシジウムについて

E.bovis E.zuerniiは血便・水様性便

・    現状の治療薬について

・    環境対策

・    浸潤状況

・    新規抗コクシジウム製剤「牛用バイコックス」

<質疑応答>

@偽膜性腸炎まで達してしまった時の治療法は?

キトサン(10%50ml)エクステで注腸 1week

サルファ剤(エクテシン)SID注腸

この時期はコクシも感染不能になってる(コクシを落とすだけでは改善しない)

補液するしか方法がない

Aクロストリジウムにも効くのか?

効かない。コクシジウムのみ。しかし、有用細菌を殺すこともない。

B他の薬との違いは?
サルファ剤:葉酸合成阻害→第二無性生殖期だけをとめる
 バイコックス:エネルギー代謝を阻害・核分裂阻害・オーシスト壁・形成小体阻害→体内すべての増殖サイクル阻害   特に予防という観点では特に使いやすい

C他の薬との併用は? 抗生剤などは問題ないが、サルファ剤との併用はできない。

Dサルファ剤の予防プログラム? 

     (軽度なときにたたくのが理想的)

     潜伏期:1~3week

     例:もし1ヶ月齢の子牛の発症が多い農場なら、1week前に感染している。

そこでいっせいにたたく!濡れ子導入なら導入時にたたく。

(ほとんどの農家でコクシジウムは入ってきているから予防大切→陽性率:23年前59%11ヶ月以下では80%以上、農場陽性率96%  子牛8割以上 混合感染6割)予防するにはサルファ剤よりバイコックスの方がいい。なぜなら、サルファ剤は第二無性生殖期だけをとめるので、予防プログラムがおわると下痢をすることがおおいから。

E地域特性はあるのか?−九州は多い。

F農場による特性はあるのか?モネンシンをやってる農家は寄生少ない

Gクリプトには効く? 効果なし(細胞膜寄生と特殊構造あるので効かないのでは?)

H初診からサルファ剤使っているのに偽膜性腸炎になってしまうのはなぜ?

I注射のみと内服の併用は必要?−抗生剤と併用必要(二次感染防止)

J効きめはどのくらいか?半減期は?何日効果が続くとかはわからない。入ってるものはすべて単回で効くが、症状は残る。

K溶けやすさは?―油にも水にも溶けにくい。

Lミルクに混ぜても大丈夫? 大丈夫です。

M細胞内外の濃度は? 吸収代謝後、血流に乗って(投与後40時間で最高)腸に届く。尿中排泄は少なく、糞便代謝が多い。

N吸収率? 後程データを・・・

O免疫が成立しにくいのでは?抗原性は消さないので大丈夫(情報量は少ないけど)。

Pサルファ剤との併用だめ? データなしなので詳しいことがいえない。

             同時投与はだめということ(休薬期間後に使ってください)

Qアイボメック併用は? データはないが大丈夫ではないか。



体験発表

ジノプロスト製剤(PGF2α)の連続投与による胎盤遺残治療

子宮に負担をかけない胎盤除去を考える

<胎盤停滞の原因>

高泌乳量、乾乳期に過肥、運動不足、胎盤未成熟で分娩、SeVE欠乏症、難産による筋無力症(神経損傷など)、最近は胎仔過大のために分娩誘起をよく行う

<産褥期の経過と生殖器の修復>

オキシトシンとPGF2?が深く関与、PGF2?は分娩後3日で最高値となり15日目まで落ちていく、子宮頚管は1日で手の挿入が困難(ただし個体差はある)、妊角の大きさは5日で、長さは15日で半減、組織の脱落は25日以降に開腹、卵巣機能回復には個体差が大きい

<教科書的治療法>

自然排出後、抗生物質投与、用手剥離、外部牽引、子宮収縮作用薬剤(オキシトシン、PGF2?、E2Ca)の投与

<現在での問題点>

用手剥離法では胎盤全体を除去するのが困難であり、子宮小丘や子宮角先端部を損傷し、子宮内膜炎などの感染症を起こすリスクが高い→間接的な子宮へのアプローチが得策では

<ジノプロスト製剤連続投与してみました>

胎盤停滞発生例において、協力を依頼(試験期間中10件発生8件協力)

