『マッピング〜模擬マッピングをやってみよう!』
開業 山本浩通
マッピングとは・・・紙にアイデア(キーワード)を書き出し、少人数から始めて次第
に規模を大きくしながらそれぞれの意見を出し合うというもの。
* マッピングのルール
@ 批判をしない。
A 考えついたアイデアはどんどん書き出す。
* マッピングの流れ
@ 3人組になりキーワードを出しあう・・・10分間
A 2〜3グループが集まりそれぞれの意見を出し合いまとめる・・・10分間
B 発表・・・10分間
C まとめ・・・10分間
* マッピングの方法→色分けして優先順位をつける
・ 一番大事だと思うキーワードは赤
・ 次に大事だと思うキーワードは青
・ 根拠はないが自分としては大事と考えるキーワードは緑
今回のサンプルテーマ「臨研を楽しくするには」
出されたアイデア
@ 体験発表重視:学生にも大動物に興味がもてるように臨床家も年に一度は積極的に
体験談を発表する(失敗談・成功談・不十分なものでもOK)
A 開始時間について:飲み会の場では打ち解けて臨床に即した話が交わされることが
多いので、飲み会から初めて翌日に講義をしてはどうか。
B 講師について:講習依頼費を多くかけてでも良い講師を招く。そのためにスケジュー
ルの調整を事前にしっかり行う。講習会の質の向上を図る。
C 年3回のうち1回は、体験発表のみの会にしてもよいのではないか。
D 学会に参加した先生がその内容を皆に紹介する場を設ける。
E 2年に1度くらいは大学(宮大・鹿大)に牛を運び、合同で解剖などの勉強会を開い
てはどうか。
F 参加者の減少理由を考える:時間設定、参加費が高い、魅力あるテーマが少ない!?、
共済の獣医師の参加が少ない(特に若い人)は当直などが原因?、研修会が多すぎて臨
研が後回しになっているのでは・・・→内容の充実を図るべき!!
まとめ
今回、はっきりと答えは出なかったが、全員で話し合いの場をもつことは、非常に有
効である。これからの臨研の方向性について大まかにでも話し合うことができたのでは
ないか。詳細は各自考え、次の機会にまた話し合いをしたい。
―脂肪肝と繁殖障害に関する研究から―
日本大学 獣医繁殖学教室 津曲茂久
<卵胞嚢腫を強肝剤で治療>
1956年、常包らの牛の卵胞嚢腫と肝機能についての研究で、卵胞嚢腫の牛6頭にレ
バチオニン50〜100ml、およびビタミンC、2.5〜5mlを10日間連続した。
結果は、卵胞嚢腫牛6頭中5頭(83%)が治癒し、思牡狂症状は最短3日、最長で消
失した。これらから、肝機能低下を伴った卵胞嚢腫では、肝機能改善によりステロイド
代謝が促進され、治療に向かったことが考察される。強調されるべきは、hCGに反応し
なかった3頭中2頭が治癒した点である。
脂肪肝とステロイド代謝に関する研究
<脂肪肝と繁殖障害の治療>
脂肪肝における繁殖障害の発生率は全体の33.5%で繁殖障害の内わけは
排卵障害25%、卵胞嚢腫23%、発情微弱22%、黄体遺残12%、その他16%であった。
―エストロジェン生成と代謝―
内卵胞膜細胞(LH刺激)で合成されたアンドロジェンは、顆粒膜細胞へ移行してアロマ
ターゼ酵素(FSH刺激)によりエストロジェン生成。血中エストロジェンは副生殖器に
作用し、速やかに肝臓で代謝排泄される。肝臓で、エストロン(E1)、エストラジオー
ル(E2)、エストリオール(E3)は抱合化され代謝される。肝臓を経由したステロイ
ドホルモンは胆汁に排泄され、小腸から再吸収され、血液中にも一部出現する。
―血中ステロイドホルモンの存在様式・代謝・―
遊離型、結合型、抱合型がある。遊離型はステロイドが脂肪なので水に難溶
性であるという性質を持つ。生物活性があり代謝されやすい。数%しか血中にない。結
合型はアルブミンに結合すると水溶性が高まるという性質で、生物活性はないが、代謝
され難い。
保存型ともいわれ、遊離型の生物活性のあるものを調節するとも言われている。
血中に97%存在する。ホルモン測定は遊離型と抱合型の合計である。抱合型は肝
臓でグルクロン酸抱合されるもので、生物活性は失われる。
糞中にも多量に含まれ、内分泌活動を知ることができる。
牛において胆汁に含まれるエストロジェン濃度を測定すると、
脂肪肝のレベルが重度になるほどエストロジェン濃度が高くなる。
エストロジェンの代謝能力が落ちているということがいえる。
これが繁殖障害の原因となるのでは?
