「コーチングについて」              武田シェリングプラウアニマルヘルス  尾之上晃朗

コーチング・・・

企業が導入しているマネージメントの方法。会話を通して相手に目標達成に必要な経験や知識を備えさせ目標に向けて行動を促すシステム。目標の明確化→実践へ

〜コーチングとは〜

「聞く能力」を伸ばすことによって話し手に「気づき」を与え、話し手から自由なアイデアを引き出す。→創造的で自発的な人材の育成。

「良い環境」は自発的な動きと目標の設定・やる気の喚起をおこす。

〜コーチングの基本〜
   相手のリクエストを聞く

→話す相手がいなければ、自分の思っている事にも気づくことができない。
   相手の話しやすい環境を作る

→相手が話しやすい態度、偉そうな態度をしない、会話を勝ち負け決めの場所にしないetc…
   よい聞き手になる為には

→時間を取る、相手を尊重する、遮らずに最後まで聞く、沈黙を大切にする、効果的な質問をする(答えを誘導する質問を避ける、時には刺激をする質問をしてみる、シンプルで的を射た質問をするetc…

「コミュニケーションはキャッチボール"




  「とうちゃん、かあちゃんのためのコーチング講座」

                                     開業  山本浩通

            「20年後の幸せな老後のために!」

             〜息子や従業員に気持ちよく、バリバリ働いてもらうには?〜

・どんな社会、組織、グループでも、うまくいっていない時は

人間的な問題

技術的な問題     

仕組みの問題 がある。

・    農場で働く人みんなが元気で明るいと、農場の成績は上がります"

実行のための3本柱⇒ 「聞く」 「質問する」 「認める

例)息子が仕事をしない →どうすればいい?  まずは言葉から"

*    「なぜ」に注意 「なぜできなかったのか」ではなく、「何が原因でできなかったのか」

*    「じゃろか、やっせんもんか」ではなく、「いいね!そんな考えもあったのか!」

*    頭ごなしの否定、「これが正解だ」という言い方は相手の反発を招く。

*    1日一回息子を褒める

・    自分を変えていくためには?〜相手の能力をのばす聞き手になるには〜

       実行のために自分にコーチをつける

       約束することで行動にうつすきっかけになる。

まずは、やってみましょう。



    「ストレスの持続時間は10日間である、回復は30日かかる」
                                                              赤星隆雄


                                                        

・ストレス対応反応の3段階

ストレスがなくなれば回復する。ストレスが続くと疲憊期へ
  警告反応期

  抵抗期

疲憊期 →ストレス関連疾患へ

・    牛の導入、分娩時のストレスを血液検査の推移を中心に検討。

<結果>

@    ビタミンAの推移

導入時、分娩時にビタミンAを投与しても血中のビタミンA濃度は上がらず、4060IUの低値を示した。→ストレスにより肝臓からのレチノール結合蛋白分泌が不足するのでは?

導入・分娩から10日間でビタミンA値が上昇し始めた(ストレスからの回復)

A    白血球の推移

分娩直後より1700018000の個体が出現。分娩後10日で12000まで低下し、分娩後30日を過ぎると10000以下にまで減少した。疾病発生も減少。導入牛では導入後10日からWBCが減少した。

B    Caの推移

分娩後の乳牛では、分娩後8日で8.5の低値を示したのを最後に、低値を示すものはなくなった。肥育導入牛では、導入後2日目に8頭で同様の一旦減少が見られ、回復。導入後14日目で再びCaの減少がみられた。2日目の減少は群編成ストレスによるもので、14日目の減少は感染によるショックによるものではないか?いずれもCa値の推移は同様の動態を示した。 

C    Htの推移

肥育導入牛では、導入10日でHtの上昇がみられ、導入後30日で平行になる。(回復)乳牛では分娩直後では個体によりHtに高低差がみられるが、分娩後10日前後で平行になった。

D    GOTの推移

乳牛では、乾乳期から分娩当日までは4590までであったが、翌日より上昇し、10日間高い個体がいたが、それ以降は110以下に低下。GOTが低下し始めるまでに10日を要した。

E    GGTの推移

分娩当日までは1537の範囲であったが、翌日より60の個体が出てきて、分娩後10日まで高値であったがそれ以降は45以下になった。

F    グロブリンの推移

凡そ導入10日以降は、グロブリンは上昇し、液性免疫が始まったことが示唆された。逆に重症牛の場合は、グロブリンは低いままであった。重症疾病中は防衛機構が脆弱になっているのでは。

