なぜ落ちた牛の受胎率

(社)ジェネティクス北海道 小野斉

 元栓を締めて火を消せ。

 近年の初回授精受胎率の低下は草がおかしいことに起因している。

 その初回授精受胎率の低下は平成6年から肉牛も乳牛もさがってきており、特に乳牛の受胎率は低下してきている。一般に授精は一回で半分とまればよく、3回やってもとまらなければそのとき我々獣医の出番となる。

 北海道の中でも特に受胎率の悪い日本海に面した地域でもやはり平成六年から急激に下がっており、北海道全体で見たら昭和63年くらいから徐々にさがってきている。

 昭和43年に凍結精液がでまわりはじめてから50万頭規模の調査がはじまって以来、S47年冷害による草不足、H11年の猛暑などの低下もみられている。

 初回受精受胎率の低下とともに分娩間隔はあがってきており、特に平成7年からとくに延長しており指標とされる400日を現在大幅に越えている。

 未経産牛と経産牛の差に注目

 乳牛の場合未経産牛においてはこの4、5年ほとんど受胎率は変わっていないが経産牛は変動もあり20%程度低い。しかし前述の50万頭規模の調査のうち6割しか経産、未経産をわけていない。

 地域、町、村、農家によっても大きな違いがある。また受胎率が低くても農家はもうけている。また成績の良い地区では授精師が状態の良い牛にしかつけていなかったりする。

 例数が増えてきても受精卵移植に関しては新鮮受精卵であっても相変わらず50%前後で推移している。

 受胎成績に関係する要因の中でも発情発見率と雌牛(特に経産牛)の受胎能力が重要。

 受胎率より妊娠率

 ONO症候群(Oestrus not observe syndrome、発情発現できない)が増えている。

 妊娠率が30%を切る無駄飼いが増えている。

 下がっているのは日本だけでなくアメリカでは初回授精受胎率が30%程度まで下がっているが乳量は増えている。

 しかし未経産牛では受胎率がまったくかわっていない。

 発情発見には人の観察が60%補助具が3%重要とされているが、実際の農家にアンケートをとると1日だけしか観察しないという農家も多い。過去に黒毛和種23頭を22日間24時間体制で観察し解析したところ1日1回の観察では発情がきても見落とすのが2頭いました。それを1日2回にすることで見落としをなくすることができた。

 また補助具も適正に使用しないとまったく効果をなさない。

 乳量は受胎率と異なりなめらかな上昇曲線をしめしており、近年1万s級の牛も増えている。また現在の初産牛の乳量は10年前の2産牛の乳量を越えているように、牛の性質自体が大きく変わってきている。

 搾乳牛1頭当たりの乳量平均は日本は主要国の中で1番であり、国の方針としてもまだまだ乳量を増やそうとしている。

 昭和50年の濃厚飼料の給与量を100とすると平成12年にはおよそ2.5倍になっており濃厚飼料で乳をだしている。

 これらの乳量の増加要因としては遺伝的改良が30%、飼料給与技術が60%(濃厚60%、粗飼料40%)、飼養管理が10%といわれている。

 各乳量階層別に分娩間隔をみると乳量が多い程分娩間隔が短い傾向があるがこれは成績がよい牛(乳量が多い)ほど共済獣医師のお世話になる回数が多いという点もふまえてみなければならない。

 平成6、7年を境に7000s階層と8000s階層の農家戸数に逆転現象がみられており着実に高位泌乳牛へと推移している。

 一般に乳量の増加に従い受胎率は低下するといわれている。しかし5年連続2万s達成、15年間連産9500s以上の農家も実在しているので、適切な飼養管理で繁殖と乳量の拮抗関係は克服出来る。