酵素活性を測ってみるとおもしろいのでは・・・
―脂肪肝と卵胞嚢腫の関係―
肝臓酵素活性の評価は組織化学的観察法とRI標識ステロイド代謝測定法の二種類が
ある。エストラジオールはβ―グルクロにダーゼによりグルクロン酸抱合される。
β―グルクロニダーゼの酵素組織化学観察において、卵胞嚢腫の牛は正常と比べて β
―グルクロ二ダーゼ活性が低下していることが分かった。脂肪肝は分娩を境にしておこ
りやすい。分娩後60日未満の発生率が61.5%なのに対し、60日以上では11.
8%である。
アイソトープによる基質代謝法により分娩経過日数とβ―グルクロ二ダー
ゼ活性値との関連を調べてみると、分娩後60日未満では低く、60日以上ではそれよ
り高かった。肝酵素活性値は、エネルギーバランス改善に伴い上昇している。また正常
牛と卵胞嚢腫の牛のβ―グルクロにダーゼ活性値を比較してみると。卵胞嚢腫牛では活
性が低い。更にβ―グルクロ二ダーゼ活性が低い牛ほど卵胞嚢腫の発生率は高かった。
―肝におけるステロイド代謝のまとめ―
* 卵巣(胎盤)からの遊離型ステロイドホルモン(活性型)は難溶性である。
* 肝臓で抱合代謝(不活化)されると水溶性高まり、尿に排泄されやすくなる。
* 血中のステロイドホルモンは低下する。
* ステロイドホルモン低下は視床下部へGnRH増加刺激になる。
→信号(ホルモン)は消えないと正常な役割を果たせない。肝臓には信号を消す大事な
役割がある。
―脂肪肝におけるエストロジェン代謝のまとめ―
* 脂肪肝ではグルクロン酸抱合低下する。
* 胆汁遊離エストロジェンが増加する。
* 胆汁遊離エストロジェンは腸肝循環→血中移行→視床下部GnRH抑制する?
* 卵巣疾患(卵胞嚢腫、卵巣静止など)増加する。
* 卵胞嚢腫は卵巣自体の異常ではなく、視床下部のエストロジェンレセプター低下と
考えられている。
<仮説>
脂肪肝においてはエストロジェン不活化が低下し、遊離エストロジェンが血中に高くな
る。それによって視床下部エストロジェンレセプターが低下する。さらに肝からのイン
シュリン様成長ホルモン因子(IGF)も低下する。エストロジェンサージに対する
GnRH増加がなく、LHサージもおこらない。→卵胞嚢腫
脂肪肝では栄養摂取量が低下し、肝臓IGF―1が低下する?
生産地屠場における脂肪肝発生率は高いが、消費地屠場では低い。生産地では廃用牛が
多いためと考えられる。
脂肪肝の牛に強肝剤投与(5日連用,回数7〜10回)により、大部分の臨床症状は改
善される。(92%)
卵胞嚢腫牛にたいするMPG(チオプロニン)単用とhCG5000IU併用との黄体化の
比較を行ったところ、卵胞嚢腫への強肝剤単独投与でも卵胞嚢腫は治癒した(71.0
%)
またhCGの効果が現れなかった牛に強肝剤投与すると、単独に比べわずかにおとるが
(63.5%)卵胞嚢腫は回復した。また強肝剤投与により黄体化時期も早い。
―<現在の研究課題@理論実験>―
* 強肝剤投与による卵胞嚢腫の治療効果は、エストロジェンの代謝回復によるものなの
か?
* 肝臓IGF‐1などの代謝ホルモン回復による直接効果?
→強肝剤投与前後の代謝ホルモンおよびLHパルス測定により解明する。
―<現在の課題A実用化実験>―
* チオプロニンは注射剤なのでそれに代わる経口剤が適切か(プロピレングリコール、
イソプラチオン製剤など)
* 基本的には肝機能支持薬を前投与してから、ホルモン剤を投与する方法が適切であろ
う。
但し、BCS2以下では如何なる治療も無効?
−牛の繁殖障害の現状と研究動向−
代謝ホルモンを中心に牛の卵巣疾患
乳牛…黄体遺残、卵胞嚢腫、卵巣停止、鈍性発情、排卵遅延、発育不全黄体(97%
)
肉牛…卵巣停止、黄体遺残、卵胞嚢腫、鈍性発情、排卵遅延、発育不全黄体(96%
)
・ 卵巣疾患は、なぜか乳牛と肉牛は同じ。
なぜ繁殖治療は難しいのか?