<結論>

初期防衛機構は、細胞性免疫が中核であるが、分娩後の重症疾病では非特異的防衛機構過剰ノショックを呈し、それが回復するためには約10日を要する。恒常性が10日で回復し、それ以降は重症でない限りグロブリンが上昇し、液性免疫が主力になる可能性が示唆された。また全快には30日が必要であると思われる。

<応用>

導入時、抗生剤を最低でも10数日間投与したり、また、分娩や疾病時、隔離肥育を10日間することで、ストレスが軽減され、疾病の軽減が予想される。経験的にわかっていること以上のことを農家へ説得する手段をして有効である。

  「ボツリヌス症を疑う症例」
                                      都城市 開業 宮田逸郎

<症例>

 都城市A農場:子牛10頭、肥育100頭。繁殖牛舎と肥育牛舎とは100mほど離れている。以前豚舎だったものを牛舎として使用しており、衛生管理は不十分で共済未加入・自家治療を数年続けている。 

発生:2005311日 母牛が泡を吹いて死亡。翌日も死亡し、他の牛も様子がおかしい。

   3頭目以降は次々に死に始めたことから獣医師依頼。39日に新しく開封したサイレージを供した牛だけにみられ、またサイレージをよく食べる牛ほど重症のようだ。子牛と肥育牛には症状みられず。補液や強肝剤を投与すると翌日に死亡するなど死期が早まるようであったので加療を中止し経過観察とした。

症状:3838.2℃の低体温を示し、呆然と立っている。食欲なく1胃の動きなし。眼反射なく見えていない様子。一見低Ca血症のよう。進行するにつれて流涎と咀嚼を繰り返し、舌を引っ張るとしばらくそのままで戻らない。飲水困難。起立困難から不能になり、やがて死亡する。

診断:剖検、サイレージ検査では確定診断にまで至らなかったが、症状が類似していることよりボツリヌス症ではないかとの診断に至った。

対応:原因がわかるまでサイレージ給与を中止し、牛の移動を制限した。しかし、当初硝酸中毒を疑い対応していたため、サイレージ検査が遅れた。また、周辺農家への説明不足、関係団体の防疫対策不備など課題の残る対応結果となった。

  「腸捻転の対処法」〜過去10年のカルテから〜
                                         肝属郡 開業 君付忠和

過去10年間で腸捻転を発症した53例の牛の年齢は、殆どが100日齢以下であった。

病類別の発生割合は、86%が腸捻転、7%が胃捻転、腸重積が7%であり、ヘルニア・イレウス・異物によるものは見られなかった。性差は♂が63%、♀が37%であった。季節別の発生割合は秋から冬にかけて多く発生する傾向がみられた。症状別では急性例が53%、下痢併発が22%、不明は25%であった。一般症状としては、急性例の場合は「いつもと違う動き」や「横臥したり腹をけって食べない」「痛がってお腹を触ると痛がる」などがあり、重症例では腹位膨満、眼球陥没、起立不能などで気づいたら死亡していたということが多かった。

診断材料は、疼痛の程度(弱・中・強)、倒伏臥の状況(起立・ふらつく・横臥)、診断的治療・血液検査(一般・生化学・電解質)、レントゲン検査、超音波検査などを行う。

 血液検査では際立った変化のあった個体はあまりみられなかったが、GOTCPKGLUがやや高いようである。手術後での血液検査を行っていないため比較できなかったが、特徴的な血液検査所見はみられなかったことから血液検査での診断は困難であるように思われた。

 手術への判断は、鎮痛剤投与や揺さぶりをしている間にも変化がみられない場合、外科的処置を行うことにしており、通常23時間以内に飼い主に了承してもらうように説得する。捻転部位は小腸64%で最も多く、次いで第4胃が多かった。右方向の捻転が左方向に比べて多いようであった。手術後の治癒率は67%(n=18)であった。