 繁殖への影響の大きいのは第4胃変位、蹄病、乳房炎である。 

 疾病事故のなかで上位6つのうち4つが繁殖障害である。また乳房炎と繁殖障害で全体の6割を占めている。

 現在の乳房炎への対策は飼養環境、搾乳時などの衛生管理の徹底、予防や治療の方向からばかり飼料給与の面からも改善しなければならない。

 乳房炎は分娩間隔などの繁殖への影響も大きい。

 北海道の平均SCCは現在10?20万で日本としても北欧並に低い。しかしSCCが高いとペナルテイーがあるため出荷されずに廃棄される乳もある。

 屠場における50%前後という高い肝臓廃棄率にもきをつけねばならない。

 問題は育成牛からはじまっている。育成初期における高品質の粗飼料が重要である。育成時の発育の遅れはかなり後まで影響を与える。

 1産目のトラブル、2産目のスランプ。

 最近の粗飼料の成分変化にも注意また硝酸体窒素による死廃事故にも注意が必要である。硝酸が高い場合サイレージの廃液を除いたりVitAをふやしたり他の含んでいないものと混合するとよい。

 餌と繁殖には関連性がある。低エネルギー飼料を長期間与えることによる受胎率の低下。給与蛋白が多いと過剰のアンモニアが産生され、そのアンモニアは肝障害、精子、胚への直接ひがいなどを起こす。エネルギー不足はアンモニア利用菌の活性を落としアンモニアの残存をまねく。粗飼料の成分には購入であろうと、自家産であろうと注意を払う必要がある。

 感染症にも気をつける。ネオスポラ症やコクシエラ症(Q熱)の知られざる流行状況。また拡大防止の為、後産の適切な処理などが重要である。

 糞尿処理の問題が重要。糞満やる方なし。各専門分野と連係をとり大規模化へのブレーキを専門家がかけねばならない。

 ミルク輸送時の低温菌問題、陸上輸送費の問題など。



健康な牛からおいしい牛乳を効率よく生産するためには
熊本県 開業 谷峰人

 大分県の畜産農家を集めて勉強会を行った。そこで主に議論されたことは食べない牛にどうすれば食べさせることができるか、ということであった。牛の飼育形態、草の種類やカットの違いによって餌の食いが変わってくること、牛のタイムスケジュールを考えて餌をやらなくてはならないことなどが話にあがった。

 その中で初めて牛の硝酸態窒素中毒を経験することになった。牛は死ななかったが、この牛は発症の1週間前からコーンサイレージを与えられており、その餌を食べ終えるくらいになると牛の呼吸が速迫し、しばらくするとおさまったという。その牛の糞便サンプルを調べても硝酸態窒素の値は正常だったため、与えていた餌のサンプルを調べたところ386ppmという濃度の硝酸態窒素が検出された。アメリカの基準では1000ppm以下が安全で、4000ppmを超えると中毒を起こすと言われており、ほとんどの飼料は500ppmを超えることはないという。

<質疑応答の場で指摘されたこと>

・硝酸態窒素が牛の繁殖に少なからず影響を与える。

・鶏糞を与えて育てた飼料には硝酸態窒素が高濃度に含まれている可能性が高い。

・硝酸態窒素濃度が高い飼料を多給すると、牛の乳汁中に高濃度の尿素態窒素が検出される。

・実ができないうちに刈り取ってつくったコーンサイレージは硝酸態窒素濃度が高くなる。

・硝酸態窒素濃度が低い飼料を長期間与えると硝酸態窒素が体内に蓄積される。


「畜産心理学を利用した、目標実現委員会」

宮崎県 開業 山本浩通

だれでも、「あれをしなくては、これをしなくては」と思いながらも日々の仕事に追われついつい、後回しになり、なかなかできないって事があります。

これは、ほとんどすべての人に共通することで、農家だろうがサラリーマンだろうが、公務員だろうが、獣医師だろうが同じです。

心理学の分野では、なぜ夢や目標が実現できないのかを、科学的に分析して、実現のための手法が確立しています。

平成12年2月の臨研で、心理学者の加藤浩一さんの講演がありました。

前述のように「夢をかなえるには」の具体的な方法を伺い、その方法を農家の講習会に利用して、飼養管理のレベルアップを試みました。

昨年の1月から12月まで、それを利用して、畜産分野に限って「目標実現委員会」の名前で、合計19回、勉強会を企画しました。

リストの作り方(加藤方式)