従来からの問題:ホルモン剤に対する反応は個々で一定でない。
・ 繁殖治療は栄養状態に大きく影響される。
・ 高泌乳がホルモン代謝を促進
・ ストレス(暑熱、輸送、疾患)などの影響
新たな問題:AI受胎率の低下
・ 飼育頭数の増大
・ 牛発情期間の短縮(約7時間)
・ 凍結精液の資源有効活用の進展
乳牛の分娩後の卵胞発育と無発情
分娩後の卵胞発育は10日以内に開始する(FSH増加)
1)初回卵胞ウエーブがエストロジェン活性DF(主席卵胞)であり、排卵する(46%)
2)初回卵胞ウエーブがエストロジェン不活性(無排卵)で、その後も無排卵卵胞ウ
エーブが続く(31%)
3)初回卵胞ウエーブのエストロジェン活性DFで、嚢腫化する(23%)
(視床下部のエストロジェンレセプター異常)
→・DFが発育しないのでなく、DFが排卵しないことによる。
・負エネルギーバランスは卵胞数やDF開始時には影響しないが、排卵に影響する。
・卵胞からのエストロジェン分泌に代謝ホルモンが関与。
肉牛の分娩後の卵胞発育と無発情
乳牛における理由に加え
4)母子間の結合
5)分娩時のBCS
・分娩前栄養は分娩時BCSと同様に、分娩後の無発情期間に強く影響する。
・分娩後栄養はDF発育や最大直径の決定に影響する。
分娩後の繁殖障害機序を従来のホルモン制御のみで説明することは不可能である。
→ストレス学説で説明可能か?
ストレス
高温・輸送、心理的・社会的(群れでの順位などを含む)、飼育条件
AVP:アルギニンバソプッレシン
1、 ストレスがかかる
↓
CRH(ACTHを放出するホルモン)放出
↓
GnRHを抑制
2、 ストレス(AVP)がかかる
↓
副腎皮質ホルモンを放出
↓
卵巣に働き、黄体ホルモンを抑制
* 従来の、視床下部・下垂体・性腺軸に、この副腎軸(ストレス)の影響が加えられ
る。
・ 卵巣除去後に、ACTHを刺激すると、副腎皮質から黄体ホルモンが分泌されるこ
とが証明されている。この黄体ホルモンがエストロジェン代用を打ち消して無発情を起
こす可能性がある。
・ インシュリン投与をすると、その後、グルコースが低下し、コルチゾールが急増。
同時にLHパルスは減少する。
・ 絶食ストレスによるLH抑制にCRHが関与
→絶食時、LHパルスは消失。しかし、CRHを抑制すると絶食時でもLHパルス発現
<第二の仮説>
視床下部・下垂体・性腺軸
+
視床下部・下垂体・副腎軸(ストレス)が大きく関与している。
<第三の仮説>
● 第一要因:生殖ホルモン(従来)
(視床下部・下垂体・性腺軸)
● 第二要因:代謝ホルモン
(視床下部・下垂体・肝臓/膵臓/脂肪組織軸)
● 第三要因:ストレスホルモン
(視床下部・下垂体・副腎軸)
代謝ホルモンとは?
種類が多い→詳細はわからなくてよい。大事な事を理解すればよい
成長ホルモン(GH)
・ 肝臓に働いてIGF1をつくる
・ プロラクチンに類似して免疫ふかつ作用もある。
GH→肝臓→IGF−1→卵巣
IGF−1(インシュリン様成長因子)
・ インスリン抗体により抑制されないインスリン様物質として発見された。
・ IGF−1は成長ホルモンにより肝臓から分泌される。また、卵巣や子宮からも産生さ
れる。
・ IGF−1は卵胞におけるLH/FSHによるステロイド合成を促進(特にアロマターゼ)、
LHレセプター増加、インヒビン合成抑制など重要な役割。
⇒IGF−1の存在は不明確であった個々のホルモン作用をかなり説明できるようになっ
た。
卵巣と脂肪組織軸
脂肪組織増加(レプチン産生促進)
↓
膵臓(インシュリン産生抑制)
↓
卵巣(エストロジェン産生抑制)
● レプチンはインシュリン抑制
● レプチンはFSHとインシュリンによるエストロジェン産生を抑制
● インシュリンとエストロジェンの産生は正の相関あり
● エストロジェンはインシュリンを増加させる
インシュリン
・ インシュリン低下→グルコース低下→インシュリン低下
⇒ケトン体中毒(ケト−シス)
インシュリンの増加は、ケト−シスの状態の改善となる。
レプチン
・ レプチンは摂取(グルコース増加)により分泌されるインシュリンが脂肪細胞のイ
ンシュリンレセプターに結合すると放出される。