 捻転は、発見して如何に早く処置するかがカギとなる。疼痛管理や手術後の血栓による死亡が今後の課題である。

       「発情徴候って何?」
                              宮崎大学  上村先生

 1966年当時の文献では、発情時における1時間あたりの被乗駕回数は29.6回であったと示されている。では現在はどうだろうか?2004年、2005年の文献から現在の発情行動について紹介してみたい。両文献では2人の観察員が3時間ごとに30分間発情行動を観察した。その結果2004年の文献では一回の発情において臭い嗅ぎ・顎のせは全頭でみられたが、スタンディングを示したものはわずか45%にすぎず、その回数は4回以下であった。同様の観察を行った2005年の文献では、臭い嗅ぎ・顎のせは全頭でみられ、スタンディングを示したものは58%でその回数は5回以下であった。このように、スタンディング発情を示す牛とその回数が少なくなっていることがわかる。このことからスタンディングのみを発情徴候の目安にすると発情が見つけられないということになりかねないので陰部の腫脹や粘液の確認も重要となってくる。発情を示す牛が同時期に2頭以上いると、1頭だけの時に比べてスタンディングの回数は格段に高くなる(1頭では20回、2頭で69回、3頭で79/一回あたりの発情)ので、PG処置をする際にはなるべく複数の牛に処置すると発情がわかりやすくなるのではないだろうか。

人工授精(AI)の適期について

卵子の受精能保有時間は810時間であり、排卵後2時間が最も受精に適している。一方、精子の受精能保有時間は約24時間であるが、射出されて卵子と出会うまでに約6時間を必要とする。そのため、排卵時にAIすると最適時期を4時間ほど過ぎたころに精子が卵子に到達するため受精しない可能性が高くなる。(受精した例はあるが・・)発情開始10時間から発情終了後8時間までがAI適期のようである。しかし、発情持続時間は約12時間であるので夕方から夜にかけて発情が始まった場合、朝牛舎に行く頃には発情が終了していることもあり得るので発見が遅れれば受精適期を逃しかねない。

 

     「猟犬における肺吸虫症」
                                   宮崎大学 堀井先生

淡水産カニに代わる重要な感染経路として注目されている野生イノシシは、九州でも山間部を中心に多数生息している。 今回我々は、イノシシ猟犬における肺吸虫症及び肺吸虫による死亡例に遭遇した。

患犬は雄・5歳・雑種のイノシシ猟犬で、来院の3年前から嘔吐を伴う発咳を常時みとめ、他院3ヶ所にて治療を受けたものの、症状は改善しなかったため、発咳と軽度の運動不耐性を主訴に本学家畜病院に来院した。胸部X線撮影により肺に虫嚢と思われる結節性陰影を、さらに血液検査では軽度の好酸球増多を認めたため、肺吸虫症を疑い、血清免疫学的検査(Multi-dot ELISA)及び糞便検査を実施したところ、ウェステルマン肺吸虫に対する特異抗体及び特徴的な肺吸虫卵が検出されたため本症は肺吸虫症と診断され、praziquantel78mg/s/day)投与を行い、良好な治療結果を認めた。本症例の同居犬にも同様に発咳がみられること、また一緒に猟に行く他の猟犬3頭の存在が確認されたため、これらについても同様に検査を追加実施したところ、全頭について肺吸虫の感染を認め、同様に治療を行った。

死亡例;患犬は雄・4歳のイノシシ猟犬で、生前の糞便検査で肺吸虫卵陽性、血清免疫学的検査において、肺吸虫抗体陽性であった。オーナーから『突然呼吸困難に陥り、死亡した。』との報告を受けて本学で病理解剖を行った。その結果、剖検時に胸腔内陽圧のため、横隔膜が顕著に下垂していたこと、また肺吸虫寄生部位に裂孔が認められたことから、死因は肺吸虫による両側性の気胸であると診断された。

次に宮崎県を中心にイノシシ猟犬の血清疫学調査を行った。対象地域は、宮崎県、熊本県、鹿児島県、大分県と4県に及んだ。全部で224頭のイノシシ猟犬より、血液サンプル採取し、末梢血好酸球の割合を算定後、血清免疫学的検査(microplate ELISA)を実施して、OD値の測定を行った。また、採血の際に、犬の年齢、性別、猟犬としての使用期間、猟を行う地域、餌、現症の有無、既往歴などについて詳細な聞き取り調査を行った。

調査対象犬の37.0583/224)が抗体陽性であり、そのうち54.2%45/83)で末梢血好酸球増多を認めたが、抗体陽性群と陰性群の間に有意差は認められなかった。また、飼い主が症状を認識しているものは4.8%/83)にとどまった。年齢、性別、犬種による抗体陽性率の差は認められなかった。また地域差より飼い主によって陽性率に差がみられる傾向にあった。