初診から3日間、プロナルゴンF(ファイザー)を15mg(3ml)投与

大きな排出がみられた時点で投与中止

<結果>

個体番号

分娩誘起

産次

種雄牛

分娩後

初回

2日目

3日目

A

有り

6

忠富士

24時間

×

B

有り

11

忠富士

24

×


C

無し

5

福乃国

48

D

有り

9

忠富士

48

×


E

無し

3

福乃国

48

F

有り

4

福乃国

72

×


G

無し

5

上茂福

72

×


H

有り

4

糸茂勝

24

×


<考察>

10件の発生中2件は用手剥離を強く希望

8例中5例は単回投与で排出

3回投与例は2例あったが要因は不明

分娩誘起の有無や、分娩介助の有無は関連が少なそうである

<まとめおよび課題>

胎盤停滞にPGF2?は有効である

分娩後の時間経過とPGF2?投与との関係は不明

用手剥離の希望者への啓蒙(用手剥離は子宮を傷つけるおそれがあるということを知ってもらう)

往診および薬価の負担大(PGF2?3回投与では連合会に認めてもらえない、わざわざ3日連続往診しなければならない)

<質疑応答>

Q何もしなくてそのまま後産が出るのを待つのか、用手剥離するのかどちらがよいか?

A何もせずに帰るのはまだできない。胎盤停滞による発熱・食欲不振を考えて出せるなら出したい。

Qひっぱって出なければPGを3日続ければほぼすべて出る。例数を増やしているところ。家臨研からも協力者を増やしてみては?抗生物質の併用ではどうなるか、繁殖成績への影響を調べる試験もやってみては?

Aやっぱり1週間経っても出ない症例もいる。繁殖成績とあわせて試験してみたい

Q次の分娩や繁殖障害まで追いかけたほうがよいのでは?昔はエストラジオールで分娩誘起していたが嚢腫が多かった。自分は点数や農家への負担も考えて何も処置しない主義。

Q後産停滞時は30分以内に注射は効果があると昔はいわれていた。

A今自分は椎葉ではないので後追いができないが、

Qみなさんの方針は?無処置の人はフォローはどのようにするのか?

Aほとんど触らない。注射して終わり。そのほうが農家さんも安心すると思う。

A呼ばれてもいかない。発熱、食べないなど症状があればいくが後産には手を付けない。

Q乳牛に関しては?乳房炎の原因にもなるし

A自分は黒毛もホルスも用手。清潔にしてきちんとすれば問題ない。

A自分は乳牛も手をつけない

A後産とれば産後の食欲不振が改善されることがある。子宮蓄膿症にもならない。発熱はとらないほうがいいことが多い。

A胎盤停滞に対する処置(剥がすか、待つか。何日目にどの処置をするか)は状況により変わってくる。獣医師によってステージ分けが異なる。

A用手法除去にはリスクもある。

A注射しかしなくても、きちんと試験をしてみたら共済も納得するのでは?

A3日間胎盤停滞のためだけに通うのもやや面倒。時間もお金もかかる。

A子宮の大きさについて。直径12cmの胎盤に50〜100個の子宮小丘がついている。奥のほうをはずすのは実際大変。

A力をいれると子宮小丘ごとちぎれてしまう。その後の繁殖に影響



IVMT(アイボメックトピカル)投与による生産性向上事例

IVMT投与事例>

S村内の農場2件

・約60頭規模:コクシジウム、一般線虫多数

・約30頭規模:コクシジウム、一般線虫、乳頭糞線虫多数、事故も多く成績がよくない

H1712月に農場内のすべての牛に投与

分娩予定前2~1ヶ月、出生後3ヶ月(離乳時)、6ヶ月齢での投与を依頼

H17.1~H18.11の競り市結果をもとに考察

<考察>

期待通り有効性が示された

死廃事故等も減り、生産性向上

<質疑応答>

Q成績はよくなったが試験終了後は薬を使わなくなり、成績も悪化してしまった。どうすれば続けてもらえたのか?

A農家さんはただでもらった薬は続けない。薬を買わせて使わせないと続かない。

Q出荷頭数が増えているのはなぜ?

A若干増頭もしたが、子牛の死亡頭数が減ったことが一番の原因。

Q子牛の下痢にもIVMTは使える?肝臓への負担は?

A使える。寝込むくらいひどかったら使いにくいかもしれない

A乳頭糞線虫にかかって症状がでているものにはもう効かない




開放骨折について質問          蔵前家畜医院   永野

分娩時(正常位)にひっぱって骨折。胎水を拭いたときに血がつかなかったので開放ではないと判断しギプス固定した。

一週間後にギプスをはずしてみたら一部皮膚がはがれ出血していた。臭いもする。出血部位に窓をあけてギプスを巻きなおし、抗生物質を注射した。

今後どのような処置が必要か?