1:すべての夢、希望、目標を思いついた順に書く。

       こんなことをしたい、あんなことをしたい。

2:できる、できないに関係なく書く。

3:具体的に書く。

    金をもうけたい   500万円利益を上げたい。

    楽をしたい     人を使って休めるようにしたい、パートで搾乳を頼みたい

              

4:いろんなことについて書く。

    畜産経営のいろんなことについて書く

   頭数(搾乳、育成)、収入、乳量、成績(繁殖、体細胞、乳成分)、労働力、糞尿処理、

危機管理、安全対策、暑熱対策、畜舎増築、粗飼料作り、畑の管理、搾乳機の管理

管理内容(子牛、育成牛、乾乳、分娩牛、カウコンフォート、繁殖記録方法

繁殖管理方法、発情発見方法、   

5:優先度、達成期限の記入

優先度は願望の度合い、重要性、価値の度合いで決める。

また、効果性、緊急性、必要性、経済性を考えて。

自分で決める。

いつでも変化していい。

優先度 A:必ずやる、必ず手に入れる、必ずなる

 B:ぜひ、やりたい、ぜひ手に入れる、ぜひなる

 C:チャンスがあったらやる、、、、、、、、、、、、、

達成期限  すぐ (1ケ月以内)

      短期 (1〜6ケ月以内)

      中期 (1〜3年以内)

      長期 (5〜10年以内)

毎月、情報提供。毎回、リストの更新。各自で設定した計画の進行状況の報告

会費は月に3000円、ボードの設置

研修内容

                           

購入ビデオ

@乳房炎防除ビデオシリーズ 上巻、下巻

@子牛の高栄養管理による21ケ月早期分娩

@チャレンジ8リットル哺乳

@私たちの発酵型フリーバーン

@私たちのフリーストール

@受胎率アップの対策はこれだ!

@イスラエル酪農見聞録 上巻、下巻

@フリーストールにおける乳牛行動

@私たちのフリーバーン

@私たちの改造フリーバーン

@「糞尿を微生物で資源化利用」

@「牛群検定成績表の見方、活かし方」

心理学を利用した目標実行委員会概要説明

BSE。牛舎改造。ノート配布、ボード配布。乾乳期の管理   乾乳期のエサのチェック、計算。繁殖について。行動計画表。ミルカビリティー。ダクト換気。バンクスコア、毛焼き。

乳房炎発生記録表。管理表。乳房炎の予防と治療。子牛の育成管理。乳検データの読み方。

分娩時のCaの測定結果 MUNの測定結果  子牛の発育測定結果 フォッグ、体表温度。

各自の搾乳作業ビデオ  ヒートストレス  各自の1月からの経過と今後の予定

各自のマニュアル発表  自動離脱の設定値 分娩後10日のプロトコル

帯広畜産大学での搾乳方法   ヒートストレス 「体表温度」「ダクト+細霧」「糖蜜ブロック」

「ミルカー検査と乳房炎対策」  ミルカー検査の実際。  連続水槽。マット。

全農 小林健二氏 @バーンミーティング   @夜の部:移行期管理ほか   ストレスについて

感染病の予防、消毒。(牛島獣医師)

各自の今までの経過と今後の計画。    飼槽工事ビデオ

乾乳期の管理、    子牛の育成:3ケ月までスターター主体。 乾乳期の飼料、

草地酪農、NHKテレビ(9月20日放送)より

蹄の管理、削蹄方法(ダッチメソッド)酪農学園大学 田口教授

総合診断とコンサル  菊池セミナー   ミルカーの管理

万歩計による発情発見。  コムテック 笹栗社長

堆肥つくりの要点。   各自の残乳量。  ストレス。

経営について 


結果

合計20名。全薬、普及所、開業獣医、ミルカー会社。

農家は15名、4名は途中で脱落。

以上の内容を1年かけて計20回行ないました。

◎ 期間中改善    ○ 期間中やや改善      △ 試みはあるが、まだしていない。

×変化なし     * 前からOK

農家

飼槽

マット

換気

乾乳管

育成
管理

ミルカー

繁殖管

搾乳管

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

 

 

× 

 

 

 

 

 

× 

× 

× 

 

? 

