子牛におけるCT画像につい            中山 智宏

*はじめに

H13−H15肉用牛遺伝資源活用体制整備事業において効率的な育種改良手法のためのCTの活用が唱えられた。

東芝ヒト用CTの改良モデル…立位にて行う。

ガントリー三つにより行い、5mmあるいは1cm間隔で撮影される。
肉は白く投影され、脂肪は灰色に投影される。
これにより生体で非侵襲的な脂肪交雑の予測が可能であると考えられた。


しかし、CTによって得られた画像は2−3mmの微細な組織をみることができず、
脂肪交雑の観察には実用的ではないことが判明した。

筋肉の成長の観察・記録(筋面積、筋間脂肪)に用いられるのではないのか−ロース慎面積、僧帽筋面積、皮下脂肪、バラ厚さの計測等に有効

コスト(五千万以上)の問題があり、現場・大学での応用は難しい。

*一般的に用いられているCTの応用

OsiriX

単純X線検査…黒色の濃淡のみで表現され、判別できる範囲に限界がある(16段階)

   気体は黒、脂肪は灰色、液体・臓器は薄い灰色、骨は灰色がかった白、鉱物(鉛)は白。曖昧さが伴う。

CT…固定式検出器と回転式検出器があり、管球から照射されたX線を画像ではなく水を基準とした数値として測定(CT値)。画素数は512×512で、画面を構成する各ピクセルはCT値を濃淡で表す(-1000~+1000

流れている血液のCT値は25で、凝固するとそのCT値は55~80と急増する。新鮮な凝固

血は高吸収値を示し、これによりX線透過度が低いために白くうつる。

つまり、CTを用いると実質と液体の区別がよりクリアにできるので、
内水頭症等の診断を行うことができ、更には単純X線診断では三次元構造
までは分からないがOsiriXの使用で三次元構造に画像化し、
小さな病巣の発見(ex.肺がんの早期発見)や全体的な構造異常
ex.斜頚を示す犬の環椎と軸椎のズレを診断)の発見にも応用できる。


ケーフェスレンダリング…二次元画像ではなく、三次元画像に変換し、見ることができる。
しかし、スライス厚(Voxel)の平均が反映されるため、小さな腫瘤などは判らなくなってしまうことがある。

ボリュームレンダリング…皮膚、筋、骨、脳等全てを含めた3D画像の断面を見ることができ、
手間がかかるが専門家でなくても画像を読み取ることが可能である。

地図上で気温を色分けするのと同様にCT解析した数値を色分けすると更に見やすくなる。

*応用として

アルボウィルスによる異常産においてウィルス感染時の胎齢病変の程度は様々であり、現在確定診断では初乳吸入前の血清検査である。これらの疾患で見られる中枢神経異常に基づく症状には非特異的なものもあり、臨床症状からその程度を診断することは無塚しい。これにCTを応用することで大脳・小脳欠損の程度や内水頭症の程度の診断ができる。

本来存在しない液体・気体が貯留する疾患の診断においてCTは非常に有用である。

*まとめ

・CTを用いたアルボウィルスによる水無脳症の診断は容易である。

・ごく軽度の内水頭症、大脳欠損、および小脳矮小化を示す症例では診断が困難なこともある。

・原因の特定は不可能であり特に脳炎の診断には不適当。

・検査対象は子牛に限定される。

・キシラジンや全身麻酔による30分程度の不動化が必要。

*質疑応答

PCの画像処理により、第四胃のみをピックアップして胃内異物を診断するのは可能なのか?

異物の存在を発見できても、その種類の診断までは難しい場合もある。



風邪と下痢の白血球数及び体温の治療日数毎の平均変化

廃用になったアイボメックのワヒ、コセに対する良好な効果        開業  赤星隆雄

*質疑応答

・5診以上風邪体温WBC推移のグラフについて

母集団の大きさは?体温推移のグラフは0.1刻みになっているがそれは誤差ではないのか?

―母集団は体温のデータは数十頭でWBCのデータは百数頭。グラフの値は平均であり、一頭あたりの誤差は不明

薬剤を使用したのか?どのような薬剤を使用したのか?

―解熱剤を使用した牛もいる。殆どの牛は抗生物質を使用。

風邪、という診断とその治療?解熱剤は40度以下でも使用すべきか?

―やや体温が高く、食欲不振以外の臨床症状を示さない場合は使用すべきだと思う

濃厚飼料多給では体温が上がるのでは

体温の上昇がその後あたえる影響を考えると、解熱剤の使用は有効と考えている。

現在議論の途上にあり、ケースによると思う

試験を行ったのは?