・ 基本的にはレプチンが高くなると食欲を抑制するはずであるが、肥満者の95%は
高レプチン血症である。これをレプチン抵抗性という。
・ 一方、CHR(ACTH放出因子)は食欲を抑制、副腎皮質ホルモンは食欲を亢進させる。
これらのストレスと肥満に関係するホルモンを抑制しているのが、レプチンである。
栄養配分の優先順位(受胎前)
1、 生体維持
2、 成長
3、 泌乳
4、 体脂肪蓄積
5、 繁殖サイクル
⇒優先順位は5項目の中で繁殖が最も低い。このことは、最も先に影響を受ける事を
意味する。繁殖障害の難しさ。
牛分娩前後における泌乳量と卵巣機能の差異におけるIGF−1
・ 高泌乳牛では低い
・ 卵巣活動が正常な牛より、卵巣活動遅延の牛の方が低い
分娩前後における血中IGF−1濃度の推移
・ 分娩時に減少し、その後の増加の遅れが、繁殖障害に影響する。
牛の二次卵胞へのFSH,IGFおよびEGFの効果
・ 卵胞発育の初期からFSHも刺激するが、IGFとEGFはさらに強い。
LH分泌の影響因子
・ GH
・ インシュリン
・ IGF−1
・ グルコース
・ NEFA
⇒排卵が起こらないのは、LHサージが欠損するためである。
LHサージを誘起させるためにはエストロジェンサージが必要であるが、視床下部の
エストロジェンレセプターに異常があると、LHサージは起こらない。視床下部のエス
とロジェンレセプターに上記の因子が深く関与している。
興味ある肝機能と繁殖に関する報告
●高DMI牛では肝臓のエストロジェンとプロジェステロン代謝を亢進する
・ 乾物摂取量(DMI)と泌乳量は相関する。
・ 高泌乳に伴い繁殖効率は低下する。
⇒高いDMIがホルモン代謝に影響するためか??
・ そこで、DMIを変えて、EとPの代謝率および肝血流量を測定。
結果:プロジェステロン代謝と肝血流量
肝血流と給餌量
・非泌乳牛:非給餌vs維持飼料×1.5
肝血流量57%増、P代謝率55%増加
・泌乳牛:非給餌vs維持飼料×2.2
肝血流量24%増、P代謝率28%増
・肝臓における全Pの代謝は非泌乳牛57%、泌乳牛42%のみである。
⇒残りのPは腎臓、脳、卵巣、副腎で代謝??
肝臓血流量とP代謝率との関係
給餌飼料が増加すると、肝血流量が増加し、プロジェステロンの代謝率も増
加する。
結果2:エストロジェンの代謝と肝血流量
全Eの代謝率
泌乳牛:非給餌vs給餌=88%vs71%
プロジェステロンとは異なり、エストロジェンは大部分が肝臓で代謝される。
肝機能低下はエストロジェン代謝を停滞させる事を意味する。
●二排卵の増加は高泌乳量に関係する??
・ 背景:近年、乳牛の双生子が増加している。
・ なぜ、二排卵が起こるのか?
・ 主席卵胞は卵胞内エストロジェン値が高いが、次席卵胞では低い。区別にFSHが
関与しているため?
・ 主席と次席とは僅かな発育の差で区別される。その差は時間的には8時間程度であ
る。
・ 主席が区別されると、FSH濃度は急激に抑制される(両者のFSHに差異あり)
・ このFSHの低下が遅延すると、主席と次席の成熟が可能になる。2つの卵胞ともL
Hレセプターが増加して、排卵にいたる。
乳牛における産歴別の双生子の発生率
⇒2産で双生子発生率は急増し、その後も漸増する。
乳量の違いによる二排卵発生率
⇒乳量の多い牛の二排卵率は各乳期で高い。
乳牛における二排卵の発生機序(仮説)
⇒高泌乳牛では肝血流が多く、FSH抑制因子が代謝されすぎて、結果として、FS
Hの低下が遅れ、次席卵胞も成長し、排卵する。
●プロピレングリコールはIGF−1と繁殖性を向上させる。
・ 背景:脂肪肝は周産期の代謝病である。
・ 乳腺における糖供給の85%以上は肝臓からの糖新生でまかなわれる。この糖新生
は脂肪肝では抑制される。
・ 目的:周産期に糖新生を助けるプロピレングリコールを投与して、繁殖機能、ホル
モン濃度に対する影響を検討。
泌乳40kgにグルコース3kg必要
ルーメン内VFA(低級脂肪酸)
・酢酸(2C)、プロピオン酸(3C)、酪酸(4C)
産生割合例:60%:21%:19%
・酢酸とプロピオン酸はルーメン、門脈から肝臓へ