猟犬の多くは、餌としてイノシシの生肉を与えられ、またしばしば猟の際にイノシシを捕食することが、高感染率の原因であると推察される。今回の調査により、待機宿主としての野生イノシシと終宿主としてのイノシシ猟犬が現在山間部で保存されている肺吸虫の生活環に重要な役割を担っていることが強く疑われた。さらに、多くのイノシシ猟犬が肺吸虫症に感染する環境にあり、イノシシ猟犬においては、肺吸虫症も未だ呼吸器疾患における鑑別診断項目として重要であることが示唆された。

    熊本で遭遇したホワイトヘイファー病の症例紹介
                                       宮崎大学 森山

 熊本県の託麻診療所からホワイトヘイファー病を疑う症例の往診依頼を受けたため紹介したい。ホワイトヘイファー病は白色被毛にリンクする常染色体劣勢遺伝で、中腎傍管の形成不全による生殖器奇形であり子宮先端部のみを形成するT型、一角子宮のみを形成するU型、そして膣弁遺残を認めるV型がある。患畜は14ヶ月齢のホルスタイン雌で、膣鏡挿入時に膣弁遺残が認められた。直検では右子宮角は触知できず左子宮角らしきものを触知するのみであった。超音波検査では膣内が3ヶ所に仕切られており液が貯留しているのを確認した。貯留液は白濁していた。また子宮頚管〜子宮は10mm以下で細く、左子宮角は先端が盲端になっていた。以上の所見より、本症例はT・V混合型のホワイトヘイファーであると診断した。なお、発生起源の異なる(未分化生殖腺由来)卵巣は正常機能を有しており、発情は来ていたと思われるが、膣弁により発情粘液が外陰部から確認できなかったため、飼い主は無発情と思ったのであろう。

    乗駕をする牛のホルモン動態
                                       宮崎大学  堤

 発情時の乗駕にはテストステロンが関与していると言われているが、発情牛に乗駕する牛の生理動態は不明である。また、発情を回帰している牛と妊娠牛のホルモン動態および行動に違いがあるのかどうか、現在試験を行っているのでその概要を紹介したい。

 宮崎県佐土原町の和牛繁殖農家において2頭対で飼育されている繁殖和牛を対象とし、NHの牛とその両側の牛にテールペイントを塗布し、エコーにて卵巣状態を確認、また採血にて性ホルモン濃度(TPE)を測定する。週に1度テールペイントスコア(1〜4)を観察し、飼い主から発情の連絡が来た時点で24時間以内に発情牛と乗駕牛を検査する。しかし、つなぎ飼いではテールペイントが汚れてわかりにくいことから、テールペイントに代えて乗駕されるとその圧力でインクを入れた袋が破れ色が白から赤にかわり発情が発見できる、という仕組みを利用したヒートマウントディテクターを採用した。今回は左右どちらの牛が乗駕したかを確認するため、尾根部とその両側にも設置した。現在乗駕した牛の確認はまだされておらず試行錯誤を繰り返している。

<質疑応答>

Q1:現場では、子牛の偽粘膜性腸炎の発症年齢はどのくらいか?

A:最低で20日齢の子牛で見たことがあるが、一般的にはある程度餌を食べ始める頃の3ヶ月齢以内くらいに見られるようだ。

Q2:偽膜性腸炎の対処法は?

A:プレドニゾロンを肛門周囲に打って腫脹を抑えるのも怒積に効果的。尿カテを肛門からなるべく深く挿入し、サルファ剤を20mlくらい注入する。偽膜性腸炎の場合はステロイドと抗生物質とサルファ剤は初回治療から併用して3日くらい継続して使用する先生が多いようだ。一方、初回のみの投与をする先生、使用せず下痢止めを使う先生もいる。

Q3:腸捻転の発生は多い?

A:年に2〜3例程度。駆虫を始めるようになってから減ったようだ。糞線虫との因果関係があるのでは!?捻転の手術中にセタリアが多く見つかる場合がある。盲腸便の検査をする必要性があるかもしれないので次回から実施してみたい。

Q4:怒積・脱肛の対処法は?

A:膣脱と同様の処置を行う。半分に切ったビニールパイプに穴を開け肛門縫合を行う。糸は浅くかけると切れてしまうので思い切って深くかけるようにする。ビニールパイプを使うと汚染の可能性が低く、十分な効果が期待できる。糸ではなく靴紐を使用して縫合するのも効果的。

Q5:ホワイトヘイファー病を実際に経験された先生は?

A:V型の経験はあるが無角子宮をみた先生はいない。