 

 

 

 

 

× 

 

? 

×

 

× 

 

 

 

× 

 

 

×

 

 

 

 

 

× 

 

 

×  

× 

? 

 

 

 ×

 

× 

×

 


 

 

 

× 

 

 ×

×

 

× 

 

 

 

 

 

 

×

× 

× 

 

 

 

× 

 

× 

各自の目標のリストと達成度合いの自己発表を、数回行ないました。全体として講習やビデオが主になり、農家個人の主体性を上げるという点については、もう少し工夫が必要でした。

ついつい、仕事に追われて改善する気持ちをなくしがちですが、それでも、毎月2回の勉強会を行なうことによって、他の人がどんな改善をしたか、また、それで、どれだけ管理や収益がよくなったかを聞くことで、刺激になったようです。

  

ただ、細かい、まめなフォローをしていかないと、その結果がどうなったか、つめれてない部分もありました。

この、グループ全体としては、ここ3〜4年間の間に個体乳量が1000〜2000kg増えています。



ブロイラーのサルモネラ(Salmonella Infantis)対策

大分県 家畜保険所 藤井智子

 人の食中毒は細菌性のものが最も多く、中でもサルモネラが原因となることが多い。

 ある衛生管理のできているブロイラー農家で検査を行った。鶏体内におけるサルモネラ(SalmonellaInfantis)の陽性率は14/18(18検体中14検体で陽性)で、鶏舎環境における陽性率は37/50であった。

 この調査を行った後に、従来とは異なる消毒法を用いて鶏舎全体を消毒し、再びサルモネラの陽性率を調べることによって、消毒の前後でサルモネラ陽性率がどのように変化するかを調べた。

 その消毒法では、まず
@従来のアストップ(×500)を鶏舎に散布し、
Aバイオソルブ(バイエル社)で糞を洗い落とし、
B水洗する。そして
Cコクシジウム対策のためにゾールをまき、
D石灰乳を床にまいて、
E最後にビルコンSを天井に噴霧した。

この消毒を行った後の検査では、鶏体内におけるサルモネラ陽性率は0/18、鶏舎環境における陽性率は1/50と、両者において著しいサルモネラ陽性率の低下がみられた。

さらに鶏舎の周囲に石灰石をまくことによって徹底した消毒を行うことができる。この石灰石は安価であり、雨が降っても流れないので2〜3ヶ月は効果が持続する。また牛においても応用することができるであろう。

<質疑応答>

Q.寄生虫の駆除に生石灰の粉を用いるが、石灰石とどう違うのか。

A.石灰石を使えば安いし、粉だとすぐに流れていってしまう。また石灰石は土壌に対してもよく、石灰の濃度が低いため肌荒れも少ない。そして水に入れても温度が高くならない。



同地区で同時期にみられたホワイトヘイファー病のT,U,V型

【鹿児島大学 上村俊一】

 ホワイトヘイファー病はショートホーン種の雌牛に多発する中腎傍管の未発達によるもので三つの型に分類される。

 第T型:子宮角先端のみ形成

 第U型:1側子宮角のみ欠如

 第V型:膣弁閉鎖型

 昨年の10、11、12月に同地区で3体のホワイトヘイファー病の牛がみられた。

 [1] 第T型の牛

・  膣前庭までしかないので膣鏡が少ししか入らない(10cm)。

・  エコーで環状構造がない。⇒ 子宮がない。

・  卵巣はある。⇒ 右の卵巣に18mmの黄体があった。

・  性腺はまったく正常だった。⇒ PGが出ないから黄体が残るかもしれない。

 [2] 第U型の牛

・  左子宮角はあるが右子宮角は欠損していた。

・  第U型のうち左子宮角のみある場合が7〜8割で、右は1〜2割。

・  種付けは可能。

 [3] 第V型の牛

・  膣弁が遺残しているため交尾ができない。

・  膣弁の外科的切除が可能。

・  早い段階で処置するとよくなる(13〜14ヶ月齢)

          ↓

 拡張棒と手(指先)で開けた。⇒出血は一時的でその後はうまくいった。

『質疑応答』

Q.今までにこのような症例はみられませんでしたか?