・酪酸はルーメン上皮でケトン体変換、肝臓へ。
さらに、肝臓は遊離脂肪酸からもケトン体を作る
・プロピオン酸は肝臓でグルコース新生(全体の75%を担う)
・負のエネルギーバランスの時にはケトン体上昇、血糖値低下
ケト−シスとプロピオン酸
・ケト−シス時には肝臓の脂肪沈着とグリコーゲン低下がみられる。
・ケト−シス治療にプロピレングリコールが有効なのは、不足しているプロピオン酸を
供給するためである。
・プロピレングリコールはルーメンバクテリアによってプロピオン酸に変化し、これが
血中ブドウ糖になる。
実験計画
非投与郡 P投与郡
頭数 19頭 20頭
産歴 2.65回 2.85回
乳量 8681kg 8881kg
プロピレングリコール(300g/日、水1Lに溶解)を分娩予定の10日前から連続投与、さ
らに分娩0、3,6,9,12日にも投与
結果:P投与郡の方が分娩後のIGF-1の回復が早い
P投与郡の方が分娩後、非周期牛から周期牛への回復が早い
−卵胞嚢腫の治癒機転(CIDR治療から考えた治癒機転)−
◎ 卵胞嚢腫牛における嚢腫卵胞の消長とホルモン推移
※ 注意すべきことは、卵胞ウェーブは起こっており、嚢腫卵胞が持続しているのでは
ない。
◎ 卵胞嚢腫牛の卵胞発育、血中P、FSH推移
・ 卵胞ウェーブ・・正常では発情発見後7日に始まるが、卵胞嚢腫牛では15〜30日
・ 嚢腫発育が停止するとエストラジオール値は低下する
・ FSH上昇でウェーブ開始
◎ 正常牛と卵胞嚢腫牛におけるLH分泌状況
・ 1時間あたりのLHパルス頻度と平均LH濃度は嚢腫牛では卵胞期と同様に高値を示すた
め、主席卵胞は持続的に発育し、嚢腫化する。
◎ CIDR挿入後の卵胞嚢腫牛の卵胞発育動態
・ CIDR挿入後、嚢腫は縮小しウェーブは嚢腫化しない。
・ CIDR除去後4日で排卵(視床下部の反応性回復)→連続したプロジェステロン値の上
昇が視床下部のエストロジェンレセプターをリセットするのでは!?
◎ CIDRの挿入が卵胞嚢腫牛のLH分泌に及ぼす影響
・ CIDR挿入後LHパルスが低下するとウェーブ開始。
・ CIDR除去後にLHパルスと濃度は急増する
◎ まとめ〜CIDRはなぜ嚢腫を治癒させるのか?
・ 卵胞嚢腫ではエストロジェンサージによるLHサージが起こらない。
(視床下部エストロジェンレセプター減少のため)
・ 持続性プロジェステロンは1度LHパルス減少とLH値を低下させ、黄体期の嚢腫卵
胞を閉鎖させる(アポトーシス)
・ CIDR除去でエストロジェンサージに反応しLHサージが起きて排卵する。
<ポイント>
* 持続性プロジェステロンがエストロジェンに対する視床下部の機能を回復させる!
☆ちょっと小話☆
「ドミトリー効果と雄効果」
ドミトリー効果・・月経周期が異なる女性が集団で一緒に生活を続けるうちに少しずつ
周期の変化を繰り返しやがて月経周期が一致する。これはホルモンの影響によると考え
られている(メス→メス)。
雄効果・・春から夏(非繁殖季節)にオスのフェロモンをメスにかがせると休止してい
た卵巣活動が再開する(オス→メス)。
「最後まで生き残るのは精子だ!!」
ヒトが死ぬと・・・
呼吸停止から数分後に脳波が停止する。場合にもよるが心停止までは脳波停止から約
20分かかる。さらに心停止から4〜5時間後に筋機能が停止する。個々の細胞機能が
停止するのは心停止から10〜30時間後である。そして最後に精子が停止するのである
。これは心停止から実に80時間後である。
「健康男性における睡眠中の勃起現象が占める割合」
20歳で最も高く、睡眠時間中40%以上を勃起現象が占めると言われている。
また、勃起現象が起こるのはレム睡眠中で、この時ペニスサイズが大きくなるが、
これにはテストステロン値が関わっているらしい。
『診療車の紹介〜工夫いろいろ』
* 自分の使い勝手の良いように各自色々な工夫をしているようです。
・ 発泡スチロールの箱
ホルモン剤の保冷に適している。また、体温計(水銀タイプの温度が上がりすぎるのを
防ぐのにも有効
・ フタ付きの丈夫なケース・引き出し付きケース・工具箱etc
フタ付のものなら帳簿をつけるときも便利!!引き出しケースの利用価値は大!!