―八月。体温の高い時期にあたる。

熱発の定義も外気温によって変化してくるのでそのデータも掲示してほしい。

―今回の実験は実施地、時期にばらつきがあるので、まとまったデータの掲示は難しい。

五日後に体温が上昇するならば解熱剤の使用法の参考になった。

出荷停止等の規制が厳しくなった今日、初診時から高価な薬をしようするのもやむをえない状況となってきている。導入先の疾病の予防法も聞く必要があると思う。

非常に参考になった。更に細かいデータの整理と更なる研究に期待している。

分娩後早期のプロジェステロン徐放剤CIDRの挿入が乳牛の卵巣機能賦活と発情同期化に及ぼす影響

                           宮崎大学 寄生虫学教室Osiswandi R

*はじめに

酪農業において乳牛の発情発見率の低下と分娩間隔の延長が問題となっている。

今回、分娩後早期にプロジェステロン徐放剤(CIDR)を用いて、卵巣機能を賦活させるとともに、発情同期化による定時人人工授精(AI)を行った。

*材料と方法

20061~5月に、宮崎市近郊の酪農家10戸で飼養され、正常分娩をしたホルスタイン牛37頭(2.9産)、BCS≧2.55段階)を用いた。牛群を二つに分け、CIDR群(n=20)では分娩後30日(初診)に卵巣と子宮の状態を観察し、44日からCIDRを一週間挿入、除去時にPGF2α(ジノプロスト25mg)を投与した。

CIDR除去48時間後にGnRH(酢酸フェルチレリン500μg)を投与し、52~58時間後に定時AIを行った。CIDR/GnRH群(n=17)は、CIDR挿入時にGnRHを投与し、その後はGnRH群と同様の処置を行った。

両群とも、携帯型超音波検査装置により定時AI後12日に黄体の形成を確認し、33日に早期妊娠診断を行った。

また、ホルモン処置時に採血を行い、血中プロジェステロン(P4)濃度を自動免疫蛍光法により測定した。一方、対照群として同時期に同じ酪農家で飼養され、発情時AIを行った牛群(n=55)の繁殖成績を乳検台帳により調査した。

*結果

初診時、卵巣に黄体が形成されていた牛は両群とも65%であり、GnRH/CIDR群ではCIDR挿入中50%10/20頭)に新しい黄体の形成が見られた定時AI後の黄体形成率はCIDR群82%、GnRH/CIDR群100%となり、定時AI受胎率はCIDR群35%、GnRH/CIDR群50%であった。

CIDR群とGnRH/CIDR群の血中P4濃度は、初診時(6.84.9ng/ml)、CIDR挿入時(4.27.2ng/ml)、黄体確認時(7.313.4ng/ml)となった。今回、試験群の初回AI日数と空胎期間は53日と98.2日となり、同時期の対照群と比べそれぞれ29日以上、5日以上の短縮となった。