A1.10数年前にみられたがフリーマーチンとして処理した。

            ↓

  無発情ならフリーマーチンの可能性もある。

A2.発情周期は正常だったが6〜7回種付けしても受精しないと授精師さんから相談を受けた。

            ↓

  片方は途中で行き止まり、片方は全部入る。→ 妊娠には問題ない。

            ↓

  獣医が検査して教えておく。




症例報告

鹿児島大学  浜名克己

 アルボウイルス性の異常産は近年減少しつつあるが、以前程ではないが流行も見られる。これらはワクチンをうっているのにもにもかかわらずみられているが、ワクチンを接種してから大規模な流行は確実に減ってきている。これらは農家の被害をおさえるためにも今後の課題であろう。

 昨年1月?4月にかけてチュウザン病の流行がみられました。

症例1:神経症状、大脳一部欠損、欠損部は膜状、チュウザン(+)

症例2:末吉町、60日齢、発育不良、大脳一部欠損、欠損部膜状、

チュウザン(+)

症例3:財部町、雌、206日齢、90kg、発育不良、右大脳半球一部欠損、

孔脳症

症例4:大隅町、雌、138日齢、110kg、臍ヘルニア(胃が突出)、後頭骨と環椎癒合、第2・3頚椎癒合、横隔膜ヘルニア(胃・腸管が胸腔内へ)、心奇形

症例5:大口市、雌、330日齢、185kg、クローデイン16欠損症

症例6:牧園町、ホルスタイン、雌、12日齢、43kg、起立不能、運動失調、

小脳形成不全(BVD-MD疑い)

症例7:高原町、雌、0日齢、30kg、過剰肢、多指症

症例8:大崎町、雄、9日齢、20kg、二分脊椎(仙椎)、キャリア奇形、

後躯変形

症例9:潜在精巣、腎臓の前後に移動

症例10:発育不良、皮膚病

症例11:大口市、雄、12日齢、28kg、唇裂、口蓋裂

症例12:福山町、雄、1日齢、25kg、鎖肛、直腸膀胱瘻、両側潜在精巣

症例13:横川町、雌、250日齢、207kg、右前肢関節湾曲症

症例14:大口市、雌、215日齢、47kg、発育不良、胃の拡張、毛球多数

症例15:大崎町、雌、121日齢、45kg、右前肢関節湾曲症

症例16:大崎町、雄、92日齢、57kg、右手手根関節湾曲症

症例17:大崎町、雄、23日齢、41kg、両側無眼球、左側脳室拡張、脳腫瘍

症例18:末吉町、雌、148日齢、49kg、慢性化膿性肺炎、胸膜との癒着

症例19:栗野町、雌、10日齢、36kg、矮小脳症状、左右大脳側面ヒハク化

症例20:牧園町、雄、15日齢、34kg、矮小脳症状、大脳前頭葉ヒハク化、

小脳形成不全

症例21:大隅町、雄、3日齢、30kg、矮小脳症状、大脳実質ヒハク化

小脳形成不全

症例22:大崎町、雄、29日齢、35kg、矮小脳症状、大脳前頭葉ヒハク化

小脳形成不全軽度

症例23:横川町、雄、1日齢、25kg、矮小脳症状、大脳前左後部ヒハク化、

小脳形成不全重度

 症例19?23にみられるような矮小脳症状、大脳一部ヒハク化、小脳形成不全が同時にみられる奇形子牛がみられた。今の所流行というほどではないが注意が必要である。




質疑応答

( 奇形子牛について)

Q.アカバネウイルスなど異常産を引き起こすウイルスのワクチン接種を農家に勧めているが、ワクチンを打っても異常産が発生するという話が広がっており、なかなか勧めづらい。どのようにワクチンを打てばよいのだろうか。

A.ワクチンを打つタイミングや、手技上の問題により抗体がうまく上がらず、感染してしまうという可能性はある。ワクチンが効くのかということについてだが、実際に効いたものについては搬入されないので分からないが、県全体でみるとワクチンの使用により症例数は減ってきており、またワクチンは80%ほど感染が抑えられればよいと考えられていることからも、効果は十分あると考える。あとはウイルスの変異に対応したワクチン開発が必要となるだろう。