長期間の治療が必要。

傷の場所を特定して洗浄。

ギプスの巻き方によってはゆるんで開放になってしまうこともある。

開放じゃなくても骨自体が癒合しないことがある。周囲の血管、軟部組織の損傷?お産で引っ張るとダメージが大きいと思う。

化膿がなくなると皮膚や血管も修復されてくることもあるが、完全に良くなるまで介抱の状態で(ギプスを半分だけ残しておく)2ヶ月かかった。

○    牽引時の骨折

逆子だと多い。球節の脱臼をすることもある。ロープをかけるときの失宜

○    開放骨折の治療について

開放だとまず難しい。感染して骨髄炎になれば骨は癒合しない。洗っても化膿の方が早い。

鹿大ではエクステンションチューブなどを使って水圧を使ってひどいときは1日2回洗って抗生物質をつめる。治るまで続ける。洗いすぎると骨の再生に必要な物質も流してしまうので状態をみて行う。

治ることはまれなのであらかじめその旨を農家に伝える。

ギプスの巻き方も重要。

雨どいを2本使って支えにした症例ではうまくいった。化膿がないかすぐに確認できるため。

抗生物質は毎回注射(マイシリンとプレドニゾロン)。

ギプスを巻くのは20〜25日間。開放でも基本3週間。





分娩後早期のCIDR挿入による乳牛の空胎期間短縮

小林郁雄) 北原豪) 柏木勲) 黒木啓光) 河野宏) 菊田幹雄) 上村俊一)

1宮崎大 2宮崎県NOSAIみやざき

<目的>

乳牛の発情発見率の低下と分娩間隔の延長が問題となっている。

今回、分娩後早期に腟内挿入プロジェステロン徐放剤(CIDR)を用いて卵巣機能を賦活させるとともに、発情同期化による定時人工授精(TAI)を行い、その後の繁殖成績を検討した。

<材料>

ホルスタイン種経産牛137頭(平均3.2産)

宮崎市近郊の酪農家で飼養(22戸、平均飼養頭数43)

正常分娩、BCS>2.50

20061月〜20084

<発情同期化法>

A CIDR(n=29)Day44から7日間CIDR挿入

B GnRHCIDR(n=30)Day44GnRH投与し7日間CIDR挿入

C E2CIDR(n=78)Day44E2投与し9日間CIDR挿入

全群Day30初回検診、CIDR抜去後PGF2?を投与して2日後にAIDay65黄体確認、Day86妊娠診断、処置日に超音波検査と採血を行った

<子宮の修復>

エコーを用いて、左右子宮角の太さが同程度を修復とした

初回検診時、CIDR挿入時に子宮修復の状態を確認

<卵巣状態の推移>

初回検診、CIDR挿入、黄体確認時

<血中プロジェステロン濃度>

初回検診時、CIDR挿入時、抜去時、黄体確認時

GnRH/CIDR群はCIDR抜去時に血中プロジェステロン濃度が有意に高かった

CIDR除去後の排卵率と受胎率>

GnRH/CIDR群で排卵率(100%)、受胎率(40%)がよかった。

抜去時の黄体形成がよい(GnRHによって黄体が新しいものになる)ため?

CIDR群がもっとも悪かった。黄体のエイジング?

<初回AI及び分娩後100日以内の受胎率>

初回AI受胎率32%、100日以内受胎率45%

試験群:初回AIまで55日、空胎121日(対照群、宮崎県平均、全国平均よりもよい)

<まとめ>

分娩後早期にCIDRを挿入し、除去後GnRHを投与することで、発情発見を行わない定時AIが可能となった

E2/CIDR群では明瞭な発情を示したが、受胎率は除去後GnRHを投与した牛群よりも低かった。

GnRH/CIDR群では処置後全頭に黄体の形成が認められ、受胎率の向上がみられた。

<質疑応答>

QこれまでのオブシンクではPG投与後16〜20時間後にAIという設定だったが?

A12時間なのは作業上の都合もある。今回はCIDRシンクだったため時間が違う

Q管理がよければ何もしなくてもいいのでは?

A受胎率に関してはそうだが、乳牛では空胎期間の短縮が重要。卵巣賦活化やその後の発情によい効果がでた。もちろん管理は大事。

Qフィールドの問題のある牛を使って試験をしたことがある。今回は黄体のある正常な牛を使っていたのでよい結果がでるのは当たり前だが、次回は問題のある牛を対象に試験を行ってみてはどうか?