*まとめ

乳牛に、分娩後早期にCIDRを用いることで、卵巣機能を賦活させ、定時AIを行うことができた。

また、CIDR挿入時のGnRH投与によりCIDR挿入中に排卵と黄体の形成があり、これはCIDR除去後の新鮮卵胞排卵となり、CIDR群に比べ高い受胎率となった。

山間部に蔓延する肺吸虫

                      宮崎大学 寄生虫学教室5年中山緑


近年、食生活の変化により肺吸虫症が増加してきている

イノシシの抗体陽性率は37%で、猟犬がイノシシの生肉を給与されることで終宿主となっていることが考えられる。

このため、三件の猟犬を飼育家で採血、糞便検査をプラジカンテルの投与前と投与後に行い、血液についてはELIZAを行った。

プラジカンテルの投与後、糞便中の虫卵の減少と抗体の増加を見たが、再びイノシシの生肉を与えた家では猟犬の肺吸虫の再感染が確認された。

プラジカンテルの投与により容易に駆虫できるが、イノシシの生肉を与えることで容易に再感染することが示唆された。

また、宮崎に分布する肺吸虫は遺伝子解析では大平肺吸虫とウェステルマン肺吸虫だったが、糞便からはウェステルマン肺吸虫が確認された。

ウェステルマン肺吸虫には二倍体と三倍体があり、二倍体の終宿主はイヌとイノシシの両方だが、三倍体はイヌが終宿主であり、イノシシは待機宿主である。

このため、今後、現在蔓延している肺吸虫が二倍体か三倍体かの調査が必要である。

乳汁細菌検査                                開業 是松

・乳汁の保存  4℃…2~3日    -40℃…後程の検査に使用できる

・使用器具  スピッツ管、綿棒、ミューラーヒントン血液寒天培地、37℃インキュベーター、アルコールランプ、アルコール綿

・方法  落下細菌に注意して綿棒でミューラーヒントン血液寒天培地に塗布し、37℃の

インキュベーターで一晩培養する。

・性状と分類  大腸菌:白色あるいは灰色の大コロニーを形成し、糞のにおいがする成長が早く、抗生物質によりすぐに死滅する。

        黄色ブドウ球菌:二重溶血がみられる。

        真菌:発育が遅く、小コロニーを形成。酵母が挙げられる。

・感受性試験  大腸菌と黄色ブドウ球菌は普通寒天培地で、真菌は血液寒天培地で行う。

        ミューラーヒントン血液寒天培地のコロニーより釣菌し、それぞれの培

        地に塗布する。各培地にDISC(ペニシリン、アンピシリン、カナマイ

シン、セファメジン、テラマイシン、ストレプトマイシン)をおき、一晩

培養し、各抗生物質に対する感受性を評価する。

10/18臨床研究会 二日目

9:00−

糞便検査実習

10:20−

乳頭腫発症牛に対するインターフェロンα製剤の経口投与                橋之口哲

投与法について知りたい

―ロタウィルス性下痢は五日間連続投与するが、隔日でもいいかと思われる

水道水で溶解し、p.o.。注射による投与は行わない

この試験を考えた理由は?

―ロタウィルスと診断する子牛の下痢は少なく、他にインターフェロン製剤を使用する方法について考えた結果。

―現場での乳頭腫に対するインターフェロン製剤の使用は有効か?

自家ワクチンでのホルマリン使用に対する規制更には衛生的、安全性の問題から考えると有効かと思われるが、乳頭腫を積極的に治療するケースは少ない

乳頭腫に対してインターキャットを使用した場合効果が見られたが、牛に使用する例はあるのか?

―牛ではないと思われる。どのように使用したのか?

二回に分けて四週間投与

症例報告 破傷風                        シェパード中央家畜診療所 蓮沼浩

九月に発症。その治療は難しく今後の参考として検討してもらいたい。

黒毛和種虚勢雄12/12生まれ

9/1発症

9/4初診 数日前から目つきがおかしい。38.5℃ 眼球剥目 uri(+) p.s(++)脱水()

   仙痛(+) 第一胃内に軽度のガス貯留

  パドリン1Ai.v.15分後プリンペランi.v.エクテシンを投与するように置いて帰る

9/5第2病日 38.5℃ 眼球剥目(++)def(+)p.s(++)第一胃ガス貯留(+++)脱水()。開口困難で食思はあっても摂食不可能。飲水は不明。右耳根部に乳頭腫の縛切痕があり、熱感(++)でここから感染したと考える。

  破傷風と診断、ペニシリン50ml i.m ユーパレス10ml i.m第一胃内ガスを経鼻カテーテルで投与 オキシドールで縛切跡を消毒

9/5 38.2℃ リンゲル2リットル アリナミン100ml パンカル20ml レバチオニン100ml

    デキサメサゾン5ml ペニシリン50ml

9/638.9℃ P90 R60

   リンゲル、ブドウ糖、アリナミン、パンカル、レバチオニン、結晶ペニシリンをdrip

   破傷風血清50ml ペニシリンi.v.

9/7四肢伸直し、後弓反張。昨夜よりみられる。

9/8畜主希望により安楽殺

・問題点

初診時に診断ができなかった

破傷風血清の早期大量入手が難しい。ヒトでは48h以内に投与しないと効果がない。

標準的治療法の確立がされていない

治療費の問題

*質疑応答抄

以前完治した例ではガス抜きを2回行い(破傷風ではあいきができないからガスが貯留するわけで、更に発酵しない以上ガスは溜まらずさらにガス抜きを行う必要はない)、マイシリン100mlを毎日投与した以外は刺激を与えないようにし、安静にすること4~5日でミルクを飲み始め、さらにその2~3日後には摂食もみられた。

血清を大量に投与したからといって効果が上がるとはいえず、マイシリンと血清を投与するとより効果的という印象を受けた。また、隔離させることで安静にし、余計な刺激を与えないのも重要と考えられる。

羊膜嚢触診と結腸閉鎖                      宮崎大学 上村俊一

黒毛和種断脚去勢牛の一例                   鹿児島大学 窪田 力

10ヶ月虚勢雄174kg 左後足を骨折、離島より購入し、フェリーが鹿児島に着いたときには肢端がとれていた。後脚脛骨近位端で断脚以降現在生後20ヶ月だが三本脚で歩行、残った三脚に異常はみられない。しかし、標準体重より推測で200kgと少なく体高は120cm程度である。

以上より、癒合不全で廃用になる子牛は多いが、三本脚でもそれなりに発育するケースがあり、500kgにまで発育できれば経営的に利益が出る可能性もある。1~2頭飼いとなる。しかし、食肉処理場での処理の過程に不安が残り、現在あと半年を目途に経過観察中であ

る。出荷時にも連絡を貰い、食肉処理場での処理も調査する予定である。

追加

鹿児島大学で今後OPUを受け付ける予定なので宜しくお願いします。