* 私はこれを車に搭載しています☆〜紹介編
・ 気管チューブ・アンビューバッグ
・ 吸入器→子牛の肺炎に使用
・ 手作り子宮捻転整復器
・ 動脈注射用注射器
・ 難産応急セット
・ 農薬噴霧器→塩化ベンザルコニウムを入れて腹腔内洗浄に使用
・ 洗車ブラシ&バケツ
消毒薬を自分で準備し、牛舎に入る前に長靴を消毒する。帰る際は車も軽く消毒するよ
うにしている。→農家の評判もよい。衛生管理は獣医師から!!
奇形 珍しい症例の紹介
鹿児島大学 繁殖学教室 浜名克己
2000年はアカバネ、2001年はチューザン、2002年はアイノが流行していたが、昨年の冬
はおとなしかった。夏にアカバネが動いていたが、発症は0だった。
2749 上顎短縮屈曲、口蓋裂
全体にわたって口蓋裂が存在していたが、脳は正常であったため、骨格系の異常と考
えられる。原因は不明。
2754 両前肢彎曲、肺炎、腸炎
7ヶ月齢まで飼育したが発育不良で138kg。よくここまで引っ張ったという感じ。彎曲
よりも発育不良で淘汰。他は異常なし。
2756 右肘と手根関節の関節炎
右肘の屈曲、手根関節の彎曲。7ヵ月半で200kg位のため淘汰。
2757 髄膜瘤
頭にコブがある。奇形があると今はどこも引き取ってくれない為、淘汰。皮を剥ぐと
泉門が少し開いていた。外観は膨隆しているが脳は萎縮していた。
2760 盲腸嵌頓、毛球
発育不良、93日齢、76kg。手術痕あるが傷自体は治癒していた。手術によるものか以
前からあったものか胃・腸が非常に激しく癒着。腹膜炎を起こし、盲腸が広範囲に渡っ
て嵌頓していた。
2764 肺炎、下痢、胃内ロープ、脱毛
虚弱、発育不良、87日齢、84kg。過去に下痢があったが治癒。先天的異常なし。胃内
にロープが存在し、これに飼料が絡みついて消化不良。削痩、脱毛。
2765 流産5ヶ月、浮腫、ネオ?
5ヶ月で流産、少し浮腫。剖検しても異常なし、原因不明。以前ネオスポーラにかな
り感染されていた農場。親牛も陽性。
2766 環椎後頭骨癒合、盲目、神経症状
35日、31kg、目が見えない。神経症状(歩き方がヨロヨロ)、このままおいていても治
らないため淘汰。後頭骨と第一頚椎(環椎)の癒合。癒合している為、神経伝達路に障害
が起こり運動障害。
2774 水無脳症、ET、18ヶ月齢
大脳が全くなくアカバネでみられるような水無脳症。2002年3月5日生。アイノかアカ
バネが動いていた時期。1年半生きていた非常に珍しい症例。
2785 左小眼球症、重度肺炎
極端な発育不良、7ヶ月、100kg。右眼はほぼ正常、左は先天的に小さい。長期飼育さ
れ真菌症もあった例。
2788 腹水大量、腹膜炎、肺炎
腹部下垂、発育不良。大量の腹水が貯まっていた。腹膜炎、フィブリン形成が見られ
た。
2789 関節彎曲症、頚椎反張、下顎短小、肋骨骨折
神経症状、斜頚、両前肢の激しい屈曲。おそらく分娩時による第1〜第10の肋骨骨折。
頭はしっかりしていた。
2801 髄膜脳瘤
頭が大きく盛り上がっていた。輪切りにすると中は脳脊髄液ばかりで皮質が膜状に薄
くなっていた。外見からみると水頭症、病理学的には髄膜脳瘤。
2802 クロディン16欠損症
過長蹄。尿検査においてBUN・CRE高かった。種牛ようじんぼう21。
2803 両前肢の関節彎曲症
アカバネが動いてない時期に発生したもの。
気管狭窄、GnRHとPGによる分娩後牛の卵巣活性化法、再同期化
鹿児島大学 繁殖学教室 上村先生
気管狭窄子牛@‥黒毛和種、27週齢、66s
発育等は普通だが、興奮時に呼吸器雑音と安静時に雑音を聴取。X線透視像検査で狭窄
を認め、気管内視鏡で頚部気管の狭窄がみられた。炎症はない。
ウシの場合は外科的アプローチが困難なため、気管支拡張薬による治療をおこなった。
二ヶ月後、投薬すると症状改善されるが、しばらくすると再発するという状況が続いて
いる。現在は経過観察中。
気管狭窄子牛A‥黒毛和種、2ヶ月齢、94s
内視鏡検査で喉頭蓋の低形成をみとめる。炎症はない。鎮静薬としてキシラジンを投与