A今回は問題のある牛を除外してある。

Q和牛で個体差、年齢差もあるが何も使わなくてもそんなに問題のない農場もある。

A農家と獣医との信頼関係がないとなかなか管理の指導はできない。今回の試みがその助けになれば

QCIDRの挿入期間は何日間がベスト?もちろんケースバイケース

A(上村先生)アメリカは発情同期化して7日間。5日間はだめ。6日間以上。黄体ができていなければPGCIDRは黄体に対しては作用しない。

A(窪田先生)今ある卵をねらうなら9日以内(7〜9日)。次の卵をねらうなら10日以上。

A長く入れすぎると受胎率おちる

QhCGは使わない?

Aほとんど使わない。作用が長いのでhCGでは発情同期化できない。排卵時期が変わる。GnRHを使う。他の薬剤との併用かによっても使い方は変わってくる。CIDRは脳のエストロジェンレセプターに働くので7〜9日間と幅がある。嚢腫の時は12日間挿入。


黒毛和種牛に対する分娩後30日からの卵巣賦活とPRID処置が受胎率に及ぼす影響

北原豪 辺見広一郎1) 鈴木義人 日高亨介 小林郁雄1) 上村俊一

宮大・臨床繁殖 1)宮大・住吉フィールド

<はじめに>

黒毛和種牛において、発情の見逃しや暑熱ストレスによる微弱発情は分娩間隔の延長、生産性の低下を招く。

分娩後早期に卵巣機能を賦活させ子宮の修復を図ることは、分娩間隔の短縮に重要である。

<目的>

分娩後30日より卵巣賦活処置を行い、卵巣動態を超音波診断装置で観察した。

その後、発情を同期化し定時人工授精(AI)を行い、受胎率を検討するとともに、卵巣動態と暑熱ストレスが繁殖成績に及ぼす影響を検討した。

<材料>

宮崎大学農学部付属住吉フィールドで飼養されている黒毛和種牛31

BCS2.9±0.3

2産以上(7.2±2.8)

20075~20084月に分娩

子宮修復(分娩後30日以内)

夏季放牧、哺乳期間は3~4ヶ月

分娩後29±2日(=Day0)より観察およびホルモン処置を始めた。

<処置>

d0:分娩、超音波検査、採血、黄体がなければGnRH誘導体(酢酸ブセレリン)、あればPG類縁体(クレンブテロール)処置

d7:PRID挿入

d16:PRID除去、PG処置、GnRH誘導体(〜48時間)もしくはエストラジオール(〜24時間)処置

d19:定時AI

d49〜:妊娠診断

PRIDRとは>

プロジェステロン1.55g エストラジオール10ml

血漿中プロジェステロンは卵巣摘出牛に対し、最高濃度は挿入後1時間で約4ng/ml12日間2ng/ml維持、除去後30分以内に1ng/mlに低下

血漿中エストラジオールは卵巣摘出牛に対し最高濃度は挿入後2.5時間で約7pg/ml、挿入後6日で約2pg/mlに低下

<超音波検査と内分泌検査>

Day0Day7の卵巣動態を7.5MHzの深蝕子を装着した携帯型超音波診断装置にて観察し、その後、発情同期化により定時AIを行い受胎率を調べた。

Day0(分娩)とday7に採血し、血中プロジェステロン濃度を免疫蛍光測定法で測定

<気温と受胎率との比較>

定時AI時した月の平均気温で低温(n=9)、適温(n=9)(15〜25度)、高温(n=13)3群に分け、受胎率を比較

高温や低温による影響はみられなかった

<卵巣動態>

d0よりもd7で優位に発情周期が回帰した

<d7の黄体の有無による受胎率>

PRID挿入時(d7)で黄体のある牛で受胎率が向上した

<周産期別の気温と受胎率の比較>

分娩前2ヶ月、分娩後、分娩後30日時の月の平均気温で3群にわけると、低温、高温だと受胎率が低い傾向だった

<考察>

分娩後→発情同期化→受胎率変化なし

分娩後→卵巣賦活→発情回帰増加→受胎率向上

妊娠末期の牛では栄養管理が重要(胎子の成長に伴い物理的な腹腔内容積の狭小、胎子の急成長に伴う栄養要求率の増大)

黒毛和種繁殖雌牛の分娩前後の低栄養は出生子牛の免疫機能を低下させる

胎子(ホルスタイン種)へのエネルギーは母体からアミノ酸56%、グルコース・酪酸33%、酢酸11%で供給される

乳牛で乾乳記観の重要性が示されている中、黒毛和種牛でも分娩前後の飼養管理や飼育環境に気を使うべき

<まとめ>

分娩後の子宮回復を確認し早期にGnRH誘導体を投与することは卵巣賦活に有効だった

定時AI時の気温では、低温と高温による受胎率の影響はみられなかったが、分娩前2ヶ月の気温では、受胎率の低下がみられた

分娩後、卵巣に黄体があり、発情が回帰している牛では、発情同期化‐定時AIにより受胎率が向上した

<質疑応答>

Q挿入後12日間でいいと説明書には書いてあるが?