*この他にも、ワクチンを従来よりも早く2、3月に打つべきではないかということや、ワクチンが効くかどうかには環境、遺伝要因も関与しているのではないかという指摘があった。

( 消毒について)

Q.豚、鶏の農家は消毒の徹底が半端ではないが、実際それほどやる必要はあるのか。

A.各農家ごとに長靴や白衣を用意するぐらいはしてもよいのではないだろうか。また畜舎内ではほこりを出さないようすること、消毒槽に入るときは長靴に付いている糞便をきれいに洗い落としてから入るようにすること、消毒薬はよく選んで使用すること、などに気を付けてはどうだろうか。

Q.消毒をしっかりする農家が必ずしも良績をあげているわけではなく、また実際牛の場合は消毒を徹底することは難しい。必ずしも消毒に費やす必要はないのでは。

A.まず「病気が出るときはみんな出るんだから」という考えをしないように農家に指導するべき。消毒を徹底していないところで病気が出ないのは、牛舎内の整理整頓がしっかりできていたり、牛自体が清潔に保たれていたりと、それぞれそれなりの理由があるということを忘れてはいけない。また外部から細菌やウイルスを持ち込まないための消毒の必要性を農家に説明するべきである。

*この他にも、各農家、各行政、あるいは国単位で防疫が徹底されなければ、一部で消毒を徹底したところで意味がないということや、厚生省、農水省にしっかり意見を言い、行政をチェックする必要があるという指摘があった。

神協ダッシュV

『神協産業』

 乳牛の障害の多くは給与エネルギーと泌乳エネルギーの不均衡により発生するといわれ、特に泌乳後期から乾乳期にかけて多発する。分娩後の食欲不振や食滞、鼓張症などの消化器疾患や栄養不良による脂肪肝症、種付け不良などは酪農経営の課題となっている。神協ダッシュVは、飼料の食い込みを安定させて最高泌乳期以降の急激な泌乳量や体重の減少、乳質低下、ケトーシスや脂肪肝の予防など今まで解決が難しかった乳牛の生産病の課題に飼料給与の指導が生かせるビタミン入混合飼料です。

主要成分

 神協ダッシュVは乳牛の基本的な栄養代謝に良いとされる、ビタミンB群、海藻、酢酸、クエン酸などを配合した混合飼料です。

?成分特長

 クエン酸などの有機酸が濃厚飼料多給時の害を抑え、海藻中に有機で存在する微量金属やアミノ酸、多糖類の栄養により胃内微生物の活性を保ちます。さらにこれらの栄養成分が肝臓を強化して、過剰遊離脂肪酸の処理負担を栄養的に助けるだけでなく、ビタミンB群を含め脂肪肝の原因のひとつといわれている、リポタンパク合成阻害の抑制に役立ちます。また、下記の一つ一つの成分が複合して効果を発揮すると推察されます。

@       海藻:50種以上のビタミン、ミネラル、アミノ酸をバランス良く含み、肝臓に良い栄養を補給する他、海藻のヨードアミノ酸は甲状腺に働きかけ、代謝全般を整えます。さらに海藻特有の多糖類は牛の消化を助けます。

A       有機酸(クエン酸など):第一胃内を刺激して食欲を増進します。さらに  

含まれている酸は栄養代謝に関わり、栄養成分の吸収を整えます。

B       ビタミンB群

  ビタミンB群は反芻獣の場合ルーメン内で合成され、飼料添加は必用が無 

  いとされてきました。しかしながら最近の研究で胃内微生物の種類でも産

  生されるビタミンが変化するので乳牛の恒常的な健康維持の為には不足す

  る状況も考慮すべきとの見解が主流になってきました。

1、パントテン酸Caは基礎的な栄養代謝に関わり、ストレス下で高い要求量を示す他、肝臓機能強化に関 与します。

2、ナイアシンは生体内の補酵素の一部として存在し、細胞呼吸に関与します。

3、ビタミンB6は蛋白質の代謝と関わる数種の酵素に関与しています。