したが回復せず、挿管とマスクにより回復した。
3月に鹿大家畜病院を退院後、NOSAI中部伊佐診療所で継続治療をおこなったが、平成1
6年5月25日起立不能、翌日死亡した。
病理剖検をおこなったところ、肋骨が骨折しており、折れた右第一肋骨が気管を圧迫し
ていた。
GnRHとPGによる分娩後牛の卵巣活性化法(オバリアンバイタル法)
分娩後いかに早く卵巣機能を回復させるかが鍵となる。
従来のターゲットブリーディング(TB)は黄体の退行による発情同期化法であり、黄体
がなければ効果がない。しかし、分娩後30日では通常黄体はない。天然GnRHであるゴナ
ドレリンとGnRH誘導体である酢酸ブセレリンを比較するとブセレリンのほうが天然GnR
Hよりも高い血中濃度を長時間維持できる。両者の半減期には60倍の差があり、OV法で
はこのことを利用してブセレリン投与による分娩後の卵巣活性を図る。従来型のTBとの
比較をおこなった結果、OV法がPG2回投与のTBより一週間はやくAIでき、卵巣の回復が
少なくPGに反応しない分娩後30日においてもGnRHによる卵巣賦活効果が期待できた。し
かし、40日setupでは卵巣機能に比べて子宮回復が遅れる乳牛ではPG2回投与のTBが効果
が高い。
再同期化
牛の繁殖成績を向上させるために、早期妊娠鑑定時にOvsynch処置を行い発情・排卵の
再同期化をすることで、非妊娠牛の空胎期間つまり再授精までの期間を短縮する。
AI後20日目にGnRHを投与し、27〜29日目にエコーによる早期診断をおこなう。この結果
、非妊娠であった牛にPG投与し発情時あるいは72〜80時間後にAIをおこなう。またPGと
GnRHを投与し発情時あるいは16〜20時間後にAIをおこなう。AI後20日目にGnRHを投与す
ることによる牛への副作用はない
『牛の金物病の予防・治療と永久磁石の応用』
川崎製薬株式会社 川口 擁
牛の胃内金属異物に起因する創傷性胃炎などの疾患いわゆる金属病の予防のため、永
久棒磁石の投与が行われている。
1.2極棒状永久磁石の投与
Cooper(1954)の提唱に基づき、Carroll(1955)は多数の牛に棒状永久磁石を投与し
て、創傷性胃炎などの予防に効果を収めたことを報告した。
一方、わが国においては、保坂・柿本ら(1955、旧東芝製薬、現川崎製薬)が棒状永久
磁石の応用研究に初めて着手し、開発された2極のアルニコ棒状永久磁石(5×1cm
、パーネットA)が野外の多くの牛に投与された。関根(1957)、川村(1958)、安田
ら(1958)及び五十嵐ら(1959)は、投与した磁石が牛の金物病の予防に極めて有効で
あることを報告した。また、その他多くの者が同様な報告を行っている。
そして本品の投与が全国的に広く推進されてきた。
しかしながら、1980年頃より牛が飲み込んでいる胃内金属異物の長さが長くなる傾向
が認められ、投与している5pの棒状磁石より長い金属異物(主に米国から輸入のヘイ
キューブや牧乾草混入の金物)による事故が多く発生するようになった(可世木、松下
ら、千葉県農共済連〔1982〕)。
そこで、長さ8cm、直径1.2cmの2極棒状永久磁石(パーネット・8)が新たに開
発され、牛に投与されるようになった。(1983)。また、米国において日本へ輸出する
ヘイキューブや牧乾草中の金物異物混入対策が行われ、金物病の発生が再び減少した。
このパーネット・8投与乳牛について、大型X線透視装置による継続調査が実施され
、次のような興味のある成績が得られた(帯広畜大、広瀬、佐藤、山田ら、1983)。
金属異物が第2胃粘膜皺壁に刺入していた牛の比率が、初回検診時に72.6%もみられ
たが、パーネット・8を投与した後の再診時には27.4%に減少しており、投与した磁石
の強い磁力により、刺入していた金属異物が抜き去られている例があることが確認され
た。一方、非投与の牛群における金属異物刺入率は、初診時の38.6%から再診時の61.