A定時人工授精時にいい卵をもってこようとするとどうしても煩雑なプロトコールになる

Aアメリカとは規模がちがうので確率論になる。日本は全頭うまくいくことが目標なので説明書にも違いがでてくる

QPG投与後AIは3日、2日どちらがよい?

A2日以内に発情がくればもう種付けしてよい。こないときも3日目の朝種付けする




肥育牛にみられた肉芽腫型中皮種

蔵前家畜医院   名島 静

症例 14ヶ月齢 メス

症状 食欲低下がみられるが、体温は平熱であり、Rumenの動きもある。

   排尿姿勢の異常がみられたため、直検を行ったところ、硬い結節(脂肪腫のような)を触知。

血検でもWBC高いのみ(133)でその他は特に異常なし

しかしその後、腫瘤が大きくなってきたので、試験開腹を行うこととした。

試験開腹→大網全体にそら豆状の結節 多数

     中皮種を疑い、予後不良と判断し、廃用とする

剖検所見→腹水貯留    大網・横隔膜表面・脾臓表面に多数の結節病変の存在(頭側より尾側に多い傾向)

腹壁にはみられない   直腸・子宮の上に大きな硬い腫瘤

病理組織検査→異型細胞(中皮腫と特定するためには特殊染色必要なため確定診断にはいたらなかった)

肉芽腫型中皮腫疑い

<他の症例>

7歳齢 妊娠牛(帝王切開術を行う)

開腹→腹水多量

   大網にカリフラワー状の腫瘤

   その後死亡

<質疑応答>

中皮腫は、年齢にかかわらず、直検で触ってわかる            

(腹壁をなぞると粟粒大の結節たくさんあることから診断することが多い)

熱発はないことがほとんど

Q治療できるのか??→抗生剤や色々な薬使っても治らない

腹水全部抜けば延命はできる(子供だけでもなんとかする)

小動物では腹腔内抗癌剤投与を行うが、あまり効果なし

ナイトワークショップ    「どんな勉強会がおもしろいか?」           山本浩通



獣医の勉強会の鹿児島臨研はどんな勉強会であればおもしろいか。
というテーマで、今回の臨研ではナイトワークショップをしました。

夜の10時から一つの部屋に集まり、10名ほどで
模造紙に付箋で書き出して、KJ法でまとめと分類をしてみました。

そこで出てきたことは。

まず、進行について。
発表者とは別に進行係りを持ち、進行係りが話題をまとめていく。
一方的な発表でなくて、聞く人の質問を中心に発表者が話していく。
会場の机の配置を、グループごとの島をつくり、個人の質問や意見をディスカスできる仕組みにする。
話の中の話題、疑問などを次回につなげて、回答やアイデアを出す。
進行役は、ライブレコーディングを使いながら、会場の話題をコントロールする。


技術について。
臨研で、おおまかな治療指針をみんなで作っていく。
その場合、相対する意見や方法も併記する。
治療指針をフローチャート式に絵や図で表す。


外部講師について。
いい経営をやっている農家や削蹄師を呼んで、獣医が日常あまり知らない分野の情報を勉強する。
獣医分野の専門家を呼んで勉強する。その際臨研のメンバーである製薬会社のネットワークを使えるかもしれない。

おおまかな項目としてこれらの意見が出ました。
次回からの臨研では、少しずつ変わっていくように進行するつもりです。

今回、2日目は私が進行役をしまして話題を整理することを試みました。
パソコンにライブレコーディングを書き込み、それを壁に投影しました。
大きなスクリーンがなくて壁に投影したため、やや見にくかったのは問題でした。
それと、ライブレコーディングを見ながら進行する方法をしっかり取ってなかったので、その効果を感じてもらうことができなかたのは、次回の反省です。
パソコンを使わず、ホワイトボードでするほうが始めは良かったかもしれません。

会場の設定は、5,6人で座る島をつくりその島をステージに向かって半円形に並べました。
この会場設定は、うまく機能しました。

島ごとにディスカスしてもらい、意見や質問を発表する方式では、結構時間がかかります。
今回も、時間がかかって大学の先生が他の講義をすべて入れられないことになったのは進行の問題です。

ただ、一方的な講義でなく、わからないことを聞く、聞きたいことを聞く、という勉強会には充分な手ごたえがあったと思います。