4%へ増加した。
このことは棒状永久磁石の投与は、金属異物に起因する牛の創傷性疾患の発生予防に
有効なだけでなく、その治療にもかなりの効果がみられるとの多くの研究者の報告を支
持するものであった。
さらに、パーネット・8投与群と非投与群の泌乳量を調査した結果、投与群では投与
前に比べて投与後1頭あたり年間平均112%(803s)も乳量が増加していたのに比べ、
非投与群では103%(242s)であった。
このことは、第2胃の周期的な強い収縮運動時に、胃内の尖鋭な金属異物による機械
的な刺激が、投与磁石による金属異物の吸着により打ち消されたためであろうと判断さ
れた。
一般に磁石はNとSの2極を有するとされており、2極磁石を牛に投与すると、金物病
の予防・治療に有効であることは前述の通りである。しかし、2極棒磁石の場合両端の
N極とS極に強い磁場があるが、中央部付近の磁場はゼロである。金属異物の長さが棒
状磁石の長軸の1/2くらいかあるいはそれより短い場合には、金属異物の1端は磁石に
磁着され、他の1端は磁場がゼロのところにあるために磁石から遊離するいわゆる「立
ち上がり現象」を生じることがある。この短所をカバーして開発されたのが、次の多極
磁石である。
2.多極棒状永久磁石の投与
従来の磁石の考え方を変えた画期的な多極磁石のパーネット6P8(今村、川口)が開
発され、牛に投与された。
この磁石は、1本の棒状磁石に6つの磁極(N,S,N,S,N,S)が全周囲面にフル着磁され
ているので、金属異物は長いものも短いものも磁石の両端にだけ集中することなく磁石
前面に吸着され、かつ脱落しにくく、理想的な磁着状態を示すものである。
これらの磁着状況はX線検査による第2胃内所見(広瀬ら、1986)や剖検によって確
認され、また第2胃内刺入の金属異物が抜去された例も報告された。
3.牛に投与した永久磁石は一般に摘出しない
牛に投与する永久磁石は、第2胃内存置・終生投与の形で用いられる。
しかし、稀に多数の金属異物あるいは磁石より長い金属異物を牛が摂取して、金物病の
症状を発現した場合には、金属異物摘出器のカウサッカーSC式(磁力が強力な希土類コ
バルト磁石型)を用いて2極棒状磁石を体外に取り出し、吸着金属片を除去してから再
投与する。またカウサッカー用いる場合には、先に患畜にバケツ3杯程度の水を注水し
てから行うことが大切である。また、実験において、パーネット・8を1本入れた場合
の磁力を100とすると、2本入れた場合は41、3本入れた場合は88と複数本並列磁器によ
り磁力の相殺がおこり金物吸着力が現象してしまうため、複数本いれてしまった場合は
カウサッカーで取り出すか、もしくは奇数本入れる必要がある。
症例報告
開業 蔵前哲郎
症例1:ホルスタイン牛が、突発性に下顎の運動失調に陥る。下顎は脱力して常に開
口しており、舌をしきりに運動させるが、採食できない。視診・触診では顎関節の脱臼
は認められない。2〜3日間消炎剤を投与し治療を試みるが、脱水が著しくなり廃用と
する。
症例2:逆子の子牛を引っ張り出したところ、肋骨を骨折していた。開胸すると、胸
腔内に貯留した血液が血餅となっており、おそらく折れた肋骨が動脈を損傷したものと
思われる。
症例3:尿が泡沫状を呈するため検査すると、タンパク尿であり、また、血液検査で
は低タンパク血症が認められた。これらの所見からアミロイド症候群と診断し、この牛
を安楽殺した。
症例4:17ヶ月齢の去勢牛で、風邪様症状が持続し、増体が悪い。BUN・Cre.が異
常値を示すため腎疾患を疑い、抗生物質を主体に治療を試みるが、改善に至らない。そ
こで遺伝子検査を行ったところ、クローディン16欠損であった。この牛の系統は第3
糸福-第2ほうしょう-安谷福で、第2糸福と安谷福はクローディン16欠損症の遺伝素
因を有する。
症例5:新生子で鼻と前肢は出たが頭部が引っ掛かって難産となり、帝王切開を行っ
た。取り出された子牛は頭部が著しく腫大しており、水頭症であった。
ビデオによる農家説明用教材
開業 山本浩通
ミルカーによる搾乳では、ミルクの逆流が乳房炎の原因になる。逆流の様子を、透明
なティーカップを用いたビデオを見せて説明すると、農家さんにも理解しやすい。
体重測定用に ヒポメーターを用いて、大腿骨頭部の体幅を測定する。
育成乳牛の第一・二胃粘膜の発達には、スターター(穀類)の給餌が大きく影響する。
生後3ヶ月までスターターを食い込ますことにより、10〜12ヶ月齢で種付けが可能
な体高まで発育する。
分娩後、補液と第四胃変位防止を目的として、カルシウム剤・ビタミン剤・塩または
味噌を20〜30Lの水とともに経口投与する。投与方法は、ビニールのチューブを食
道に挿入して鼻環に固定し、これをポンプ付バケツあるいはジョウロに繋ぐ。